百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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デュランダルのことはもちろん知ってます。ガンダムターネに出てくる通常の3倍の速度で演説する全裸の議長のことですね。

主人公が伝説の剣を装備してラスボスに挑むと容赦なくバーベキューにされるのは絶妙なバランス調整だと思います。笑える的な意味で。


次が面倒な強敵マップだと知っていれば手前の第24階層でレベル上げしたくなるのがプレイヤーの性。

 ゲームデータの持ち込みと、クリア済みのエリアの周回によりプルフの在庫はそれなりにある。

 いや、まぁ。ほぼ9割以上が俺の私物ではあるんだが、レベル上限からの再クラスチェンジ育成を躊躇う必要がない程度に余裕があるのは確かだ。

 

 とはいえ、わざわざステータス上限にも成長率にも武器レベルにまでも制限のある中級職でレベル1戻りからの再育成を繰り返すことはない。サクサクッとレベル10になったメンバーからどんどん上級職にクラスチェンジしてしまうほうが稼ぎの効率も上がるというもの。

 さすがに獲得できる経験値にはマイナス補正が働いてしまうが、ステータスではなく本人の戦闘経験値も蓄積されると思えば誤差みたいなもんだろう。

 

 そうした意味でも今回の城攻めマップは実に好都合。転移の魔法陣は城壁の内側からスタート、玉座を目指して屋内を進むだけなので幻影兵が襲ってくる方向はほぼほぼ限られている。アーチャー系の射撃や飛行ユニットの強襲を警戒しなくていいだけでも気分が違う。

 もちろんこちらも騎馬や天馬などの腕輪の使用が制限されてしまうことになるが、急いで攻略する理由もなければ撤退を渋る理由もない。みんな仲良く自分に合った盾を構えてファランクスごっこに興じるのもまた趣きがあってよろしい。実際、通路で弓を射たれても盾を構えて守備力を頼りに身構えれば思いの外余裕で前進できたしな。

 

 

「外は晴天ということで視界も良好。早々に敵から発見されたことで、むしろ遠慮することなく進軍できているので状況的には悪くない。が、今後のことを考えるなら静かに潜入して戦うことも覚える必要があるだろうな。質で勝っていても数の不利からの包囲網は危険でしかない」

 

「自分も若い頃に何度か苦い思いをしたことがあります。どんな強者も波状攻撃の前には苦戦を強いられるのが戦というものでしょう。なんなら、今後はこちらがアサシンや忍者の潜伏に警戒をしなければなりませんな」

 

 本日も俺はもちろんお留守番。最初に制圧した、魔法陣に近い位置にあった建物の中であれこれと今後の攻略について考えるのがお仕事みたいな感じになってしまった。金銀の幻影兵以外ではボスユニットですら経験値が1しか入らないから仕方ないことではあるが。

 

「ブラダマンテを中心に空の警戒は強化されたが、地上で気配を探るとなるとスカーレルの負担が大きくなるのがな。ルカも絡繰師のスキルでオートマータを使った囮役をできるのは助かるものの、索敵まではこなせない。……別に私の周囲に護衛は気にしなくても構わんのだがね。いまのところは」

 

「ですが今後も同じとはいきませんでしょう? なら、余裕のあるうちに本陣の守りという感覚を養わねばいざというときに困ります。今回は攻略よりもレベル上げを優先するとのことで自分が護衛役を引き受けましたが、これから先を考えるなら──司祭殿は情報の欠落した第30階層よりも先のことも見据えておられるのでしょう?」

 

「無論だ。私の目指す場所は第100階層の先、神々の楽園ソラネルにあるのだからな。躓くのも停滞するのも撤退してホームで不貞寝するのも一向に構わんが、攻略を諦めるという選択肢だけは無い」

 

 この世界での生活が楽しくないかと問われれば一瞬くらいは迷うかもしれないが、この世界に残りたいかと問われれば一瞬も迷うことなくNОと言える。自分でもそんなに? と驚くほど日本に帰りたい。

 高校生ぐらいのときはあんなにファンタジー世界で無双する妄想とかを楽しんでいたというのに、実際に転移してみるとやっぱり日本が一番だって実感しちゃったよね。パソコンで動画や配信をラジオ代わりに垂れ流してメシ食って、そのままゲームとかダラダラやる生活のなんと尊いことか。

 

 もちろん不安はある。本当に帰ることができるのか、帰れたとして時間のズレは修正してもらえるのか、考えただけで頭が痛くなりそうだ。

 

 たぶん、大丈夫だとは思うんだけど。原作を含めてゲームでも異界やら異世界やらの設定は何度も出てきているし、時間についても未来からやってきた息子が気の遠くなるほど過去から孫娘を連れて会いに来ることになる妹系オカン姫が存在するという実績があるし。

 

「それに、幻影兵の強さも頭を抱えるほど人間離れしているワケでもない。丁寧にレベルさえ上げていれば、私のように特別な道具を用意しなくても互角以上に戦えるのだからな」

 

「国家同士の戦争や、外でのモンスターの討伐に比べれば相手を選べるだけマシでしょう。アイテム等もドロップしますし、手に入ったプルフを上の人間に横取りされる心配も──第三者にバレる前に使ってしまえば問題ありません」

 

「ガラの悪い連中に絡まれた駆け出しの探索者クランは苦労しそうだな。ちょうどウチにも被害者が3名ほどいるが。レベルが上がってステータスさえ育てばまた変わってくるのかもしれない……いや」

 

 

 なんというか、よく考えたらおかしくね? 

