第三話「宿儺の器」
「私が、来たぁぁあッッ‼︎‼︎」
試験から一週間後、雄英志願者にとって緊張と興奮の時を過ごした僕は今日届いた合否通知に向かって齧り付くように見ていた。
あの女の子を助けようとした時から記憶がなかった僕は複雑な感情を抱えながら、その手紙を開きその結果を見た。
筆記試験はなんとかとれけど、実技試験に関しては総合で549P…満場一致の一位だった。この結果は雄英に置いて「主席」としての扱いとなる。
それは、今年度において最もな優秀な生徒として雄英へと入学出来る。その時は僕は嬉しいというよりかは困惑に近い感情が湧き上がった。
何故なら、僕はその時の記憶が“一切ない”からだ
「(僕、なんで忘れてるんだろ…?)」
どうしても思い出せないけど、周りの人曰くそれは「驚異的」だったらしく、他の生徒よりも逸脱した動きで試験では大きく話題になる程だった。
何よりそれを全く覚えていないのだから余計に勿体無い。強過ぎる余りに自分でも制御出来ていない、という事なのか…?
とりあえず、それはさておき…合否結果は特別な仕込みを入れたプログラムによって投影された映像で告げられた。何よりもそこに映っていたのは他でもない______
「おおおおオールマイトォォッ!!?」
「な、なんでぇ!?」
生!!いや、投影された物だから、生ではないか…でもこの映像は明らかに僕に向けて撮られた貴重なモノだ…!!これは家宝にせねばぁッ…!!
「AHAHA‼︎いやぁ、驚かせてすまない‼︎かねてより、今年度から雄英の担任…つまり教師として就任する事になったものでね!こうして、この私が僭越ながら合格の発表を一人一人に告げる事となったのだ‼︎」
「まぁ、君に関しては驚愕の結果な訳だが…文句なしの入試一位通過‼︎筆記はまぁ平均程ではあるが、実技においてはそれを遥かに凌駕する結果だ‼︎」
「あまりにも君だけが得点を稼いでしまうから、強制終了という形にはなったが…全く君の力には驚いたよ‼︎まさしくその姿はバーサーカー‼︎怖くて少しちびっちゃった‼︎」
そ、そうなんだ…
オールマイトですらそう感じてしまうなんて…どんだけ暴れてたんだ…宿儺さんは…
「途中で若干ヒーローらしからぬ行為も多々あったが、その辺りに関しては私達教師陣が三年間の高校生活でみっちり指導してやろう‼︎」
「君はとてつもない戦績を叩き出したが、その力はまだまだ伸びる‼︎」
「さぁ‼︎来いよ、緑谷少年よ…!!」
「ッ!」
「ここが、“君のヒーローアカデミア”だ‼︎」
この言葉を受け止めた僕の心が大きく揺れ動いた。
分かってはいたけど、ここまで来たのは“僕の力”ではない。あの人のほんの気まぐれで僕の命は“二度も”救われてきた…正直言って宿儺さんについてまだまだ知らない事が多い。宿儺さんは自分の事を“個性”と呼んでいたが、もう一つの人格としてここまで自立しているケースはそうそうない。多く疑問はあるけどこれに関しての質問は宿儺さんは答える事は一度もなかった。
それでも“ヒーロー”になりたいという依然として変わらぬ想いは今も残り続けている
だから、とりあえず進んでみたいと思ったんだ。
これが僕の【個性】だとしたら、それを僕のモノにして…
オールマイトのようなみんなを助ける【ヒーロー】になるんだ!
