百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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「ところでキミたちの得意な魔法は?」

「トロン♪」「マフー♡」「トロン♪」

「真ん中だ! やっちゃえマリクッ!」

「スターライト・エクスプロージョンッ!」

「しまったぁぁぁぁッ!?」


作者のマフーのイメージはコレで上書きされてます。


☆ミニゲーム☆闇魔法マフーでアサシンをへし折り仲間にしてくださいと言わせよう♪

 一度に複数のタスクをこなせるのは基本的に天才である。

 

 実際どうなのかは知らん。俺は別に脳科学者じゃないし、そっち方面の知識に興味津々ということもない。大事なのは、自分が凡人であることを自覚して仕事の優先順位を間違えないことだ。

 アサシンが何か話しかけてきているようだが、そんなものは全て無視していい。本物の暗殺者を相手に駆け引きなんかできるワケがないし、そもそもヤツから引き出したい情報など存在しない。

 

 なぜ、俺を狙っているのか? 

 

 誰が、俺を狙っているのか? 

 

 とりあえず、その辺りの事情なんてどうでもいい。いま俺が気にするべきことはマフーの特殊効果がしっかりと発動するのか、それだけである。ウサギとカメの競争でカメが昼寝をするウサギをガン無視して愚直にゴールを目指したように、俺も余計なことは考えずにマフーの力を試すことだけに集中しなければならないのだ。

 いやよくないけどね? だって命狙われてんだよ? だけど一度にいろんなこと考えると俺の頭のキャパシティが限界だから。己が賢くないことを自覚できる、それだけで人間は一歩前に進むことができるって昔の偉い人も言ってた気がする。ゲームデータ引き継いだぐらいで自分を天才だと思えるほど俺も若くないんだよ。闇市の子どもたちにお兄さんとか呼ばれるあたり童顔なのかもしれないが。角度的にフードの中見られてるんだよね、たぶん。

 

 相手は動かない。警戒してる? 

 

 なら、こちらから歩み寄るとしようじゃないか。恐怖のあまりパンツの中に暗黒竜がワガハイしそうになっているけど、どうせ第50階層過ぎたあたりから幻影兵も上級職だらけになるんだ。比較的安全なうちに恐怖を克服──は慢心するからダメだな。恐怖に晒されることになれなければ。

 

 ここはどこかの紳士の父君のお言葉に従おう。逆に考えるんだ、どうせなにもできないなら、なにも難しいことを考えなくてもいいやと。そう、これは戦闘ではない。闇魔法の実験なのだ。戦闘だと思うから怖いのであって、実験だと思えばワクワクするだけだろう? 

 

 アレは敵。いや、的。

 

 だから怖いけど大丈夫ダヨー。

 

 

 ────それでは、闇を解放するとしよう。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

 アサシンに与えられた任務。

 

 逃亡者の始末。

 

 知らなくても良いことを知った者、それだけであれば許された。女神教団は間違いを許す懐の深い組織なのだから。どのような失敗を犯そうとも悔い改める心があれば、名前を覚える必要の無い末端の信徒でも簡単には見捨てない。

 だが、裏切る者や逃げ出す者には容赦しない。特に、部外者はもちろん教団内部でも限られた役目を担う者しか知るべきではない()()()()に関わってしまった者は。悔い改める機会を自ら放棄した者は女神教団の信徒に相応しくないのだから、処分されることになっても仕方の無いことなのだ。

 

 故にこれは、最後の慈悲。迷える子羊をソラネルへと導くための。

 

 もちろんアサシンの男にとってはどうでもいい話である。人間も、動物も、モンスターでさえも、死ねば肉の塊となって腐り朽ち果てるだけのことでしかない。だから今回の任務もいつも通り、ターゲットを殺害して報酬を受け取るだけの簡単なお仕事になるはずだった。

 

 

