受肉体、緑谷出久   作:助5103

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余談ですが緑谷宿儺状態の様子はこんな感じです


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第十七話「存在しない記憶」

十七話「私と出久君」

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

試験会場国立多古場競技場

 

 

 

「えー…どうも初めまして…今回の特別試験担当の目良善見です」

 

「君が噂の緑谷出久君ですか…」

 

「よ、よろしくお願いしますッ」

 

 

「まぁ、もう貴方の耳には届いていると思いますが…今回の仮免試験は極めて特殊で特別です」

 

 

「そうですね…言ってしまえば、このような形式は何十年も務めさせて頂いている私からすれば初めてです」

 

 

「な、なんだかすみません…」

 

 

「謝る事はありません、どちらかと言うと…あちらの方から強く押し付けられたので非があるのは彼だけなのですが…」

 

 

 

「(ホークス、一体どういうやり方をしたんだ…!?)」

 

 

「ま、受けた身として文句は一切言いません…貴方をヒーローの卵として今日は精査させてもらいます…」

 

 

「それでは、本題に移りますが…通常のやり方を少し変更した内容で試験をやっていきます」

 

 

 

一次試験、ボール投げ 二次試験救助訓練

 

 

 

「今回やって頂くのは“救助訓練”のみ…謂わば一次試験を免除するという形での内容となります」

 

 

「理由としては…そもそも貴方が一次試験をやる必要はありません」

 

「個性把握テスト、対人訓練、体育祭(最終種目を除く)と貴方の成績を見るに、プロヒーロー以上の身体能力を持っている事は明らかです…」

 

 

「その上でやっても我々からすれば必要の余地はありません」

 

 

 

 

「これアレじゃないっスか?“なろう系”みたいな展開みたいスよね」

 

ホークスの発言に理解が出来ない相澤先生ら呆れ声でそう返す

 

「俺に聞くなよ…」

 

 

 

「それでは、早速会場の方へと向かいますのでこちらへ」

 

 

と、僕達は目良の後を着いていく

 

「それでは説明の方を。まず…この広大な会場の中に合計で六人の救助対象者を配置します」

 

 

「異形型、動物、老若男女と様々な種別を適切な判断の元でこちらのエリアへと救助すれば今回の特別仮免試験では“合格”という扱いになります」

 

 

 

 

 

「えぇ…そうですね、聞いてみると案外容易な内容だと思ってしまいますよね」

 

 

「(心の中を読まれた…!?)」

 

目良さんは読心できる個性を持っているのかな。思っている事を全て返答してくれる。

 

「ですので、今回は貴方のハイレベルな能力に合わせて少し無茶苦茶な条件を提示します…」

 

 

「まず…制限時間なのですが…スタート開始から“十分”以内の間とします」

 

 

「じゅ、十分…!!」

 

 

 

「こんな事言うのも失礼ですけど、思ったより…短いですね」

 

 

「ええ、まぁこれくらいでないと逆に簡単ですからね」

 

「ですが実際の救助となると時間それくらいあるかないか…そういう物です」

 

 

「それともう一つ」

 

 

続けて僕には二つ目の条件を言い渡される。

 

「試験時間の間で、“少しでも救助対象者に傷をつけてしまった場合”…その時点即失格とみなします」

 

 

「結構厳しいね…」

 

 

「いろいろとお前がこんな無茶な提案を施した結果だろうな」

 

どうやらこの試験もホークスさんが請け負ったものらしい。今の状況では僕にとってはこれ以上ない高待遇。文句も言える立場ではないし、ここで断るような考えなんかない

 

「ま…」

 

 

「なんとかなるだろ」

 

ホークスさんは何より僕を信頼している。会ったばっかなのに、その期待感は僕に更なるプレッシャーを与えた

 

 

「これが貴方に課せられた試験の内容です…質問の程は?」

 

僕はすぐさまに「ありません」と答えた

 

 

「…では早速いきましょう」

 

「すぐさまコスチュームに着替え、今から5分後に行います。トイレは今のうちに済ませて下さいね」

 

「はいっ」

 

 