◇◇◇◇◇◇◇
「おいクソデク」
「な、何⁉︎」
僕は雄英の内定を貰った事で一躍有名人として暫く人の波に揉まれる生活を過ごす事となっていた。
それは、同じ志願者であるかっちゃんも同様だったが大きな違いとしては雄英史上最も高い得点を叩き出した事…圧倒的な結果を残した僕は一時期プロヒーローからの早い勧誘も何件かあった
そして、僕は中学の卒業式でかっちゃんから体育館の裏に呼び出された。
「聞いたぞ、入試一位だってなぁ…」
「あ、あぁ…うん。そ、そうだよ…?」
僕がだじろいでいる時にBOM!とかっちゃんの手のひらから爆発の轟音が鳴り響く。
「テメェ…無個性で何も出来やしねぇ石ころの雑魚だったろぅが…今まで俺をおちょくってたのかァッ!?ァァ!?」
「そ、そんな事ない…んだけど!?これにはちょっと訳があって…!?」
「訳もクソもあるかッ!?楽しかったかよォ…あん時から、俺の事を陰でバカにしてたんだろうがッ!!」
こうなった時のかっちゃんはもうどうしようも止まらない。ただでさえ短気な人なのに、こうして自分のプライドに傷がついたと聞く耳を持たずに激情してしまう。
ただ、一つ違和感があるのがいつも見たいに“暴力を振るわない”という所…
いつもより三割り増しに怒鳴ってはいるけれど、いつもより距離があるような…
「なんとかいえやクソデクが!」
「…」
「あん時も、そうだったな…ヘドロん時テメェは俺の所につっかかって何をするのかと思いきや、一瞬で奴をぶっ潰した…!!」
「なぁ…答えろよ…デク…」
「僕は…」
違うんだ、かっちゃん…それは僕じゃないんだ…本来だったらあの時点で僕もヘドロヴィランに“殺されていた”…。その筈だったんだ
「テメェは一体なんなんだッ!」
「……」
「ちっ」
「黙殺、てかァ…?どこまでも舐めやがって…」
「まぁいい」
「オレとテメェは同じヒーロー科だ、そこまで話したくねぇッつーんなら無理やりにでも口を開かせてやる」
「そん時は、俺がテメェの力をねじ伏せた完全勝利の後だ…覚悟してろやクソナードッ!!」
「か、かっちゃん…」
今思えば、この時かっちゃんに僕の中に“もう一人”の魂がある事を告げていればよかったのかもしれない。
それをしなかったのはかっちゃんの圧に気押されてた訳ではない。もし喋ればそれでかっちゃんの命に関わるのかもしれないと考えたからだ。
一年、たった一年宿儺さんと居合わせた僕はこの人が普通の人間ではないことは理解していた。
だから、「もしかしたら」と思ってしまい僕はこの秘密を誰にも喋っていない。
そして、春
僕は今、新たなる高校生活のスタートの前に立っていた。
勿論、入学先はあの雄英だ…緊張するなって言う方が無茶な話だ。
入学式の日、あまりにも緊張していた為か午前3時に起きて今もずっと二度寝出来ずに起きていた。
時計をチラチラと確認しながら忘れ物がないか何度も確認する。筆箱にはありとあらゆる文具を用意し、制服と既に一時間前から着用しておりネクタイにズレがないか鏡の前でずっと睨んでいた…
以前に
「宿儺さん、友達作りで大事な事って何だと思いますか?」
「知らん」
なんて蹴っ飛ばされたけど、仮にちゃんと教えられたとしても僕の場合は大事な時に頭真っ白になって何も出来ないのがオチだ。
ここは、もう何も考えずに突っ走っていこう。
何も、考えずに…!!
静岡県垢離里に位置する巨大な施設、国立雄英高等学校。
ヴィランの犯罪行為を取り締まる警察機構とは別の対抗措置として、個性を犯罪抑止力および人道的活動に利用するヒーローを育成するべく設立された国立学校…とはいっても、警察よりヒーローの人口が圧倒的に多い程、人にもたらす影響力は世界を通して圧倒的ともいえる。
それは、「ヒーロー飽和社会」と言われる程に。
その、有象無象の中の一人として僕は三年の時を使い僕はヒーローになる。
そう、ここで…僕は憧れの人のようになるんだ…!
