百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 作品が進むごとに勇者の扱いが微妙に感じるのは私の気のせいだと信じたい。オグマはすごく強かったのになー。



☆外伝☆復讐の小さな勇者(怒りもあるよ!)

 村の壊滅確認、ヨシッ! ヨシじゃねーよ犠牲になった人たちおるんやぞバカ野郎。すまない、罪なき人々よ。日本に帰還するまではたぶん覚えているから女神ミラに祈りを捧げておこう。きっと下手人を殴り飛ばすことになっても急にくしゃみとかして視線を逸らしてくれるに違いない。

 

 

「協力、感謝する。一応確認しておくが、足跡は残さないよう気をつけてくれただろうか?」

 

「もちろんです司祭様。せっかくのお心遣いですからね、私も仲間を守るためですからちゃんと遠目の確認だけで済ませてきました。ま、遠目でもわかるほどヒドい有り様だったとも言えるんですけど」

 

「そうか。ならばこれも縁だ、弔いぐらいはしてやらねばならんな。邪教徒の司祭の祈りになってしまう部分は我慢してもらうとしよう。アンナさんにも感謝と一緒によろしく伝えておいてくれ」

 

「かしこまり、です。んで、本当にいいんですか? アンナ商会のお抱えとはいえ私たちも傭兵としてのプライドあるんで、ロプト教団の無実を訴えるのも吝かじゃないっていうか、ほら。ねぇ?」

 

「私は既に要件は伝えたつもりだが」

 

「はいは〜い。余計なコト言っちゃってゴメンちゃいませ♪ 取り敢えず、傭兵って生き物にとって報酬は大事ですけど……全員が全員、利益だけで動くワケじゃないってコトだけでも覚えて帰ってくださ〜い。────撤収だッ! 低空を維持しルートを外れるなッ! 他の探索者クランに気取られるなよッ!!」

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

 

 複数の雷撃を同時に放てる雷魔法【ライトニング】の指輪と、威力は鋼の槍ほどだが必殺の一撃が出やすいキラーランスを装備したダークペガサスを筆頭に、銀の槍を装備したファルコンナイトの集団。

 アンナ商会の空路輸送部隊という建前に対して殺意高いな? 制空権とかエグいことなりそう。もちろん使い捨てとはいえ飛行特効を無効するデルフィのお守りも全員が所持しているという徹底ぶり。やはり中立とは綺麗事ではなく武力でこそ保証されるんやな、って。

 

 

「我々を貶めるために犠牲になったのではなく、犠牲が出た村を利用しただけであることを願いたいところですな。もしそうでなければ自分は表の探索者ギルドの職員を殴り殺してしまうかもしれません」

 

「どんな理由であろうと犠牲になった者には関係ないよ。税として財産を奪う騎士よりも盗品でも施しを与えてくれる義賊が正義の使者として持て囃されるようにな」

 

 

 騎士道精神なんて一般人には噛み続けて味ないなったガムより価値が無いねぇ。アレは顎を動かしてるだけでも眠気覚ましになるもの。

 ゲーム的には“いかにも騎士っていう騎士だ”とスポットライトが当てられるカミュやエルトシャンだって民が苦しんでも結局は騎士として神器振り回すほうが大事なんじゃねーの? って見方もあるもの。

 

 

「それに個人の行動だけで組織全体を評価するのも視野が狭い考え方になるからね。もっとも、軽率な言動をしてくれる人員は交渉する上では逆に利用しやすいのかもしれないが。組織に所属して肩書を名乗っている、あるいは名乗らせているリスクというワケだ」

 

「身に覚えがあり過ぎて耳の痛い御言葉でありますな。まぁ、自分は国も仲間も部下も民すらをも捨ててアストラ様のために槍を振るうと自分自身の意志で決断しましたので、いまさら泣き言も綺麗事も口にするつもりはありませんが。と、言ったところで嘗ての部下と槍を交えることになれば手加減してしまうかもしれませんがな」

 

「人はそれもまた正義と呼ぶのだよデルムッド。どんな状況でも人間性を棄てない在り方もそれはそれで結構なことだ、いちいち細かく命令しなくても最適な行動を選択してくれるなら私も安心して帝国と戦争ができるというものだ。そんな面倒な未来は御免被るがね」

