百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 難易度の高いマップの前は誰だって稼ぎたくなる。作者だってそーする。ターン制限が99までしかない風花雪月には困っちゃうぜ。



第40階層挑戦の前に挟まる面倒そうなサブイベント。

 第40階層攻略に向けて実験の時間だオラァッ!! 

 

 まずは小手調べ。低階層で剣の武器レベルが成長していない司祭のユーウェインくんに命令してアーマーキラーを持たせてアーマーナイトに攻撃をさせてみる。本人はもの凄く嫌がっていたが、HP的に囲んで殴られても簡単には死なないので問題はない。そもそも本当に危険な状況になったらちゃんと助けるから安心したまえよ。

 結果。武器レベルが不足していても重装特効は微妙に発揮されるようだ。これはとてもよろしい結果である。ま、本人の力が控えめで体格的に筋肉も足りていないせいか情けない斬撃ではあったけどね。予備の武器として細身の剣とか渡してんのにトレーニングをサボってるからだぞ? だがそのおかげで検証ができたので良しとしておこう。

 

 で。

 

 周囲の反応からわかったことはふたつ。ひとつ、どうやら武器レベルが不足していても武器で“殴る”ことができることはこの世界の常識であるようだ。無理やり振り回しても武器の威力にマイナス補正が働くから誰もわざわざ使おうとしないというだけで。

 そしてもうひとつ、ある意味こちらが本命だったワケだが……武器レベルが足りなくても特効が発動することまでは知らなかったらしい。そりゃ武器レベル足りなくて威力も効果も下がるのに貴重な特殊能力付きの武器を使おう任せようなんて発想にはならんわな。

 

 知識や経験が無くても道具を手に持つことはできる。但し、それを効果的に使えるかどうかは別の話。

 

 ゲーム転生系あるある、当たり前だと思っていたシステム部分での認識の違いはやはり存在していたな。俺の“装備できない”と部下の“装備できない”は意味が違っていたワケだ。それでも問題なく会話が成立していたのには笑うしかない。キルソードは基本的に剣士系しか装備できない武器だから〜とか大真面目に考えていた過去の俺、ドンマイ! 

 

 

 気を取り直して、さぁここからが本番だ。

 

 武器レベルが足りなくても特殊効果は一応機能することはわかった。なら、神器もまた武器レベルが足りなくても神竜の鱗を貫くことができると期待しても良いのではなかろうか? 

 紋章石を持たせれば簡単に解決できる問題ではあるが、万が一を考えるとあまり使いたくはない。改めていくつかの紋章石を手に取ってみた感想としては過剰に警戒する必要はなさそうな雰囲気だったけど。

 

 いや、極端な話どうしても特効に頼れないなら()()()()()()()()()()()()()ワケで。目ン玉とかブレス吐き出す直前の口の中とか。スナイパーに忍者に絡繰師までいるんだぜ? とんでもなく難易度が高いというだけで、システムの壁に喧嘩を売るなら物理的に柔らかそうな部分を突いてみるのは試す価値ありますぜ! 

 

 

「神竜の塔を攻略したいのに暴走した竜の王が邪魔で先に進めない。冒険者なら誰でも1度は経験しますね? そんなあるあるでお困りの方にオススメの武器がこちら、神器【グラディウス】です。こちらの商品はアンナ商会から購入したレプリカという設定にしましたが、きっと神竜の鱗も貫いてくれるでしょう。アストラ、やれ」

 

「……教主様、コレは本当にレプリカなのか?」

 

「貴様、奴隷の分際で主人の言葉に反抗しようなどと」

 

「奴隷になる前より槍の扱いが得意になったことで目利きも成長している、つもりだ。そしてこのグラディウスからはレプリカとは思えない神聖で強力な気配が伝わってくる。あと、上手く言えないが闇市の催し物で寸劇を発表する子供たちのような気配も」

 

「しかしそれは、お前の感想だな? 本物のグラディウスは帝国が保管していることになっているのだから必然的にソレはレプリカということになる。実に簡単な証明だと思わんかね?」

 

「異議アリッ! ですわッ!」

 

「マルフィーサ、貴様もか」

 

「確かに教主様の仰っしゃる通り、帝国が所有していることになっているグラディウスが本物であればそうなのでしょう。しかし、帝国が所有しているグラディウスこそがレプリカである可能性は否定できないのではありませんか?」

 

