百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 風花雪月の帝国ルートの無しルナクラが楽し過ぎて辛い。もっと小まめにエガちゃんとお茶会しとけばよかった……。



☆外伝☆先輩はお助けパラディン・前編

「おはようございます教主様。この店のスープは具沢山なのはもちろんのこと、トウガラシとレモンの刺激が徹夜明けの頭によく染み込んで美味しくいただけますよ」

 

「今回は全面的に私の責任なので正直スマンと思っている。だから次の機会も是非とも活躍してくれ」

 

「えぇ、えぇ。ロプト教団はお得意様でございますから、この程度の苦労などいくらでも。事実、闇市管理会からも悪くない手間賃を頂いておりますので、えぇ」

 

「此方としてはロプト教団との揉め事を避けられるのであれば、此度の出費など大した問題ではありませんよ。まったく、幹部候補として目を掛けられていたことは知っていただろうに……余計な欲など抱くから」

 

 

 いつもの奴隷商人のオッサンと闇市管理会のニイちゃん、そしてワシの3人で徹夜明けのまま屋台で朝メシをしこたま食べることにした。しかし時間帯で言えば誰もが朝食などすっかり済ませ、発汗量の多い仕事をしている人たちは労働後の一服を楽しんでいるぐらいの時間帯である。

 大量の奴隷を仕入れて闇市に帰ったのにハイ解散なんて楽な話になるはずもない。しかも闇市の若い幹部候補が俺を利用するために接触してきて探索者だった者たちを引き取るとか言い出したから余計に面倒なことになった。もちろんミニマップくんが敵対的な中立勢力だと警告してくれたので気付いたってだけなんだが。

 

 でもね? 俺だって疲れてたんだよ。なんか書類を渡されたけどホイホイとサインしちゃってもしょうがないよね? ロプト教団の教主として了解しましたって仕方ないよね? だってそのほうが面倒を簡単に押し付けられるなって思ったんだよ。

 たぶん、その若手連中は俺が闇市の都合を優先するところを見ていて勘違いしちゃったんだろう。ロプト教団は自分たちより下の存在だって。だから俺は優しく彼ら彼女らに教えてあげることにしただけなんだ。その紙切れになにが書かれていようとも、お前たちがなにを根拠に正当性を主張しようとも、私がお前たちを敵と認識した瞬間から遠慮などしない……ってね! 

 

 えぇ、脅迫ですがなにか? まだ闇市に流れ着いたばかりのころならともかく、ここまで人員に余裕があるのに遠慮なんてするかよ。仲良くなぁなぁでやれているところにトラブルを好んで発生させるほど捻くれてはいないが、売られた喧嘩は高値で買ってやらにゃ組織の長としての面目が立たんぜよ。

 

 幹部候補だった人間がどうなったのかは知らないが、闇市管理会の人間が用意した契約書に俺が探索者クランの呼称でサインした事実は変わらない。よって契約書は無効にはならないが、俺と敵対する可能性を避けるためには奴隷たちの扱いは慎重に考えねばならない。

 これまでの積み重ねが、管理会にロプト教団と事を構えるべきではないという判断を引き出した。……の、だろうか? 自分ではそれなりに馴染もうと努力をしていたつもりだが、相手側がどう受け取ってくれるかなんてわからんものなー。でも向こうも旨味があるって理解してると思うんだよね。厄介な相手に貸しを作れるんだから。

 

 

「今回の対処、ロプト教団の教主を相手にどんな形で返済を要求してくるのか……恐れ慄きながら沙汰を待つしかないと思うとカツレツぐらいしか喉を通らんな。店員さん、おかわり。ライスも大盛りで」

 

「かしこまり〜」

 

「……ある意味、手前どもより教主様のほうが大変だったと思うのですがね、昨晩は。なんとも健啖なことでして」

 

「気にするだけ無駄でしょう。肩書きだけの御仁ではありませんから。まったく、連中もいい加減学習して欲しいのですがね?」

 

「なにを言う。動いたからこそ腹が減る。人は食わねば生きていけんのだ。腹が減っては戦はできぬ、という忌々しい言葉もあるだろう?」

 

 

 女神教団が動いていることを軽く考えていた過去の俺を叱りたい。結果的には間に合っているが、クロード神父たちのところにまた襲撃者がやってきたのだ。

 

