百階層攻略後に日本に帰れる(かもしれない)ゲーム転移。   作:はめるん用

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第11階層の攻略報酬は……メイド?

 攻略進度1割突破、おめでとう俺。

 

 ここから敵ユニットの中級職の割合がどんどん増えていく。ステータス的には基本職でも充分有利に戦える程度だが、職業固有のスキルが追加されているため油断はできない。

 特に、ダメージ計算に直接関わるようなスキルを見逃したりすれば大惨事は避けられないだろう。上級職や特殊職に比べれば加算される数値は2ポイントや3ポイントと大したことがないので安心できる……なんてことはない。波状攻撃で積み重なれば、最大HPと防御力がガチガチに成長した壁役でも容易く追い込まれるのがファイアーエムブレムだ。

 

 もとより出し惜しむつもりはないが、安定のためにもクラスチェンジ用のプルフは積極的に使用するべきだな。本作はクラスチェンジするたびにレベルが1に戻る仕様だから、どれだけ成長がへたれても根気強く育成すればステータスはいくらでも伸ばせる。

 なにより、武器レベルの上限がクラスごとに設定されているのだから下級の職業に甘んじる理由なんてないだろう。本作は風花雪月のようにどのクラスでもかなり自由に武器を扱えるが、やはり専門職に任せるのが一番効率的だし成長速度も優秀だ。せっかく引き継げた強力な装備も死蔵していては意味がない。

 

 基本職だと鋼の武器すら使えないからなぁ。盾は装備できるのに。ほかにも剣士と盗賊はキルソードを装備できるが、傭兵やソードナイトは扱えなかったりとか制限があるので、クラスチェンジは計画的に行いたいところだ。

 ま、本人が望んでるのをそのまま任せるのが簡単でいいんじゃないとは思うけど。そりゃ、全員が巫女になって祓串でサポートしますとか言われたら困るだろうが、いまのところバランス良く希望がバラけているからあーだこーだ口出しする必要はあるまい。

 

 むしろ、問題は……。

 

「隷属の紋章は外せない。購入した奴隷のステータス低下のデバフは育成で取り戻せる。星屑のチョーカーで付与される良成長のスキルで最低保証は2ピンから3ピンに増えている。ただ、これで貴重なスキル枠がふたつ潰れているのは痛いな」

 

 星屑のチョーカーはある程度レベルを上げれば外してもいい。デルムッドやアーリィのように仲介人を通さずスカウトした味方はそもそもステータス下がってないし。

 だが、隷属の紋章だけは外せない。信用だとか信頼関係がどうだという部分が面倒なのもそうだが、ゲームシステムを利用した攻略を試すときにいちいち説明するのが最高にダルい。

 

 ある意味、転移者や転生者が一番苦労するであろう部分をザクッとカットできるのは大きいと思う。生きるか死ぬかの瀬戸際でダラダラ説明しなくても「やれ」のひと言で完結するのは必ず役立つタイミングがあるだろう。

 

「しかし、それと引き換えに失うスキル枠の影響は……この世界に記録として残っているという30階層まではともかく、50を越えた辺りから敵ユニットもスキルが充実してくることを考えると……う〜む」

 

 もしも有効であるなら、ユニットのロストを防いでくれる不死鳥の紋章もスキル枠に加えたいし……いや、悩みすぎというか欲張り過ぎか? 全て俺ひとりで対応しなければならないゲームと違い、味方はそれぞれ考えて判断して行動できる生きた人間だという前提ならどうだろうか。

 そもそもソロでの攻略を断念した理由はなんだ? ひとりでは第100階層を目指すのは不可能だと判断したからだろうに。協力と、学習を忘れてはいけない。ふぅ、危なかった。やはり俺は物事を難しく考えるタイプではないな。本来ならあまり褒められた行為ではないが……悩んだときはコイントス並みの簡潔さで、イエスかノーかシンプルに脳内変換して判断するぐらいで丁度いいのかも。

 

 先のことを考えるあまり眼の前の石に躓いていてはお話にならない。まずは次のボスフロアである第15階層に向けて準備を──うん? なんか知らん気配を感じるな。ミニマップには……緑。友好的な中立勢力とは、お客さんかな? なんとも珍しいことだ。

 

 

 敵対者ではないらしいが、念の為。

 

 そう思ってリビング的空間に顔を出したら若いメイドさんがいるという謎。対面にリカールが座っているということは、代わりに接客をしてくれていた……にしては雰囲気がなんか微妙な感じなのは何故? 

 

 

 とりあえず。

 

「そのメイドは……リカール、お前の客か?」

 

「あー、ハイ。一応俺っちの知り合いっつーか、身内といえばそうなんですが……」

 

「そうか。なら今日明日の探索は無しにするとしよう。お前の事情も含め、お互いに話すことはたくさんあるのだろう?」

 

「えぇ、まぁ……。その、いいんですか?」

 

「私にとって重要なのは、その娘が何者かではなく敵対するのか否か、それだけだ。仮に100万人を超える男を誑かし貢がせ破滅させた悪女だったとしても、私にさえ敵意を向けないのであればそれでいい」

 

「あら、わたくしはそのようなはしたない真似はいたしませんよ? お母様からも言われているのです。金品を掻き集める才能と、商人として儲ける才能は別である……と」

 

「なるほど、確かにそこの境界線を見誤れば山賊や強盗も立派な商才だと言い出すバカが出てくるかもしれんな。アーリィ、あとで事情の説明を頼むぞ」

 

「え、なんでウチなん?」

 

