百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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職場に保護者がやってくることのほうが当事者にとっては第23階層の攻略より難易度高いのかもしれない。

 アンナさんが神竜の塔で手に入るドロップアイテムに興味があるということでホームに招待することに。客商売は信用が大事だし闇市の怪しい教団を名乗る人間の本拠地に出入りするのはどうなの? と思うじゃん。でもアンナさんが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。プロがそう言うなら素人が心配するだけ時間の無駄だ。

 

 まぁ、いろいろ見せた結果誰がどう見ても大丈夫でない表情で大変なことになってるんですけどね! 

 

 

 最上級職にクラスチェンジできるプラチナプルフや、ソードバスターやアクスバスターのように特殊なスキルが付与されているアイテムを見せたときは興味津々で楽しそうだった。

 

 サンダーストームやエクスカリバーの指輪、原作より強化され離れた位置の味方を呼び寄せつつ回復とバフを付与できる七難即滅の祓串、高威力だが反動があるデビルソードとデビルアクスを見せたあたりから表情が曇り始めた。

 

 神器ではないが要求武器レベルがSランクの剣であるリガルブレイドに触れたことで頭を抱えてテーブルに沈んでしまった。

 

 

 ちなみにリガルブレイドを含むSランクの普通の武器はクラス制限が無いので誰でも使える。剣の場合はソードマスターのレベルを20まで上げる、紋章石を使う、アクセサリーを装備するのいずれかの手段で『剣の極意』というスキルをセットする必要があるけど。

 さすがに性能は神器には劣るが、ゲームでは普通に武器屋で修理できるので人間の理解を超越した武器ではないはず。ただ店売りの品と比較して品質というか、性能がイカれているだけで。むしろ理解できる程度の異常性だからアンナさんもメンタルに特効くらってるのかもしれないが。

 

 嗚呼、しかしこれは。こういう美味しい反応をされるとラノベ的ムーブをしてみたくなるのも仕方ないよね……? 

 

「ふむ、どうやらリガルブレイド程度ではお眼鏡に適わなかったようだな。仕方ない、わざわざホームまで来てくれた相手をガッカリさせて帰すワケにもいかないし、ここはとっておきの──」

 

「待って、止めて。これはそういうリアクションじゃないから。というか貴方わかっててやってるわよね? フードの奥でニヤニヤ笑ってる気配がバッチリ伝わってきてるんだけれど? 私が品物の取り扱いに困ってる姿がそんなに面白いのかしら?」

 

「ハハッ、めっちゃウケる」

 

「張っ倒すわよ? ……でも、司祭さんの言っていた“市場に流す前に相談したい”って言葉の意味は理解したわ。この武器殺し系のスキル効果があるバスター装備まではともかく、こっちのデビルソードとかデビルアクスなんて武器が出回ったら大変なことになるかもしれないもの」

 

「ライブやリブローの援護を受けながら丁寧に戦えば強力な武器なんだがな、戦闘中の興奮と昂揚感の中で冷静さを保つのは難しいだろう。私のように隷属の紋章を利用するなら命令で下がらせることも不可能ではないかもしれないが」

 

「調子に乗って前に出て、取り囲まれてブンブン振り回しているウチに生命力を使い果たす姿が目に浮かぶわ。そして……それ以上にこのリガルブレイドって剣は、それはもう人気が集中するんじゃないかしら。ハッキリ言って、コレを巡って死人が出るわよ?」

 

「他人に自慢するために蒐集家が高く買い取ってくれるかとも思ったが、そもそも表に出すのが危険だったか。大真面目に感謝するよ、アンナさん。市場を混乱させるのはもちろん、英雄王の街そのものを大騒ぎさせるのは本意ではない」

 

「それはなにより、なんだけど……ねぇ、司祭さん。知り合いをひとり紹介したいのだけど、いいかしら? それなりの規模の商会を辞めて探索者としてこの街にやってくる予定なんだけど、どちらの意味でも信頼できる人間なの。きっと相談にも乗ってくれるわ。少なくとも興味を示してくれるってことだけは保証するわよ」

 

 む……。

 

