百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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異世界のんびり第33階層攻略生活。だって急ぐ理由無いし……。

 あぁ〜、素材のドロップする音〜。

 

 鉄系が3割、鋼系が6割、銀系が1割。うん、悪くない。全力出撃のときは完璧に赤字になるけれど、同じフロアを周回して稼ぐ分には全然問題ないな。ステータスの上昇はシステム的に穏やかだけど、本体の戦闘力は戦えば戦うほど伸びるので鋼装備でも安定しちゃうのとってもご都合主義でしゅき♡

 

 いや組織を運営する側の立場として在庫が減り続ける状況って普通にしんどいのよ……? 生命よりも価値のあるモノなど存在しないと自分に言い聞かせて大盤振る舞いしてたけど、銀系はもちろん必殺系や魔法系の消耗はメンタルにくるんだわ。

 ゲームとは宝箱のアイテムテーブルも違うみたいだし、安定して補充できるのはまだまだ先の階層になりそうなのもヤバたんつらたん言いたくなるってもんだわさ。槍系を使うユニットが多くて消費が偏るのも悩みどころだ。そりゃ冷静に考えれば騎乗してると剣や斧は使い難くて当たり前なんだけど。

 

 

「あーしも商売人の出だから気持ちはわかるぜぇ? 先行投資とはいうがよォ、出ていく金ばかりが見える状況ってのは精神衛生的によろしくねェわな。ま、部下が育つ姿を眺めてンのも経営者の楽しみだがなァ」

 

「その先行投資をバランス考えながら循環させるのだって大変なんですけどね!? そりゃあ……武器の取り扱いなんかで、贔屓にしている工房が良い刺激になるって喜んでくれるのは私だって嬉しいけれど!」

 

「なるほど……特殊な武器を吐き出したことで職人のレベルが上がる、そういうのもあるのか。そこまでは気が回らなかったな、これがいわゆる嬉しい誤算というワケだ」

 

 武器の横流しに関する相談をアンナさんと、ついでに勝手に乗り込んできたラキアとあれこれ話していたら思わぬ収穫が。鍛冶職人の技術が向上すれば、俺の在庫を放出しなくてもほかの探索者クランが攻略に積極的になってくれるかもしれない。

 

「ドラゴンキラーやビーストキラーが安定して量産されるようになれば、それだけでも攻略の安定感は増すことになる。探索者の壁とされている15階層の突破も少しは難易度が下がるか?」

 

「う〜ん、どうかしら? たぶんだけど、どの工房もそのふたつに関してはあまり積極的には動かないと思うわよ?」

 

「ほぅ。素人判断ではあるが、かなりの売れ筋になると思ったのだがね」

 

「教主様、帝国軍の主力部隊がなんのクラスで構成されているのか忘れちゃったのかしら?」

 

「パラディンとドラゴンナイト……あぁ、たしかにそれは好ましくないな」

 

「お得意様のクランに1本2本程度ならまだしも、本格的に流通しちゃうのはちょっとね〜。火種を作りたがる人って、どこにでもいるもの」

 

「私の都合だけで意味もなく英雄王の街を混乱させるワケにもいかんな。より多くの探索者たちが宝箱との素敵な出会いに恵まれるよう祈るとしよう。ほかに愉快な話はあるかね?」

 

「そうだな、あんた女神教団が持ち去ったっていうお宝を取り戻す必要があるンだろ? いったいどんな形で連中とケンカするのかワクワクしてんだけどよォ……実際のところ、なんかアイディアあんのか?」

 

「できれば最後まで使いたくない手段なら、ある」

 

「ほーん? 取り敢えず、聞かしてみ?」

 

「適当な誰かに希少な装備を──魔法の指輪を持たせて聖女に仕立て上げる。候補としては学生探索者、それもなるべく世間知らずの甘い思考回路をした善人の女子生徒。塔の攻略と同時に人々の心を掴むような善行を繰り返してくれれば、女神教団の関係者も無関係ではいられまい」

 

「ハッ! そりゃいいな、信仰の対象を奪われないためにも確実に出しゃばってくるだろうさ。問題があるとすれば発案者であるあんたが1番それに乗り気じゃないってコトぐらいか」

 

 ファンタジーあるある。なにかの拍子に力に目覚めた少年少女と、それを嫌ってあの手この手で取り込もうとしたり排除しようとしたりする既得権益な大人の図。女神教団が全力で神竜の塔攻略をバックアップするって提案してきたら、学生探索者の諸君は大喜びで飛び付くのではなかろうか? 

 そして最終的にはステータスが育ったところをライナロックの封印を解くための生贄にされるか、大勢の子どもたちを誘拐してゴニョゴニョしていたことの責任を押し付けられるか、もしかしたら英雄として都合よく死ぬように誘導されるなんてこともあるかもしれない。強いてハッピーエンドを考えるなら、洗脳されて完全に取り込まれるパターンもあるかな。

 

「私の感情を抜きにしても、不確定要素が多すぎて策としては使えんよ。そもそも私は小細工が不得手でね。民衆の混乱や真面目に活動している女神教団の信徒たちさえどうにかできるなら、連中の本拠地に直接乗り込んでしまいたいぐらいだ」

 

「教主様なら本当にソレできちゃいそうなのがシャレにならないわね……。ちなみに、なんだけど。ニセ聖女を仕立て上げるための指輪ってどんなものか興味があるのだけど、見せてもらったりとか」

 

「構わんよ」

 

 シュッと取り出した指輪を鑑定するアンナさん、実にゲーム世界的な絵面をしている。ステータス画面が見えるタイプのファンタジーは賛否両論あるけれど、俺は嫌いじゃないね。

 

「──ッ!? これが、オーラの指輪……ッ!!」

 