「お前なら付き合いが浅いぶん、リカールの人間性や普段の振る舞いに影響されることなく客観的に情報を整理できるだろう?」

 

「なるほどなー、そういう理由ならウチがちゃんと事情を聞いて、まとめてあとで司祭さんのトコに持ってくわ」

 

 

 よし、これは早速実践できたんじゃないか? ミニマップという便利なツールを活用した上で、味方に判断を委ねる。本音としてはステータスを確認しつつ本当に敵対者じゃないのか聞き出したいところだが、こうやって小さなところからコツコツと慣らしていくってやり方はベタな方法だが効果はあるはず。

 

 

 で。

 

 部屋に戻りゴロゴロ脳ミソを休めていたところ。

 

 

「司祭さん、邪魔するでー」

 

「邪魔をするなら入らなくていいぞ」

 

「ハハッ! 最初の会話がアレやったけど、司祭さん冗談もイケる口なんやね〜」

 

 おや、関西弁っぽい雰囲気だからと試してみたが……まぁ、そりゃそうか。俺には何故か日本語に聞こえているというだけで、この世界はこの世界の言語を使っているんだし、アーリィの口調も何処かの地方の訛というだけか。

 

「雇い主が堅物では使われる方も大変だろう? せっかく優秀で貴重な奴隷なんだ、大事にこき使わなければもったいない」

 

「いや〜、まさか隷属の紋章を刻まれてんのに小遣いもらえるとは夢にも思わんかったで。ほんで……リカールのお客さんについてやけど、聞いてビックリなかなかの大物や」

 

 ゲームで名称だけ出てくる設定のひとつに皇国という存在がある。どうやらリカールはその皇国を事実上支配している大商会の跡取り候補のひとりであり、あのメイドは行方不明になった兄を探すため適当なキャラバンの働き手となって英雄王の街までやってきたのだという。

 

「その説明だけでも厄介事の気配が尋常ではないな。なら、あの娘はリカールを連れ戻しに来たというワケか」

 

「いや、どうやらもっと面倒なコトなっとるみたいやで? 司祭さんはオートマータって知っとるか?」

 

「人の姿をした絡繰人形のことか。イベント戦──あぁ、いや。人間の代わりの戦力として利用されることは知っているが」

 

「そう、それ。そのオートマータの販路拡大のために件の大商会が英雄王の街にやってくるんやと。自分トコの商品を使うて神竜の塔を攻略すりゃ、そら宣伝にはなるわな」

 

「だが純粋な宣伝ではなく、もっと後ろ暗い儲け方を企んでやってくる……か?」

 

「詳しい内容までは知らんけどな。母親から持たされたとかいう手紙を受け取ったリカールも真面目な顔しとったわ。そうそう、とりあえず妹ちゃんも司祭さんの戦力になってくれるって」

 

 マジか。話の流れ的に俺の奴隷になる必要あるか? リカールを引き抜かれるのをどうやって防ごうかとか考えてたぐらいなんだが。

 なんなら、貴重な弓兵ではあるが大きなトラブルの種を手元に置いておくよりはと諦めることも視野に入れてたのに。

 

 確実に衝突が起きるよなコレ。ご都合主義のチート無双作品ならともかく、国家を従える規模の大商会なんて個人が相手をするには大きすぎるが……日本に帰るためには避けては通れない、か。第100階層到達だけは絶対に譲らんぞ。

 

「本人が納得しているなら……まぁ、敵か味方かハッキリすればそれでいいと言ったのは私だからな。それで、いまは?」

 

「お世話になったキャラバンの人らに挨拶してくるって。勉強も兼ねてここまで商売に混ぜてもろてたし、正式に司祭さんのパーティに加わるよりそっちを先に済ませんと不義理や言うてな」

 

「道理だな。よほど真っ当な教育を母親から受けて育ったようだ。しかし……短期間で戦力が増えたおかげで、順調にホームの余裕が足りなくなってきたな。また手頃な空き家か廃屋でもないか仲介人に相談する必要がありそうだ」

 

「ええな、それ! どうせなら廃棄された教会でもリサイクルしよか? 司祭さんとユーウェインくんで、ライブの杖を使うて一儲けできるかもしれへんな!」

 

 この世界の神様はナーガ様とロプトウス様になるのかな? これから助けを求めようって相手の名前を利用しての金儲けはちょっとなぁ。

 

 

 と。

 

 適当にゆる~くリカールの妹が戻ってくるのを待っていたところ。

 

 

「オマエが話にあった司祭か。フン、本当に奴隷ばかりを引き連れているんだな……。まぁいい、グダグダと駆け引きをするつもりはない。単刀直入に言おう。コイツの兄貴をアタシに寄越せ。もちろんタダでとは言わない。それなりの金は積んでやる」

 

 

 念の為、チラリとリカールの妹を見てみれば……うん。なんか申し訳無さそうにしてるし、相変わらずミニマップでは友好的な中立勢力扱いだし、これアレだわ。正義感あふれるお節介焼きが本人の意見を無視して先走ってるヤツだわ。

 女ばかりのキャラバン、いや傭兵団か? 勇者やウォリアーなんかの上級職が何人もいるあたり、このリーダーの女性が優秀な統率力の持ち主なのが想像できる。あるいは、人間性が魅力的なのかもしれない。

 

 うーん、これは面倒な……。でも迷惑なだけでまだ実害は無いし、まずは対話を試みるのが大人の対応なんだろうな……。




ユニット一覧をリクエストする声がありましたので、人物評価の話もどこかで投稿しようと思います。次のボスフロア攻略か、遅くても第20階層らへんまでにはまとめておきます。
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