百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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もしも相手が光属性の武器や魔法を持ち出してきた場合、司祭様はほかの仲間の後ろへと逃げるしかありません。
あとはせいぜい太陽と流星と月光あたりをセットして銀の剣で殴るか、マフー以外の闇魔法を使うしかないでしょう。

全力のブリュンヒルデで敵軍をまとめて樹海で飲み込んだところにメティオを落とすぐらいならできます。


第19階層に挑む者へ新たな仲間(追放された姫)との縁を授けましょう。

「んだぁ〜ッ!? スカーレルさんの動きヤバすぎんだろマジで……。やっぱ本物のアサシンは動きがヤバくてヤベェわ」

 

「あら、ディナダンちゃんの動きも悪くなかったわよ? 経験の差はどうしようもないとして、思い切りの良さはキライじゃないしソードナイトとしてはハナマルね」

 

 

 さすがはアサシン、剣の扱いもお手の物か。暗殺者としてあらゆる武器での戦い方を熟知していると得意気に教えてくれただけのことはある。隷属の紋章の実験も兼ねて、今度列島諸国のほうから運ばれてきたという高さ90cmぐらいのタヌキの置物を使った暗殺方法とか開発させてみようかな。

 

 スカーレルと名付けたアサシンとの出会いをざっくり説明したときは呆れたような反応をされたが、なんだかんだで皆が受け入れてくれた。自分を殺そうとした人間を、過去はもちろん本人の事情やら目的やらを一切聞かずに従えるとかどうかしているとは言われたが。

 反論の余地がない真っ当な意見なのは、それはそう。だがスカーレルが個人的な感情ではなく仕事の一環として俺を殺そうとしたのなら、詳しい事情を聞く意味はない。何故ならそれを命じた大元の連中を締め上げなければ“次”が派遣されるだけでなにも解決しないからだ。そしてそんなマネをすれば確実になんかのストーリーが始まるので放置以外の選択肢など無い。

 

 それに、やっぱいろんなクラスと模擬戦したほうが塔の攻略にも役立つからスカーレルは必要な人材だったんだよね。それでもディナダン、パーシバル、ユーウェインの3人は葛藤があったみたいだけど、

 

「相手が卑怯な手段を使ったせいで負けた。それで守るべき村人が殺されてしまった。でも自分は正々堂々戦ったのだからなにも悪くない。戦士としての名誉を守るためなのだから、犠牲者が出たのも仕方ない」

 

 と、如何にも演技と煽りを楽しんでますという雰囲気を隠さずノリノリで語って聞かせたら目付きが変化した。3人でどんな話し合いをしたのか、スカーレルをどんな形で受け入れたのかまでは知らないけど。そこを聞き出すのは野暮というものだろう。

 

 

 と。

 

 どうにか和解できたということで、ホームで奴隷たちがさまざまな組み合わせで模擬戦に励んでいるところをぼんやり眺めていたワケなんだが。

 

 

「お邪魔しますよ司祭様。いやぁ、本日も良い日和でございますなぁ。こんな日には上玉の若い女奴隷を驚きの安値で仕入れたくなりませんか? いまなら美人のドラゴンマスターも端金でお付けしますよ」

 

「そんな、お前……仲介人としての矜持を店に忘れてきたのか? そこまで雑な営業をするほど厄介な奴隷とは──いや、言うな。なにも言わなくていい。聞きたくない。もうアストラと少女のところだけ王族貴族の社交界みたいな空気になっているし」

 

「はて? いったいなんのことでしょうか? 浅学の身である手前には、いったい司祭様がなにを仰っているのかサッパリでして……いやはや、勉強不足で大変申し訳無いとしか」

 

 わぁ、驚きの白々しさ! 

