百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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第17階層は魔道士見てからМシールド余裕でした。

 この配置は烈火の剣、いや封印の剣だったか? 初期配置のすぐ隣に門があって、その先に敵の拠点があるパターン。

 

 ゲームならアーマーナイトかお助けパラディンのマーカス老で蓋をするだけで簡単に対処できたが、この世界ではひとりのユニットで出入り口を塞ぐのはもちろん不可能。ドカドカと敵がなだれ込んできて自軍拠点まで乗り込まれて撤退すら難しくなるようでは困る。

 なのでここは山岳地帯を大きく迂回する正攻法で攻略するしかない。しかも、万が一に備えて砦にもある程度の戦力を残しておく必要がある。なんだか聖戦の系譜でもプレイしている気分だ。城の守りは大事だけど、そもそも城の間近まで攻め込まれている時点でリセットしたほうが早いレベルで損害が出てるっていうね。

 

 

「よし。アーリィ、命令だ。いますぐ双子になって拠点の守備と前線の偵察を同時に行え」

 

「なにが『よし』やねん。隷属の紋章からもどう命令を処理すればいいのか迷っとるの伝わってきとるわ。紋章困らすなや。こんなん大陸中探してもたぶん司祭さんしかおらんで」

 

 なんと、紋章にも意思があるのか。つまり対話を続ければいずれノリとボケとツッコミという概念を理解してくれる可能性が微粒子レベルで存在するということか? 隷属の紋章も鍛えれば臨機応変な対応をしてくれるようになるかもしれない、と。

 いつもありがとう隷属の紋章。キミがいてくれるお陰で俺も今日まで頑張ってこれたよ。これからもヨロシク頼む。それはそれとしていろいろ試してみたいから、今度ガチの犯罪奴隷を仕入れたらマスタード控えめのハムレタスサンドになれって命令してみるね。

 

 さて、下らないこと考えてないで真面目に攻略を始めるとするか。アイテム一覧に抱えた大量の紋章石からも一斉に「やめてあげて」というタンガンデンパが届いてきたし。

 

「ディナダン、パーシバル、ユーウェイン。お前たちに拠点の防衛を任せる。いずれ村に帰ったときに、自警団として活動するための訓練だと思えばいい。アーリィ、お前も万が一に備えてここに残れ。お目付け役も兼ねてな」

 

「りょ〜かい。敵さんが攻めてきたときに前に出たがらないように、やね」

 

「えー、オレも攻略に参加したかったなー」

 

「バカね、司祭様の話聞いてなかったの? 自警団になったときのための練習だって」

 

「ユーウェイン、お前にはフリーズの杖とスリープの杖を渡しておこう。これで対処できないと判断したら3人だけで撤退しろ」

 

「うぅ……ライブの杖が無いのは不安だけど、逃げてもいいならギリギリまで頑張ってみますぅ……」

 

 そうだね、回復が無いのは俺も不安だよ。でも仕方ないじゃない? 専用の腕輪がないと複数のアイテムを持ち歩けないんだもの。

 

 例えばアストラならばメイン武器として鋼の槍を手に持って、サブ武器として鋼の剣を腰に下げ、補助系アクセサリーとして鋼の盾を構えて、アイテム枠として傷薬を持ち歩くのが限界なんだよ。もちろん鋼の剣を使おうとすれば槍を手放さなければならない。

 これらを解消するためにはアドバンス作品にてフェレ侯爵家の御用商人でお馴染みマリナスおじさんの腕輪を与えなければならない。ゲームでもそれを装備すればマイユニット以外でも輸送品としてアイテムを取り出せた。たぶん、この世界でも似たような運用が可能だろう。

 

 問題は……中身が危険物だらけってことで。同人ゲームではフレーバーでしかなかった原作由来の名称が、この世界では珍妙奇天烈に絡み合って愉快なことになっているのが大問題なのだ。

 あるよ? 神器の在庫いっぱい。エリクサー症候群の周回プレイヤー舐めんな、新品同様のヤツがゴロゴロしとるわ。ファイアーエムブレム屈指の公式チート、死者蘇生が可能なオームの杖なんか5本もあるぞ。女性専用で杖の武器レベルSを要求してくるが、一本につき5人まで復活できるからな? 

 

 

 ま……どうにもならないアイテム事情を嘆いても仕方ない。残された選択肢で攻略するしかあるまいて。

 

「できることなら私はあまり経験値を奪いたくはないのだが、こうも弓兵や魔道士が多くてはワガママも言っていられんな。私がサイレスの杖を使えば味方も巻き込まれる、となれば……アーチャーはスリープで眠らせるとして、デルムッド」

 

「お任せあれ! 光よ、我らに魔力の加護を! マジック・シールドッ!」

 

 ロイヤルナイトはステータスの最大値がほかの上級職と比べると低めに設定されている。その代わりとしてふたつの強みが、高い魔法防御と杖の効果を隣接ユニット全てに与える専用スキルがある。

 レストによるステータス異常の治療も、この通りMシールドによる魔法防御強化も、もちろんライブの杖も──巫女専用の祓串が範囲回復になっているので有り難みは薄いが──複数のユニットに効果あり。もちろんゲームと違い『隣接』などというわかりやすい区切りがあるはずもなく、周囲の味方全員が補助の対象となる、よな? うん、なってるなってる。

 

「これでスリープやバーサクも拡散できれば戦術の幅も広がるのだろうか? 仮にそれが実現できたとしても、本質が力押しのゴリラでしかない私には思いつかないがね」

 

「自分も大差ありませんよ、司祭殿。杖の技術は怠らず磨いているつもりではありますが、槍働きのほうがどうにも性に合っています。まったく、若者たちの手本になるべき大人がこれでは困ったものですな! だっはっは!」

 

「なに、我々にできないことは次の世代が上手くやってくれる。人類の歴史とはそういうものだ。さて、準備はいいな? 狙うのは弓と魔法のみ、仕留めたらそのままの勢いで森に逃げ込む。──突撃!」

 

 行くぞコラァァァァッ!!