 ステータスを覗いてみれば普通に強いし。暴走竜帝はムリでも、火竜の王なら倒せるレベルで強かった。

 アクセサリーの効果で成長率を上げつつ細々とドーピングしてクラスチェンジしてるウチのメンバーには全然届いていなかったが、アレなら炎のオーブも持ち出せるかもしれん。

 

 …………。  

 

 どっちだろうな? いつか見た夢が真実なのか、それとも本当は女神教団が第30階層を攻略していて秘匿していたのか。

 どちらでも辻褄合わせはできる。先取りされた影響で暴走竜帝が出てきた可能性、永くオーブが失われていたから暴走した可能性、周回プレイヤーの俺が到着したから暴走した可能性。

 

 まぁ、俺にとって重要なのは過程ではない。問題は女神教団が保有しているであろう炎のオーブを奪わなければ日本に帰る手段が探せない、という一点のみ。

 引き摺り出すことだってワンチャン、と思ってる。そのうち「アレレ〜? 第30階層の奥のほうに変な台座があるぞ〜?」みたいな話題が出てくれば、強欲で無駄に行動力のある誰かが持ち出してくれるかもしれない。

 

 出てこないならコッチで自作自演するまで。そのための仕込み、そのための謎の仮面神器レプリカ持ち先輩パラディン。マッチポンプってこういうときに使う言葉であってるのかな? そんなことより徹夜明けのとんかつうめー。

 

 

「表通りの探索者ギルドから闇市管理会への接触はあったかね?」

 

「いまのところは、なにも。しかし前代未聞の大失態ですからね、このまま知らぬ存ぜぬとはならないでしょう。教主様への働きかけを無かったことにすることはできても、各探索者クランへの依頼は正式な手続きの書類などが残されているワケですから」

 

「案外、探索者ギルドの上層部もどうしたらいいのかわからず混乱しているのかもしれませんな。なにせ堂々と反抗してくるクランなど自分が英雄王の街で商売を始めてから1度も現れたことはありませんので」

 

 

 自分はなにをやっても許されると勘違いしていたヤツが、一発ビンタされた途端にクソ雑魚ナメクジになっちゃうパターンか。しかも自分たちが探索者クランに依頼を出しているのは紛れもない事実だから、事の次第について説明する責任と義務がある。

 うーん、他人事と笑える立場じゃないのが困る。いや困らないか。日本に帰るという大義名分抱えて持ち込んだデータで好き勝手してんだから自業自得だよな俺も。つまりここは探索者ギルドの失敗を他山の石として自戒するべき部分を見直すタイミングだ! それができれば誰も失敗なんてしねぇンだわ。

 

 アカン、徹夜明けのテンションが俺の思考回路をショート寸前まで追い込んでこようとしている。糖分、これは糖分が足りない。きっとロプトウス様も甘い物を食えと仰っている。はがねのつるぎを装備した盗賊の増援部隊の如くデザートを食って落ち着こう。

 

 

「失礼します。アナタが噂の、闇市で活動している探索者クラン・ロプト教団の代表の方ですか……?」

 

 

 デザート食って落ち着こうって言ってんだよオマエなに聞いてたんだよ! 声に出してないんだから聞こえるワケないな! じゃあこの女の子はなにも悪くないね! 

 やめてよね、その如何にも学生の制服ですって格好。どうせ英雄学園の学生さんでしょ? そんな表通りで青春物語をキラキラさせてりゃいい連中が俺を名指しで闇市までやってくるとかイベントの臭いしかしないじゃないですかヤダァ……。

 

 

「先に言っておく。名乗りを返すようなことはしないように」

 

「は、はい?」

 

「キミの指摘は合っている。が、私がそうだと答えたら流れでそのまま自己紹介が始まりそうな雰囲気なのでね。このような場所で迂闊に名乗るべきではないよ」

 

「えーと、その……アドバイス、ありがとうございます。ただ……」

 

「ココに来るまでに、か?」

 

「その、ごめんなさい……」

 

 

 うーん、頭痛が痛い。誰かひとりぐらい思い付かなかったのだろうか? 探索者を大勢まとめて奴隷にするようなヤベー連中に会いに行くのにイチイチ名乗る必要ある? リスクマネジメントなってねーよ。これが若さかぁ。

 

 

「ケッ。奴隷を使って神竜の塔で戦わせてるような玉無しヤローが偉そうなこと言ってんじゃねぇよ」

 

 

 女の子の後ろにいた、鉄の大剣を担ぐ少年からのわかりやすい挑発。だがミニマップくんの判定は敵対的な中立。っていうか、10人中リーダーっぽい女の子を含めて5人が友好的な中立で残りはその逆。意見が半分に分かれたまま乗り込んできた、ってコト?

