百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
「健全なる邪教徒の諸君、おはよう。今日はロプト教団の教主である私が“誰にでもできる竜の王の倒し方”について解説しよう。まずはどのご家庭にもひとりいる熟練のソードマスターを用意する」
「どうも、世間一般ソードマスターだよ。留守番からイモの皮剥きまであたしに任せな」
「次に竜のウロコを貫けるよう適当な神器を用意する。今回はソードマスターということで、こちらの新鮮な神剣【バルムンク】を使用することにした。見たまえブランダ、旬の神器は色艶が違うだろう?」
「ほー、こりゃスゴイねぇ! 前回お呼ばれしたときに貰ったドラゴンキラーも大概だったけど、今回のバルムンク? だったかい。こいつはさらに桁違いときたもんだ。……残念だけど、これはあたしにゃ使いこなせないよ」
「こんなこともあろうかと、対応する紋章石【流星の剣士シャナン】も前もって準備している。神器の封印を解除した結果、もしかしたら人格が崩壊して血を求め生ける屍のようになるかもしれんが……そのときは自分の未熟さを恨んでくれたまえ。その歳まで現役でいながら神器如きに乗っ取られる軟弱な精神をしているほうが悪い」
「どれどれ? ふむ、なるほど……急に手に馴染むね。不気味なほどに。ま、いいさ。病気や老衰で死ぬよりは、自分の未熟さが原因で神器に殺されるほうがまだ格好がつくってもんさね。しかし、前の魔法の指輪のときもそうだけど、サラッと神話級の武器を出してくるじゃないか」
「そのバルムンクが本物かどうか、疑わんのだな?」
「ソードマスターが剣の良し悪しを区別できないんじゃ商売にならないよ。それに、そっちでソーサラーのお嬢ちゃんが愉快な顔になってるからねぇ」
ハハッ、どこぞの吸血鬼漫画で友人の娘から無茶振りされたときの無能おじさんみたいな顔になってらぁ。安心しろジャーリー、お前のぶんの紋章石も当然持ってるゾイ。背に腹は代えられない、いざというときは気張ってもらうしかない。
いざとなれば隷属の紋章で動きを封じるつもりだったが、冷静に考えたら神器に中身を塗り潰されたあとの挙動がこちらの想定通りになるとも限らんし。ならば見た目は真逆でも長生き同士、若者たちのために犠牲になってくれ。もとより闇魔法レベルが☆で人外のジャーリーは普通に適応しそうな気もするけど。
「今回の作戦はそう難しいことでもない。竜の防御力とはウロコの防御力、ならばそれを削ぎ落としてやれば戦いようはある……かもしれん。ついでにウロコそのものを持ち帰ることができれば、今後の攻略に役立つアイテムの素材になるかもしれない。あるいは、単純にステータスの強化に使える可能性だってある。ディナダン、パーシバル。逃がすな」
「「はーい」」
「うぉぉぉぉッ!! 離せぇ! 離しなさぁいッ!! いくらッ! アンナ商会がッ! 手広く商売をしているからといってッ! 本物の、神話で語られるような竜の素材なんて専門外に決まってるでしょぉぉぉぉッ!!」
「さすがアンナさん、伝説のアイテムも取り扱ってるなんてさすがです。アンナさんホントさすが」
「カッコいいなー、仕事のできるプロフェッショナルって女の人カッコいいなー憧れちゃうなー」
「うがーッ!!」
「アンナさんのことや御屋形様にご報告しなければならないことが増えたのはともかく。教主様、ほかのロプト教団の皆さまはどうされたのですか? いつもよりかなり人数を絞られたようですが」
「氷竜たちは氷の中を泳ぐ。私の知識が通用するなら次の戦場は氷の遺跡だ。少数精鋭でまとめなければいざというときに守りきれん」
「なるほど、氷の中を……。たしかにそれは厄介ですね。天井すら足場にされるのであれば、飛行クラスはむしろ背中の危険が増えるだけ」
「あとは、留守の守りに意識して割り振った。クロード神父の教会が襲撃されたことといい、先日の学生たちの訪問といい、どちらも私が原因なのでね。少しは責任感のあるところも見せておかねばなるまい?」
「学生たちのほうは探索者ギルドの怠慢と学園教員の危機意識の欠落にも起因すると思いますが。人目を忍んで闇市までやっていたのであれば言い訳もありましょうが、子どもたちは堂々と表通りを横断していましたから。えぇ、堂々と」
なんか圧強くない?
俺に対するヤツじゃないのは伝わってるけど、爽やかな笑顔に似合わない負のオーラ感じるんですが。アレかな、忍者的にはグレーな行動を起こすならもっと身を隠して動けよみたいなこと? 学生だもの、ちょっとイケナイことしたくなる気持ちはわかるけど、そこはちゃんとコソコソやれよみたいな。
「あー、まぁ……なんだ。私が奴隷を使って塔の攻略を進めていることを気にしていたような……気もする、から。な? 視野が狭いのは学生だから仕方ないことだし、正義感の熱量に動かされるのも少しぐらいは大目に見てやっても……大人としては、まぁ」
「お心遣い、感謝いたします教主様。えぇ、もちろん。おっしゃる通りでございます。大人として、子どもらの間違いは正してやるのが責任というモノでしょう。えぇ、もちろん」
なんか圧強くない?
