百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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自分は優しき毒蛇にクラスチェンジしてましたね……。


蛮族の群れに流星持ちのソードマスターがひとり混ざってるだけの特徴のない第20階層マップ。

 今回の俺の仕事は……拠点で待機ッ! 以上ッ! 

 

 いやぁ〜、マップ中央の大きな湖がキラキラと太陽の光を……太陽? うん、今さらそこ悩むところじゃねぇわ。光を反射しててちょっと幻想的な雰囲気。俺はそれをのんびり眺めているだけ。

 

 強いて言うなら正面から斧を担いで襲ってくる戦士の幻影兵に気を取られているうちに、右手方向の森の先にある砦から奇襲されないか警戒することぐらいか? 

 ま、それもスカーレルがすでに偵察を終えているんだけど。出入り口となる魔法陣が中にあり、制圧すれば次回の攻略から使えるかもしれないって。ゲームでも戦力が揃ってると複数個所の拠点から出撃させることできたっけなぁ。

 

 

「騎馬の腕輪を装備させたナイト系が10人もいれば制圧に向かわせる意味もあるのだろうが。そこにひとりかふたり、パラディンでもいればよほどの事態でも起きない限り全滅することもあるまい」

 

「実際、第15階層を突破している探索者クランは20人を越えるメンバーを抱えているようなところばかりらしいですからな。それだけの戦力を確保できるのであれば、そのような手段も選べることでしょう。

 我らロプト教団は司祭殿の個人資産で運用されているだけで事実上は素寒貧としか言えません。少数精鋭であるが故にレベルアップは順調ですが、それも与えられた装備による恩恵と言われればその通り。制圧したところで宝の持ち腐れとまでは言いませんが、現時点での有効活用はあまり」

 

「それを選べるだけの大所帯なら、それこそ戦力を分けて安定して攻略できる階層で鍛えればいいものを。ますます表通りのギルドに登録している連中の考えが私には理解できないな。実利だけで人は生きることができる……とまでは思っていないし、知名度が無ければ戦力を整えることさえ難儀するだろうことは私にもわかる」

 

「まぁ〜その辺りは自分は少しは理解できますが司祭殿には難しいことでしょうなぁ。強敵に挑み続けねば、確実に楽に勝てると確信している階層に挑んだ結果腰抜けとして罵られるというのは、それはもう探索者にとって不名誉でありましょう」

 

「つまり奴隷という不名誉の極みにいるお前たちが相手なら、私は遠慮なく稼ぐための行動を選べるというワケだ」

 

「初めから名誉ではなく金銭等を目的としていると公言するのであれば別でしょう。それはそれで上位の探索者クランからは見下されることになりますが」

 

「やはり連中には連中なりの苦労があって、ならば部外者が偉そうに口出しするほうが間違っているか。関与するつもりがないのにケチをつけるのは褒められた行為ではないと、改めて肝に銘じておくとしよう。さて、戦いのほうはどうなっているか──」

 

 

 護衛役のデルムッド以外は全員が前方に見える砦の攻略に向けて前進している。1度目の戦士の群れとの衝突は終わり、ダメージもユーウェインと新メンバーのマルフィーサがライブの杖で治療済み。

 ブラダマンテと違い先に隷属の紋章を刻まれていたためステータスは剥奪されていたが、もともと杖や魔法の指輪を使っていたということで武器レベルの上昇は早いようだ。

 

 修道士のレベルが上がったらロッドナイトからのストラテジストでも目指してもらうか? 機動力のある回復役はなんぼいてもいい。理由は不明だが乗馬そのものは嗜んでいたようだし。理由はまったくもって不明だが。きっと牧場の娘とかそんな感じの生まれなんだと思い込んでおこう。

 

「スカーレルと違い、ブラダマンテの経験値の入りはドラゴンマスターにしては多いな。やはりレベル10でクラスチェンジしていたか」

 

「神竜の塔と違い、外の戦場では気軽に撤退することもできませんからなぁ。クラスチェンジできるなら、プルフを使わせてもらえるなら、早めにステータスの底上げをしなければ生き残れんのですよ」

 

「わかった、臨機応変に対応しよう。どうせゴールドプルフもプラチナプルフも在庫はたっぷりある。ステータス強化用のアイテムもな。下積みがあればステータスに振り回されることもあるまい」

 

「それは部下として喜ばしい配慮でありますな。どちらも貴重品であるという部分だけが気がかりですが」

 

「せっかく育てた手駒をロストすることに比べれば、塔の攻略中に何度でも入手する機会のある道具に惜しむほどの価値はない」

 

「そういう意味合いで申し上げたワケではないのですがなぁ。まぁ、ホーリーナイトにクラスチェンジさせていただけるという約束を守っていただけるものだと前向きに受け止めておきましょう」

 

 生き残るためにクラスチェンジは早めに、と言っておきながら腑に落ちないような返答をするのはなんでなんだぜ? やはりアレか、使い捨て前提の奴隷を育てるぐらいなら最初から表通りのギルドで仲間を集めればいいのにって疑問かな? 

 こればかりはマジでどうにもならんのよなぁ。願い事の奪い合いを予防するためにも、ゲーム知識を利用するような場面で余計な詮索をさせないためにも、命令には忠実に……というか有無を言わさず黙らせることができる隷属の紋章はとても好都合で便利なシステムなのだ。

 

 ま、クラスチェンジを渋るようなら命令すればいいだけだし。クラスチェンジ先は選ばせてやるが、拒否権など与えん。何故なら俺が主で奴隷がお前だからだ! 

