百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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 バルムンクはまだソードマスターに似合うけど、デュランダルやアウドムラあたりはどうにも……デザインが勇者向けっぽいのがなんとも……。


蘇る異界の英雄伝説。(Ⅱ 〜悪ノリの神々〜)

 祈りを捧げていたマムクートたちが一斉に振り向き、氷竜石を掲げて変身……いや、本来の姿に戻る。火竜がファンタジーでお馴染みのステレオタイプドラゴンなら、こっちは太古の大海原を支配していたという深海竜とでも言えばいいだろうか? 

 そして突入前に想定していた通り、氷竜たちは氷の中へダイブした。氷竜の王の石像まで続く石の通路を避けるように、物理学なんて知ったこっちゃねぇと言わんばかりにヌルっと氷の床や壁の中に。幻想的な光景ではあるな。命懸けで無ければじっくり鑑賞したかったところだ。

 

 

「ふむ。ジャーリー」

 

「なんじゃ?」

 

「もしも、連中に手足を噛まれて氷の中に引き摺り込まれたらどうなると予測する? できれば前向きな意見が出てくると嬉しいのだが」

 

「それは……われにもわからん。すくなくとも水竜や砂竜のよーにうもれておわりとはならんのはたしかだろーな」

 

「そうか。ちなみに私は連中の動きは一種の異界渡りのようなものだと思っているのでね。恐らく我々では氷の境界線を越えた部分からリカバーの杖でも間に合わないレベルで肉体がバラバラに砕け散る可能性もあると考えている」

 

「いやこわすぎるわッ!? おぬしソレもううしろむきとかゆーレベルですらないんだがッ?! あぁ〜、でも、あり得るといえばあり得るのか……」

 

 

 地竜とかの移動エフェクトみたいに“掘り進んでます”感が出てれば別だったのかもしれんけどね。氷を砕いて力任せに移動してるんじゃなくて、欠片一つも飛び散らせることなく悠々と泳いでるもんね。ファンタジーに物理法則は通用しないッ! 誰か噛まれた瞬間に最優先でレスキューしないとダメだわ。

 嬉しくないタイプのアイデアロールに成功して頭を抱えたい。でも仮にも指揮官ポジションの俺がそんな情けない姿を見せるワケにはいかん。上に立つ人間はにっこり笑ってないと部下が不安になるって熊本城防衛戦で委員長も言ってなかったわ。ありゃ本土に帰還したあとのイベントか。うっかりうっかり、わははは。

 

 会話を聞いていた皆の反応はとても良好。指示を出すより先に背中合わせで氷竜たちの突進に備えている。気分はジュラシックパークやディノクライシス、なんならサメ映画でもいいぞ。ファイアーエムブレムで即死トラップとか、トラキアの隔離部屋くらいしか知らんのだが? 

 

 

「ねぇ教主様、火竜が火を吹くなら氷竜は氷の塊でも吐き出してくるのかしら?」

 

「どちらかと言えば吹雪を吐き出してくるイメージだが」

 

「そう。みんな、これまで以上に呼吸には気をつけて。竜のブレスが自然現象より弱いってコトはないでしょ、たぶん」

 

「凍傷対策に火竜のウロコで防寒具でも作れないか試しておくべきだったか? 肺が凍り付くのは遠慮したいところだ」

 

「後の祭りね。もしくは今後のために氷竜のウロコで暑さ対策ができるのかもしれないわ。是非ともアンナ商会に期待しちゃいましょうか」

 

「くッ! 反射的に頭の中でイロイロ考えちゃう自分の商人根性が恨めしい……ッ!」

 

「あら、それだけ天職だってことじゃない? いいじゃないの、これからもドンドン面白い商品を作ってちょうだい。そのためにもまずはコイツらを────来るわよッ!!」

 

 

 様子見は終わりか! チィッ、頭だけ出してブレスを吐いてくるかと身構えていたが、まさか身体ごと飛び出してくるとはな! そりゃ一方通行の状態でデカい身体で体当たりできんなら突進してくるわな! 

 避けることは難しくない。幻影兵のアーチャーに比べれば、なんならランスナイト系の手槍と比べても遅い。質量というか、体重のせいで破壊力と引き換えに小回りは足りてないので見てから回避も余裕で間に合う。

 

 問題は。

 

 

「あっはっは! まるで冬の嵐ですなぁ! 氷の粒が煌めく様は風情がありますが、これを肴に雪見酒にするには勇気がたりませぬ故に」

 

「こういうとき、騎馬の腕輪は便利ね。生身の馬じゃ、あっという間に脚が使い物にならなくなりそう……というか、なるわね。確実に」

 

 

 誰だってそーする。俺だってそーする。ノーコストで範囲攻撃が撃ち放題なんだから、バカの一つ覚えみたいに突進だけを繰り返す必要がない。

 せめてもの救いはブレスの軌道も直線的だから避けやすいってことだな。飛竜とかと違って勢い任せに飛び跳ねてるだけだから、なぎ払うような使い方は難しいってことか。

 

 うーん、これはジリ貧。様子見は不利に傾くだけだなこりゃ。装備枠をひとつ潰してプチファイアーの指輪を全員分用意しているから凍傷のリスクは多少マシだろうが……ちょっとやそっとの熱源だけで解決するほど氷竜のブレスは甘くないだろう。

 仕方ねぇ。ここは俺が囮になって突破口を開くしかないか。ミニマップくんによる探知、スキルによる絶対回避、マフーによる行動封じ。これで対応できないようなら俺もう日本に帰れないべよ。安定は大事だけど、安定を優先して窮地に陥るのは本末転倒だ。

 

 

 あー、やだやだ。自分から相手の攻撃範囲に入らにゃならんとは。でも回避盾を使った釣り出しはエムブレマーの嗜みだから我慢するしかないね。まだ半分も登れてないのに胃が痛いわ。

 

 

 堂々と、まるで氷竜など脅威に値しないという態度で。と言っても挑発が有効かどうかは微妙なところだけど、さて? 

