百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
「おぬし! しんりゅーの塔をガンガンこーりゃくしているというロプトきょーだんの司祭だな! その努力を認めてわれも力を貸してやるぞ! ウルウルとかんどーの涙を流すがよい! わーっはっはっはっはっはゲホッゲホッオェッ」
とうとう仲介人とか関係なくイロモノがやってくるようになったか。ファイアーエムブレムではショタ系ロリ系のキャラはお馴染みではあるが、まさかのダークマージでくるとは。そしてレベルは中級職の限界の20か。コレ天才枠と人外枠のどっちだろうな?
「お前が塔の攻略に参加できる実力者なのはわかる。だが、わざわざ私のところに来る理由がわからないな。基本的に隷属の紋章を刻んだ者しか連れ歩かないのは知っているのではないか? 闇市の住人たちが勝手にロプト教団の信徒を名乗ることは放置しているがね」
「もちろん知っておるぞ! こーかてきなアプローチのためにはじぜんちょーさがひつよーふかけつだからな! そしておぬしが本気で30階のボスフロアに挑もうとしていることもとーぜん把握しておる! 故に〜、故に〜ッ! 真なる闇の力を宿すこのわれが力を貸してやろうというのだ!」
決めポーズの方向性が覚醒のウードとか暗夜のオーディンなんだよなぁ。顔を片手で中途半端に隠しているところもそうだし、腕に細い鎖をジャラジャラ巻いてるところとか、地面に届きそうなほど長い紫色のマフラーみたいなのを首に巻いてるところとか、ファッションセンスもそっち系だ。
信用できるかで言えばたぶん大丈夫なんだろう。ミニマップくんも友好的な中立勢力ではなく味方判定してるし。いや、気が早くない? 俺まだ許可出してないけど? これアレか、この少女の中ではロプト教団に参加することは決定事項であり、俺が『はい』を選ぶまで延々とループするタイプのイベントが始まってんの?
う〜〜〜ん。イロモノ枠なのは別にいいんだけど、ステータスがなぁ。魔力と守備が20、技が13、魔防が18の最大HP37なら充分強いし、ソーサラーにクラスチェンジすればこれにボーナス入るから全然戦力としてはアリなんだけど……。
闇魔法の武器レベルが『☆』なのがちょっとなぁ。
英雄の紋章石、いやアイテムはなにも持ってないから紋章の所有者かな。それの話題やったばっかで普通くるかね? 闇魔法の神器適合者ってことは『山の隠者ニイメ』辺りの紋章を宿して──いや、違うかもしれん。スキル枠がひとつ、ちゃんと認識できなくてノイズで塗りつぶされている。
露骨にクッソ怪しいが、ミニマップ判定は完全に味方。武器レベルが☆なら神器を持たせなくても、ダークスパイクやハデスといった強力な闇魔法を持たせれば、そこにボーナスが加わるので火力は保証されている。ここまでの経験からして次のボスフロアのマムクート戦も難易度が高くなってるだろうし、優秀な人材なら欲しいっちゃ欲しいのだけど。
「確認するが、隷属の紋章を刻んでも構わんのだな?」
「大丈夫だ、問題ない! おぬしは塔のこーりゃく以外にはほとんどきょーみが無いようだからの〜。肝心の奴隷たちも普段は好き勝手に過ごしておるようだし、よほど理不尽な命令をしないのであれば構わんぞい!」
なんかダメなほうの名言が飛び出ているが、命令に従う前提で参加するならどうにかなる……か? 時間を巻き戻して日本に帰りたいという願いを叶えるときさえ邪魔しなければそれでいいのだし、ほかに思惑があったとしても塔の攻略を真面目にやってくれるならプライベートに首を突っ込む理由はない。というか突っ込みたくない。
そうだな、ミニマップ判定が完全に青い時点で俺に選ぶ権利なんてなさそうだし諦めて仲間入りを認めるしかないか。いざというとき──主にこのダークロリマージが人外枠だったときに備えて装備やスキル構成を考えておく必要があるぐらいか? 悪気は無くてもソラネル手前とかファイアーエムブレム完成のタイミングで力試しをしてやるとかいって襲い掛かってくる可能性は普通にあるで?
「まぁ……よかろう。闇市の住人たちはもちろん、英雄王の街で暮らす者たちと意図的にトラブルを起こすような真似さえ自重できるなら歓迎しよう。ただ、今後ロプト教団は女神教団と衝突する可能性が高いのだが大丈夫かね?」
「安心せい! われはダークマージ、闇魔法の扱いは大大大大大得意だぞ! ずばっと息の根を止めることもできるし、手加減だってよゆーしゃくしゃくなのだ! …………たぶん」
「そこは頑張って貰わないと困るんだが。私は別に女神教団そのものを滅ぼしたいワケではない。あくまで邪魔をするなら追い払うというスタンスなのだからな」
「む、仕方ない。女神きょーだんにもコツコツ頑張って人助けをしている真面目な人間もいるからの〜。そーゆーれんちゅーには
この子は高笑いしないと死んじゃう病気かなにかなんだろうか? このポンコツ臭、なんとなく人外枠の可能性が高そうだな。シリーズの流れを踏襲するなら正体はマムクート、いわゆる竜人族の少女でしたのパターンが一番ありそうだ。これから目の前で同族を全力でブッ倒すことになるんだけど、本当に大丈夫なのかな……?