 

 そんなことより。

 

「さて……そろそろ出てくる頃合いか」

 

「これまでの見掛け倒しの上級職とは違うとのことですが」

 

「もしも細切れにされそうならメガレスキューの出番だな」

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

「ブラダ姐さん、アレ、ホンマに放置でええの?」

 

「そういう命令だからな。流星のスキルを持つソードマスター、確かに厄介だが相手は単体だ。わたしたちは勝負の邪魔になる雑兵どもを片付けることに集中するぞ」

 

 己に課せられた役目に集中するべきだと言いながらも、ブラダマンテの視線はソードマスターへと向けられていた。

 

 仲間たちの話を聞いた限りでは、ここまでにも何度か上級職とは交戦したものの苦戦らしい苦戦はしなかったという。外側だけを取り繕った、幻影の名に相応しい見せかけの敵ばかりであったと。それはそれとしてドラゴンナイトの波状攻撃は普通に厳しかったらしいが。

 しかし今回のソードマスターは事情が違う。リカールが集めてきた情報によれば、この第20階層で最も探索者たちを屠っているのがあのソードマスターだという。ドラゴンマスターである自分なら空に逃げることも可能だが、それでも鉄の大剣で繰り出される流星剣は実に厄介だと言わざるを得ない。

 

「正攻法とされているのは正面を囮で封じ込めて迂回、だったか。それをあえて正面から食い破ろうというのだから、司祭殿もなかなか豪胆だな。前に出過ぎないよう本拠地に押し留めるべしと提案があったときには驚きもしたが」

 

「司祭さん、たぶんレベルもステータスもかなり高いやろ? ちゃんと聞いたことないから詳しくは知らんけど。だから前に出ても簡単には負けへんやろなとは思うけど……まぁ、前衛としてのメンツは丸潰れもいいとこやな」

 

「新参者のわたしが口出すようなことではないのだろうが、わたしも姫様の後ろに隠れながら戦うようにと命じられたら感情が爆発してしまうかもしれんな」

 

 

 軽く言葉を交わしつつ、空を任されたふたりが敵後方の撹乱のために急降下を始めたころ。

 

 

「リカールさん」

 

「おぅ、どうしたアルバ」

 

「僕、改めて思いました。あのとき、流星剣を正面から受け止めた司祭様っていろいろおかしいんだなって」

 

「奇遇だな、俺っちも同じこと考えたよ」

 

 完全に動きを捕まえたと思い放ったシェイバーの魔法を避けられ、最高まで集中力を注ぎ込んだキラーボウの矢を弾かれた。多少ステータスが強化されていようとも、ここまで順調に攻略を進めてきた自分たちならソードマスターのひとりぐらい……と意気込んでいたリカールとアルバは揃って渋い表情をしている。

 正面から攻撃を受け止め続けているアストラにも疲れの色が見え始めた。鉄の重装の腕輪を渡され、アーマーナイトらしさそのままの頑強な鎧を具現化させ身に纏っているが、それも度重なる鉄の大剣の衝撃によりすっかり傷だらけになっていた。それでもクラスとしてはアストラは傭兵であり、技と速さが育っているだけ致命傷は避けられているはずなのだが。

 

 ちなみにアンリはキルソードを、グラナは鋼の斧を真っ二つにされて予備の鉄の剣を装備している。まさかの武器破壊、そりゃ犠牲者も大勢出るわとリカールは頭を抱えたい気分であった。

 

「参ったねぇ。仮にソードマスターをどうにか仕留めても、結局は撤退せにゃならんかもな。正直、俺っちはここから砦をみっつも攻略する気力なんてないっての」

 

「正面にある砦を制圧すれば次回はそこに転送ができて、ソードマスターも出現しなくなる、でしたか。犠牲が出るのを覚悟で制圧を優先する気持ちも少しだけわかっちゃいますね……」

 

 チラリ、と。高い機動力を活かして後方撹乱に参加しているディナダンとパーシバルを見る。空を逃げることができるアーリィとブラダマンテはともかく、意地でもソードマスターを倒さなければ騎兵のふたりは逃げられない。我らがご主人たる自称最高司祭ならレスキューで助けてくれるのかもしれないが、それを最初から頼るのであれば本拠地に押し込めた意味がない。

 

 残された頼みの綱は──。

 

 

 

 

「フリーズッ!!」

 

「ゴッ……ガァッ!?」

 

 

 

 

「やった……やっと成功したァァァァッ!! 皆さんッ! あとは頼みましたマジで本当にもうボクは限界ですもう2本もフリーズの杖使い切ってるんですこれ以上はもう集中力が保たないしそもそも命中したことが奇跡みたいなものでとにかくこれで倒してくださぁぁぁぁいッ!!」

 

「ユーウェイン、良くやってくれたな! このまま押し通るッ!! 雄ォォォォッ!!」

 

「ゴギャッ!?」

 

 さすがのアストラもフラストレーションがたっぷり溜まっていたのか、鋼の槍を突き出すのではなく鋼の盾を構えて全力の体当たり。強化されているとはいえ防御力まではそれほど高くないのか、直撃を受けたソードマスターは馬車に衝突されたかのように派手に舞い上がった。

 

 ここまで決定的なチャンスを黙って見逃すワケがない。

 

 その日、ロプト教団のメンバーはふたつめの砦を攻略したところで精神力の限界を迎えてしまい撤退することになるが、勝利よりも大切なモノを手にすることができた。

 やはり強敵は数の暴力で囲んで叩くのが大正義であると。もしも今後、戦士の誇りは正々堂々とした戦いで〜などと偉そうに説教してくる者がいれば、彼らはニコリと笑いながら中指を天に向けることだろう。




初見はアイラとフィンでしたね。ラクチェとの親子会話があったことも含めて、いまだに覚えています。 

なんのこっちゃかわからない人は、ぜひ聖戦の系譜をプレイしてみてください。そしてカップリング沼にハマれ。
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