 

 

『────、────ッ!!』

 

 

 よーしよしよしよし。

 

 勢い良く飛び付いてきたこのタイミングで……上に、転移! 

 

 

「列島諸国には鯉と呼ばれる魚が滝を登りきると竜に変化する、という伝承があるらしいな」

 

「つまりは、コイツらにも“まな板の上の鯉”って言葉は適用されるってコトだねぇ。────そぉらッ!!」

 

 

『ッ?!?!』

 

 

 ひっさァ〜つッ♪ いちげきィ〜♪ 

 

 後先考えず目の前の獲物に飛びついた氷竜くん、渾身のミスで石通路の上に着陸! もちろん再び氷の中に滑り込もうとモゾモゾ動き出していたが、そんな露骨な隙をバルムンク補正で速さ50に届いたソードマスターが見逃すはずがない。首長竜から首だけ竜にクラスチェンジしちゃったネ? 

 

 

「攻撃的になって視野が狭いのか、それとも力を持つが故に思考が浅いのか。どちらにせよ好都合だな。アンナさん、レスキュー役は任せるぞ」

 

「はいはい、っと! もう、ロプト教団に関わってると忘れそうになるけど、コレだって貴重品なんだからポイポイ投げないでよね! まったく。さぁて? ストラテジストと商人、気配り大事なふたつの看板は伊達じゃないってトコ見せてあげるわ!」

 

 

 釣って! 釣って! 

 

 避けて! 避けて! 

 

 構えて! 構えて! 

 

 最後にKILLッ! 

 

 

 ま、余裕ですわ。マムクートはいまのところまだ強化はそれほどでもないからね。上級職まみれなら余裕っすわ。暗黒竜と光の剣で始めて対峙したときの驚きが昔のようだ。硬いし、痛いし、どうすんだコレぇッ?! からのドラゴンキラーで大ダメージを叩き出したときのカタルシスは過去のモノか……悲しいね。GBAなんか間接攻撃できないから魔法ユニットのカモになってもうたし。

 とはいえ所詮、ここまでは前哨戦。まだオードブルが終わったばかりでメインディッシュへの期待感を高めた段階でしかない。その証拠に、ってワケじゃないが、倒した氷竜が青い光に分解されて氷竜の王に吸い込まれていったからな。前脚の爪から順番に氷に覆われては砕け散り、その中から新鮮な青い竜ウロコが見え始めている。コレ、実は石の間に破壊できたりするんだろうか? でもあんまり下手なことやると後が怖いしなぁ。

 

 うん、心に余裕あるな俺。だいぶ。やっぱり初見で“どうにかなるのか”って気持ちと、似たようなシチュエーションを乗り越えて“どうにかできる”って気持ちじゃ全然違うんだろう。

 

 

 初手、星氷のブレス……来るかッ!! 

 

 

「ジャーリー。アンナさん」

 

「ふんすッ! こんどははいつくばるよーなぶざまは見せんぞ!」

 

「伝説がお相手でも、たっぷりサービスしちゃうわよ!」

 

 

「「「ボルガノンッ!!」」」

 

 

 単純計算、ひとりで防ぎきれないなら3人がかりで炎の壁を作ればよかろうなのだー! あ、でも微妙に押し返されそう……。ステータスがどうこうとは別の部分、種族としての格差とか感じちゃう……。消防車の放水はパワーというか凄い水圧あるけど、じゃあそれを3本同時に使えば河の流れを堰き止められるかは別の話だもんな。

 

 だが、それでいい。

 

 それで構わない。

 

 大事なのは、時間を作ること。今回の本命は俺じゃないんだから。

 

 

 

 

「ハハッ。殺し合いの最中に、手元がお留守なのはいただけないねぇ? ────人間をナメるんじゃないよ、青トカゲ」

 

 

 

 

 よっしゃ! 

 

 ブレスを吐くために、上体の支えにした前脚! さすがに氷竜の首みたいに一撃で切り飛ばすのはムリだとしても、たかが人間相手にダメージを食らえば向こうのプライドも刺激されるハズ。暴走状態でも、いや暴走状態だからこそ虫ケラに虚仮にされたら我慢できないよねぇ? 

 

 なんとかギリギリ、こちらにダメージが届く前に星氷のブレスは中断された。ステータス確認、暴走竜帝のHPにダメージ……ヨシッ! いいぞ〜、コレ! ここから先は俺がヘイトを稼いでブレスを引き受けながら、ブランダに好き勝手暴れてもらえば……暴れて、もらえ……ばぁ……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、おやおや。もしかして、お前さんがこの紋章石の英雄かい? なかなかの色男じゃないか。悪いね、こんなババァが使い手で。文句はあの司祭に言っとくれよ」

 

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャナン、出とるやん……。

 

 えぇ……? ステータスの加算の感じがエンゲージっぽいとか思ってたら、本当にエンゲージ要素お出しされてるやん……。どういうことなの……? 

 

 

 あ、コッチ見た。

 

 なんだろう、頭に直接、こう、語りかけてくるような感触が? 

 

 

『٩(๑òωó๑)۶』

 

 

 シャナンはそんな顔文字使わない。 

 

 お前さては偽物だな? でもミニマップくんは友好的な中立判定の緑で表示してるあたり……あ、そうか。神器と紋章石の組み合わせでアレが実体化してるなら、他人の手に、というか俺の敵が手にしたら敵になるから中立なのか。なるほどなー。いやナルホドじゃねぇよどういう現象起きてんのコレ?

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