 しかし挑発しておいてまだ敵扱いじゃないんだな。戦闘準備ができてないのに煽ってきた、ということなのだろうか。よくあるシチュエーションだと……リーダー女子はあくまで話し合いのつもりだけど、その護衛役としてついてきたメンバー的には荒事の用意もさせてもらうぞみたいなヤツかな? じゃあ黙っとけよ、お前が荒事の原因作ってどうすんねん。

 

 どうしようかなー俺もなー。学生相手だし手加減してやりたい気持ちもあるけど、集団のトップとして学生相手に舐められるワケにもいかないもんなー。ここは責任のある立ち場として相応しい行動が求められるよなー。

 

 

「あぁ、その通りだ。私はとてもとても臆病者でね? こうして学生諸君に囲まれるだけで恐ろしくて恐ろしくてたまらない。それこそ、うっかり────隷属の紋章に命じて、表の探索者たちにキミたちの学園を襲撃するように仕向けてしまうほどに」

 

 

 素晴らしき指パッチンを披露するため腕を上げる。

 

 ひとり、反応したな。ロン毛の剣士とはエムブレマー的に良成長を期待したくなるボウヤだ。レベルが低い割に技と速さのステータスも良好な感じ。でも力がちょっとアレだな。回避盾として前に出したいタイプだ。

 ま、生半可な力じゃどのみち俺の守備を貫けんのだが……ここは小細工無しで正面から受け止めてやろう。あんまり暴れて周囲のお店に迷惑かけるのもイヤだし、適当に遊んでやれば少しは落ち着くだろ。よしよし、おじさんが相手してあげるよ〜。

 

 

「旦那サマ! あっぶな〜い☆」

 

「……むッ!?」

 

 

 もしかしてアサシンじゃなくてトリックスターだったりする? でもトリックの瞬間移動って仲間と入れ替わるタイプだったな。ほな、ちゃうか……。

 

 

「……何者だ」

 

「な〜にボウヤ、お姉さんのことが気になるの〜? でもダーメ、ワタシのことが知りたかったらぁ……この程度はお茶の子さいさい、ってカンジで捌き切ってくれないと────ねッ♪」

 

「がッ?!」

 

 

 レベル差にクラス格差、ついでに少年の鋼の剣はパッフェルの細身の剣より重量もある。ステータスの暴力の前では誤差でしかないだろうけど、反応が遅れたどころではない。たぶん、剣を弾かれた瞬間までパッフェルの動きがそもそも見えていなかったんじゃないかな? 

 

 

「わかるわかる☆ 若気の至りって、お姉さんもイロイロ失敗しながら成長したからね〜。だ・か・らぁ〜♪ ボウヤも────痛みと一緒に学びなさい」

 

 

 演技、パネェ。隷属の紋章から「大丈夫だ、問題ない」って教えて貰ってなかったら絶対ブレーキかけてたわ。

 

 それにしても後ろの仲間たちはパッフェルの乱入からここまで見てるだけとか、ちょっと薄情過ぎん? さすがに仲の悪いメンバーでこんなところに乗り込んで来ないだろうし、単にこういう鉄火場の経験値が不足しているだけだと思うけど。

 

 

 迫るキルソード。

 

 身構える少年剣士。

 

 

 さて、ここから舞台はどう動く? 

 

 

 

 

「────おっと、そこまでにしてもらおうか? 失敗から学ぶ姿勢はたしかに大事だけれど、手段はもう少し選ぶべきじゃないかな?」

 

「なんだァ、テメェ……ッ!?」

 

 

 

 

 そ、そうきたかァ〜〜〜〜ッ!!!! 

 

 この場面で助っ人として登場、学園への潜入を準備していたことも相まって信用を稼ぐには絶好の機会ッ!! 貴族令嬢と暗殺者、アドリブ力すげぇな。

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