 

「確かに、帝国や陛下への忠義など特価大廉売で完売済みとはいえ、それでも見知った将兵が探索者クランひとつに手も足も出ず蹴散らされる姿はあまり見たくも……いや、しかし、その場合はワシの代わりに教導騎士となった者と戦える機会が……? いやぁ、この歳になっても楽しみというモノは案外尽きぬものですな! あっはっは!」

 

 

 おいバカやめろ変なフラグ立てんなジジィ。唯でさえオーブ探しのために女神教団と敵対してんのに、ロプト教団を名乗りながら騎士の国とドンパチなんてしてられっかよ。そもそも個人の集団と国家で戦争なんて成立するワケないだろいい加減にしろッ! 

 それでも、万が一、仮に、もしも、国家レベルの騎士団と戦わなきゃならなくなったら……う〜ん、転移で移動しながらメガクエイクとメティオで出鼻を挫いたところにバサークの杖で飛行ユニットを狙い撃ちにして戦場を混乱させた隙に敵本陣にメガレスキューで部下を全員呼び寄せて電撃制圧とか?

 

 戦略もクソもない、大半のラノベと変わらないチートによるゴリ押し。僕にとって面白味のない戦い方が異世界転移の証だと思う。

 

 

 ◯□◯□ー

 

 

 臭ェ。下水道の近くを通るときの半笑いできる悪臭じゃなく、不愉快でゲロ吐きそうなタイプの臭さだコレは。飼い猫が放置しやがったネズミの死骸よりも酷い。

 もしも感染症を題材にした映画の登場人物なら防護服を脱いで胃の中をひっくり返しそうなほど酷い。いや、防護服越しにはニオイはしないかさすがに。でも視覚効果は抜群だゾ☆ オェッ

 

 せめて弔いぐらいは〜、なんて軽く考えてた自分を説得したい気分だ。しかし主人の提案を奴隷が断れるはずもなく全員が役割分担をサクサクと話し合いしてるから言い出しっぺの俺が投げ出すワケにもいかないっていうね! 

 

 ……いや、作業は中断せなアカンかも。ミニマップくんに友好的な中立勢力の緑点があるわ。それもふたつ。さすがに優先順位は生きている人間だろう。緑なら村人の可能性も高いし。 

 

 

「生存者の気配がするな。少し、様子を見てくるとしよう。皆、村人たちの弔いは一旦手を止めて周囲の警戒を。グラナ、スカーレル、護衛を頼む。アーリィ、お前もこい。場合によっては対話を任せる」

 

「この場合の護衛っていうのは、生存者が襲い掛かってくるパターンを想定すればいいのかしら?」

 

「この村、ヤられちゃったのは昨日今日じゃなさそうだもの、緊張が続いて精神が参ってるならソレも全然あるわよね〜」

 

「つまりウチの役目はそこんトコに備えてか。そら教主さんの見た目はちょいと刺激的っちゅーか、胡散臭いもんなぁ」

 

 

 友好的らしいから大丈夫だとは思うけど一応ね。持ち込んだアイテムはどこでも使えるけど持ち込んだ知識は神竜の塔でしか役に立たない、つーかマス目とか関係ないから戦闘でもあんまり役に立ってねぇし。

 安全確認は実際大事、急に物影からメイド服を着た仮面のナイスガイが飛び出してくることだってあるかもしれないんだから警戒心なんてなんぼあってもいいですからね! 

 

 ほんで。

 

 

「……教主様、倒れてるバトルモンクの男。彼、女神教団の暗部よ。戦闘力は高いけど命令違反がちょくちょくあるからってグレー扱いされてたわね」

 

「ならばボロボロなりに手当てをしたのは、こちらを睨みながらも決して男の腕を離さない目の死んでいる少年か。山賊から少年を護るために負傷したのか、それとも……命令違反の結果、少年が助かり男が瀕死になったのか。まぁ、このどちらかなのだろうね」

 

 

 ファイアーエムブレムの同人ゲーム的には十中八九、後者だと思うけど。アレだろ? いままでは子どもが生贄用に連れ去られてる場面を見ても葛藤するだけだったり自分が楽になりたくて見逃すことで精神のバランスを保ってたところに身内にそっくりな少年を殺さなくちゃいけなくなって逆らったとかそーゆー流れなんじゃないの? 俺は詳しいんだ、日本人だから。