「君」
「何を、ぶつぶつと喋っている?」
「…」
隣にいたのは、メガネをかけた真面目そうな男の人…キリッとした表情でドアに向かって喋っていた僕に話しかけてきた。
どうやら、いつもの癖が出ていたらしい。こうなると、僕は人の声が聞こえなくなり自分の世界へとつい入ってしまう
「どういう趣味なのかは分からんが…君もヒーロー科なのだろう?」
「あ、ああ…うん?そ、そうだよ…ごめんつい…!」
そうして僕は慌ててドアを開けてヒーロー科A組の教室へと入る。僕よりも早く教室の中へ入っていた人もいたので開けた瞬間に僕の方へと目線を移した。
その中にはかっちゃんが机に足をかけて座っていた。
「…」
「お、おはよう〜…かっ…ちゃん…」
その時一言も発さなかったが、「コロスゾ…!」と言われたような気がした。宿儺さん…ではない、多分幻聴だ…きっと
「あ〜!」
そして殺気から逃げるように後ろから聞こえた声に振り返る。
そこには、見覚えのない女の子が僕に指を刺して立っていた
「貴方は、あの時の…!」
「え、えーと…」
「あの時だよ、あ・の・と・き!デッカいロボットの前でこけちゃって立てなかった時に助けてくれた…!」
「…」
僕が意識が絶たれる前に僕はある一人の女の子を助けようとしていた。
そう、はっきりと顔は覚えていないが…その時の人だったのだろう。
ブンブンと興奮しながら腕を振っていた彼女だったが、その後ろにも一人の男が立っていた。
しかも、それもまた“特殊な姿で”
「友達ごっこがしたいなら他所へ行け…ここはヒーロー科だぞ」
『む…』
『あの男は…』
心の中で寝ていた宿儺は、ボサボサ頭の男の声を聞いた瞬間起き上がって彼の顔を凝視していた。
その男には微かに見覚えがあると宿儺はそうつぶやいた
「奴は小僧とは違って何かしらの力を持っている…」
「俺が小僧の支配権を奪って暴れていた時に奴はその力を用いて俺の意識を弱ませた…」
「…少し、見てみるか…」
「俺は相澤消太、君たちの担任だ。よろしくねー」
「それじゃあ早速だが……体操服これ着てグラウンドに出ろ」
と、僕たちはなす術もなくグラウンドに呼び出された…
本来なら入学式やガイダンスが通常だが、僕達ヒーロー科は特別として「個性把握テスト」がこの時間で行われる。
それを思っているのは僕だけではない、他の人達も同様にカリキュラムの異常性を相澤先生に異議を唱えた。
「ヒーロー科にそんなこと悠長にやっている時間はないよー」
「雄英は”自由”が売り文句。それは俺たち先生側もまた然り…」
ポケットから取り出した端末から、今から行われる種目が表示される。
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、その他諸々…」
「中学時代から個性禁止の体力テストはやっていた筈だろう」
「まったく、国は未だ画一的な記録を取って平均を作り出している。まぁ文部科学省の怠慢だな…」
「緑谷」
「!は、はいッ!!」
先生は国に対して愚痴を垂らしていた矢先に僕の方へと唐突に指名してきた。
「中学ん時のボール投げの記録は?」
「え、えーと…」
「15M…です」
「は?」
「え?」
僕がそう口に告げた瞬間、相澤先生と周りにいたクラスメイトもざわざわと僕の冴えない記録に驚いていた。
あれ…あいつって今年主席だよな?
普段は実力を隠してる…とか?
能ある鷹は爪を隠す…
主席にしてはしょぼくね?
たりめェーだろ、無個性のクソ雑魚だったんだぞ!