 

 

 累積レベルで経験値がマイナスされるとはいえ、一度や二度ならクラス補正に比べれば大した数値じゃない。それに最低保証として必ずステータスがふたつは上昇するんだから、基本職を2回繰り返すだけでもトータルで……いくらだ? レベル1から10で9回、プラス18。2倍で36。最大HP、力、魔力、技、速さ、幸運、守備力、魔防に平均的に振り分けられたとしてプラス4の余り4。そこに中級職にクラスチェンジすれば兵種ボーナスが追加されて──うん、充分強いよな? 

 

 なんならステータスの剥奪がなければそのへんを歩いている一般人だって2とか3とかあるんだし、基本職にクラスチェンジするまでのレベルアップでもステータスは加算されるワケで。そこそこ入手機会もあってちょっとお高い程度のプルフを使うだけで安定するのに使わない理由なくね? 

 俺にとってはゲームの世界でも、この世界を生きる人々にとっては現実なんだから、生存確率を高めるために利用できるものはなんでも利用してなにが悪い! ぐらい言っても許されるよな? だってセーブもリセットも無しのマジで命はひとつしかないんだから。死んでから偉業を讃えて豪華絢爛な墓を建設されたところで自分では見ることもできないってのに。

 

 

 ふむ? 

 

 

「デルムッド、ひとつ気になることがあるのだが──」

 

 かくかくしかじか。

 

「命を落とす危険を承知で頑なにレベル上げを拒む理由、ですか。そう言われますと……確かに不自然でありますな。困難に挑むことを誉れとする気概は理解できますが、そのような視点で疑問を抱いたことは自分もありません。いや、以前に偉そうなことを言っておきながらその実視野が狭かっただけとはお恥ずかしい」

 

「気にするな。視野の狭さなら私も負けていない。こんなことを質問しているものの、表通りの探索者クランの考えが理解できないだけでなく理解したいとも思っていないからな。ただ、無謀な挑戦で死にたがる連中の頭の中がどんな愉快なことになっているのか気になっただけのことだ」

 

 

「案外、誰も上を目指していないのかもしれないわよ?」

 

 

「スカーレル、戻ったか。幻影兵の様子は?」

 

「アタシの出番は無さそうね。レア物の幻影兵も今回は見つからなかったし、余程のことがあっても死人は出ないわよ。で、さっきのお話のことなんだけど……たぶんね、表通りのギルドに登録してる探索者たちは上の階層に挑めない理由を欲しがっているんじゃないかしら?」

 

「もう少し噛み砕いてくれ。私はお前ほど賢い生き物ではないんだ」

 

「みんな30フロアに挑戦したくないの。だって情報がないから、どんな危険があるのかわからないでしょ? だから、手前のフロアで足止めをされているっていう正当な理由が必要なのよ。そうじゃなきゃ上位の探索者クランなんてモノが存在するのはおかしいわよね? だって困難に挑むことが偉いなら次々と30フロアに乗り込んで次々と死んで世代交代してなければおかしいじゃない」

 

 あー、うん。言われてみればそうか。第25階層より先に進んでいる連中がAランクだのSランクだの言われてるって話を聞いたときは異世界ファンタジー要素あるあるだなー、ぐらいにしか思ってなかったが。

 そうだよね、フリーバトル禁止ルールで攻略してるなら上位の探索者クランは常に──ゲーム通りならボスフロアでマムクートが変身した火竜に挑むことになるんだよ。だが現実はそうなってない、情報を持ち帰ることができない“なにか”があるにしても挑戦者そのものがいないってのは連中の掲げる理屈に合わない……のか? いや、頑張って考えてみたけどそもそもの価値観が違うからあってんのかわからんな……。

 

「あ〜、スカーレル? それはつまり、表通りの探索者たちは“冒険”を嫌がっているという解釈で……いい、のか?」

 

「もうちょっと付け足すなら、前もって誰かが安全を確認した冒険じゃなきゃイヤってところかしら? 街の外でモンスターと戦うような依頼でも、基本的にどんなモンスターが討伐対象なのかって情報はわかってるものね〜。それに引き換え、30フロアは本当にな〜んにも記録が残ってないんですもの。誰だって帰ってこれない未知のエリアになんて近寄りたくないわよ」

 

 うん、わかるよ。

 

 俺だってゲームデータの引き継ぎが無ければなにもできず絶望しながら野垂れ死にしてたと断言できるもん。よくリスクとリターンを天秤にかけて〜、みたいな言い回しあるじゃん? アレね、大人の場合はその天秤最初から歪に傾いているし受け皿そのものが片方だけグッと重いのよ。それぐらい挑戦ってヤツは勇気を求められるのよ。

 しかし……と、いうことはだ。30フロアから先は俺が初見プレイしなきゃいけないってことか。さすがに100種類も用意されてるマップなんて全部は覚えてないし、今後はリカールたちに情報収集してもらうこともできないとなると……ちょっと厳しいな。俺は安全に勝てる戦いしかしたくないんだ。何故なら敵の一桁パーセントの必殺で何度もユニットをロストした経験があるから。もうね、驚きも怒りも通り越して笑っちゃうんですよ。

 

 よし、アンナさんに頼もう。なんかイイ感じのアイテムを市場に流すようお願いして探索者たちの欲望を刺激したれ。リガルブレイドで殺し合いが起きるぐらいなら、特殊なクラスチェンジアイテムとか奥義スキルを習得できる紋章石とか流通させればチョロいだろ。

 とはいえ、30フロアだけは俺が先に攻略させてもらうけどね。ソラネルの先にいるであろうナーガ様とロプトウス様に会うためには、それぞれのボスフロアでマムクートを倒して祭壇に祀られているオーブを集めなきゃなんないし。そこだけは誰かに先を越されないよう気をつけて攻略を進めないとな。

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