百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 やっぴー☆
 ウルフナイト、見参ですぞ♪


第36階層から先へ進むためのヒントを得たところまでは“良し”としよう。

 人は、食わねば生きていけない。 

 

 否。

 

 生物というものは、外からなにかしらを取り込まねば生存できんのだ。動物も、植物も、例外なく。

 

 故に。

 

 

「……言い訳はしない。全てはオレの心の弱さによるもの。如何なる裁きも大人しく受け入れよう。ただ、全ての雪の民がオレのように不甲斐無いワケではないことだけは誤解しないでくれ」

 

「いや、朽ち果てる直前のゾンビのようにフラフラになるほど追い詰められた状態で干し肉1枚手を付けた程度でそんな覚悟を見せなくても……」

 

 

 俺だって、盗人に寛容になることもある。

 

 

 

 

「辺境の部族とは外界との接触を好まないと思っていたが、雪の民とやらはそうでもないのかね?」

 

「オレの生まれた部族はそうだ。アンナ一族との取引もしていたからな。それに、全ての雪の民が山に残ったままでは動物や植物を狩り尽くしてしまう危険がある」

 

「ほぅ。資源の枯渇を気にするだけの視野の広さを持つか。自然の恵みに敬意を払うのは良いことだ、人は大地の支えがなければ生きていけないのだからな」

 

「うむ。我ら雪の民は女神信仰ではなく自然信仰なのだ。そこを理解してくれるのは素直に嬉しく思う。だからこそ、同情など無用。オレの事情と盗みの罪は関係ない」

 

 真面目過ぎて面倒くせぇタイプか。

 

 聞けば腕試しを兼ねて英雄王の街にやってきたのはいいが、村人3人組のように都会の洗礼を受けて素寒貧になったとのこと。なんか表通りって新参者に厳しくない? そんなクズは少数派だと信じたいところではあるが。

 このまま罪悪感につけ込んで隷属の紋章を刻むのも悪くないが、そんなことをしなくてもこれだけ誠実な性格をしているのなら上手く誘導すれば利用できるのではなかろうか。確かに奴隷は便利だが、中立的な立場から意見を言ってくれる人がいなければ俺のような凡人は簡単に自分を見失うと思うんだよね。

 

 

 自惚れたチート持ちの末路など語るまでも無い。やはりここは奴隷ではなく協力者としてキープすることにしよう。

 

 

「それならばふたつほど頼みたいことがある。キミが食べてしまった干し肉は、その依頼の報酬ということにしよう。ちょうど雪原の歩き方について難儀していたところなものでね」

 

「む? どういうことだ?」

 

「実はだね────」

 

 

 かくかくしかじか。

 

 

「なんと、神竜の塔の内部にそんな場所があるのか……! わかった、そういうことなら喜んで力を貸そう。環境が違うこの街では不足する物資もあるだろうが、アンナ商会が出入りしているのであればどうにかなるかもしれない」

 

「やはりアンナ商会、アンナさんなら全てを解決するな。なるべく早めに話し合いの場を設けよう。それで、もうひとつの頼みのほうなのだがね。こちらは少しばかり厄介で────」

 

 

 まるまるうまうま。

 

 

「──信仰を隠れ蓑にして子どもらの生命を喰い物にするだとォッ!? 巫山戯るな、そんな蛮行が許されることなどあっていいものかッ!!」

 

 うぉ、びっくりした。

 

 自然信仰の辺境部族、そして本人は誠実な性格となれば女神教団の悪事を仄めかせばイケるかな〜とは思ったけれど。まさかここまで刺さるとはなぁ。狩猟民族の価値観としても子どもは特別な宝ということなのだろうか。

 それはそれとして簡単に俺の話を信じてしまうあたり、悪意のある人間に貶められたのも当然……とか言っちゃうと失礼極まりないんだけどさ。利用しやすい相手ではあるけれど、それは裏を返せばなにかの切っ掛けであっさりロプト教団の敵になるということでもある。善人ではあるが、俺にとってどうなのか。いざというときはシビアに判断する必要があるな。

 

