百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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第2→3階層攻略準備。

 戦って。

 

 倒して。

 

 経験値とドロップアイテムが美味しいねぇ! 

 

 

 この辺りの仕様はサクッと決まったらしい。限られたリソースを振り分けて攻略するのも面白いが、やはりゲームはプレイヤーそれぞれの楽しみ方でクリアして欲しいという願いから稼ぎ要素もしっかり用意してくれたのだとか。俺はどっちも好きだけどね。

 ともかく。幻影兵のドロップアイテムを丁寧に集めながら攻略を進めれば、ゲームデータから引き継いだ物資も簡単には枯渇しないだろう。1日1階クリアでも3ヶ月はかかるし、たぶん上の階層は何度も進軍と撤退を繰り返すことになるから1年や2年では帰れないぐらいの覚悟も必要だろう。

 

 日本での俺の扱いが不安になるところだが、そこはナーガ様とロプトウス様に聞いてみるしかない。もとの世界に、もとの時間まで巻き戻して帰してもらえますかと。ダメだったら取り敢えず泣こう、涙が尽き果てて心が乾いてしまうまで。しくしく。

 

 んで。

 

 アストラが槍、リカールが弓、アルバくんが魔導書……ではなく魔法の指輪、グラナは斧、アンリが剣という編成で攻略してみた感想として。

 

 杖が足りねぇ。

 

 俺ひとりじゃフォローするのにも限界がある。味方全体を回復できるリザーブの杖はタップリあるが、万が一を考えれば終盤の攻略に備えて一本でも多く残しておきたい。

 やはり基本となるライブの杖はもちろん、杖レベルを専門に上げて遠距離回復のリブローの杖が使える手駒は絶対に欲しいよな……。できれば幻影兵に騎兵の各種ナイト系や飛行タイプのペガサスナイトが混ざるまでには確保したいところだが。

 

 

 などとホームで考え込んでいると。

 

 

「どうも、司祭様。追加の奴隷は如何でございますか?」

 

「どうやら嗅覚に自信があるようだな。それとも盗賊かアサシンでも雇って私の見張りでもさせているのか」

 

「まさか。今回は活きの良い犯罪奴隷を仕入れましてね、前回お勉強させていただいた件について司祭様よりお慈悲を賜われればと……」

 

「犯罪奴隷か。しかし、それにしては」

 

 

「だからッ! オレたちはなにも悪いことなんかしてねぇよッ! ただ荷物運びを手伝っただけなんだって言ってるだろッ!」

 

「そうよッ! そしたら突然衛兵に囲まれて……とにかく、アタシたちはなにも知らないのッ! 捕まえるならアタシたちに荷物を渡した男たちを捕まえてよッ!」

 

「うぅ……どうしてこんなことに……」

 

 

「ふぅむ? 詳しい事情はわからぬが、3人とも好んで悪事を働くようには見えませぬなぁ」

 

「なんとな〜くオチは読めたけどな。夢見て英雄王の街にやってきた少年少女が悪い大人に騙されて身ぐるみ剥がれたってワケだ」

 

 

「事情は理解した。だが、それでも私のところへ連れてきた理由はなんだ?」

 

「簡単なことですよ司祭様。貴方であれば、こうした奴隷を高く買い取っていただけると確信しているからでございます。手前は懐事情が豊かなお客様からはしっかりと頂戴する主義でして」

 

「そこまで堂々と言い切るのは私の好みに合っているな。いいだろう、このまま知らぬ存ぜぬでは寝覚めも悪いし、奴隷が入り用だったのも事実だ」

 

 とはいえ、一応確認はしておこう。奴隷になればスキル枠のひとつが『隷属の紋章』というもので埋まることになる。ゲームではマイナス要素というか……このスキルを持つユニットは不要になったときに売却することができた。

 この世界では購入者に絶対服従を強制的に誓わせるためのスキルとなっていて、隷属の紋章が刻まれた人間は右眼だけが赤くなるので誰からみても“アイツは奴隷だ”とわかってしまう。どれぐらいか、は不明だが差別は確実にあるだろう。

 

「お前たち」

 

『『…………ッ!?』』

 

「私の奴隷になるなら神竜の塔攻略に参加してもらう。もちろん生活と装備は面倒見てやるし、代わりとなる戦力が補充できれば解放してやってもいい。嫌ならそれまでだ」

 

 確認(脅迫)ですがなにか? 

 

「……本当に、助けてくれんのかよ」

 

「値段を考えればお前たちは割に合わん。同情が無ければもっと戦力として期待できる奴隷を買いたいぐらいだ。だから、お前たちが拒むならあとは私の知ったことではない」

 

「クソ……チクショウッ! わかった、じゃなくてわかりました。お世話に、なります。お前らもそれでいいよな?」

 

「そうね、もともと神竜の塔には挑むつもりだったし……貴族なんかに頭を下げるよりはずっといいわ」

 

「ボクはもう助けてくれるなら誰でもいいよぅ……」

 

「一応、司祭様に紹介するからと乱暴な扱いはしないよう気を付けていたんですがねぇ。これであと1日でも長く鎖に繋がれていたらどうなっていたことやら、でございますなぁ。ヒッヒッヒ……ッ!」

 

 田舎から都会に出てきてアッという間に前科持ち、しかしそれが切っ掛けでチート能力者の戦力に組み込まれる。運が良いのか悪いのか、判断に困るところだな。

 

 

 と。

 

 いうワケで翌日。

 

 

