百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
レベル上がんねぇワロスwww
いやぁ……原作でも経験値の減衰は容赦なかったけど、露骨に獲得できる経験値が減ったなぁ……。
仕方ないと言えば仕方ないんだけど。敵の強さの上昇が穏やかであるのに対して、ハイペースでこちらの戦力が強化されてるワケだし。ゲームと同じならボスユニットやレアユニットが相手だと経験値20は保証されるはずだけど、それでもいずれは最低5体は倒さないといけなくなるのが……ちと厳しいかな。
チマチマとレベル上げに勤しむ探索者を笑い者にするって話は聞いたが、それとは別に上級職になると単純に稼ぎ効率が悪くなるのが普通に困る。武器レベルはガンガン上昇してくれるし、アイテムのドロップもそこそこ美味しいんだけどね。やはり奥義スキルのことを考えると、なるべく紋章石じゃなくて自力で覚えて欲しいところ。
勇者の『太陽』にソードマスターの『流星』と、グレートナイトの『月光』あたりの定番はもちろん、同人ならではの要素としてエコーズや風花雪月に登場した戦技がいくつか奥義スキルとして習得できる。連続攻撃ができるスナイパーの『ハンターボレー』とか。
仮にそれらを紋章石を使用して習得したとして、果たして本当に使いこなせるのかという部分がどうしても引っ掛かる。ゲームなら楽して覚えてもシステムで制御されているからそんな心配しなくてもいいんだけど、ステータスだけでなく個人の、あるいは本人の熟練度のようなものがしっかり影響しているみたいだし。
「アサシンとして対人戦の経験が豊富だろうスカーレルの意見を聞かせて欲しいな。実際のところ、ターゲットの中に残念な奥義の使い手はいたのか?」
「そうね〜、流星の途中で息切れしたソードマスターとか? ほかにも振り上げた銀の斧を支えきれなくて転んだときに、そのまま自分の首をコロリンしちゃったウォーリアなんかもいたわよ。どっちも貴族サマだけあって無駄にレベルが高かったから、経験値は悪くなかったわ」
やはり努力……努力の積み重ねこそが全てを解決する……ッ!
これ俺も奥義スキル使ったらダメなパターンだわ。いつかのバァさんの流星剣だって剣殺しのスキルに完全に身を委ねた結果として受けきれたってだけだし。あとスルーしてたけど5回じゃなくて7回斬ってきたよな?
つまりほかの奥義スキルも使い込みというか、熟練度的なノリでパワーアップする可能性が残されている? 絡繰師のオートマータもゲームとはかなり違う仕様だったし、マムクート戦の前に試せるものはいろいろ試しておいたほうがいいのかもしれない。有利になるモノもあれば不利になるモノもあるだろうからな。
もうひとつ。倫理観を度外視すれば人間を狩るのが一番経験値効率が高そうという不穏な仮説が立ったワケで。やっぱり権力者なんかは平民や奴隷を利用した養殖とかやって安全にレベル上げとかしてたりするんだろうか。だとしても俺はやらないけどね。自分の手を汚して一線を越えたら日本に戻れても日常に戻れんようになる。
んー。
んんー?