明らかに言動が目立つ人がいたけれど、主席としてその名が知れ渡っていた僕の身体能力の低さに違和感を持っていた
それもその筈、あれは当然ながら僕の成した事ではないからだ。
僕は入学当日より数ヶ月、個性の突然発現という口実で個性変更の届けを出していた
個性名は「斬撃」
身体能力に関しては、個性の応用という少し無理矢理に理由つけで通していたけれど宿儺さんの力なしではご覧の通りこの記録だ。
ただそれは“彼が僕の前に現れる前”の話
「まぁ、いい…投げてみろ」
「は、はい…」
「(て、言っても中学の時と同じような記録…だろうなぁ…)」
入試後から僕は少しずつ筋トレを頑張ってきた。
それに大きな変化は起きないかもしれないが、それでも冴えない記録を出すよりマシだろうとある程度の筋力はついている。
それでも、やっと一般の学生の平均記録に並ぶ程だ…
そして、手に持たされたボールを思い切り投げた
瞬間、クラスメイトの顔つきを変わった
僕が投げたボールは遥か先、肉眼で見えない程まで飛びそして、落ちる事なく青い空へと溶け込むように消えていった。
まじか
僕は心の中で細々と呟いた
記録は560M…これは人間の身体能力では到底なし得ない、まさしく「人外」の記録だ
「す、すげぇぇぇぇぇぇええ!!!」
「やっぱり!アイツは普段能力を隠しているんだよ…!!」
「オールマイトみてぇ!」
「能ある鷹は…!」
「あんのヤロウ…!」
な、なんでだ…!しかもどこからこんな力が…??
「ま、主席ならこんなもの…か」
当然、というような顔つき記録を見る先生。
『こういう事だ、小僧』
皆が驚愕している中で、心の中から宿儺さんが突拍子もなく声をかけた。
「え?」
『今まで貴様に身体を明け渡したのは二回…その間、貴様の身体は時間俺の動きに“ついていった』
『結果的にはその身体にはその“残穢”が少しだけ染み込んでいる…人並み外れたパワーはその証拠だ』
「そ、そんな事が…!」
『それともう一つ…』
『そもそも貴様は生まれつき身体の作りが普通の奴とは違う』
『それを自覚していないだけで、その気になれば少なくとも“奴ら”よりも強い力を引き出せる』
宿儺さんはそう言い再び心の奥底へと消えていき、以降は顔を出す事はなかった。
「いやぁ〜!!個性を思い切り使えるなんて流石雄英だよなぁ〜!」
「面白そうだしな!」
僕の一投を見た他の皆達がワイワイと話をし始めた。
「…」
「面白い、ねぇ」
「ヒーローになる為の3年間…そんな生ぬるい精神で過ごすつもりか…?」
「なら、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し“除籍処分”としよう」
ここは雄英、他のヒーロー校とは何もかもが一線を画す存在である。
時に無理難題を強いられる場合、僕達にはその校訓でもある『Puls ultra』を掲げ歴代の先輩達は激動の三年間を乗り越え一流のヒーローとして世に排出されている。
そして今、僕たちヒーロー科A組は早くもその窮地に立たされていた。入学早々“除籍”を賭けた試練が皆を待ち伏せていたのだ
◇◇◇◇◇◇◇
「にしてもよ」
「先生のアレ…やりすぎじゃね?入学式やってねーのに最下位は除籍とか冗談でも笑えねぇよぉ」
「本当だよ…私透明になるだけの個性なのに…どうしよぉ〜…!」
「全くだぜ…それに、あんなバケモンいちゃあますます除籍の可能性が狭まってくるよなぁ…」
「ハァッ…ハァ…ッ!」
種目 50メートル走…
緑谷出久
記録:4秒96
「とてつもなく速いな、君…素の身体能力のみでここまでの記録を叩きつけるとは」
「え、えっと…」
「聡明の飯田天哉と申す…個性はマフラー、この通りふくらはぎに搭載されたエンジンで高速移動出来る!」
「み、緑谷出久ですっ!」
エンジン、かぁ…通りでめちゃくちゃ速い訳だ…!飯田君の事は入試の時にチラッと見かけたのを覚えていたけど、厳格そうな人だったから怖い人のイメージがあったけど…人より真面目なだけなのかな…
「しかし‼︎俺の速さと互角とは!一体どんな脚力をしているのだね⁉︎」
「是非ともその速さの秘訣を教えて頂きたい!」
「う、うん…」
やっぱりドがつくほど真面目だ…!!