どうやらホークスさんの計らいで以前所持していた僕のコスチュームを雄英から預かってくれていたらしい。そんな気遣いに感謝し、僕コスチュームに着替え、戦闘前に深呼吸をする。そんな中後らからホークスさんが優しく声をかけた

 

「やぁ、気分はどうだい?」

 

「緊張しています、でも…」

 

「今日はいける気がします」

 

 

「うん、いいね。今の君、いい顔してる」

 

 

「(さっきとは大違いだ…)」

 

「(俺、以外と教師向いてるかも…?)」

 

と、ホークスさんは自分の隠れた才能に気づいたかのように笑みを浮かべる

 

 

そして、着替えた僕は再び会場に足を運ぶ

 

「…さて」

 

 

「準備の程は済んでいるようなので…これから試験を始めましょう」

 

 

「(なんか、久々のコスチュームかも…)」

 

 

「(ちょっといつもより違う感触があるような…)」

 

 

「はい、お願いします!」

 

 

「それでは…始め!」

 

 

 

 

「いやぁ〜…しかし」

 

会場に設置されている観客席でホークスさんと相澤先生はこんな話をした

 

 

「本当に十分以内に達成出来るんスかねぇ」

 

「結構自信満々で行っちゃったけど…」

 

「ま、出来なきゃお前の案は総崩れになるな」

 

「ただ、これはマイナスからゼロに戻す為の最初の一歩だ」

 

「ここからどう未来を切り開いていくかは…アイツの腕にかかってる」

 

相澤先生は、どっちとも取れる言い方で緑谷の行末を見守る。

 

対する僕は試験会場のスペースの広さに感嘆する。

 

 

「会場はうちのグラウンドβみたいに結構広いな…!」

 

 

開始から二分の所で早速怪我人らしき人影を視認する。そばには一匹の子犬がいる

 

「!いた…!」

 

 

「ふっ…!」

 

 

「よし、まずは…この人とワンちゃん…!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

「うぅ…助けれてくれェ」

 

そんな悲痛な言葉に僕はあの情景を思い浮かべる

 

「こんな時…」

 

「オールマイトなら…」

 

僕が何回も、何百回も目にしたその“ヒーローの姿”を

 

「もう、大丈夫!」

 

「僕が来た」

 

 

こんな事、恥ずかしくて言えなかったけどこの台詞をずって言ってみたかった自分がいた。まさか、こんな所で言える日が来るとは

 

 

 

あと、8分

 

 

 

「二人は救出、残りは四人…!」

 

 

「単純計算でも、二分に一人を助けないと間に合わない…!」

 

 

「あまり現実的なものじゃないけど、そういう場面にいつも立ち向かっていかなきゃならないのがヒーローなんだ…!」

 

 

「これくらいで弱気を吐いてはいられない!」

 

 

ピピ、と搭載されている探知機械に反応があった。

 

 

「このレーダーからするに、僕から一番近いのはこのビル内にいる…!」

 

 

そして僕はその雑居ビルに入り込み怪我人の救出を試みた。

 

 

「どこだろう…」

 

 

「ここは七階から地下の2階まである…一階一階探すとなると時間がかかってしまうな」

 

 

「床を突き破って登っていくか…?」

 

そして、僕が目線を右に移すと気になるものが目に映った。

 

「!」

 

「あれは…」

 

 

「さっきまでいなかったのに…何故あんな所に?」

 

一人の女の子が横たわっていた。おそらくこの子も試験会場で用意された怪我人…の筈なんだけど

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「え、ええ…」

 

 

「(今さっき自分で歩いていたような…)」

 

 

「なんだろう、この違和感…」

 

いや、とにかく考えている暇なんかない

 

 

「怪我されてますか?」

 

 

「さぁ、こちらへ…!」

 

 

 

「…」

 

その一瞬、ナイフのようなものが僕の顔を素早く横切る。

 

「ッ!」

 

 

 

「あ、貴方は…ッ!」

 

 

 

「ああ、貴方が緑谷出久君ですか…?」

 

「会えて嬉しいです、トガ…今凄く楽しいです…!」

 

「…トガ…!?」

 

 

「すみません、自己紹介が遅れました。私の名前はトガ、トガヒミコ…」

 

 

