百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。 作:はめるん用
騎兵と野戦をしてはいけない。
それを理解したところで、実践できるかは別である……というか、敵側の拠点にある転送用の魔法陣的なヤツを確保しないと次の階層に進めないので必ずどこかのタイミングで砦から打って出なければならんワケでして。
ゲームだと5の倍数のフロアだけ攻略することもできて、勝利回数20回クリアという実績もあったんだけど。もしかしたらこの世界でも試せたのかもしれないが、こんな浅い階層で苦戦してる時点で試す意味は無いだろう。やはりフロアをひとつひとつ丁寧に、味方を強化しながら進むのが堅実で確実ってね☆
なんにせよ。
「ユーウェイン、アイスロックのタイミングを間違えるなよ。四方からなだれ込まれたら逃げることさえ厳しくなる」
「はぃぃぃぃ司祭様! 死ぬ気で頑張りますぅぅぅぅ!! アイスロォォォォック!!」
いまは眼の前の幻影兵どもをどうにか倒して包囲網を突破しなければ進むも戻るもできませんって話。
第9階層を一言で表すなら“砂漠の群島”だろうか。広い砂漠に緑の大地が浮島のように点在しているフロアで、熱による体力消耗を少しでも防ぐために草地を選んで進軍していたのだが……途中の遺跡っぽい場所で休憩してたらご覧の有り様になってしまった。
ゲーム風に言うなら特定の地点にユニットが侵入することがスイッチとなったか。日陰で休んでいたら砂の中からボコボコと敵専用クラスの砂の部族が生えてきよったわい。紋章の謎みたいにはぐれ火竜がセットで出てこないだけマシだと思っておこう。
しかし、これは反省が必要だな。ミニマップの利便性に胡座をかいていた結果、こうした増援への警戒が疎かになっていた。潜んでいる敵は予め察知できても、唐突に生成されたユニットが相手ではどうにもならない。ちょっとそれズルくない? とは周回データ持ちの俺が言っていいセリフじゃないのだろうが。
「正面に集中できるのであれば、この程度の攻勢などッ!! せぁッ!!」
「ヒュウ♪ やるねぇ~。アルバ、アストラの援護は俺っちに任せろ。お前さんはとにかく敵さんの足並みを乱すことに集中してくれ」
「了解です! ……大丈夫、いまの僕は戦える! 魔力を高めろ……エルファイアーッ!!」
高い防御力と鋼の盾の安定感ほんま助かる。いまだに必殺の一撃がどういう理屈で発生するのかよくわからんが……アストラの守備力は鋼の盾含めて16、鋼の斧もちアクスナイトの攻撃力は変わらず18なので必殺の3倍ダメージでも6ポイント。HPも30あるし、余裕を持たせてリブローで回復すれば正面は問題ないはず。
あとは壁をよじ登って内側に入り込んでくる敵の排除を優先するだけでいい。通路をアイスロックの氷塊で塞いでみたものの、さすがにこういう三次元的な動きには対応できなかったよ。うーん、こりゃ盗賊やアサシンみたいなユニットの危険性はゲームとは比べ物にならんぞ?
「どらぁぁッ!!」
「ギギャ……ッ!?」
「よし、次はどいつが相手──うぉッ!?」
「ギヒッ!」
「やべ──」
「そうは、させないわよッ!! でりゃぁぁぁぁッ!!」
「ガボ……ッ!?」
「ワリぃ、パーシバル。助かった」
「全力で殴りかかるのはいいけれど、背中にも気をつけなさいってデルムッドさんに言われたでしょうが」
「う……わ、わかってるよ!」
「なんだかんだ、まだ余裕はありそうね。それで、司祭様? いまなら砦まで戻れそうだけど、持久戦に持ち込むなら一度引いたほうがいいんじゃない?」
「いや、前に出る」
「……理由は?」
「増援が止まらない可能性があるからだ。いまならまだ強行突破を選べるだけの余裕がある。砦まで引いてレベル上げに専念して撤退することも考えたが、逃げ癖が染み付いて勝機を逃すようになっても困る」
主に俺がな。
「デルムッド!」
「ハッ!」
「アンリを連れて前に出ろ。先行して敵拠点の威力偵察、可能であれば指揮官らしき幻影兵がいないか確認しろ。運が良ければ砂の部族どもの増殖も止まるかもしれん。もしも発見した場合は……排除できれば文句無しだが、無理はするな」
「おやおや、殿方との相乗りとは……あまり経験がありませぬ故に、いささか緊張いたしますなぁ」
「当方、未熟者でありますので乗り心地については不手際をご容赦あられよ。しかし司祭殿、さすがに後ろにひとり乗せたまま敵陣を駆けるのは厳しいものがあるのですが」
「初手は私が引き受ける。殿もな。グラナ、お前にも付き合ってもらうぞ」
「はいはい、仰せのままに」
ふっふっふ、ついにコイツを使うときがきたか。長距離攻撃魔法『サンダーストーム』をなぁ! まだ一桁階層なんだけどな……。
要求される魔法の武器レベルが高く、それでいて威力が低いのが欠点と言えなくもないが、敵が近づくことさえできない距離から一方的に攻撃できるというだけで価値がある。
そもそも基本的に大抵のユニットは魔法防御低いから威力はそこまで気にならない。そしてレベル20暗黒司祭の俺の魔力は43。このフロアの幻影兵たちのHPは20ちょい、魔法防御に至っては0ばかり。コイツはグレイトなことになりますよぉ〜?