 クリア報酬のことを考えると支配下にいない人間はあまり関わらせたくないんだけどな。アンナさんは降って湧いたような奇跡に頼るような商売を望まないだろうと思っているから遠慮なく頼れるが、果たしてその相手が信用できるかどうかは別だ。ミニマップ効果で敵意の有無はわかっても、その人物の内面まで見抜けるほどの人生経験は俺には無いからな。

 

「まずは話してみて、だ。アンナさんにとって信用、いや信頼できる人間だからといって、私が同じようにその人物を評価できるとは限らんからな」

 

「あら、案外慎重ね。でもそれぐらいのほうが秘密を共有するのには安心できるわ。先に言っておくけど、向こうも探索者クランとして戦力を必要としているはずよ。司祭さんが望む形とは別になっちゃうかもしれないけど、きっと悪くない取引になると思うの」

 

 

 

 

 と。

 

 そんな感じで翌日。

 

 

「あんたがアンナの言ってた司祭さんか。あーしが『幸運の銀の百舌鳥』を率いるラキアだ。バカ息子とアホ娘が世話になっちまったようだね。感謝するよ」

 

「ロプト教団の自称最高司祭だ。御子息と御息女にはずいぶん助けられたよ。ふたりがいなければ、特に情報収集や売買などの部分で困り果てていたことだろう」

 

 選ばれたのは、リカールとルカの母親でした。

 

 自分の子どもが奴隷にされていることをもう少し気にしても全然許されると思うよ? 村人3人組といい、ハードル低くない? ゲーム知識はあっても常識がない俺にはマジでふたりは重要な役割り果たしてくれてるから返せと言われても返す気はなかったけどさ。

 

「アンナから面白い取引があるって言われて来たが、まさかこんな形で再会できるとはね。なぁ、テメェらもあーしに会えて嬉しいよなァ?」

 

 スッ……と兄妹そろって目を逸らしたあたりに親子の絆の強さを感じちゃうね。あれは嫌っている反応じゃなく、良好だからこそ気まずいし気恥ずかしいって雰囲気だ。

 

「ふむ。そうだな、取引の話は後日でいい。せっかくの親子の再会なんだ、今日のところはゆっくり3人で食事でもするといい。さきほどからアンナさんも『よりによって奴隷の中に身内がいたなんてウソでしょ……?』と言いたそうな様子で天を仰いでいるからな」

 

「そりゃありがたい。イロイロと積もる話もあるし、司祭さんには悪いがガキどもは借りていくよ。肝心のアンナも『良かれと思って仲介したのに刃傷沙汰になるんじゃ!?』とでも叫びそうなほど顔を青くしていたし、今日のところはお開きだな」

 

「まったくもってその通りですけど!? むしろ、なんでそんなに和やかに会話できてるの!? え、これ私の感覚がおかしいの? なんかふたりそろって私をイジるのを楽しんでない?」

 

「ハハッ、おもろ」

「ハハッ、おもろ」

 

「張っ倒すわよッ!?」

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

 表通りのギルドに新しく登録された探索者クラン『幸運の銀の百舌鳥』は良くも悪くも注目されていた。

 

 充実した人材と装備を整えるだけの資金がありながら、上流や中流エリアではなく下級エリアの物件を複数購入してホームとしたことから探索者たちに()()()()の人間がやってきたと好き勝手に囁かれているのだ。

 もっとも、クランリーダーであるラキアはそんなことはお構い無しといった様子である。本人の性格的なものもそうだが、実際にワケありなのだから仕方ないとカラカラ笑い飛ばしている。もちろん直接喧嘩を売ってくるようなら高値で買い取るつもりでいるが、幸いにして現段階ではそこまで大きな揉め事は起きていない。

 

 そして現在。そのワケありの部分を話すために実の息子と娘であるふたりをホームに招いていた。

 

「ふーん……? 改めて、なかなか元気そうじゃないか。リカールと、ルカ、ね。あーしがくれてやった名前は暫くあの司祭さんに預けておくとして。テメェら、ちょっとだけイイ話とすこぶる厄介な話のどっちから聞きたい?」