「出久君の事が気になって、ここにこっそり来ちゃいました♪」

 

不気味な笑顔を浮かべながらも僕にそう自己紹介をした。

 

「な。なんなんだ…!?君は…ッ!」

 

 

「私、体育祭の時ずっと貴方の事みてましたッ。あの時もとてもカッコよかったけど…」

 

 

「でも、もっと血を流した方がカッコよくなるよォ。出久君ッ!」

 

その皆こなしは視認出来ない程でないが一般人を超える並外れたスピードでありすぐさま臨戦体制をとった。どうやらこの子は試験で用意された人間じゃあない。そう、“ヴィラン”だ

 

 

 

「この人ッ、只者じゃない」

 

 

「この異常性…そしてこの凶暴な皆こなし…!」

 

 

 

「ヴィラン連合か!君は!」

 

 

 

「アタリです♪」

 

やっぱりだ。いつの間にか潜入していたのか

 

「(今の僕に、もう失敗は許されない…!)」

 

 

「ごめん、今の僕に構っていられる時間は…ない」

 

 

「(あくまで彼女は傷つけない)」

 

 

 

「(ここで逃げても、戦って無理にねじ伏せようとしても、僕がこの試験で合格する事が出来なくなってしまう)」

 

 

 

「別に、いいよ…貴方がそうでも」

 

 

「私は強引に行くからね!」

 

 

「ッ!」

 

 

「(個性じゃない!素の身体能力でここまで機動力があるのか…!)」

 

 

「!」

 

 

「捕まえたァ!」

 

 

「フッ!」

 

 

「…優しいね、出久君」

 

「あれだけ蹴り飛ばしたのに、傷一つついてない」

 

 

「…今、僕は君を傷付ける訳にはいかない」

 

 

「でも、少しだけ大人しくしてもらうよ…!」

 

 

「カッコいいねぇ、出久君…凄くヒーローしてるねぇッ…!」

 

 

 

 

「拘束しようとしてるの?私の事を…」

 

 

「少しだけ!」

 

 

 

「は、速い…!」

 

 

 

 

「くっ…!」

 

 

「…どうして避けるの?出久君…」

 

 

「せっかくカッコよくしようとしてるのに…」

 

 

 

「…この人」

 

 

「(執拗に血を求めているけど、それが彼女の“個性”関係があるのか?)」

 

 

「(近接メインの戦闘スタイルからして、常用出来るタイプの個性ではなさそうだ…何らかの条件があって、それが血に関係しているのか?それか、単に彼女の異常な狂気性から出る物なのか…?)」

 

 

 

 

「いや…そうか」

 

 

「どこよそ見してるの!?出久君ッ!」

 

 

「ッ!」

 

 

「君は…」

 

 

 

「何が目的なんだ?」

 

 

 

「私はただ出久君に会いたくてここに来たのです」

 

 

「初めてその名前を聞いた時から興味があったのでっ」

 

 

 

「“弔君”には貴方の血を採取しろと命じられましたが…それは二の次ですからっ!」

 

 

 

弔…死柄木弔か…!?

 

 

 

 

「…え」

 

 

「なんだッ、これ…!?」

 

僕が考え事をしてしまったばっかりに得体のしれない拘束道具によって身動きを封じられてしまう

 

「捕まえたぁ!」

 

「見た目より案外がっしりしてますねぇ」

 

「な、何をする気なんだ…!?」

 

 

「大丈夫だよ出久君…ちょっと血をとるだけだから」

 

「いっ…!」

 

チクリ、彼女の背中から仕込まれている針に刺される。

 

「ちうちう♪」

 

僕の血を吸った瞬間、彼女の動きは止まった。

 

「…あ」

 

 

 

「うぅ…ッ!!」

 

 

「なに、これ」

 

「あぁ…!?」

 

 

「見たことない“記憶”が…頭の中にッ…!?」

 

 

様子がおかしい彼女はそう言いながらも頭を抱えて苦しみ悶える。頭から流れる未知の記憶は全身を駆け巡り彼女の脳内へと傾れ込んだ。ありえない、存在しない筈の記憶が彼女を侵食する。

 

それはこの状況で思い出すには不気味な、温かい“思い出の断片”だった

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