ん〜。
武器レベルがポンポン上昇するのは良いことだ。大量に抱えている引き継ぎアイテムを使えるようになるから。
しかし、レベルの上昇がゲームと比べて渋いのはいただけない。序盤は敵の数がやったらめったら多いことも合わさって不満はなかったというのに。
そこまでご都合主義ではなく、質を高めるのには限界がある。ゲームのようにアイテム使って無双だヒャッハーッ!! とはならないと思っておいたほうが安全。となれば、やはり手札を増やすしかないか。ひとりでも多く上級職のユニットを抱えておけば、リザーブの杖によるゴリ押し戦術の価値も上がるだろう。
ほんで。
「ようこそお越しくださいました司祭様。本日も司祭様にピッタリのワケあり奴隷を仕入れておりますので、是非ともご購入をご検討いただければと」
「私に普通の奴隷を買うという選択肢はないんだな」
「それは仕方のないことでございましょう。同情の余地がないような犯罪奴隷は山で木を伐るか洞窟で鉱石を掘るか下水道で汚泥を汲み取るかしかありませんし、そうでなければそれぞれの地区で奉仕活動に励んでおりますので。
家族を養うために身売りをするような奴隷につきましては、その事情から誠実な働き手として期待されてパトロンがすぐに買い付けるので売れ残ることはありません。怠け者の穀潰しが村を追い出されて、などということもありますが……神竜の塔を攻略するための戦力としては紹介できません。これでも仲介人としてのメンツと誇りがございますので」
うむ、納得しかないので困る。いや困らないけど事情は理解した。仲介人なりに顧客である俺のことを考えて商品を用意してくれているというなら、まずは話を聞いてみようじゃないか。
「やぁ! ユーがウワサのロプト教団の司祭様だね! 僕のブリリアントな歌声を必要としてくれるなんて光栄だよ。英雄王の街にハッピーでピースフルなミュージックを響かせようじゃないか! よろしくたのむよマイロード!」
お、クリスタルの欠片に宿る青魔道士の人かな? 目元を隠すマスクと背中のマントが鮮やかな青で爽やかな雰囲気を演出していますね〜。それで股間を申し訳程度のボロ布で隠して残りはほぼ全裸とかでなければもっと受け入れやすかったと思うの。
「これは犯罪奴隷に該当しないのか? 子どもに悪影響を与える有害指定変態とかの罪で」
「いやぁ、コレの取り扱いにつきましては我々仲介人の間でも話し合いがそれはもう白熱しまして。慎重かつ大胆で積極的な議論が10秒ほど続いた結果“コレは明らかにロプト教団のカラー”と満場一致で結論が出た次第でございます」
「そうか、その決定まで10秒も必要だったか。なら次の奴隷を紹介するための会議はもっと白熱した議論が5秒は続きそうだな?」
いいけどさぁ。正義のヒーロー扱いされるよりは、イロモノ集団として認識してくれたほうが面倒じゃないから。
ちなみにこの変態、クラス的には僧侶だが職業としては吟遊詩人なんだそうな。とある貴族の前でパフォーマンスを披露したときに御婦人からのプライベートな誘いを断ったのがプライドを傷つけてしまったとのことで、なんか適当な濡れ衣を着せられて闇市に叩き込まれてしまったのだとか。
濡れ衣を着せるってそういう意味じゃねーだろ。辱めるという目的には合致してるのか? どう見ても本人に気にしたような様子はないぞ。これはさすがに、連れて帰るときはもう少しまともな衣服を用意してもらおう。というかもう視界の端っこのほうで仲介人の部下が用意してるし。
しかしなるほど。吟遊詩人ね。
「楽器の扱いは期待してもいい、のか?」
「もちろんだともマイロード! 吟遊詩人の嗜みとして一通りの楽器は扱えるし、たとえ楽器がなくとも僕のビューティフルなボイスで素敵なメロディーをプレゼントしてみせよう!」
「そうか。では試しにこれを奏でてもらおうか」
「おや、さっそくリクエストかいマイロード。いいとも、出会いの記念になるようなハートフルなソングをひとつ──ッ!? マイロード、これは……ッ!?」
なんだ、ちゃんと真面目な表情もできるのか。そしてこの『神竜石のリュート』を見て露骨に動揺しているあたり、自意識過剰ではなく吟遊詩人としての実力は相当高いのだろう。
