雄英の一般入試を終えてから一週間後…姉ちゃんを含めた日本のトップヒーローのニュースをティノと分析して盛り上がっていたその時。
玄関から凄い勢いで走る音が聞こえ、母さんが部屋に飛び込んで来た。
「鰐子!!雄英の合否通知!!」
「!!」
「お手紙だ!!僕が開ける!!」
「今回ばかりは絶対にダメ!!」
「ちぇっ!」
届いた合否通知をすぐさま開けようとしたティノを制止した私達は父さんに合否通知が届いた事を知らせて残業を回避。
個性を使って帰宅しようとして警察に叱られ、日が暮れてから帰ってきた父さんに非難の目を向けた後、皆の前で私が手紙の封を解く。
中から出てきた円盤型の投影機器を机に置いたところ、カチッと音がなって無精髭の気怠げな男が投影された。
『雄英高校教師の相澤消太だ、竜間鰐子はヒーロー科主席合格、詳細は後で送る書類で確かめろ…これ言わなきゃダメか?…そうか。
ようこそ、ここが君のヒーローアカデミアだ。合格おめでとう』
明らかにやる気のない祝いの言葉と共に映像が終了した。
「「「???」」」
古いネットミームの宇宙猫のような表情で困惑する両親と私とは違って弟は興奮した様子で私の手を取った。
「お姉ちゃん!ヒーローの学校頑張って!!
僕もリューキューみたいなかっこいいヒーローになれるように勉強頑張る!!うおおおーー!!」
「お…おう…」
ティノが高いテンションのまま勉強しに部屋から出ていってから数秒後、次第に状況を理解してきた両親は私を抱き締めたまま大声で叫んだ。
「鰐子すごいぞ!!お前マジですごいぞ!!主席だぞ!?」
「天才だ…うちの子たち天才だ…フォォーー!!!」
「うるせえ…」
これ以上ないくらい鬱陶しいテンションに辟易しつつも、私は緩む口元を抑えきれずにいた。
遂にやってきた雄英高校入学式当日!
楽しみのあまり早朝に目が覚めてしまった私はヒーターで代謝を高めたあと、母さんと電話しながら登校準備を進める。
特注の頑丈な歯ブラシと金たわしで牙と尻尾を磨き、緑の混ざった白髪を左右に束ねてツインテールにする。身嗜みは十分!
尻尾を出す穴の空いた特注の制服に身を包み、爬虫類系個性用の胃石を飲み込む。
「じゃ!行ってくる!」
『学校頑張ってねー!!』
母さんに挨拶をして電話を切り、雄英からほどよい距離にあるマンションを後にする。
交通ルールを守りながら雄英までひとっ走りして校門前までやってきた。他の生徒が見当たらない…少し早すぎたな!
校舎案内を見ながら1-Aの教室を探して数分、バカでかい校舎に苦戦したが何とか教室まで辿り着いた。
「一番乗り〜……げ」
「げ!?初対面の相手に失礼ではないかい!?」
入試の時のメガネが教室で微動だにせず座っていた。いつから居たんだ…?
まあそんなことより…
「お前、入試の時もじゃもじゃ頭の奴を責め立ててたよな。ヒーロー目指してるならああいうのは良くないぞ」
「ぐっ…痛い所を…!あの時はぼ…俺も気が立っていた、彼には後で謝ろうと思っている」
「後で…あいつと知り合いなのか?」
「そうではなく…彼なら確実に受かっていると確信しているのさ。なにせ彼は0P
「一撃…ふーん…」
「反応が薄くないかい!?」
アレを一撃で!強個性か…楽しみだな!
メガネが黙り込んだ私に話しかけようと口を開いた瞬間、教室の無駄にデカい扉が開き、ハキハキとした声が響き渡った。
「失礼しますわ!」
「女子だ!!初めましてー!!」
「無視!?」
「っ!!初めまして!
「私は竜間鰐子!よろしくな!」
「はい!!よろしくお願いしますわ!!」
八百万さんと話し始めてからすぐにクラスメイトが教室に集まり始め、今いるクラスメイトの名前が分かってきた所で、例のもじゃもじゃ頭が教室に入ってきた。
いいね!アイツもA組か!てかいつのまにか飯田と爆豪が口論になってるな、爆豪のヤツは本当にヒーロー志望なのか??