「フッ……なにを言い出すかと思えば。私が英雄王の街に到着するより先に向こうが所有しているという話になっているのだから、時系列を鑑みても向こうが本物であることは確定的に明らかではないか」

 

「残念ですが教主様、それだけでは────帝国のグラディウスが偽物ではない、という証明にもなりません」

 

「なん……だと……ッ?!」

 

「帝国のグラディウスが偽物であると証明できない以上ッ! 教主様がご用意なさりアストラ様にお渡ししたグラディウスが本物ではないとは断言できませんッ! どうですかブラダマンテ、完璧な推理でしょうッ!」

 

「え? あ、ハイ。そうです、ね……?」

 

「はっはっは! これはマルフィーサ様の発言に同意せざるを得ませんな! 残念ですが教主様、そのグラディウスをレプリカと主張するのは難しいかと思われます。残念でしたな!」

 

「くっ、デルムッドまでもか! お、おのれー!」

 

 

「……あの。教主様から忍びとしての視点から意見が欲しいと頼まれて来たのですが、これは?」

 

「そらウチらはロプト教団、由緒正しい背信者の集まりやで? ほなら異端審問会のひとつやふたつぐらい開くやろ。だいたい教主さんがノリと勢いでテキトーに始めて論破されて罰ゲームまでが定番の流れやな」

 

「私の知る異端審問とはだいぶ……こう、違いますね。立場を理由に逃げることをせず唐辛子をタップリ入れた野菜ジュースを飲み干す姿はご立派だとは思いますが」

 

「うーむ、不味い。魔防に3ポイント一時的に加算される味がする。さて、セイカイ。本来であれば依頼する側である私が迎えに行くのが礼儀だったところをわざわざすまないね」

 

「ロプト教団は屋台組合のお得意様ですから、謝罪は必要ありません。なのでその魔防が強化されるレシピを是非とも教えていただきたいのですが」

 

「適当に混ぜたらこうなったというだけだ。もう思い出せんよ。まぁ、そんなことよりも神器についてだ。先の茶番は実のところ無意味というワケでもない。仮にこのグラディウスが本物の神器だとして、武器レベル不足でどの程度扱えるものか……ひとつ、部下たちに振り回させてみようと思ってね。しかし私たちだけの評価では客観性に欠ける」

 

「なので私から忌憚のない意見を、ということですね」

 

「邪教徒の集団が本物の神器を複数所持している、となればお前も御屋形様とやらに報告せねばなるまい? 安心しろ、報告の内容が薄まることのないよう特別に【雷神刀】も用意してある」

 

「────ッ!?」

 

 

 雰囲気変わったな。

 

 列島諸国、あれだけジャパニーズ的要素がモリモリなら白夜王国関連の神器にも縁があって当然だろうと予測していたが大当たりだったようだ。そもそも、いつだったかなんかの話題のついでに白夜の剣聖リョウマって単語出てた気がするからな。英雄の名前が飛び出す話題だ、きっと真面目な話し合いの最中だったに違いない。決して大根だのふんどしだのといった内容ではないよ? 覚えてないけど

 

 ほんで、たぶん蕎麦屋の優しいお兄さんから鋭い忍びの表情に切り替わっているのだろう。知らんけど。だって俺にはただ驚いているようにしか見えないし。簡単に感情を表に出して腹を探られるようでは忍びとしてはまだまだ未熟、下忍レベル5ぐらいなんだろうきっと。

 

 

「あるじ殿ー。私にも貸して見せて触らせてくだされー」

 

「仕方ないなぁソードマスターくんは。ほら、齧るなよ」

 

「おほー♪ …………ほぉ?」

 

 

 ヒュンヒュンと雷を纏う刀を振り回す女性ソドマス。うむ、なんかハイレベルな技術的なヤツなのは雰囲気でわかるぞ。剣舞とか演武ってヤツだろ? 俺は詳しいんだ。周りで見てる皆の表情が“いまはそういう空気の場面”って教えてくれているからな! 