「へぇッ! 賢者パントの魔導書に記録だけが残ってるって失伝魔法のひとつか! そりゃ理魔法のエクスカリバーが実在するんだから対となってる光魔法オーラだってあるわなァ! コイツを使えるとなりゃあ、聖女扱いにも信憑性を持たせられるってモンだ」

 

「光魔法の武器レベルAを要求されるが、下手な大人よりも攻略に積極的な学生諸君なら問題なく到達できるはずだ」

 

 オーラの指輪を巡って新しいストーリーが展開されそうな気もするけどな。平民ですが魔法学園からダンジョンで伝説の指輪が聖女候補になり悪役令嬢からイケメンたちに守護られながら最強の探索者ですみたいなタイトルのヤツが。

 

 

「まぁ、なんにせよ当分は神竜の塔の攻略を優先するのが正解だろう。私からわざわざ動かなくても欲を制御できん権力者たちが勝手に動き出してくれると信じてな」

 

「っていうか、現状もうアンナ商会に穏やかだけどお問い合わせがきてるんですけど?」

 

「大丈夫だ。大陸全土で営業しているアンナ商会ならたとえ神器のレプリカを販売したとしても天下御免で許されるとロプトウス様も仰っている」

 

「そうだな、ロプトウス様がそう言ってんなら仕方ねェな」

 

「そうね〜、ロプトウス様のお導きなら〜ってンなワケあるかァッ!! ホントに、本当にッ! ほんと〜にそれだけは止めてよッ!? 貴方それ冗談じゃなくてマジで持ってるでしょその神器のレプリカってヤツッ!! この前のリガルブレイドだって持て余して姉妹たちの間をタライ回しになってるのに、神器のレプリカなんて絶対ゼッタイぜぇ〜〜〜ったい引き受けないわよッ!!」

 

 むぅ、残念だ。

 

 神器のレプリカたちも武器としての性能はかなり高いから、上手いこと探索者や学生たちの手元へ流せたらかなり楽しいことになると思ったのに。

 銀装備と同格の攻撃力に、ステータス補正がプラス5〜10あって、さらにはもれなく竜属性への特効も付いてくる。修理コストはべらぼーに高いがお店でも頼める……ようになるかもしれないし、なにより本物と違って複数所持できるので気分的に使いやすい。

 

 

「わかった、オーラの指輪と神器のレプリカについてはアンナ商会を通さずに自力でなんとかするとしよう」

 

「是非ともそうしてちょうだい。というか、そもそもロプト教団の中で普通に消費すればいいんじゃないの? レプリカだとしても、それなりの威力はあるんでしょ?」

 

「様々な都合を考えた結果だよ。大人の都合に振り回される学生探索者たちが少しでも生き残れるようにするには、彼ら彼女らの命の価値を上げてやるのが1番手っ取り早い」

 

「な〜るほど。ほかを差し置いてガキどもばかりがレアアイテムを引きまくるとなりゃ、どの国も簡単には切り捨てられねェわな。少なくともあーしなら上手いこと利用できないか考えるね」

 

「えぇ〜? そんな……いくらお貴族様が欲張りだからって、そんな簡単に引っ掛かってくれるかしら? そもそもの話、平民が相手なら権力振りかざしてレプリカだけ取り上げて終わりじゃない?」

 

「大丈夫だ、問題ない。私に良い考えがある」

 

「へ〜、さっすが教主様! ちゃんとアフターサービスのことも考えているのね! で、その取り出したバサークの杖でナニするつもり?」

 

「神器に認められた所有者以外が手にすると正気を失う……実に神話的だと思わないか? 財力や権力に頼って他人の財産を奪うような輩を相手にしくじるほど、ロプト教団の教主である私の魔力は低くないから安心したまえ」

 

 俺にはスキルの絶対命中があるからな。仮に相手の魔防が999だとしても関係ない。何故なら成功するという事実が確定してから杖を振ることになるからだ。

 もちろん俺も相手にスリープなりサイレスなり使われたら回避できないが、避けられなくても無効化できるから関係ないし。そういやバッドステータスを防ぐためのアクセサリーとかあったかな? 塔の中では当分出番はないけれど、外のトラブルに備えてあとで確認してみよう。

 

「おかしいわね、ついさっきまで私の目の前には学生さんたちをできれば巻き込みたくないって感じで語っていた人がいたはずなんだけど。なんかもうレプリカを持たせるっていうか、むしろバラ撒いちゃうことが決定してるくない?」

 

「命の価値を引き上げても英雄としての希少価値は低いままのほうが良い。古来より、そんなものに祭り上げられた人間は周囲から身勝手な使命を押し付けられて不幸な結末を辿るばかりだと相場は決まっている。それがたとえ正義を信じ人々を守る剣となり盾となる覚悟を持った善良な若者たちだったとしてもな。……まったく、思い出すだけでも反吐が出る」

 

 ファイアーエムブレムって人間の醜い部分も容赦なく描写してくるからな。だからこそ人間讃歌の部分も輝くんだけど、プレイヤー視点でストーリーを繰り返して見てるとこう……イロイロと重いよね〜。何度思い出しても胸糞悪いシーンとかってあるじゃん。それも含めての魅力だろ? と言われればその通り! としか言えんのだが。

 

 

「ともかく。大衆は常に英雄を求める、それはどうにもならん。ならば遠慮なく利用させてもらうだけだ。()()が存在する限り、どんな異変が起きようと自暴自棄にならないのも好都合で大変結構。ひとりでも多くの学生諸君に英雄を演じてもらえば……ふむ、女神教団が壊滅しても案外なんとでもどうとでもなるのではないかね?」




やっぱり学生+ダンジョンときたら、何故か強力な伝説級の武器に選ばれる流れは鉄板だな!
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