 

 

「……誰、か……そこに……いる……のか……?」

 

「タダの通りすがりだよ。これも縁だ、なにか言い残すことはあるかね?」

 

「そう、かよ……なら、そこに、いる……だろう、ガキのことを……たの、む……ぜ……。せめ、て、あん……ぜん……な、ばしょに、よ? つれて……めがみ、きょうだん、いがいで……よろし、く……な……」

 

「いいだろう。では対価として貴様の命を貰うぞ」

 

「あぁ……? オレの、いのち、だと……?」

 

「子どもひとりの命と瀕死の大人の命の交換。取引としてはお手頃価格だと思うが」

 

「へ、へへ……ッ! こんな、くたばり……そこないで……よければ……すきに、しや、がれ……。かん、しゃ、する……ぜ……」

 

 

 はい言質いただきましたー。

 

 命を貰うとは、どういう意味かって? そら隷属の紋章を刻んで奴隷にしてからリカバーの杖で全回復させるに決まってんじゃん。

 バトルモンク、戦いながら杖も使えるユニットという部分ではロイヤルナイトに近いけど、歩兵と騎兵では活躍する場面も違ってくる。なんならエルファイアーを拳に纏わせて殴るとかできれば氷竜との戦いでも活躍してくれる、かもしれない。

 

 

「────ッ?! うぉ、マジかよ……こんな深手、ライブの杖でも間に合わねぇとばかり……ってか、お前はッ!?」

 

「はいストップ。いまのアタシはスカーレル、ロプト教団のために働く奴隷のひとりよ」

 

「ロプト、教団……だと……ッ!?」

 

 

「さて、少年。これから私たちはキミを保護するワケだが……これからどうしたいのか、それを考えることから始めようか」

 

「ボクのやりたいことは、もう、決まっています。女神教団のヤツらを殺したい。ボクの家族を、友だちを、みんなを笑いながら殺したアイツらを、今度はボクが殺します。命乞いをする神殿騎士を今度はボクが笑いながら殺してやる……ッ!!」

 

 

 おっふ。これは……女神教団の襲撃から俺たちが到着するまでの間に覚悟完了しちゃったパターンじゃねーか! うん、まぁ。だろうなと予想してたしほぼ確信していたけど、やっぱり女神教団の仕業だったか。

 

 

「ふむ、復讐か。よかろう、それもまたひとつの正義だ。ならば私はキミに選択肢を与えることができる。英雄王の街で自分自身の力でレベルを上げて強くなるか、それとも我らロプト教団の一員として女神教団と戦うか」

 

「ロプト教団……? 女神教団と、戦う……ロプト、教団……」

 

「もちろん、この場で決断する必要はない。まずはキミを英雄王の街まで連れて行く。表通りで居場所を探すもよし、闇市で働いてみるもよし、ひとりで足掻いてみて限界を感じてからロプト教団に参加するかどうか考えても遅くはない」

 

「ボクに……そこまでしてくれるのは、同情ですか? ボクのことが可哀想だから」

 

「キミのおかげで能力のある間抜けを奴隷として手札に加えることができたからね。そのお礼だよ。もちろん、キミがそんなものは不要だと言うのであれば、このまま我々は引き返すとしよう。安心したまえ、きっと優しい優しい探索者クランがキミを保護して────女神教団に助けを求めてくれるはずだ」

 

「────ッ!?」

 

 

「間抜け、ってオレのこと?」

 

「半端な覚悟で半端な真似して半端に死にかけて奴隷になるようなヤツなんて間抜けで充分じゃない?」

 

「ぐぅ……なんも言えねぇ……」

 

「身内が相手の言葉遊びはクソザコなのに他所様が相手だとバチクソ煽るやん教主さん。それも女神教団に家族を殺された子どもにそんなん言うたらアカンやろ常識的に考えて」

 

「ありもしない希望を無責任に見せるよりはいいんじゃない? 優しい言葉で救われる段階なんてとっくに通り過ぎてるでしょ、あの子。ロプト教団で世話してあげたほうが少しはマシな地獄で済むわよ」

 

 

