百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 世界観の説明に便利!


作者的には第39階層みたいにボス前は夢回でいいんじゃないかと思ってる。

 夢を見た。

 

 またこのパターンですかそうですか。これから暴走竜帝に挑む俺に対してなにかを期待しているのかもしれないが、やり方が回りくどいというかなんというか。こういうのは現地人だからこそ効果的なのであって俺みたいな転移者や転生者はメタ読みするだけで神秘なんて感じないけど? 

 

 

『……本当に、よろしいのですね?』

 

『はい、ナーガ様。わたしで力になれるのでしたら、それでみんなを守ることができるのであれば、喜んで』

 

『この紋章石を手にした瞬間から、人々は貴女に“英雄であること”を求め続けることでしょう。そして貴女という個人の存在は──』

 

『構いません。それに、世界が滅んでしまえばわたしが人々にどんな名前で呼ばれるとか、そういうのも関係なくなっちゃいますよね?』

 

『それは、そうですが……』

 

 

 イベントシーンに音声が追加された、だと……ッ!? 丁寧にアップデートしてくるじゃないか、コレもう夢を見せてる存在が俺をこの世界に召喚してるだろどう考えても。というかゲームデータを引き継げるだけの干渉する力あるのになんで情報はこんなストーリー仕立てで伝えてくるんだよ箇条書きで紙に書いて渡すとかじゃダメなん? 

 

 

『まぁ、わたしだけが異界の英雄の名前を引き継ぐとかだったらもう少し迷ったかもしれませんけど……仲間が、いますから!』

 

『……貴女の決意に感謝します、人の子よ。では、この神剣ファルシオンは貴女に託しましょう。ですが、決して無闇に命を捨てるようなことだけはしないでください。英雄である以前に貴女もまた大切なひとつの命なのですから』

 

『お気遣い、ありがとうございますナーガ様。でも大丈夫ですよ、自分の命と引き換えにして〜、なんてコトできるほどの勇気はありませんから。さすがに死ぬのはイヤですし。とにかく、できる範囲で頑張ってみます。()()()()()()()()()()()()()()!』

 

 

 ほーん。()()()()()、ね。

 

 なるほどゲームシステムと世界観をそういう形で辻褄を合わせる感じか。あくまでここは同人ゲームの世界であって、原作シリーズは異世界でありキャラクターたちは異世界の英雄であると。

 なんらかの世界規模の? とにかく人間がヤバいって感じの状況を打破するためにナーガ様が力だけ借りることができるよう上手いこと調整したのかな。とりあえずこの世界の過去にシリーズのアレとかコレが存在したワケではないようだ。

 

 原作キャラの名前が使われた紋章石と、それぞれに対応する武器を持たせて“なりきり”は誰もが思いつく遊びだろう。特定の名前で成長率にボーナスを加算するようにしようか、なんて案もスタッフの間で出たらしいし。

 もっとも、それやると自由度が損なわれるしキャラクターへの愛を確かめたいなら素直に原作ゲームを遊んだほうがいいって却下されたらしいが。RTAでメンバー全員が男女の区別もなく『良成長』の恩恵目当てで村人のドニだらけとかそれはそれでネタとして面白そうではあるけれど。

 

 

『ところでナーガ様』

 

『どうしました?』

 

 うん? 

 

『この仮面にはどんな意味があるのですか?』

 

『あぁ、それはですね。どうやら異世界ではマルスという名の英雄が男女それぞれ存在するようなのです。女性のマルスはその仮面を着用しているのですが、なんらかの意味があるのであればやはり貴女も仮面を着用したほうがよいかと思いまして』

 

『へー。なんかカッコいいですね。仮面で素顔を隠した謎の英雄マルスッ! どうせなら仲間たちにも似たような仮面とかお揃いで着けてもらうのもいいな〜』

 

『ふむ……英雄王マルスは私と同じ名の神から加護のようなものを得ているようですし、この仮面に儀式的な意味があるならあるいは……?』

 

 このくだり俺に見せる必要ある? 