使用者の魔力に応じた範囲にいる味方を幸運で判定して再行動させることができるアイテムだけあって、やはり楽器としての質も優れているようだ。ま、なにも知らん人が見ても綺麗な宝石で装飾されているワケだから安物だとは思わんだろうけど。
これを使える味方が確保できるのは、なかなかの戦力アップにつながるんじゃなかろうか? 修理するためには神器と同じようにハマーンの杖を使うか、隷属の紋章を利用したちょっとアレな手段を使うかの2択になるので気軽には使えないものの。GBAの烈火の剣のように『ニニスの守護』や『セチの祈り』といったアイテムを組み合わせることで複数の味方を強化することもできる。
「マイロード、大変申し訳ないのだけど“コレ”を演奏するとなればコンディションをパーフェクトに整える必要があるんだ」
「構わんよ。ようこそロプト教団へ。住民向けの演奏会を希望するときはメンバーにルカという少女がいるから彼女へ相談するように」
◯□◯□ー
「〜♪ 〜〜♪♪ ……どうかなプリンセス。お気に召したのであれば僕も嬉しいよ」
「とても素敵な演奏でしたわ! 聞き慣れているはずの共和国の民謡でも、奏でる方が違うとずいぶん印象が変わるのですね」
ロプト教団のホーム、の裏手の空き地にて。
司祭に渡された不思議な宝石で装飾されたリュートの調律をしていた吟遊詩人のフォニムは、マルフィーサの頼みで共和国に旧くから伝わる民謡を奏でていた。
楽器そのものが高品質なのはもちろんのこと、大陸中のさまざまな文化に触れて感性を磨いてきたと言うだけのことはある、そう納得させるだけの素晴らしい技量であった。
「だけどプリンセス。こういうことを聞いてしまうのはマナー違反なのかもしれないけれど、やはり故郷のことを懐かしんでいるのかい?」
「いえ、特には」
「そうだよね、そう簡単には──えぇッ!? そんなアッサリと……」
「支配者側が戦いに敗れるとは、そういうこと……いえ、そうあるべきだと思っています。個人の郷愁と民衆の安寧など比較することすら烏滸がましい、と」
「それは、なんて……プリンセスはとても強い、ブレイブハートの持ち主なんだね」
「私は、生きています。奴隷ではありますが、人間として人間らしく。ならばいったい何事を嘆くことがあるでしょうか?」
「それについてはロプト教団は本当にユニークだと僕も思うよ。奴隷がいるのに、当番制だからと主人が自らホームのトイレのクリーニングをする光景なんて初めてだよ」
「ふふっ、私もお掃除やお洗濯を勉強中なんです。フォニムさんも一緒に頑張りましょうね! あ、でも司祭様から指先を大切にするようにと命令されていましたから……」
「ノー・プロブレムだよプリンセス。そこまで神経質になっていたら普段の生活だって困ってしまうだろう? それにキュートなレディからのお誘いは神器と同じくらいのバリューがあるからね!」
「あら、お上手ですのね。……もう少し、リュートの音色に包まれていたかったのですが」
「ご心配なくプリンセス。リクエストはいつでも受け付けるよ。マイロードからもこのリュートは自由に奏でて構わないと言われているからね」
「はい、ありがとうございます。それではフォニムさん、私は先に休ませていただきますね」
「フッ。まだまだ未熟なれど、強い輝きを秘めた娘だ。しかし……数百年ぶりだというのに思いの外、指は感触を覚えているものだな」
(だが、まだだ……己の旋律だけでは足りない……。同胞たちを助けるためには、やはり世界に散ってしまったオーブを集めなければ……)
(ロプト教団の司祭……あの人間が何者なのかは不明だが、利用価値があるのは確かだ。神器の波動は感じるものの、心を蝕まれている様子もない。失われたはずのロプトウスの名を知っていることだけが気掛かりだが……)
(いや、割り切れ。いま己が頼りにできるのはあの司祭だけだ。幸いにして神竜の塔を攻略することには積極的だし、神器の影響を受けていないのであれば、かつての人間たちのような悲劇を繰り返す可能性も低い……はず)
(封じられしナーガ、失われしロプトウス、それに心を奪われてしまった同胞たちよ……。ようやく、ようやく希望が見えたぞ……必ず己が助けてみせる……どうかそれまで、辛抱ウエイトプリーズ……)
(…………)
(皆の救出よりも先に、己の言葉遣いのほうが手遅れかもしれん……)