種目 立ち幅跳び…
「爆速ターボォッ!!」
かっちゃんの個性「爆破」は手のひらから爆発を発生させる、シンプルかつ高威力の特性を持っている。
その原理としては汗腺から分泌されるニトロ性を含んだ汗が起爆剤としての役割を持っており、それを空気中に発散させる事で状況次第では破壊力とその規模も最大級に放つ事も可能だ
これは、かっちゃんのその光景をこっそり見てヒーローノートにて分析しながら纏めた物だから確証性はないが(普通に教えてくれる訳もないので)
その事から冬場では発汗作用が少ない為、エンジンがかかりにくいという欠点も持つ
両手から放たれた爆発は反発により高速移動も可能でありその繊細な微調整を難なくこなせるかっちゃんはまさしくセンスが突出しているともいえる
爆豪勝己 記録 約86.M
「しっかし爆豪も中々すげぇよなぁ〜…」
「才能マンしかいねぇのかぁ〜…?っぱ雄英すげぇー…!」
「(どうだ、デクッ…!これならテメェも________)」
飛ぶ瞬間で踏ん張った周りに大きな地割れと共に大きな跳躍によって砂埃が大きく舞った。
これ、“個性把握テスト”なんだよな…??
皆は僕の人並み外れた身体能力を見ながらも一人だけ趣旨がズレまくっている事に疑問を抱き初めてすらいた。
「こ、こんな飛ぶなんて思ってなかったよぉ〜ッ!!」
「(や、やばい…!!早く体制とらないと地面に激突しちゃう…ッッ!!)」
「あぁぁぁ〜…ッッ!!」
「えいっ」
パシンッ
妻に浮気がバレた時に思い切りビンタされるような感覚が僕を襲う。というか、実際に誰かからぶたれたのだろう。
しかし、ビンタの瞬間身体が無重力状態のまま僕の身体はフワフワ浮いていた。
それこそ、地面に激突する寸前に
「あ、あれ…」
「おちてない…」
「ギリギリセーフ…やね!」
「あ…!え、えーと」
「あ!えーと…麗日お茶子、です!」
「う、麗日さんは何でここに…」
「さっき相澤先生から「ここまで飛ぶだろうから落下防止の為にここにいろ」との命令があったので!」
「そ、そうなんだ…」
後から聞いたけど麗日さんの個性は「無重力」といって、触れた物をなんでも無重力化してしまうらしい。
どうりで、落ちないまま浮いている訳だ。
「レベルが違えなぁ〜…思い切りジャンプしただけであんな距離でんのかよ」
「増強系だっけ?」
「いや、素の力らしい」
上鳴君、瀬呂君、障子君の後ろで微動だにしないかっちゃんはその驚異的な記録を眺めていた。
記録:約104M
「……ッ!」
「こないだまで…無個性の雑魚だったろうが…」
「なのに…なんで、なんで…ッ」
◇◇◇◇◇◇
以降、個性把握テストは何事もなくトントン拍子で進み全ての種目が終了した。
因みに相澤先生が発言した除籍の件について合理的虚偽という事でつまりは“ウソ”らしい
僕もそうだが他の人達もすっかり騙されてしまった。
「少し考えればわかりますわ…」
まぁ、そうでない人もあるみたいだけど…
僕からすればあながちウソでもないようにも見えた。多分場合によっては本気で除籍を
「結果発表については一つずつだと時間の無駄だから一斉開示させてもらう」
一位 八百万 百
二位 轟 焦凍
三位 緑谷出久
四位 爆豪 勝己
五位 飯田 天哉
六位 常闇 踏陰
七位 障子 目蔵…
と、体力テストの総合順位が発表された。
「二位、か…」
特待生である八百万さんは【創造】に個性により各種目に適した物を生み出し全てにおいて驚異的な記録を叩き出した。轟君も、【半冷半燃】の力には圧倒された。どちらも特待生だけあって入学初日なのに物凄い人達だ…
そして…
「俺が…クソデクの下だとォ…ッ!!??」
「おいゴルァッ!!まだ個性使ってねぇだろッ!!どういう事だそりゃァッ!!」
「ひ、ひぃ…ッ!?」
気迫迫る表情でズカズカと僕に歩み寄るかっちゃん、なんなら両手にパチパチと破裂させている…僕は殺す気だ…!