 ある程度ブンブンして気が済んだのか、なんとなく色っぽい表情で挑発的に笑うアンリ。それを正面から受けてニヤリと笑いグラディウスを構えるアストラ。なるほど、これが誘い受けってヤツか。原作を考慮するならここは【ジークフリート】を用意しても面白かったのかもしれない。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

「ダメだな」

「ダメですなぁ」

 

「ダメか。セイカイ」

 

「武器レベル不足によるマイナス補正は無視できませんね。神器でも、というよりは神器だからこそでしょう。良く動けているよう見えなくもないですが、これなら私ひとりで同時に相手しても余裕です。格下相手ならば問題なく勝てるでしょうが、それならレプリカでも、なんなら鋼装備でも充分なのでますます意味がない」

 

 

 くそぅ、アーマーキラーめ半端な希望を持たせて俺を弄びやがって。アレか? 原作シリーズでほとんど使ったことがなくて存在そのものを忘れて売却すらせず輸送隊の肥やしにしたことへの意趣返しか? だってしょうがないじゃんアーマー系なら魔法ユニットの経験値にしたほうがウマ味なんだから。弱い魔法なら軽くて追撃もでるし命中も安定してるしでわざわざ剣士系ユニットぶつける利点がねーんだもの。

 一応、剣レベルやら槍レベルに補正のかかる騎馬の腕輪で誤魔化すこともできるだろうが……アストラはともかくアンリはなぁ。歩兵やってた剣士をいきなり騎兵にして撤退不可のボス戦に連れて行くとかありえんなー。それなら正攻法で鍛えて神器を使えるようになるまでレベル上げしてりゃいいじゃん。うん、そうだな。別にまだまだ焦るようなトラブルとか起きてないと思い込んで、なるべくリスクを排除して次の竜帝に挑むほうがいい。使った時間と資源を無駄にすることもないだろう。

 

 

「便利な道具があっても使いこなせる人材がいない。時間で解決できる問題であるとわかっていても、命のやり取りを前にして強力な武器を持て余すことになるとはな。なんとも頭の痛い話だよ」

 

「私としては列島諸国の聖殿に奉納されているはずの国宝が偽物である可能性が出てきたことについて非常に頭が痛いですが。忍びとして事実を報告しないワケにもいかないので尚更です」

 

「私が盗んだ、とは言わんのだね」

 

「先ほどの教主様と皆様の異端審問会と似たようなモノですよ。御屋形様や他の御歴々がどのように判断するかまでは私の知るところではありませんが」

 

 

 俺が盗んだという明確な証拠が無いのであれば疑ってもしょうがない、ってコト? まぁね、魔法学園とアルバと指輪の話と一緒だもんね。ここで俺が盗んだことを認めるということは、列島諸国の人間は国宝が盗まれたことにも気づけない間抜けの集まりですと宣言するようなもんだからね。

 実際問題、仮に偽物にすり替わっていたとして国宝の保管状態を知らぬ存ぜぬでは困るんだろうなぁ。俺が英雄王の街で活動を始めたタイミングなんてもちろん把握しているだろうし、そこから今日まで誰ひとり異変に気が付かないってのも変な話だ。それもまた、管理していた人間が無能だっていう証明になるし。

 

 

「まぁ、その辺りは私の都合など気にせず自分の役目を果たすといい。部下でもない信徒でもない人間の行動に口出しするつもりもないのでね」

 

「では御言葉に甘えて、次の戦いにも参加させていただくとしましょう。本物の雷神刀の威力がどのようなものか確かめられないのは残念ですが、教主様がほかにどのような切り札を持っているのか……今後のためにも探る必要がありますので」

 

「そうか。ならば、期待ハズレだとがっかりさせてしまわぬよう気をつけなければな。しかし……もう少し、悪足掻きをしてみることにしたのでね。挑戦はしばらく見送りだよ。せっかく神器を持たせて戦わせる方針にしたのだから、武器レベルをどうにかするのが先決だろう」

 

 

 そのためにはレベル上げとクラスチェンジが必要なのだが、そこはコツコツ戦ってりゃ解決する問題だって分かりきってるからな。初期メンだけでも最上級職になれりゃ剣、槍、斧、弓、魔法と一通り揃うからどうにでもなる。場合によってはロード系の名前がズラリとならぶことになるのは爽快を通り越して反則臭ェが仕方ない。だって死にたくないし。

 

 あとはどの階層でレベル上げするのが収入と支出のバランスがいいかなって話になるが……。

 

 

「ご主人様。表の探索者ギルドの職員の方がお帰りになりました」

 

「ご苦労だったな。それで、ルカから見てどうだった?」

 

 

 ミニマップくんが敵対勢力を示す赤で表示していたが、単純な殴り合いならともかく会話での駆け引きでは絶対に勝てない。相手が非戦闘員でないのも面倒だ。なので適材適所ということでルカに任せた来客の相手が終わったようだ。さてはて? 