 

「そういえば、わたくしが皇国から逃げ出す前に共和国で権力に目が眩んだ貴族がクーデターを……失礼、解放軍が圧政から国民を解放するという大義名分を掲げて皇国の大商会から武器や食料や大陸条約で違法とされているような品々を大量に購入していましたね」

 

「あぁ、それならアタシも知ってるわよ。女神教だゲフンゲフン司祭サマに雇われる前の、アタシの古巣の上司も関係しているもの。前の国王は教団に対して協力的ではなかったらしくてね〜。神聖な儀式に使うための新鮮な供物の提供を拒んだとかで」

 

 世間話のテーマで国家レベルの機密をチョイスするのやめてくんない? あとその供物ってたぶん某ノースティリスとかでペットにされたり養殖されたりするタイプの二足歩行のヤツだろ。おっとイカン、余計なこと考えたせいで畑から妹型クリーチャーが収穫されたら世界観が壊れてしまうぞ。

 

「戦力はどれだけあっても困らないし、レベル上げも私は苦にならないから構わないが……竜騎士の女、お前は納得しているのか? 仲介人のことだ、私が奴隷しか手元に置かないことも聞かされているのだろう?」

 

「問題ない。むしろ、隷属の紋章を刻まれることは姫様にとって生き残るために必要なことだろう。そして、姫様のお側で戦えるのであればわたしも身分や肩書になど価値は求めない」

 

 姫様って言っちゃったよコイツ。

 

「貴公はなんらかの事情があって仲間ではなく奴隷を集めてはいるが、人間性は下手な貴族より真っ当であると聞いている。しかし、貴公にそのつもりがなくても“男に奴隷として飼われている”という事実が姫様を危険から遠ざけてくれるのだ」

 

「血の色と価値の話か。確かにそれは私には無関係だし興味もない。よかろう、そういうことなら購入してやる。もちろんステータスも奪わない。騎竜も用意しよう。武器の好みはあるか?」

 

「わたしのステータスだ。確認してくれ」

 

 ほうほう。武器レベルは槍と斧がB、それ以外はEか。騎乗もCあるが、飛行がBなのにわざわざ馬を使わせる意味はないな。しかし、いくらレベル1の成り立てドラゴンマスターとはいえ能力が少し……これアレだ、ドラゴンナイトのレベル10でゴールドプルフ使ったな? 原作のマスタープルフも場合によってはレベル20を待たずに使うことはあるが。

 

「なんとも生粋の竜騎士らしい。私としては助かるが。空をペガサスナイト単騎に任せているせいで、ヤツの負担も大きいことだろう。……少々、戦闘狂の気があるが人間は休息を必要とする生き物だからな」

 

「司祭である貴公には理解し難いことだろうが、空の騎士とはそういう部分がある。陸の騎士を軽んじるつもりはないが、空には自由があるからな。わたしは幼い頃から飛竜の腕輪を持たされていたが、そうでなければ落下の恐怖を誤魔化すために戦いに酔うことも必要だろう」

 

 脳内麻薬に頼らなければ空なんか飛んでられない、と。そりゃパラシュートも無しにあんな高いところ飛ばされればそんなものか。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

 白い髭を蓄えたロイヤルナイトが銀の槍を構えてニヤリと笑う。

 

 直感で自分に勝ち目はないと悟りながら、ロプト教団の自称最高司祭からブラダマンテという新しい名を与えられた若きドラゴンマスターもまた銀の槍を構えた。

 

 部屋の準備や闇市の案内など生活に必要なことについて案内してもらう間に時間帯は夕暮れとなり、マルフィーサと名を変えた主人はアーリィというペガサスナイトとルカという斥候に夕食の準備も兼ねて料理を学んでいる最中だ。

 本来ならば主人の側で作業をサポートをしつつ自分も家事を学ぶつもりであった。しかし似たような境遇であるらしいデルムッドに「気持ちは理解できるが、それではマルフィーサ様のためにならんぞ」と外に連れ出されていまに至る。

 

 

 お互いに歩行。

 

 年歴によるスタミナ差は……常に神竜の塔で戦っているのであれば衰える暇などあるはずなく、そもそも持久戦を許してくれるほど甘い相手ではないだろう。

 

 ならば。

 

 

「フゥゥゥゥ…………ッ!!」

 

「相変わらず獣の如く荒々しき闘気だ。共和国の騎士とはそういうものだと知っているが、さすが伝承の英雄“武王ヘクトル”の紋章石を国宝とするだけのことはある。その若さでも嘗ての好敵手たちと比べて見劣りせんな」