 

 

 ◯▢◯▢ー

 

 

「…………ふむ」

 

 前回よりはかなりマシな内容の夢だったな。特に“ゲームのシステム”しかない俺にとっては“この世界のシステム”を少しでも知ることができたってのは悪くない。

 

 ま、役に立てることができるかは別の話だけどね。

 

 例えばの話。王国の魔法学園には賢者パントの魔導書なるお宝があるらしいが、今回の夢を真実とするなら『烈火の剣』という作品に登場した魔導軍将パントその人が過去に存在したワケではない。あくまで『賢者パント』の紋章石を所持してパントの名前と一緒に歴代の賢者たちが受け継いできたという解釈もできる。

 で、その仮説が当たっていたとして塔の攻略に役に立つのか? ってことよ。むしろ対になっているはずの神器『業火の理・フォルブレイズ』についての言及がないってどういうことなの? って新しい疑問が出てきたぐらいだよ? ラノベの主人公じゃないんだから、ちょっとヒントを渡されたぐらいで芋づる式にポンポン攻略法やらアイディアやら思い付いたりなんてできるワケないだろいい加減にしろッ! 

 

 

 なので理解できるところの情報をひとつひとつ整理してみるとしよう。主観では偶然の出来事でも客観的には単純に条件が整ったが故の必然でしかないのだ。

 投げたボールがたまたま的に当たった、というのは本人の気持ちの問題。事実として筋肉の動き、ボールの動き、風の動きといった条件が整ったから当たるのだ。

 

 ま、普通はそんな簡単に割り切るなんてムリなんだろうけど。でもそれを言ったら考えるという行動そのものに意味がなくなっちゃうからね。ここは全力で見て見ぬフリするとしよう。

 

 

 んで。

 

 

 まずは……そうだな。前回と今回、どちらもこれからマムクートと戦うってタイミングで夢を見たことから竜人族やそれに類する何者かが転移者である俺にメッセージを送っていると仮定するとしよう。神器と紋章石、異界の知識、オーブの存在。それらを知る俺にとっては絶対に無視できない内容だったし全くの見当違いとはなるまい。

 誰がメッセージを送っているのか、その存在は俺にとって敵か味方か中立なのか、その辺りは判断が難しい。前回の夢なんかは人間同士の殺し合いを恐れるなら神器を使うなという警告とも受け取れるし、逆にリスクとリターンを考えて上手に利用しなければ取り返しのつかないことになるという忠告とも受け取れる。

 

 そして善意か悪意かの区別はもちろんだが……ゲームからアイテムを持ち込んでいる俺を利用したい、にしては今回の夢はちと微妙だ。少なくとも俺にはナーガ様が積極的に紋章石を活用したがっているようには見えなかった。むしろ、この世界の人間が異界の英雄の名を名乗ることをあまり好ましく思っていないような印象だったな。

 カモフラージュのために学生たちを英雄に仕立て上げようとしている俺に対する牽制、だとしてもやり方が薄味のような気がする。人間の醜い欲望も最後までタップリ詰め込んだ結果狡兎死して走狗烹らるファイアーエムブレムの世界であれば、もっと良心の呵責に訴えるようなエグい英雄の末路だって掃いて捨てても余るほどあるだろうに。

 

 

 そもそも俺に選択肢は無い。ゲーム引き継ぎの力を無効化されたら日本に帰れる可能性は綺麗サッパリ消えてしまうのだから、手駒にしたければいくらでも──その前提が間違っているのか? この世界の神たる存在にとっても俺はイレギュラーで、行動をコントロールしたくてもできないとか。

 

 

 ふーむ? 自己主張の激しいミニマップくんが()()()()の存在なのはわかるけど。前向きに捉えるならギブ・アンド・テイクの考え方もできるっちゃできる。イレギュラーで転移した貴方を助けてあげるから、その力でこの世界のトラブルもできる範囲で解決して欲しい……みたいな。

 うーん、ダメだな。冷静に客観的な視点とやらは俺にはどうにも難しいようだ。どうしても感情的な思考にばかり偏っちゃうね! 案外、そういうどーしようもない良くも悪くも人間らしいところを評価されてサポートしてくれているのかもしれないけれど。英雄に限らず完璧に近付けば近付くほど人間性は薄まるし。でも奴隷を集めて扱き使ってんだよなぁ〜。

 

 

 んー、結論ッ! 

 

 いまはまだ(考察とかの)そのときではないッ! 