 ま、それはそんときに考えよう。謀ができるタイプには見えないし、俺よりも先にミニマップが反応するだろ。俺にとっての敵なのか、()()()()()()()()()()()()()()()()にとっての敵なのかは知らんが。

 

 

 とりま。

 

 

「……と、いう事情でな。下手に奴隷にするよりもこちらに預けたほうが良い結果に繋がるだろうと考えた。相談も無しに連れてきたことは謝罪しよう。撤回するつもりはないがね」

 

「構いませんよ。教主様の頼みというのもありますが、子どもたちのことを考えるのであれば、戦える大人が一緒に住んでくれるのは私としても助かります」

 

「ふむ……? クロード神父、雰囲気が変わったな。もしかして子どもらが神竜の塔へ挑むことを許したのか?」

 

「子どもたちを戦わせたくない。それは私のワガママでしかありません。私には貴方のように戦うことすらできないのに、理想ばかりを押し付けるのは……。それに、あの子たちもいつかは大人になり“守る側”になるのですから」

 

「まるで子離れを惜しむ父親、いや母親のようだな? いつの日か子どもたちが愛する人を見つけて結婚の報告などしようものなら酷いことになりそうだ」

 

「自分でも父親のような逞しさや厳しさとは無縁なのは自覚していますけどね。そして……そうですね、そのときは教主様に夜通し愚痴でも聞いてもらうとしましょうか。お祝い事ですから神父の私がアルコールを嗜んでも許されることでしょう」

 

 残念! あの子どもたちが一人前になるころには俺は日本に帰っていなくなってるんだな〜、これが!

 

「フッ……。そのときはお手柔らかに頼むよ。まぁ、結婚の話は冗談としても、だ。神竜の塔については闇市の住人たちも武器の扱い方を教えているのだろう? 身の丈に合わないような攻略などすることもなかろうし、それほど心配せずとも…………ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 マジかよ。

 

 子どもたちの中に、武器レベル『☆』がいるんだが? 

 

 

 

 

 

 

「教主様?」

 

「あ、いや……向こうで訓練している子どもたちがな、ホルバイン相手になかなか良い動きをすると思ってな」

 

「そうですね、それは私も思います。やっぱり子どもというのは成長が早いというか、周囲からどんどんいろんなモノを吸収するということなのでしょう」

 

 成長が早いっていうか、カンストしてますけどね? 

 

 男の子がふたり、剣と斧。それから女の子が弓か。いやいや、いくら毎日のように訓練してもらっているからってそんなこと──まて、そもそも普通に武器レベルを上げているだけじゃSが限界だろ。暴走竜帝を倒したときのセリフからしてジャーリーは人外枠だったからまだ理解できるが、なんで子どもたちが……? 

 

 

 ……ッ!

 

 スキル枠かッ! 

 

 

 え〜と? 『炎の勇将エリウッド』に『雷の武王ヘクトル』に『風の公女リンディス』の紋章がそれぞれありますねぇ! オイオイここだけで烈火の剣始まっちまうよ本気で言ってんのソレ? これが“嘘から出たまこと”ってやつか。まことの部分がデカ過ぎるだろいくらなんでも……。

 ヤバい。これはヤバい。炎のオーブを取り戻すために女神教団と衝突する可能性があるのにこの流れは非常に不味い。もしも聖痕持ちの孤児が生贄でなく神殿騎士とかいう戦力として育てられていたら──いや、たぶんかなり高い確率でいる。というか確実にいる。武器レベル『☆』の価値はゲーム知識のアドバンテージなんか関係なく理解できるはずだ。

 

 迂闊に強力な武器を流したら女神教団に行き着くか? いや、アンナさんがそんな下手を打つとは思えん。リガルブレイドが流れ流されて何処へ落ち着くのかわからないのが怖いと言えばそうだが、神器のレプリカよりはマシだけどなんの慰めにもならねぇわ〜。

 ここは逆に考えよう。星付きの、聖痕持ちのキャラが外にいてもいいさって考えるんだ。女神教団はともかく、もしかしたら都合よく英雄学園にも聖痕持ちの生徒が入学するかもしれない。シリウスを仲介してレプリカを渡し、英雄を量産して神竜の塔の攻略を活性化させる計画に勢いがついたと思い込めばホラ万事解決! 

