百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
無事、最初のボスフロアを突破した結果……神竜の塔、完全攻略まで残り95階層となりました! うーん、先はまだまだ長い。ゲームデータ引き継ぎじゃなかったら心折れてるな、確実に。
どうせ十中八九、100階層攻略してハイ終わりとはならんだろうが。ナーガ様かロプトウス様のどちらか、あるいは両方に異変が起きたからこそ俺がこの世界に召喚された可能性あるし。
と、そんなことを心配するのは第90階層を突破してからでも遅くない。それよりも今後混ざり始める屋外マップの攻略について考えるのが先だ。
やはり移動と、それから索敵をどうにかしないと厳しい戦いを強いられることになりそうだ。ゲームのように敵側のユニットのステータスも全て確認できれば楽だったんだが……視界に入ってる相手のステータスを見ることができるだけマシなんだろうけど。
やはり騎兵、いまの俺たちには騎兵が必要なんだ。兵士がレベル10でクラスチェンジすれば各種ナイト系になれるし、自動的にアクセサリー枠に馬を召喚するための腕輪が装備されるのでわざわざ生きてる馬を買う必要もない。
なんならスキルを追加してくれるヤツも在庫あるから是非とも早めにレベルを上げたいところだ。力や速さなどのステータスを底上げするタイプはもちろん、森地形や砂地形の移動コストを1にしてくれるものまである。たぶんクラスチェンジ直後じゃステータス不足で装備できないだろうけど。
パラディン希望のディナダンあたりに経験値を集中させて……いや、でも性格的に偵察任務にあまり向いてなさそうな気も……しかし、何事にも初めてがあるのだから、期待を込めて経験させることも必要だろうし……う〜ん。
よし、ひとりでウンウン唸ってる暇があるなら本人に直接提案して聞いてみよう。子どもだろうがなんだろうが肩を並べて戦うなら相応に信頼してやるのが雇い主の責任ってものだ。
などと考えていたところ。
「その、司祭様。この人物は私の……槍の師匠のようなもので、幼い頃からなにかと世話になっていた男で……戦力として、期待できる人材なんだ。だから、そう! きっと司祭様も気に入ってくれると思う! 帝国騎士団でも──」
「まて、それ以上喋るな。このままだといらん情報まで出てきそうだ。……とにかく、お前はアストラの知り合いなんだな? この男が私の奴隷として神竜の塔攻略のための手駒として使われていることは聞いたのか?」
「もちろんですとも司祭殿。自分はこちらの……アストラ様のお側で槍を振るうことができるのであれば、身分や待遇に贅沢など望みません。見たところ、実に人間らしい生活を保証して下さっているようでありますし」
「貴重な戦力を無駄に消耗させるほうがどうかしていると思うがな。しかし、私の奴隷となるのであれば、アストラの世話ばかりを任せるつもりはないぞ」
「ハッハッハ! 確かに自分の忠義はアストラ様へと捧げておりますが、だからといって蝶よ花よと姫君のように守護ってやらねばなどとは考えておりませんぞ? むしろ、そのような甘えた態度で槍を持とうものなら……まずは、拳骨が必要でしょうな」
「う……ッ!?」
あら意外。真面目系と思いきや、アストラにも
「いいだろう。お前にも隷属の紋章と新しい名前をくれてやる。まずはステータスの確認を──ほぅ? ロイヤルナイトか! 腕輪はあるのか? 無ければランクDからランクSまで好きな物を貸してやる」
「おぉ! それはありがたいですなぁ! いや、流石に私物でもない騎馬の腕輪まで持ち出すのは忍びなかったものでして。それでは、剣の武器レベル補正を持つ黒鹿毛の腕輪などがございましたら」
「よかろう。存分に役立てろ。あとは……」
名前をどうしたものか。奴隷となった主君を追って、自らも隷属の紋章を受け入れる天晴な忠義にピッタリな名前となると──剣もそこそこだが槍が一番得意のようだし、丁度いいか? ちと縁起がよろしくない気もするけど。
「デルムッド。今日よりお前は騎士デルムッドだ。私に忠義を捧げる必要はないが、お前自身の騎士道に背くような真似は慎めよ? 紹介したアストラの立場が無くなるからな」
「ハッ! 仰せの通りにッ!」
いや〜儲け儲け! まさかこうも都合よく騎兵が手に入るとは! しかも上級職のロイヤルナイトですよ! ちょっとご年配な顔立ちなのがお助けポジションっぽくて成長率が心配になるが、即戦力というだけでも感謝感激雨あられってなもんだ。
最前線で戦える杖使いというのもポイント高い。ライブによる回復やマジックシールドによるサポートはもちろん、足の遅い味方をレスキューで前に運んだり、瀕死の味方をワープで後ろに下げることもできる。こいつはかなり戦略の幅が広がるぞ?