 

「女傑扱いされてるおふくろが厄介なんて言うような話とか、聞きたくないんだけどねぇ」

 

「なら先にイイ話からだな。貪欲な金の蛇とはキッチリ縁を切ってきた。まぁ息子と娘がふたりしてトラブル起こして消えちまったとなれば、あとはクソ会長はもちろんほかの嫁どもや跡取り候補たちからも見向きもされないからねぇ。抜け出してくるのは簡単なモンだったよ」

 

「つまりこれからは、わたくしたちとお母様は神竜の塔を巡るライバルとなるワケですね。と、いっても……闇市側と表通り側では入り口が真反対ですので、帰り道にすれ違うことすらもありませんが」

 

「同じ階層に同時に転移しても別々の同じ風景の戦場に飛ばされる、だったか? 獲物の奪い合いが起きないってのは平和的で結構だなァ!」

 

「いやいやいや。なんだかんだ商会を支えようとしてくれてたおふくろが逃げてくるとか充分ヤバい話でしょ! そんなに……もう諦めるしかないレベルで親父たちやらかしてるワケ?」

 

「女神教団が人目を避けて人間を連れてくるようになった。ガチガチに監視と警備で固められた施設に次々と送り込まれていくが出ては来ない。不気味なほど人間のような造形で高性能なオートマータが徐々に生産されるようになった。負傷してHPが減ったときに制御するための腕輪の紋章が剥がれるのではなくドス黒い血が流れる。絡繰師のスキルがなくても操れるとたちまち秘密の人気商品になった。以上!」

 

「あらまぁ、それはそれは……。なんだか、とってもイケナイ想像が膨らんでしまいますわね」

 

「ウッソだろ……それもうアウトだって想定しなきゃ逆に失礼なレベルでダメな状況じゃねーの。そりゃ、そんな有り様のとっからおふくろや一部の人たちだけでも逃げ出せたのはイイ話扱いになるわ」

 

「幹部の誰かが追手を放ってきたけどな。あーしもそれなりに実戦経験のある絡繰師だ、机上の空論でしか戦闘を知らないインテリなんかに負けはしなかったワケだがよォ? そのあやち〜オートマータが強ェのなんの。どんだけ攻撃を食らわしても1分もしないうちにすっかり傷が消えちまうときたもんだ」

 

「リザイアを使われた、ってのとは違うんだよな? 自己再生ならノスフェラトゥやスケルトンが地面から復活してくるのとは意味が違うだろうし、遠くからリブロー使ってた雰囲気でもなかったんだろ?」

 

「ヒントが隠れてるとしたら、クソ会長が得意げになって『ついに命を支配する力を手に入れた。今後は生命の神秘すら我が商会の商品となる』とか言いながら()()()()()()()()()()()()()()()を撫で回してたコトだろうなァ」

 

「もう答え出てるじゃん、それ。それで……おふくろはどうするつもりで探索者クランなんか立ち上げたんだ?」

 

「いまのところはな〜んも。あーしは真っ当な商売しか知らねぇんだ、下衆どもの理屈や行儀作法がわからねぇのに下手に正義感出しても返り討ちにされるのがオチだろ? 仕方ねぇから自分の身と、動かせる部下の安全を確保するだけで精一杯だったんだよ」

 

「あら? ですがお母様、お父様はこの英雄王の街に新たな販路を切り開くと仰っていたと思うのですが」

 

「そ。つまり本格的に連中がここへ乗り込んでくるまでに手掛かりを掴めなきゃヤベェってコト。だいたいワケわかんねぇ代物は神竜の塔が関わってると相場が決まってるからな、ここはひとつ、あーし自ら挑戦してみっかと思ってよ!

 だから、テメェらが順調に攻略を進めてるっつーロプト教団とかいうクランで働いてるのは好都合なんだわ。だからしばらくそのまま奴隷やっててくれよ。下手にあーしのクランで抱えるよりは安全だろうし、あの司祭さんと協力できれば攻略も捗るかもしんねぇだろ?」

 

「実の母親から奴隷頑張れって応援される日がくるとは思わなかったな……」

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