 

「それが共和国に生まれた戦士が目指すスタイルですので。神器“天雷の斧アルマーズ”に恥じぬよう、己の攻撃を雷鳴の如き一撃まで高めることが」

 

「結構。どれ、そちらの好きなタイミングでかかってこい」

 

 侮られている。

 

 が、それもまた良し。事実として同じ上級職でありながら互角の勝負になどならないと理解しているし、命の危険無く敗北を得られるのならそれは成長の糧として望むところ。

 

 

 

 

「ありがとうございました。やはり真面目に鍛錬を積み重ねている武人との手合わせは勉強になります」

 

「はっはっは! 武人とはこそばゆいな! いまのワシなんぞ道楽隠居と大きく違わんだろうに。戦力さえ整えば、ホームの留守番役でも構わんと思っておるぐらいだ」

 

「御冗談を。デルムッド様ほどの御方が共和国にひとりでも多くいたのならばと思うぐらいです」

 

「ふん……どうにも胡散臭い話は帝国にいたときもワシの耳まで届いていたが。戦局が個人の力で決定するものではないとはいえ、雷神将とまで呼ばれた奴がワイングラスよりも重い物を持てないような貴族共の起こす反乱で遅れを取るとは信じられんな」

 

「帝国の火神将と呼ばれた貴方にそこまで評価していただけるのであれば父も本望でしょう。しかし、事実です。どうにか生き延びた兵士の報告によれば、戦力が集結した砦だけを狙いすましたかのように地震が2度も発生し、反乱軍と交戦するどころではなかったと」

 

「自然現象か。普通に敗北するよりも最悪だな。反乱を起こした貴族共が天の意志であると勝ち誇る姿が容易に想像できる」

 

「いえ、それが……」

 

「なんだ?」

 

「どうやら自然現象ではなく、なんらかの魔法ではないかという話がありまして」

 

「魔法?」

 

「はい。なんでも地震が発生する直前、反乱軍の指揮官らしき貴族が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」

 

「それは……確かに怪しいな。冷静に考えれば軍隊が戦闘不能になるほどの規模の揺れが短期間どころではなく連続で、それも限られた範囲だけで発生するなど怪しいを通り越して確実にその宝玉とやらが原因だとしか考えられんわ」

 

「はい。だからこそ父も、そして国王も、姫様をわたしに託して反乱軍に降伏したのでしょう。もしも王都でその宝玉を使われれば民衆の犠牲は避けられません。父も祖父もわたしだけでなく部下や若い騎士たちに言い聞かせていました。騎士の本懐は華々しく戦うことではなく、泥を啜ることになっても無辜の民を護ることである……と」

 

「奇遇だな、つい先日も似たような話を聞いたばかりだ。帝国のバカどもに爪の垢を煎じて飲めと言いたい。それで、こうして逃げてきたということは、司祭殿から解放された暁には祖国の奪還を?」

 

「わかりません。どのような大義名分を掲げたところで巻き込まれた民衆が苦しむことになるのは事実です。国は取り戻したが国民が痩せ細り国家の維持が困難になった、では意味がない」

 

「だろうな。ま、どのみちいまは司祭殿の命令に従い神竜の塔の攻略に集中するしかあるまい。もしかしたら未知の神器を新たに発見して、その緑の宝玉とやらに対抗する手段を得られるかもしれんぞ?」

 

「いえ、その……仮にそんなものが本当に発見されたら、余計に混乱が起きそうなので遠慮したいのですが……」

 

「なんじゃ、ノリが悪いの〜。ワシなんて司祭殿にグラディウスに匹敵する槍の神器が見つかったら是非とも使わせてくれとお願いしてあるぞ? そしたらレベル上げて最上級職のホーリーナイトにクラスチェンジして槍の武器レベルがSになったらと約束して下さったというのに」

 

「フフッ……司祭殿といい、デルムッド様といい、冗談を嗜む方々に保護していただけたのは姫様にとっても幸運だったようですね」

 

「冗談? なんのことだ?」

 

「え?」

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