百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
リカールの妹──改めルカのステータスを確認したところ、メイド服はカモフラージュで本当のクラスは斥候でした。
暗器の武器レベルに補正を持つ盗賊といった感じの本作独自のユニットで、剣レベルを上げれば忍者に、弓レベルを上げれば絡繰師に。杖レベルを上げるのは……シスター経由よりかなり大変だが頑張ればメイドにクラスチェンジできる。
「しかし……何故、商人の娘が斥候をクラスに選んだ? 護身という意味では暗器が扱えるのは強みではあるのだろうが」
「あぁ、それにはちゃんと理由があるんですよ。俺っちの母親もそうでしたが、一族の人間は基本的に絡繰師になるよう言われてましてね」
「絡繰師に……なるほど、それで主力商品がオートマータか」
「ご明察。隷属の紋章より人道的で、命令に忠実で使い捨てにしても心が傷まない。ま、絡繰師のクラスを持たないと単純な作業しか指示できませんが、それでもご愛顧いただいてるお客様は大陸各地にいらっしゃるほど人気商品ですよ」
原作のファイアーエムブレムifに登場する絡繰師には『写し身』というスキルがある。自分と同じステータスのユニットを召喚することができ、HPが共有されるなどリスクも増えるものの手数が2倍になる便利なスキルだ。
本作の絡繰師は使用したユニットから5レベルほど引いたモブユニット、オートマータを召喚することができる。どちらかといえばエンゲージに登場した英雄ヴェロニカの『英雄召喚』に近いかもしれない。
また、召喚するときにアイテムを消費しなければならないが、その代わり呼び出すオートマータのクラスをある程度プレイヤー側で選ぶことが可能だ。盾ならアーマーナイト、杖ならシスターといった具合に。
輸送スキルでアイテムを無制限に持ち込めるマイユニットとの相性は抜群で、持て余している銀装備なんかを使えば囮ではなく主力として活用することもできなくはない。
「男たちも弓の扱いを覚えてから絡繰師を目指したりしますよ。ま、俺っちは人形の乗り心地が肌に合わなくて素直に弓だけを鍛えてましたが。そんなワケでご主人様、俺っちのクラスチェンジはスナイパーかボウナイトでよろしく頼んますね?」
「そうか、それは残念だ。カラクリの腕輪もたっぷり在庫があるんだがな」
「そんなことだろうと思いましたよ。妹は……ルカは絡繰師に向いてるし、本人も乗り気ですからね。是非ともイイやつ、優先的に与えてやってください」
と。
こんな会話をしたのが第13階層突入前。
「……ふむ。この音の響き具合からして、宝箱の中身は5000ゴールドですね。ここをこうして……こう……はい。いかがですか?」
「ルカさんすげー! やっぱ本物の商人はすごいんだな!」
「宝箱を叩いただけで中身がわかるなんて。アタシには絶対マネできそうにないわ」
「リカール。あれも一族の人間の特技か?」
「いや、なんとも……。一流の商人は金貨の袋を持っただけで中に偽物があるかわかるって話は聞いたことがありますが」
第13階層は再び迷宮型のフロアとなり、ランダム配置の宝箱が出現した。幻影兵が武器や金貨をドロップするため原作ほど積極的に回収しなくても攻略はできるが、たまに魔法武器やプルフなどの貴重品が入っているので鍵開け要員がいるなら見逃す手はない。
今回は丁度いいタイミングで斥候であるルカが加入したので回収することにした。で、さっそく鍵開けを頼んでみたらこうなった。いや、慎重なのはいいことだと思うよ? ゲームでは無かったけど、宝箱に罠が仕掛けられていないとも限らないし。ディナダンとパーシバルも尊敬の眼差しだし。
「仮に。ルカ本人が絡繰師よりも忍者を希望するようなら、私に反対する理由はないが?」
「ま、まぁ……母親が商会から逃がしたってことは、どのみち戻れるような状況じゃないでしょうし。屋内ではペガサスにも乗れませんし、機動力のある戦力は役に立つんじゃないですかね。……アイツ、ノリノリで滅殺ッ! とか言いそうだな」
忍者の『滅殺』とアサシンの『暗殺』は、発動すると相手を即死させるという強力なスキルである。それぞれ発動条件や確率が滅殺は魔物特効、暗殺は人間特効と差別化されているが、本来与えるダメージがゼロだとしても問答無用という部分は共通している。普通に一発殴れば倒せるときや、弱いユニットのために経験値を用意しようとしているときほど発動するところもそっくりだよチクショウ。