「……わかりました。ボクも、その、みなさんのクランに入れてください。お役に立てるかはわかりませんが、できることを一所懸命がんばります!」

 

「そうか。ならば────」

 

 

 この少年にも念のため隷属の紋章を、と思ったが。もしかしてコレ、奴隷にしないほうが好都合なんじゃないか? 主に英雄学園に送り込むスパイとして。目の色に注意しなくてもいいから顔隠さんでいいし。

 シリウスとは違う立場で物事を見聞きして判断できる人材は必ず役に立つだろう。その実感はこの子にとっても精神の負担を減らしてくれるはず。復讐のためにロプト教団を利用するつもりでも、一方的に施しを受ける立場ってのは面白くないだろうからな。

 

 同世代の学生探索者との関わりで心の傷が癒える可能性も……あるかなぁ? 俺なら無理だよたぶん。怒りは長続きしないって言うけれど、憎しみは静かに心の底で澱み続けるんじゃないかな。

 他人にとっては笑い話みたいな子供時代の出来事も、本人がそれを許せないなら10年たっても20年たっても忘れないものだ。まして、この子は家族や友だちを含めた村の人たちを全部奪われてんだろ? どう考えても憎しみなんか消えねぇだろ。

 

 

「奴隷にするのは保留だな。お前に頼みたい仕事ができた。詳しくはホームに帰ってから話そう。取り敢えず、お前はコレまでの名前を捨て、今日からは【ガイウス】と名乗るように」

 

「ガイウス……それが、ボクの新しい名前……女神教団と、神殿騎士と戦うための……新しい名前……ッ!」

 

「そっちのお前は【レブロブス】だ。教団のことはスカーレルに聞け。私より奴隷たちのほうが色々と詳しいからな。なにかと話したいこともあるだろう、素面では口の滑りが悪いというなら泥酔するまで盛り上がって構わん」

 

「お? いいねぇ〜、さすが邪教徒のボスは話がわかる! 女神教団のお偉いさんは交渉の席で酒がどれだけ役立つのかを全然理解してなかったからよぉ〜! えーと、いまはスカーレルなんだっけ? イイ店、よろしく頼むぜ?」

 

「アタシもあんまり人のコト言えないけど、アンタ切り替え早いわね。ま、いいわ。列島諸国から入ってきたイイ具合の米酒を置いてるお店、知ってるから」

 

「グラナ、アーリィ」

 

「なに?」

「あいよー」

 

「ガイウスと一緒に姿を隠しておけ。この子の存在をほかの探索者クランの人間に知られたのでは計画に支障が出る」

 

「計画、ねぇ。それはいつもの思いつきじゃなくて?」

 

「今回は真面目な話だよ。あまり気は進まないがね」

 

 

 ガイウスを利用して偽りの聖女物語を組み立てて女神教団を誘き寄せる。大陸をあっちゃこっちゃ横断するのはシンプル面倒臭いので、なるべく大物を釣り上げて英雄王の街から離れず始末を着けようと思えば……オーラの指環、そしてレプリカのライナロックは必ず役に立つだろう。

 オーブを持ち出してくれれば万々歳だが、そっちはどうだろうな? 俺なら貴重品を持たされるのは嫌なので厳重に保管してて欲しいとか考えるけど、世の中には自分の手元に置いておかないと気が済まない人もいるからなぁ。部下をいちいち疑うくらいなら、俺みたいに奴隷にしちゃえばいいのにね! 正義の味方って大変だよな、常に手段を選ばないといけないんだから。

 

 生き残りの扱いはこれでよし。あとは偵察というか、呼んでもいない迷惑なお客さんがどんなもんかって話だが……お、帰ってきたな。飛竜が3匹。

 

 

「教主様、ただいま戻りました」

 

「ご苦労、ブラダマンテ。レナス、シルメリア、飛竜の具合はどうか?」

 

「思ったよりは反応が素直って感じですね。ただ、ファルコンナイトのクラス補正が効かないので翼を重く感じます。安定感があるって言えばそうなんですけど、実戦で使いこなせる気はしませんね。それなら、プルフ使わせて貰えるならドラマスなりますよ」

 