「なぁ司祭様ッ! パーシバルよりオレのほうが幻影兵を多く倒したよなッ!?」

 

「ハァッ? アンタなに言ってんの? ねぇ司祭様、もちろんディナダンよりアタシのほうが活躍したってわかってるわよね!」

 

「ふたりとも、もう少しじっとしててよぉ。……ライブ」

 

 うーん、なんてわかりやすいトリオ編成。とりあえず修道士見習いだったということで杖を選んだユーウェインくんが不憫キャラなのは確定的に明らかである。

 そしてディナダン少年はソードナイト経由のパラディンを目標に、パーシバル少女はアクスナイト経由でグレートナイトを目標に掲げて神竜の塔へ挑みに来たのだとか。

 

 女性キャラが3人いて全員物理アタッカーなのは別にいい。ペガサスナイト三姉妹のこともあるし。でも2人が斧被りってどうなのよ。別にカテゴリーそのものは嫌いじゃないし、烈火の剣のヘクトルも風花雪月のエーデルガルトも強かったけどさ。

 はい? 聖戦の系譜の聖斧スワンチカですか? スイマセンこの同人ゲームには神剣バルムンクも風魔法フォルセティも登場しちゃうんですよ。なんで斧に関係ない武器の名前を出したのかって、いや別に深い意味なんて全然ないんですけどね? 

 

 ま……タフな前衛が増えるのはいいことだ。元気なのがふたり増えたことで弓使いのリカールがフォローで大変なことになってるけど。ゲームと違って敵も味方もリアルタイムで自由に動くからなぁ。早めにクラスチェンジさせて、強い弓を渡してやる必要があるかも。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

「と、いうことで第3階層に挑む前にレベル5になったリカールにはクラスチェンジをしてもらう。ブロンズプルフはすでに用意してある、自由に選べ。もっとも、メイン武器は引き続き弓になるがな」

 

「あるじ殿〜、私もクラスチェンジしとうございますれば〜」

 

「プルフの在庫はいくらでもあるから心配するな。どのみち第5階層に挑む前に全員基本職にクラスチェンジしてもらうことになる」

 

 

(ブロンズプルフならそこまで貴重品じゃない、が……使い捨てを前提にする奴隷に使う代物じゃあないよな。となると、我らがご主人様はマジで俺っちたちを戦力として塔を攻略するつもりか。いや〜、こりゃビックリするほど大当たり引いたんじゃね〜の?)

 

 大玉のリンゴほどの大きさの装飾された球体、その水晶のように透き通った本体の中に揺らめいているクラスチェンジした自分の姿を見ながらリカールは考える。

 それはもちろんこれから兵士、戦士、修道士のいずれにクラスチェンジするのかということもそうだが──自分たちの所有者である司祭のことについても同時に頭を回転させていた。

 

 杖と魔導の指輪を使えることからクラスが司祭なのは事実。

 

 間違いなく信仰心など持ち合わせていないだろうが、比較的善性側の人間。

 

 そして……潤沢な物資をパパッと取り出しているところを見るに、アイテムの持ち運びに関するスキル“輸送神マリナスの紋章”を持っている。

 

 それはいいのだが。

 

(一度、幻影兵に使って見せた風の魔法ウィンド……とんでもない火力だったな。親父が雇っていた賢者のギガウィンドさえ比べ物にならなかった。どんだけ魔力が高い? ならレベルは? それだけの実力者のことを俺っちが見逃してただと? そもそもの話、攻略するってんならどの探索者クランだって大金を積んでも欲しがるだろうに、わざわざ闇市で奴隷を仕入れて神竜の塔へ……ハハッ、下手に探りを入れたら大火傷じゃ済まされないかもな)

 

 小さいころから、それこそ()()()()()()でさえも火遊びを止められなかった。そして油断した結果こうして奴隷の身分にまで転げ落ちることになった。

 どれだけ自信があっても失敗するときは失敗するもので、そこから反省し学ぶことができるのが人間という生き物なのだが、反省したときに“もうコリゴリだ”と思うか“次は上手くやってやる”と思うかは人それぞれである。

 

 

「アンタ、なんか余計なコト考えてるでしょ?」

 

「おっと、こりゃ失礼。まさかグラナにそれを指摘されるとは」

 

「やめてよね、せっかく無責任で気楽な立場になれたんだから。次があるかもわからないんだし、私は司祭様が何者だろうと構わないと思ってるの。わざわざ面倒事起こすようなマネしたら脳天叩き割るわよ」

 

「おぉ〜怖い怖い。……冗談じゃなくて本気で言ってるところがマジで怖ぇな。なんだよ、そんなに責任って言葉が嫌いかい? 生きてりゃ誰だって大なり小なり背負わなきゃならんモノだろうに」

 

「そうね、その考えには私も同意するわ。でも世の中には勝手に押し付けて勝手に嫉妬して勝手に取り上げて責任だけを全部ブン投げて来るクソみたいな連中もいるでしょう?」

 

「うーん、否定できないねぇ」

 

「少なくとも奴隷なら命令に従うだけでいいもの。ま、これからどんな汚れ仕事をさせられるかなんてわからないけれど……とりあえず、司祭は司祭でも女神教の関係者じゃなさそうってだけでも私には充分よ」

 

 

「……あ〜らら。俺っちもあんまり人のこと言えないけど、アストラといいグラナといい、なんだか愉快な人間が集まってるっぽいな? いいねぇ、退屈する心配がいらないってのはなによりだ」




なんか第三者視点が支援会話風味になるな……?
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