ともかく。一度ホームに連れて帰ってメンバーに紹介して、ついでにゴールドプルフを使ってソーサラーにクラスチェンジさせるとしよう。
で。
まぁ簡単に自己紹介をさせたワケだが。
「おー! そこな娘よ!」
「……ッ!? 貴女は」
おや、グラナと知り合いだったのかな?
「久しいのぉ〜! よもや、あのときじゃきょー狩りにやってきた神殿騎士とこんなところで「オラァッ!」ふぎゅぅッ!? あ、頭がッ!? 頭蓋骨からピキピキとへんな音がァッ!?」
「我がロプト教団では他人のプライベートに関わる話題は全面的に禁止だ。覚えておけ」
「そ、そーゆーことはさきに言って欲しいのだが……」
「意図的に、相手を挑発するような目的でもなければ普通は大声で話したりはせんよ。昔話に花を咲かせたいなら時と場所を選んでゆっくり会話を楽しむんだな」
なんだっけ、なんとかの猫。知らないものは存在しない的な……心理学の用語? アカン、こういうときラノベとかの主人公ならスマートに例え話を読者に提供する場面なんだろうけど、平凡な社会人でしかない俺にはムリだ。見猿聞か猿言わ猿ぐらいわかりやすいヤツのが身の丈にあっているのかも。って、それはそれで猿たちに失礼な気もするな。日本に帰ったら日光東照宮に謝罪に行くとしよう。
◯□◯□ー
「頭が〜、頭がジンジンするのじゃ〜。くそぉ、ちょっとしんちょーが高いからといって容赦なくしゅとーを落としよってぇ〜。……さて、ここではグラナという名を与えられたらしいな。息災である、と言っていいのかはワカランが元気そうでなによりだの!」
「そうね。少なくとも邪教徒の殲滅と称して人間狩りをしているようなクズどもと同類扱いされていたころよりは充実しているわ。もっとも、殺されかけて川に流されたところを盗賊に拾われなかったらそのまま水の底で魚のエサになっていただろうけど」
「お、おぅ……。なかなかそーぜつなけーいで英雄王の街に流れたようだの……」
「それを言うなら貴女のほうが大変だったんじゃないのかしら? 人々を惑わす邪悪なる神官として連行されたのに、よく生きて逃げ出すことができたわね?」
「うむ、あのときは手間を掛けさせたな。おぬしはもちろん、ひどーなる行いに対して反逆しぎせーになった騎士たちにも……村人たちは残念なことになってしまったが、神殿騎士の全てが心無い獣ではなく、ちゃんとせーぎの心を持つ者もいるのだなと感心したぞ! あーっはっはゴホッブフォ」
「もう夜だし、近所迷惑になるから高笑いは控えたほうがいいわよ」
「む、そうだな。ちなみに、あの司祭は女神きょーだんと敵対関係にあるらしいが、おぬしがなにかズイズイっと吹き込んだりしたのかの?」
「さぁ? 司祭様は私たちの過去に全くと言っていいほど触れようとしないから、話す機会もなかったわね。ただ、心当たりと言うか……女神教団から狙われるようなことをしていそうなのは確かね。第30階層より先のことも知っているようだし」
「ほ〜、やはりそうか。只人ではない気配をムンムンと感じてはいたが、長く、永く秘匿された塔の先を知るのであれば女神きょーだんとて放置などできんだろう」
「貴女も普通の女の子ではなさそうだけれど。見た目は子どもだけど、中身はそうではなさそうね?」
「ふふん♪ 良いオンナにはイロイロ秘密がたくさんあるものだぞい!」
「秘密、ね。それは仮にも上級職が揃っていた神殿騎士たちの包囲から逃げ出せたことにも関係があるのかしら?」
「別にその程度、たかがパラディンぐらいなら秘蔵の“ちりゅー石”でどうにでも──」
「ちりゅうせき?」
「あばばばばばッ!? いや、違うぞよッ!? その、あれじゃッ! ち、ち、ちりゃくッ! そう、われのちりゃくちぼーをもってすれば神殿騎士の100人や200人なんぞチョイチョイっと蹴散らすことができるのだ! ほ、ホントだぞ!?」
「……そう。なら、そういうことにしておくわ」
「ほっ。危うくしょーたいが初日でバレるところだった……」
「……そういうセリフは、ひとりになってから呟いてくれないかしら。なんだか少しだけ司祭様の気持ちがわかる気がするわ」