 

 

 ヒントが圧倒的に足りねぇ。もっとだ、俺にはもっと夢が必要なんだ! こりゃ計画の見直しが必要、というか表の探索者クランを利用して様子見は意味が無くなっているかも。あとでリカールとスカーレルに頼んで調べてもらう必要があるが、俺だけ周回プレイ仕様なら敵の種類や配置が違うから情報の価値がかなり下がるんじゃない? 

 そして学生たちを英雄に仕立てるってほうは……どうかな。俺だけが悪目立ちするよりも大衆受けするわかりやすい英雄がいたほうがなにかあったときに功績を押し付けられるから便利ではあるが、ここから先のことを考えるとこちらもあまり意味が無いかもしれない。仮に竜帝を倒すごとに周回要素が強化されて牙を剥いてくる、みたいなことになれば第41階層から先は余計なことに構っている余裕なんて無くなるだろうし。

 

 

 はぁ〜、結局あれも保留これも保留か。

 

 当然と言えば当然だな、その場のテンションで思い付いた計画をいきなり冷静に見直そうとしたところで効果的なプランに修正できるほうがどうかしている。本物の天才なら可能なのかもしれないが。

 なんだかんだ分不相応の力に酔って調子に乗っていた、ということだなコレは。意味深な夢を見せることで冷水をブッ掛けてくれた謎の存在に感謝しなければ。自分は冷静だと思い込んでいる無能が率いる集団に未来なんてあるワケがない。

 

 情報を整理した結果、得られたのは自分が油断していたという事実だけとか情けなくて悲しくなってくるな〜。別にいいけどね? 大きな実害が出る前に気付けたと思えば。旅の恥は掻き捨て、なんてことわざもあるし。コレも無事日本に帰ることができれば嬉し恥ずかしな良い思い出になることだろう。

 あ、もうひとつ情報あるな。紋章石の扱いだ。夢で見たナーガ様の反応からして神剣ファルシオンを渡すことよりも、英雄王マルスの紋章石を受け取った少女が自身の名を捨ててマルスを名乗ることに忌避感ある雰囲気だったことを忘れちゃダメだべ。

 

 

 神器は、ギリセーフ。

 

 紋章石は、ギリアウト。

 

 

 いまのところその辺りの塩梅は事情がわからない。ただこの世界の神であるナーガ様が嫌がるほどのことがあるならば、部外者にしてただの人間でしかない俺が踏み込んでいい領域ではないということだ。火竜の王との戦いはニイメの紋章石を使って無事に勝利できたが、次の氷竜の王との戦いでも同じように巧くいくとは思わないほうがいいな。

 いざというときは死にたくないので手段を選ぶつもりはないが、やはり可能な範囲で部下に神器を使わせる必要があるかもしれない。紋章石を使えない状態ではステータスボーナスも低いし、質を高めることができないなら数で補うしかない。なぁに、こちとら正々堂々とした戦いなんて最初から眼中にないから一騎打ちを挑んでくる相手を弓で包囲してハリネズミにしてやることも躊躇いはしないぜ! 

 

 問題は包囲する相手が竜だから、半端な覚悟だとこっちがブレスで薙ぎ払われるということか。攻略の糸口はゲームと違ってブレスに晒されている間にジワジワHPが削られるので、俺の魔力ならリザーブで回復しながら押し返せることだな。

 フルパワーのボルガノン、あるいは火属性の神器であるファラフレイムやフォルブレイズでもブレスに対抗できるかもしれないが……今後のことを考えるとあまり得策ではないかもしれない。この世界の住人から見ればクソチートの持ち主でも、世界そのものから見れば俺の力はシステムの範囲内でしかないワケだし。

 

 俺がどうにかする前提の作戦は今回が最後だと思うべき、いや、俺がどうにかできたのは前回が偶然だったと気を引き締めるべき。うん、仮にも組織の長なんだからそれぐらいの危機感が必要だ。

 前向きに、とにかく物事をポジティブに考えよう。唯一無二の英雄になれないのであれば英雄にならなくてもいいし、テンプレのようにハーレムパーティーで世界最強の探索者クランを目指す必要だって無い。俺はただ、日本に帰るための行動を丁寧に積み重ねればいいだけなんだ。

 

 

 ……死にたく、ないなぁ。




 ちなみに作者はとあるシミュレーションゲームではレベルと装備のゴリ押しでバリバリに調子に乗ることが多いです。

 そのゲーム、ディスガイアって言うんですけどね。
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