「物を運ぶときとか、仲間を救出するときなんかは活躍できそうな気はしますねー。ペガサスと違って爪もあれば握力も強いでしょうし。つまりは教主様の指示によりけり、って思っていただければみたいな?」

 

「そこはロプト教団の頭脳担当に期待しよう。それで?」

 

「ハッ。40人ほどの集団を確認しました。進行方向からこの村を目標地点としている可能性は高いかと思われます。それと、断言はできませんが、複数のクランから選抜されたパーティーの集まりであるかもしれません」

 

「根拠を聞こう」

 

「空からでもわかる程度に動きにまとまりがありませんでしたので、4人から5人のパーティー単位で活動していると仮定して観察してみたところ、それぞれの歩き方に納得できる様子が見られたので。最初は役割分担のことも考えましたが、私の偵察に気づいたときの反応があまりにもバラバラだったので……少なくとも、全体を統率する者は不在であるかと」

 

「少数精鋭で構成された集団、か。パーティー単位のスタンドプレーから生じるチームワークは厄介だが、統率が未熟で対空警戒も満足にできない程度であれば付け入る隙もあるだろうか?」

 

 

 ぶっちゃけ俺やほかの杖メンバーがリブローとリザーブを湯水の如く連打してれば簡単には負けないとは思うが。プレイヤー視点ならクソゲー呼ばわり不可避、でもキラー系の必殺には無力だと思えばなんにも安心できないけどね? 1パーセントを笑うものは1パーセントに泣かされるのだ。

 

 

「守りに徹するのであれば私ひとりでパーティーをひとつ、引き受けることも可能ですが? 共和国の騎士は他国とは少し趣が違うので、そういう戦い方も得意ですよ」

 

「ドラゴンマスターすら囮に使うとは、共和国とやらの戦力はなんとも贅沢なことだ」

 

「どちらかと言えば文化の違い、かもしれません。王族はいても他国の王政と同じというワケではありませんので、えぇと……小さな複数の国の集合体のようなもので、領主貴族の権限が強いと言いますか。とにかく、国内のトラブルで余計な遺恨を残さないように殲滅ではなく制圧を目的とした戦い方も得意なのです」

 

 

 ほーん。共和国ってそういう感じなの? 正直なところ、共和制とかそういう単語は聞いたことあるけど意味なんて考えたことねーや。っても、ここは同人ゲームの世界だから地球と同じかどうかなんてわかんないしどうでもいいけど。

 そんなことより、大事なのはこの世界では防御という素晴らしい行動コマンドが存在するということだ。敵対者にいらん情けをかけても自分の首を絞めるだけだが、手加減ができる場面なら本気の殴り合いするよりも心をへし折る方向で動いたほうが選択肢も増える。

 

 報告を聞き進めてみれば、最悪に厄介なパターンである“学生探索者の参加”は確認できなかったとのこと。よくそんなもん見分けつくなと思ったけど、ブラダマンテがそう言うのならそうなのだろう。視力に問題あるようじゃ飛行ユニットなんて務まらないだろうし。もしかしたらクラス補正で強化されてるかもしれん。アーチャーとかスナイパー辺りもあり得るんじゃない? 

 

 

「よろしい。ならば探索者たちは可能な範囲で生かしたまま制圧することにしよう。あくまで可能であれば、だ。状況的に難しいと判断したならその限りではない。危機に対する咄嗟の反応はどうにもならないだろうからね」

 

「交渉は不要ですか?」

 

「必要ない。理由がないし、ロプト教団は闇市以外では信用もないから意味がない。面倒な話し合いの時間を我慢してまで表の探索者クランに求めるようなモノもない。彼らに私が望むモノを用意することなど絶対に不可能なのだから期待もない」

 

「それはまた……万が一に備えて色々と準備をしていたリカール殿が退屈してしまいますね。交渉がどのような結果になろうとも教主様は楽しんでくれる、だからこそ最高に苦労する価値があると話していましたので」

 

「苦労は確実にしてもらうことになるから、安心するよう伝えておいてくれたまえ。複数の探索者クラン、複数の……か。パーティーメンバーが奴隷として闇市で働くことになったとき、物品も金銭も地位も名誉も信用でさえも必要としない私を相手にどのような態度を見せてくれるのか……実に楽しみだな?」




 後半へ続く。
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