(いまのは、闇魔法ミィル? 司祭と名乗ってはいるけれど、その正体はダークマージかソーサラーってトコかしら? こんな離れた位置にも闇を生み出せるなんて、大したものね。でも、どうやってアタシの気配に気づいたのかはわからないけど、戦い慣れはしていないようだし……アタシの敵じゃないわ)

 

 貧民街に潜伏し、闇市に足を伸ばしてすぐロプト教団を名乗る組織の存在を知った。具体的な活動などについてはデタラメに情報が溢れていて整理できなかったが、木を隠すなら森の中という言葉もあるように、逃げ出した僧侶の受け皿として探る価値はある。

 最高司祭を名乗る人間は簡単に見付かった。それこそ、迷い猫の捜索のほうがずっと難易度が高いと思ってしまうほどにアッサリと。しかも追跡してみればターゲットである若い僧侶もそこにいるというオマケまで付いてきた。

 

 これで今回の任務はこれで完遂したも同然と思い込み、手始めに今後女神教団が本格的に英雄王の街で布教活動を開始するさいに邪魔になりそうなロプト教団の頭もついでに潰しておこうと考え……お粗末な引っ掛けで見事に釣り出されてしまった。

 

 

 だが、問題ない。

 

 姿を見られたところで、始末すれば良いだけのこと。

 

 

「とりあえず、ゴメンなさいとだけ言っておくわ。アナタに恨みは無いのだけれど、これでも仕事に関してはプロフェッショナルのつもりなの。10の成果を求められたら、最低でも12の結果を出すぐらいしないとアタシたちの業界もキビシイのよ」

 

 

 一歩。

 

 無造作。

 

 近寄ってくる司祭はやはり素人の歩き方。奴隷を従えて神竜の塔を攻略しているのであれば当然か。それで自分が強くなっていると勘違いしている……と、油断するには先程のシェイバーの威力や毒々しい色のミィルは無視できない。

 

 

 二歩。

 

 無防備。

 

 会話による揺さぶりは諦める。雰囲気から司祭が無駄話に興じるつもりはないことが伝わってくる。実力が不足している者ほど口数が多いものだが。一応、この情況に真面目に対応するつもりはあるらしい。

 

 

 三歩。

 

 射程距離。

 

 ここでアサシンの男の中にイタズラ心が生まれる。いわゆる意趣返しというモノを、わざとフードを掠めるギリギリの軌道でナイフを投擲して驚かしてやろう……と。

 

 

 四歩。

 

 投擲。

 

 狙い通り、司祭が身体を大袈裟に傾けて銀の暗器を見送った。実に素直で結構。下っ端の、アサシンにクラスチェンジできていない盗賊でも余裕で仕留められるほど隙だらけ。自分の速さであれば、一瞬で間合いを詰めて喉を斬り裂くことも容易いこと。

 

 

 そして。

 

 

 

 

「────は?」

 

 

 踏み出した瞬間、己の手足が闇と混ざり合いドロドロに融解した。

 

 

 

 

「が──ッ!? なに、を……ッ!?」

 

 四肢の感覚を失ったアサシンが地面に勢い良く倒れた。混乱しつつも暗器を握っているはずの手に視線を動かすが、先ほどの光景は幻覚の類いだったのか手足の見た目に変化はない。

 

 危険。

 

 いますぐ離脱しなければ。

 

 狩りは失敗したのだと瞬時に思考を切り替え逃走を試みて……ここでようやく、四肢の自由が奪われていることを理解する。やはり見た目に変化は無く、痛みもなにも感じないが、指一本すら動かすことができない。

 

「ふむ、面白い。いま、私の意識は完全に投擲されたナイフへ向けられていた。だというのに、お前はこうして地面に倒れ伏すことになっている。一体なにが起きたのか、お前の体験にも興味はあるが……私は望んだ結果さえ確認できればそれでいい」

 