ま……バランスが良すぎてステータスの限界が低いのが弱点なんだが。同じ騎兵の上級職であるパラディンの力の限界が30に対してロイヤルナイトは23。エムブレマーならこの7ポイントの悩ましさを理解してくれるのではなかろうか。その代わりパラディンの魔力の限界が18なのに対して、ロイヤルナイトはこちらも23まで成長するので魔法武器を持たせれば充分戦力になる。
なんにせよ、力が18もあるし、鉄の槍を持たせるだけでも当分は無双できる強さだ。なんならステータス限界突破用のアイテム使って永続ステ強化の力の雫なり秘伝の書なり渡せば第100階層まで使えるだろう。
活躍しすぎてほかのメンバーに経験値が行き渡らなくなるようでは困るが……アストラの槍の師匠だったそうだし、騎士団とかいう単語もポロッと出てきたし、手加減ぐらいはできるんじゃないかな。もし厳しそうなら一歩下がったところからライブの杖で回復してもらうとしよう。
あ。そうだ。
「ディナダン、パーシバル」
『『はいッ!』』
「デルムッド、このふたりはそれぞれパラディンとグレートナイトを目指している。故郷の村に戻ったら自警団として人々を守りたいのだそうだ」
「ほぅ! それは実に素晴らしい目標ですな! それで、自分にこのヒヨッコどもに騎士の先達として指導をしてやれと? それは構いませんが、自分は加減はしても容赦はしない方針ですぞ? もちろん精神論を押しつけて潰すような真似はしませんが」
「どこまでも喰らいつくか、早々に音を上げるかは本人たち次第だ。ついでにユーウェインの……向こうで他人のフリをしている修道士の少年も鍛えてやれ。臆病なのは結構だが、足が竦んで逃げることさえままならない、などということがないようにな」
「ほぅ? それはそれは」
「ピィッ!?」
◯□◯□ー
第6階層は侵入地点の砦のほかには崩れた遺跡らしき壁が数ヶ所ほど、あとは見渡す限り草原と森が広がっていた。見通しが良く幻影兵の動きがよく見える──のはいいのだが、通路と小部屋で構成されていたフロアと違い集団が一斉に突撃してくる光景はなかなかに恐ろしいものがあった。
本来であれば、砦に立て篭もり迎撃するのが堅実な戦法なのかもしれないが──。
「そぉら! ワシの動きについてこれる者はおらんのか? ダッハッハッ!!」
黒鹿毛の馬に跨がり豪快に笑いながら銀の槍を掲げるデルムッド。彼が戦場を駆け回り幻影兵の一部を引き付けることで攻撃が集中することを防いでいた。
雇い主である司祭から与えられた「なるべく若手に経験値を譲るように」という指示に従い、後ろに下がるほどではないがターゲットが自分に集中するよう絶妙な力加減で幻影兵に反撃しつつ逃げ回っているのだ。
「おぉ〜、なんとも豪気なお方でございますなぁ。アストラ殿のお師匠様というだけあって、槍の扱いも実に見事なもので」
「鬱憤晴らし、って気分もあるじゃないの? アストラ共々なにやら色々とワケありのようだし。ま、俺っちとしては頼れる前衛が増えるのはいいことだと思ってるけどね」
最速でクラスチェンジを繰り返したと仮定しても推定レベルは20以上。上級職であるレベル5のロイヤルナイトが戦線を支えてくれたこともあり、第6階層の攻略はスムーズに完了した。
その日の夜。
「ふっ! はっ! せいっ!」
本物の騎士の戦いを間近で体験したことに影響を受けたのか、夕食を済ませたあともディナダンは休むことなく訓練用の木剣を一心不乱に振り続けていた。
「ディナダン、そろそろ休みなさいよ。いつまでも素振りしてたら明日に疲れが残っちゃうわよ?」
「そう、だなっ! ……ふぅ、よし。今日はこれぐらいにして──いや、パーシバル。せっかくだから、ちょっと相手してくれよ」
「別にいいけど、アンタ疲れてんじゃないの? 単純にアタシが有利になっちゃうんじゃない?」
「いいからいいから! 武器はお互いに槍な! いくぞ!」
「しょうがないわね〜。さ、かかってきなさい!」
…………。
…………。
「てぇぇぇぇいッ!!」
「く……ッ!?」
「これで、オレの勝ちだッ!」
「────甘い、わッ!」
「え? うわッ!?」
「踏み込みが、足りてないわよッ! たぁッ!!」
「だぁッ!? ……あー、くそ。また負けたぁ〜!!」
「そりゃ、アンタさっきまでずっと素振りしてたんでしょ? 疲れたまんま勝負したんだもの、アタシが勝つに決まってるじゃない」
「……また明日だ」
「え?」
「今日はもう大人しく寝る。だからまた明日、勝負だ! オレだって強くなってるんだ、今度こそぐぅの音も出ないぐらいオレが完璧に勝ってやるからな! じゃ、おやすみ!」
「……相変わらず、切り替えの早いヤツ。まったく、民芸品の木彫り細工とか、畑を荒らす動物を捕まえるための罠作りとか、アタシよりずっと器用なクセに。それでも女を相手に力で負けるのって、そんなに悔しいものなのかしら……?」