うん、まぁ、別に……モチベーションに影響してないなら。
さて、そんなことより改めて自軍の戦力を確認しておこう。今回は氷竜が相手であり、恐らく氷の中を自由自在に泳ぎやがるという前提で考えた。
ゲームなら平面マップの上でエフェクトとして処理されるだけのことだが、異世界としてフィードバックされるなら壁や天井がセーフ扱いになるとは思えない。四方八方から襲われるかもしれない、となればメンバーは運動量に優れたメンツで揃えたほうがいいだろう。
ウォーリアーだが馬の扱いに慣れているグラナ。
食い物さえ与えておけば身のこなしは抜群のアンリ。
パラディンとして充分に経験を積んでいるディナダンと、グレートナイトとして以下同文のパーシバル。
説明不要のアサシン、スカーレル。
アポカリプス持ちで、いざとなれば紋章石を叩き付けてやる予定のジャーリー。……は、ステータスの速さは低いのでフォローは丁寧にしてやらねば。
ほかは闇市の防衛戦力と学園関係を探らせるための人手として留守を任せてきた。アストラ、デルムッド、ガラハッドの3人は同じ帝国の出身ということで話したいこともあるだろうし丁度良かろう。どうせ権力争いで実力の証明とか言って神竜の塔、登りにくるんだろ? 100回見たわそのパターン。
教団のメンバーはガッツリ絞り込んだが、外部協力者の皆さんも頼れる熟練上級職だから戦力としては申し分ない。絡繰師のラキアは商売人という立場を利用して息子娘と一緒に学園関係者への工作を手伝ってくれているので不参加。手数で撹乱なら絡繰師は強力な味方だったんだが仕方ない。
改めて、今回は初の試み重なり過ぎ問題な件。そのうちそのうちと後回しにしていたツケだな。FEに限った話ではないけれど、そんなハズは〜とか、私は誰々を信じて〜とか、大事なことを後回しにしたせいで取り返しのつかないことになって別の人が尻拭いするシナリオもあるあるだよねー。そうしないと主人公が活躍するための舞台が整わないから仕方ないねー。
「ところで、ひとつ。確認しておきたいんだがねぇ? あたしがバルムンクに喰われたときは、あんたが責任持って始末してくれるってことでいいのかい?」
「当然だな。最悪の場合、命までは奪わんが……肉体も精神も再起不能は覚悟してもらうことになるだろう」
「どうせまだまだ隠し持ってるんだろう? なら、そんときはあんたも神器で相手しておくれよ。どうせ散るなら神話の戦いってヤツ、味わってみたいんでね」
「善処しよう。なにか、正気のうちに言い残すことはあるか?」
「んー? 特には」
「あの表の探索者クランはいいのか? たしか、名前は藍玉の剣だったか。気にかけていたように思うが」
「あの子たちならもう独り立ちしてるさ。守られる側から守る側、教えられる側から教える側。学生たちの先生役として頼りにされているハズだよ。だったらもうババァの出る幕はないってもんだ」
「そうか。またロプト教団の敵が増えるな」
「人生に張り合いがあるのは結構なことさ」
◯□◯□ー
遺跡ッ! 探索せずにはいられないッ!
やっぱりファイアーエムブレムのボスフロアといえば遺跡と竜の組み合わせの安心感よ。攻略的には嬉しくないけど事前準備が無駄にならないのでやっぱり嬉しくない。くそぉ、ここにいる祈り子みてぇなマムクートたちの所持品にやっぱりあるぜ氷竜石。でも威力は思ったより控え目だな? ってかステータスも火竜のときと大きく変わらんな。
で、奥に見える巨大な石像もしっかりスキャンしてみれば……こちらも予測していた通り、氷竜の王ではなく暴走竜帝・碧。武器も氷のブレスではなく威力38の『星凍のブレス』になっている。ふーむ、威力38か。前回の感覚では瞬間的なダメージではなくジリジリ削られるような感じだったし、リザーブの杖が使えるならまだ絶望するほどではないか。いや防御無視で威力38はやっぱ痛ェわ……。
ついでだからブランダ婆さんのステータスも確認しとこう。レベルが下がって速さと技を含め上限に近づいてるのはプルフでソドマスをやり直したからかな? そこでエピタフみたいな魔法適性に補正がある別のクラスを選ばないあたり、生粋の剣士って感じの潔さがある。
そこに神剣バルムンクのステータス補正により技が+10に速さが+20されることにより命中回避必殺にボーナスが────ん? なんか弱くね? 俺が確認したときはちゃんとブッ壊れ性能になってたのに、原作に近い数字っつーか、これ聖戦の系譜のステ補正そのまんまじゃなかったっけ? 俺の記憶が確かなら、力の補正は無いけど流星が出やすくなるからいいか〜みたいなこと思ってたような。
いや、よく見たら追加のボーナスあるな……? 力+5、速さ+5、幸運+5、と。あら、ソードマスター的には美味しいところ補強されてるわね。そんなアクセサリーあったっけ? どれどれ、なにか俺の知らないアイテム説明文とか何処かに……お。
えーと。
クラスボーナス:『流星』発動時に必殺+30
おぉ〜、元から技が高くクラス補正で必殺率の高いソドマスでこれはバチクソ強いやん。コレは勝ったなッ! ガハハッ!! なんか急にエンゲージっぽい要素が生えてきたんだけど? なにそれ知らない、怖……。
「シャナン、ラクチェ、スカサハッ! クトゥーゾフにジェットストリーム流星剣を仕掛けるぞッ!!」