サンダーストームの指輪をはめて魔力を集中させれば雷光がスパークし始める! フフフ、怖い……ッ!! 自分の手元で破壊的エネルギーがバチバチいってんの普通に怖いんですよ……ッ!!
いいや、もう。さっさと雷落として蹴散らそう。
「サンダーストームッ!!」
『『グギャ────ッ!!!!』』
マップ兵器かな?
3匹ぐらい巻き込まれてくれればラッキーぐらいに思っていたら集団がまとめて消し飛んだ件。うーん、これは強い。クールタイムが設定されていなければサンダーストーム連発するだけでかなりの階層を駆け抜けられるかも。味方が成長しなくて戦力不足でどこかで引き返すことになるだろうけど。
「デルムッド! アンリ!」
「は──ハッ!!」
「御意ッ!!」
さぁ、ここからは時間との勝負だ。ちょっと雷の威力が高すぎたのか味方の反応が遅れたが、正面に固まっていた幻影兵は空っぽになったので悠々と突撃できる。遺跡を包囲している幻影兵たちも動きが止まったし、結果オーライってことにしておこう。驚いたのか、高い魔力の反応に怯んだのか……どちらにせよ、今回はラッキーという扱いにして戦略に組み込むのは控えたほうが無難か。
◯□◯□ー
「はぁ〜〜、今日もなんとか生き残れた……。あのまま犯罪奴隷としてワケわかんない貴族に買われて家畜みたいに扱われるよりはずっと人間らしい生活してるし、なんなら村にいたときよりもご飯はしっかり食べられてるけど、本当に……本当に、今日こそ死ぬかと思ったよぉ……」
「あの、ユーウェインくん」
「おっひゃぁぁぁぁいッ!?」
「うわッ!?」
「あ、なんだアルバくんか。も〜、急に驚かさないでよ」
「どちらかと言えば僕のほうが驚かされたと思うけど。それはともかく、今日はお疲れ様。遺跡での戦いは本当に大変だったよね」
「大変なんてものじゃなかったよ……。もう少しでボクまで幻影兵と戦うハメになるところだったし。司祭様もさぁ、あんなスゴい魔法が使えるならもっと早くっていうか、最初から使ってくれればあんな怖い思いしなくてよかったのにさぁ……」
「あはは……。でも、司祭様だっていろいろ考えてくれているんだと思うよ? やっぱり、レベルやステータスって大事だから。最近はどんどんモンスターの活動が活発になっているって話もあったし、村に帰ってからも戦う機会はあるんじゃないかな」
「それは、そうかもしれないけど」
「あと、司祭様が使っていたサンダーストームの指輪だけど……アレは理の賢者パント様が残したと言われている魔導書にも記述がある強力な魔法だから、簡単には使えないんだと思うよ。ユーウェインくんも見たでしょ? 伝説扱いされるのも納得の威力だったよね」
「あー、うん。そう言われると……切り札みたいな、ってコト? なら仕方ないのかな。でも、ボクとしてはやっぱりもっと早くに使って欲しかったよ……。というか」
「なに?」
「アルバくん、魔法に詳しいの? やっぱり」
「うん。僕、王国の魔法学園に通ってたんだ。そこの図書館には神話とか伝承に関する本もたくさんあって、それでパント様の魔導書もあったんだよ。もちろん原本じゃなくて写しだけれどね。だから、珍しい魔法が見られたってだけでも司祭様と一緒に戦えるのは幸運だと思ってる」
「前向きなんだね、アルバくんは。羨ましいというか、尊敬するよ。わりと本気で」
「もともと神竜の塔には挑戦してみたいとは思ってたんだ。さすがに奴隷として使われることになるとは想像もしなかったけど、いまの生活はそんなに悪くないかなって」
「そうかな……そうかも……?」
「別に無理に前向きになろう、なんて考えなくても大丈夫だと思うよ。僕の場合、魔道士としての修行もできて丁度いいぐらいなところもあるし。ユーウェインくんはみんなの治療に専念してくれれば、ディナダンくんやパーシバルさんも……もちろん僕だって守ってみせるからさ!」
「そっか。そう言ってくれるなら、少し気が楽になったかも。うん、ボクはボクの役目を頑張ることにするよ」
「うん、お互いにね! あ、僕はもう少し外の風に当たってるから、ユーウェインくんは先に家の中に戻ってていいよ」
「アルバくんも、あまり遅くならないうちに寝たほうがいいよ。今日はみんな疲れてるだろうからね」
「疲れ、うん。もちろん僕も今日の戦いは大変だったしヘトヘトではあるけど……それ以上に興奮して眠れそうにはないよ。古代魔法サンダーストームは実在したんだ。フフフ……頑張って活躍すれば僕にも使わせてくれるかな? 司祭様に気に入ってもらえれば、学園の奴らよりもずっと強くなれるし、貴重な魔法の指輪を任せてくれるかもしれない。ハハッ! アイツらが英雄王の街に来るまでにどれだけレベルとステータスを上げられるか、楽しみだなぁ……あは♪」