どちらかといえば、移動コストの安さと高い速さにより追撃しやすいことが強みか? パラディンや勇者も安定した火力を確保できるクラスだが、命中率では忍者とアサシンのほうが信頼できるし。暗器によるデバフがどのような処理になるかだけがまだ未知数か。
興味という意味では絡繰師も気になるんだけど。糸で自分よりも大きなカラクリ人形を操り戦う……暗器と弓の武器レベルに補正を持つクラスだが、ほかの武器をカラクリ人形に使わせることもできるワケで。組み合わせ次第では絡繰で曲芸的な戦闘を見れるのではなかろうか。決めゼリフは戦いのアートでお願いしたい。
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「5000ゴールド、200ゴールド、鋼の剣、ランクDの騎馬の腕輪がふたつ。全問正解、ですか。フフフ……わたくしの鑑定眼もなかなか悪くないですわね」
「どっちかって〜と選別耳じゃねぇの? 昔から俺と比べて器用なのは知ってたけど、ますます磨きがかかってるというかなんというか。ま、斥候としては頼りになるけどな〜」
「あら、お兄様にはお兄様の良いところがあるではありませんか。実家の金銭を博打に使い込んで失踪した、とお父様が発表したあとも……お兄様のことを信じている方々はそれなりにいらっしゃいますよ?」
「へぇ〜? 俺ってばそんな扱いになってんの。ま、別にいいけどね。どのみち皇国に戻る予定はないし。俺のことを信じてくれてるって人たちには悪いけどさ」
「おや、そうですか。お母様からの手紙にはそれほどのことが?」
「まぁね。我らが国主様が女の肉と丸めた毛布の区別もつかないほど熱心に励んでいることや、奥方様が美形の人形を侍らせて夜な夜な楽しそうに笑っていることなんかが書かれていたよ。実に賑やかで結構なことだろう?」
「それはそれは。どうやらお父様の
「まったくだ。……おふくろでも、オヤジたちの暴走は止められなかったか。だからこそお前を英雄王の街に逃がしたんだろうけど」
「きな臭いのは皇国だけではありませんよ、お兄様。どの国も非公式に神竜の塔を我先に登頂しようと動いているようです。最上層に眠ると言われている神竜の力を手に入れ、世界の支配者になるために」
「やれやれ。困った大人が多くて大変だな? だいたい、それぞれの国に残されている伝承ごとに最上層がどこまであるのかバラバラだってのに、本当にあるかどうかもわからない力を求めて他人に迷惑かけてんじゃねぇっつーの」
「表立って戦争にならないだけでも良しとするべきでしょう。ところで、わたくしたちのご主人様の目的についてはお兄様は?」
「さぁ? 俺たちは奴隷だぜ? ご主人様に塔を登るからついてこいと言われればついていく、それだけのことだろ。ただ、イロイロと普通じゃないのは確かだな。未知の領域であるハズの第30階層のことも知っているような素振りだったし」
「ソードマスターの流星剣を正面から受け止めた時点で普通でないことはわたくしにも理解できましたよ? 残念ながら、お世話になっていたキャラバンの皆様は銀の剣が折れたことばかりを気にしていられたようですが」
微笑んでいるようで目元が全く笑っていない。当然だ、あのソードマスターが司祭の後ろに回り込む動きなど自分たちには全く見えていなかった。だが会話の内容からして司祭は消えたようにしか見えなかったソードマスターの姿を捉えていたらしい。
それだけでも充分過ぎるほどデタラメだというのに、奥義スキルである流星剣を最後まで受け切ったのだ。なんかもう趣味で司祭の格好をしているだけの勇者とかなんじゃないかと奴隷同士で話題になったほどだ。残念ながら高レベルの杖を使える時点で魔法職が確定なのでこの予測は外れているのだが。
司祭の正体についてはともかく。あれだけの攻防を見たあとでも勝てるつもりでいること、お手本のような捨てゼリフを言える度胸には呆れるしかない。
「初めからあのような集団ではなかったそうですが。実績と自信がよろしくない方向へと作用してしまったのでしょう。本当に、本当にご主人様にはご迷惑をおかけしてしまい……でも特に叱責などが無かったということはわたくしは歓迎されているということですので問題などありませんね」
「おふくろといいお前といい、切り替え早いな」
「そうでなければ自ら隷属の紋章を受け入れる、などというイカれた判断はできませんわ。皇国に帰ることはできない、乗り込んでくるであろう身内であった集団から身を守るため、なるべく信用できる実力者に取り入る。なにか、問題でも?」
「強いて言うならウチの一族がトラブル持ち込んだときにご主人様になんて説明したものか、ってところが一番問題だな」