「まっ……て……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談でも誇張でもなく、私にとってお前たちが最大の奥の手であり切り札なんだ。だから死霊たちよ、ちゃんと手加減も頼むぞ? ──マフー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 呟くように、囁くようになんらかの魔法を発動された。瞬間、周囲の景色が消え去り完全な闇の中に閉じ込められる。

 

 そして。

 

 

「〜〜〜〜ッ!?!?」

 

 

 痛みでは、ない。

 

 それは焼けるような熱でもなければ、凍えるような寒さでもない。HPが減少する、肉体が傷付く、精神が摩耗するといった表現も当てはまらない。バーサクやスリープといった状態異常を付与する杖の効果など比較しようとすら思えない。

 

 ただ……喰われている。

 

 なにかが、理解できないなにかが、理解してはいけないナニモノかが自分の生命を、魂そのものをエサとして貪り喰い荒らしている。アリの群れに叩き落された哀れな蛾のように、アサシンとしての経験もレベルもステータスもなにもかもが無意味であると嘲笑うかのように。

 

 

 闇から解放されるまで、時間にしてほんの数秒。

 

 だがそんなことはアサシンにとってなんの救いにもならない。

 

 

「期待通り、いや期待以上だな。問答無用で命を奪うこと無く、手加減も可能であるのは実に喜ばしい。なによりも、闇魔法マフーを知る者としては──()()()()()()()()()()()()

 

 

 この司祭を戦いの素人だと判断したのは正しく、そして大きな間違いであった。

 

 アレが、あんなものが、戦いなどと呼べるワケがない。この司祭にとって敵対者とは玩具でしかなく、命とは奪い合うものではなく一方的に弄ぶものでしかないのだから、戦闘の経験値など得られなくて当然なのだ。

 許しを請わなければ、全力で命乞いをしなければ。アサシンとして大勢の命を奪ってきたからこそ、自分が奪われる側になってもそれを受け入れなければならない、そんな矜持は一瞬で砕け散った。手加減されたからこそ今回は解放されたが、もしもこの司祭に殺されることになればもう一度あの地獄を味わうことになるだろう。

 

 世界中の人間から無様であると嗤われてもいい。許しを得られる可能性が砂粒ほどでもあるのなら、大喜びで歌いながら腐敗したネズミの死骸だって美味しく食べて見せる。

 

 

 そんなアサシンの悲痛な覚悟は、次の司祭の言葉で無用のものとなった。

 

 

「神竜の塔の攻略を思いの外、難儀していてな。優秀な人材は喉から手が出るほど欲しい。お前のような人間であれば遠慮なくコレを使えて助かるよ。まぁ、攻略さえ真面目に参加するのであればそれ以外は煩く言わん。ただ闇市の住人たちとは仲良くするようにな」

 

 

 真紅に輝く紋章石。それが視界に入った瞬間、アサシンの心は狂喜で満たされた。

 

 本来であれば、敗北して隷属の紋章を刻まれるなど暗殺者として屈辱でしかないのかもしれない。だが、いまのアサシンにとっては全身に紋章の支配が広がる感覚は慈愛に満ちた女神の抱擁に等しいもの。

 続けて、ライブかリライブかはわからないが癒やしの魔力によりHPが満たされていくのを感じることで、アサシンは自分がこの司祭にとって身内として扱われていることを確信する。これでもう二度とあの魔法が自分に向けられることはない、こんなに幸せなことがあるだろうか? 

 

 

 同時に。今後、己の新しい飼い主と敵対することになる女神教団の人間たちに対して哀れみを覚えた。自分は必要とされたから助かったが、今後の敵対者も同じとは限らない。司祭が率いるロプト教団とやらの戦力が充実するにつれて、人材の価値は相対的に下がり続けるのだから。

 

 

 このタイミングで敗北し奴隷となれた幸運を噛み締めながら、アサシンはそのまま意識を落とすのであった。




死霊たち「新鮮なゴハン♪ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ」

司祭さま「マフーのエフェクトすげー!」


なお今後増えるであろう犠牲者の主観。
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