 

 スリープ、スリープ、スリープッ!! だから多いんだよ敵ユニットがッ! 5人一組の小隊が左右にふたつとか、もうジャンルが違うんだよッ! リアルタイムストラテジーで弓兵ラッシュが強力なことは体験済みなんだよこっちはッ! 

 

 ゲームならペガサスナイトで先手を取るだけだが、こうも数を揃えられると近寄らせることなんてリスク高すぎてできるワケがない。

 ひとつしかないアイオテの盾を頼ったごり押しに慣れてしまえば、必ず後悔することになるだろう。

 

 スリープの杖なら数を揃えるのもそこまで苦労はしない。と、いうか闇市を冷やかしているときに道具屋のお姉さんが言っていた。こういう補助系の杖は表通りから在庫が流れてくるので仕入れも簡単なんだとか。

 あれかなー、バフやデバフに頼る探索者は実力が足りてないってバカにされる的なヤツ? 命よりプライドを優先する考え方は俺には一生理解できないよ。クリアした階層を何度も繰り返してレベル上げしたっていいじゃない、人間だもの。

 

 おっと、余計なこと考えてるヒマあったら走らねば。

 

 ミニマップ確認! 森の中に赤い反応無し! さすがに派手に動いたから迫ってくる集団はいるようだ。木々が邪魔で視認できないためステータスを確認することはできないが、一方的に位置を把握できるだけでも充分。

 

「右手前方、3、1、1、2、4。後続無し。アンリ、ルカ」

 

「承知。いやぁ、あるじ殿の千里眼があればアサシンの真似事に興じるのも楽でよいですなぁ」

 

「護身のために始めた暗器の扱いが、こんな形で役に立つとは。やはり学びに無駄などない、ということですか」

 

 細かい指示を出すまでもなく、アストラが槍を盾に叩きつけて金属音を響かせる。そこにリカールとアルバがナイフを投げつければ、幻影兵たちの意識から奇襲組が抜け出すのも簡単だ。

 あとはグラナと馬を降りたデルムッドが正面から殴りかかるだけ。鉄の武器の威力は油断できないが、まだまだ敵のステータスそのものは低いので回復のタイミングさえ遅れないよう気をつければ追い込まれることもない。

 

「ふむ……最初の突撃で逃がしたアーチャーと魔道士が混乱から立ち直ったか? 一瞬だが幻影兵の中に杖を構えた僧侶らしき姿があったな。できれば合流されるまえに始末したいところだが」

 

 前に出るか? 暗黒司祭のステータスならどうにでもなる。技と速さは限界突破無しだと上限が中級職と同じ20しかないが、守備力と魔法防御はどちらも30以上あるので余裕で受けられるだろう。なんせ最大HPも80あるし。

 

「なりませぬぞ、あるじ殿」

 

「まだなにも言っていないが」

 

「それでも気配でわかりますとも。デルムッド殿、私にMシールドを頼みますれば。……組織の長が身を盾にするのは、それは大衆にとっては美談かもしれませぬが部下にとっては屈辱でありましょう」

 

「デルムッド、私にも頼む。司祭様、アンリの意見に私も賛成だ。完全に打つ手立てがないのであれば仕方ないが、まだまだ余力はあるだろう? ライブの杖どころか傷薬すら使っていないのに切り札を出しているようでは第30階層攻略など望めまい」

 

「む……。そう言われては反論できんな。わかった、ここはお前たちの判断を信じることにしよう」

 

 

 ふぅ、いかんいかん。ソロで攻略するリスクを避けるために奴隷を集めているのに、面倒になったからと自分で解決しようとしてどうするのだ俺よ。それはもう経験値がどうこう以前の問題だよ。

 これなら俺が拠点の砦に残っていたほうがマシだったかもしれん。我慢が足りてないんだよ、我慢が。そう、俺はこの世界ではロプト教団の自称最高司祭なのだから、人を使うことを覚えなければいけないのだ。部下を信じて仕事を任せられない上司はダメだって話は定番だし。

 

 と、いうか。

 

 奴隷のステータスは視認してなくても確認できるんだから、拠点でリブローかリザーブの杖を構えてるだけでもいいんじゃね? レスキューの杖はタイミングが難しいが、合図を決めておけば瀕死の味方を引き寄せればいいのであって。

 なんなら絶対命中のスキルを装備してサンダーストームを使えば援護射撃だって完璧に味方を巻き込むなやっぱりダメだわ回復に専念しよう。暗黒司祭としての強みを全く活かせてないな? でも累積レベル高すぎてレベル上げ大変だからクラスチェンジしたくないし……。

 

 真面目な話、一度ぐらい闇魔法マフーの威力を確かめたいな。威力っていうか、敵の攻撃を封じる特殊効果を試したい。いざというときに『こうかは いまひとつの ようだ ……』とかなったら困るし。

 もっとも? 仮にもこの世界では神器扱いのマフーを使わざるを得ない状況なんてそうそう訪れるもんじゃないだろうが。残念だな〜言ってみたいな〜。勿体ぶったような、厨二病全開で「魂の冒涜・マフーの慟哭をその身に刻むがよい」みたいなセリフとかさ〜。

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