 

 

 いや真面目な話、人の流れをコントロールする方法がほかに思いつかねぇんだもの。ゲーム知識の通用しない大陸全土をオーブ探しの旅とかやってられんわ。俺は英雄王の街から一歩も外に出んぞォッ! ディナダンたちの里帰りでもう出てたわそういえば。

 

 

 ◯▢◯▢ー

 

 

「雪の民、か。話には聞いたことがあるが、こうして手合わせをすんのは初めてだ。せっかくだからな、戦いの作法として改めて名乗っておくぜ。放浪の勇者ホルバインだ」

 

「雪の民の戦士、ウォーリアのスガだ。己の限界に挑むため、英雄王の街へ赴いた。よろしく頼む」

 

 

 訓練用の武器を構えた男がふたり、教会から少しだけ離れた広場で静かに向き合う。月明かりだけが頼りの模擬戦であるが、だからこそ神経が研ぎ澄まされ訓練としても高い効果が期待できる。

 己を奮い立たせるための叫び声など不要。子どもたちの眠りを邪魔しないようにという配慮もあるが、お互いの技を純粋に確かめ合うには夜の闇のように心を鎮めて刃を交えるのが最適なのだと知っているのだ。

 

 

 屈強な肉体とは裏腹に、タンッ……と大地を蹴る軽やかな音が響く。

 

 

「……む。見事な腕前だなホルバイン。オレもそれなりに強いつもりではあったのだが、モンスターとの戦いばかりではわからないこともある。やはり英雄王の街にやってきたのは正解だった」

 

「いやいや、オレ様もずいぶん勉強になったぜ。やっぱり雪山での戦いってヤツが足腰を鍛えたのか? ジェネラルを殴ったときとは違う、巨大な鋼の塊ってだけじゃねぇ柔らかさっつうか……とにかく全力で殴れねぇのはキツいな」

 

「どうにも雪の民は守備力が伸びにくいらしくてな。こうして技を活かした受け方を幼い頃から叩き込まれるのだ」

 

「ふ〜ん。オレ様も機会があれば雪山とやらに修行に行ってみっかねぇ? そういや第35階層からは雪原なんだっけか? ガキどもがもうちょい大きくなったら一緒に挑戦すっかな! だっはっは!」

 

「……ロプトの長から子どもたちの事情は聞いた。女神教団は弱き立場の者を救うために活動していると聞いていたが」

 

「襲われたのはマジだ。たぶん、ガキどもを生贄にしてヤベェ儀式をしてるってのもな。胸クソ悪ィ話だが、いくらオレ様が強いからって女神教団をどうこうするほどの力なんざねぇ。せめて、手の届く範囲だけでも守護ってやらねぇとな。そこんとこ勘違いしてっと、その最低限すら取りこぼすことになっちまう」

 

「子どもたちを理不尽な脅威から守ることは大人の役目だ。狩りを教えるのもな。オレも雪の民の誇りに誓い最大限の協力をしよう」

 

「おう! よろしくな! ……しかしアレだな、オレ様は襲撃の現場にいたからともかくよぉ、お前、よく教主様の言うこと信じる気になったな? あんだけ周りを奴隷に囲まれてるってのによ」

 

「外界に旅立つための準備として、奴隷という忌まわしい文化についても知識はある。その上で判断した。一応確認するが……主人が奴隷に命令するときには、右眼に刻まれた隷属の紋章が真紅に輝くのだな?」

 

「おうよ。ロプト教団の奴隷たちの右眼が光ってるところなんざほとんど見たことねぇが、それであってるぜ」

 

「光るはずがないだろうということはオレでもわかる。主人が奴隷に向かって“すまないが客人に飲み物の用意を頼む”とは普通は言うまい。そもそも、盗み食いをした者を客人として扱うのがどうかしている」

 

「カカッ! 違いねぇわ」




 武器レベルが高いからといって、貴重な武器を持たせるのかは別の話。それがエムブレマー(偏見)

 ソール・カティとか貴重すぎて使えなかったよね! ねッ!
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