ただ、僕の目の前で彼はピタリと止まった。捕縛布…のような物に絡みつきジタバタと拘束されたかっちゃんは暴れる。
「あまり個性使わすな…」
「俺ぁ、ドライアイなんだよ…!」
超強いのに、勿体無い______!?
皆の心の言葉が一致するかのように相澤先生の切実な言葉に驚愕した。
多分、【抹消】の持続時間は瞬きしない間だけなんだろうか…
「そゆこと。これにて終わりだ。 教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」
「い、いやぁ〜…入学早々退学にならなくてよかったぁー…」
「次の日からは過酷な試練の目白押しだ、それまで身体を各自休めるように」
「それでは、解散!」
そして、放課後まで時はあっという間に進んだ。激動の高校デビュー戦は終わりを迎え、蓄積された疲労感が肩にのしかかりながら校門の外へと歩いていた。
それにしても、あんな凄い力…今まで持っていたなんて全く知らなかったな。
宿儺さんは“生まれつき持っている”とは言っていたけど、僕は生きててそんな感覚一度も体感した事がなかった。
なんであの人はそれを知っていたんだろう…?
「デク君ッ」
「は、はいッ!?」
ぶつくさと呟いている所で横から麗日さんが声をかけてきた。声掛けられただけなのにどうしてこう僕は上擦った返事をしてしまうんだろうか…
「やっぱすごいね!あの超パワーというか…ああいう派手な動き出来るの!」
「そ、そうかな…」
「君達!」
そしてもう一人、遠くで飯田君が凛々しい声で僕たちを呼びかける
「君、身体は大丈夫なのか?」
「え?」
「あの立ち幅跳びの大ジャンプ…あんな高さで着地したら無事じゃあすまないだろう!」
「あ、その前に私が個性で浮かしたから大丈夫!」
「む…そうなのか…」
「しかし、相澤先生には一杯食わされたな…あの時は本気で言っているものかと…!」
「そうだね…」
「それと同じように、君のあの半端じゃないパワーにも驚いたぞ…!」
「あはは…」
「そういえば、デク君の個性って何なの?」
以前、僕は個性届で【斬撃】という名で新しく更新した。4歳以降からの個性の発現は常識的に考えて違和感のある事実だが、とっくに発現していたがそれを“出さなかった”という口実を作りなんとか納得してもらえた。
ただ、これは僕も分かっていた事だけどそれはあくまで宿儺さんの力だ
自分にはまだ扱える事が出来ない未知の領域…
「物を斬ったり出来る個性だけど…まだ上手く使いこなせなくて…」
「“斬る”…か。それはまた難儀な個性だな」
「でも派手で凄そう…!」
まぁ、僕じゃ使えないんだけど…
「しかし」
「話を変えるようで申し訳ないのだが、麗日君…君のその呼び方なんだが」
「ん?」
「デク、というのは…?」
「あぁ、それ…」
「横にいてた怖い人がそう言ってたから…!」
多分、横にいた人というのはかっちゃんの事かな…まぁ、あれだけ連呼していたら僕にデクというイメージが付くのは無理もない話なんだけど…
“デク”
その名前が付けられたのは結構昔の話だ
幼稚園の頃からの縁があったかっちゃんに、当時は他の子達よりも字が読めていたかっちゃんは、僕の名前の「出久」の読み方を変えて「デク」と呼ぶようになった。
語源は木偶の坊の“木偶”から取ったのだという。
まぁ、彼の性格的にそこにいい意味ではない…
今思えば、あれから僕とかっちゃんの溝が出来始めた
「全く、蔑称だったのか…」
なんなのだ、あの男は!と飯田君はかっちゃんに鬱憤を撒き散らしていた。
「ごめんねデク君、そんな意味があるとは思わなかったから…でも」
「“がんばれ”って感じのデクでなんか好きだ、私!」
「デクですッッ!」
「い、いいのか緑谷君!浅いぞ!?」
「うん!!」
“がんばれ”って感じのデク…かぁ…
なんか、嬉しいな…!
オールマイトさんとはいつ会うのかな…