 

 

「風評に惑わされることなく、わたくしたちが弱者に手を差し伸べていることをしっかり下調べしていた部分は評価できます。演技も決して悪くはありません。ですが、まぁ……ニオイまでは誤魔化せていませんでしたので合格点には遠いですね」

 

「つまりは偽物の依頼を持ち込んできた、と。さて、それほどまで恨まれる理由はなんだろうね? 疎まれる理由であれば心当たりが多すぎてイチイチ数えるのも面倒だが」

 

「内容としては山賊の被害を受けている村からの救援依頼でした。第30階層から先が解放されたことで探索者クランがそちらに集中してしまい、外から英雄王の街に持ち込まれる依頼が後回しになっているとのことです」

 

「私が雑に闇市の住人たちへ施しを行なっていることまで調べられている、という前提であれば不思議でもない……か。ふむ。リカール、スカーレル」

 

「あいよ」

「ハァイ」

 

「仕事の時間だ。表の探索者クランで遠出の準備をしている連中を探って欲しい。恐らくはロプト教団に持ち込まれた依頼と同じ目的地で、別の内容を────()()()()()()()()()()()()()()()調()()、といった具合の依頼を受けている、あるいは持ち込まれているクランがあるかもしれん」

 

「あー、そういう。しかし教主様、そこまでわかってるなら依頼なんて断っちまってもいいんじゃないですかね?」

 

「黒幕がわからない。末端を処理しても次の捨て札を使われるだけだ。ならば、暴力と恐怖を存分に活用して黙らせるほうが面倒が少ない。積極的に揉め事を起こしたいワケではないが、売られた喧嘩は高く買ってやらねばなるまい? せっかく時間と予算を使って準備をしてくれるのだからね」

 

 

 バカめ。日本のエンタメ業界ではこの手のトラップなんて主人公側を窮地に追い込む手段として定番も定番だって知らないようだな? 知ってたら逆に怖いけど。

 向こうの大目標がどこに設定されているのかは不明だが、小目標がロプト教団の悪評を英雄王の街全体に流布することなのは間違っていないはず。とっくの昔に、それこそ奴隷まみれで塔を攻略してる時点でストップ安なんじゃねぇの? って気もするのにまだ足りぬと申すか。

 

 

「アンナさんにも連絡を。ロプト教団との繋がりを理由にアンナ商会を貶めるほうが本命の可能性もある。必要ならばロプト教団を、そして私の名を自由に使い捨ててくれて構わんと伝えてくれ」

 

「では、アンナ様への報告はわたくしが。しかしご主人様、それでもアンナ商会はロプト教団を信じると返答があった場合はどのようになさるのですか?」

 

「空を飛べる人員を貸してくれるよう交渉を。私たちが到着するより先に目的地の村が壊滅していることを確認できればそれだけでも動きやすくなる。お互いにな」

 

「アラアラ、なんだか物騒で血生臭いピクニックになりそうね? この場合、連中のうっかりで生き残っちゃった村人がいたりしたら運がいいのか悪いのか、どっちになるのかしら」

 

「さてな。だが、もしもその生き残りとやらがいて、仮に真犯人を目撃していたのであれば……保護する価値もある、かもしれない。まぁ、私なら襲撃者に予めロプト教団を名乗らせておくがね。そして意図的に生存者を散らして情報を拡散する」

 

「教主様はクランリーダーを辞めることになっても忍びとして生きていけそうですね」

 

「我がロプト教団は女神教団と敵対関係にある模範的極悪人集団だよ。その教主である私が卑怯で卑劣な手段を躊躇うはずがなかろう。正義の味方は大衆に失望されるような真似は慎まねばならないが、邪教徒の親玉が気にするのは自己利益だけで良いのだからね」

 

 

 表の探索者クランとの衝突、どれぐらい戦えるのか試しておくのも悪くない。というか今後の活動を思えばきっと必要なことだろう。後始末のことまで考えるとすっごい嫌だけど。チートとか関係なく泥沼になる未来しか見えん。

 それでもいつかは避けて通れない道ならば、早めにイベントを消化しておくほうが気持ちが楽ってなもんだ。アレだよ、ボスも全部倒して制圧するだけの状態にしてから闘技場で稼いだほうが気持ちが楽になるってアレだよ。そしてリセットして攻略しなおすまでセットってね! いやん。




 封印の剣ではよくやらかしてました。エキドナをレベル20まで育て終わって、じゃあ次はクレインお兄様でもと欲張ったのがダメだったらしい。妹はいつも獅子奮迅の活躍してくれるのになー。
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