飯田が変な動きと共にもじゃ頭(略称)に謝罪をしている最中、最後にやってきた茶髪の女子の言葉を遮って男の声が響き渡った。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け、ここは…ヒーロー科だぞ」ヂュッ!!
黄色い寝袋に入りながらゼリー飲料を吸い込んだ不審者に一瞬身構えるが…よく見たら合否発表の時の相澤先生だ、変人なんてレベルじゃないな。
(((なんかいるぅぅ!!)))
「ハイ…静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
「てことは…この人もプロのヒーロー…?」
一見えげつない不審者にしか見えないが…歩き方が強者のそれだ、間違いなく実力派のプロヒーロー…!
「担任の相澤消太だ、よろしくね。早速だがコレ着てグラウンドに出ろ」
そう言って不審s…相澤先生が取り出したのは体操服。
あらゆる書類より先に体操服が用意されていたのはこの為か………ん?入学式は?
女子更衣室で改めて茶髪の子…麗日さんと自己紹介を済ませて急いでグラウンドに向かったところ、A組以外の生徒が全く居なかった。どういう事だ?
全員が集まった所で相澤先生が言い放つ。
「個性把握テストをします!!」
「「「個性把握…テストォ!?」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」
「……!?」
入学式は欠席かあ…まあ皆の個性を知る良い機会だ。楽しんでいくか!
「雄英は"自由"な校風が売り文句、そしてそれは"先生側"もまた然り」
そう言った相澤先生は教師としてどうなのかと思うほどバッサリと文部科学省をディスった。
公務員が国の機関を真っ向からディスるのって普通にダメでは?
「それじゃあ主席の竜間…は分かりずらいな。次席の爆豪、中学の時のソフトボール投げ何mだった」
相澤先生が次席と言った所で爆豪が鬼の形相になり、ギリッ…!!とすごい歯軋りが聞こえてきた。あいつだけ治安悪すぎでしょ。
「グギギ……67m!!」
「じゃあ『個性』を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいい、思いっきりな」
「クソがぁ…死ねェ!!!」
BOOM!!!
今の殺意は明らかに私に対してだったな。それにしても爆破の個性か…コイツも強そうだ!
ピピッ…!
『705.2m』
爆豪やるな!私の個性じゃあそこまでブッ飛んだ記録は出せねえ!
遠距離攻撃が可能な個性を羨む気持ちが無いと言ったら嘘になるが…私は私の長所をひたすら伸ばすだけ!
「まず自分の「最大限」を知る、それがヒーローの素地を形成する合理的手段…」
「なんだこれ!!すげー面白そう!」
「『個性』思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」
……なんで皆こんなに興奮してるんだ?個性アリとはいえただの体力テストだぞ??
………あ!!家族にヒーローが居たり室内で使える個性じゃない限り皆個性を使う機会が無かったのか!!
そりゃあ体力テストでも興奮するわけだと一人で納得していると、相澤先生が明らかに不機嫌な様子で呟いた。
「面白そう…か、ヒーローになる為の三年間…そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?
よし…トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、「除籍処分」としよう」
……聞き間違いかな?
「「「はあああ!?」」」
「生徒の如何は先生の"自由"、ようこそ!これが雄英高校ヒーロー科だ!」
相澤先生が髪をかき上げてニヤけながら言い放った除籍宣言に皆にどよめきが走る。
「最下位除籍って…入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…理不尽すぎる!」
麗日さんの必死の抗議を予想していたのか、相澤先生は特に表情を変えることなく代表的な世界の理不尽を羅列していく。
「これから三年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける!"Plus Ultra"さ、全力で乗り越えて来い…こっからが本番だ!」
ふふ…ふふふ…中々粋なこと言うじゃねえか…!ますますやる気が出てきたァ!!
最初の種目は50m走、この競技のみ出席番号順に二人ずつ同時に走るそうで、カラスのような顔をした常闇と一緒に走ることになった。
「よーいスタート」パァン!
「GRAAAR!!」
相澤先生の合図と同時に地面を全力で踏み抜きスタートダッシュを決め、尻尾でバランスを取りながら前のめりに駆け抜ける。
ピピッ!
『5.01秒!』
「チッ…機動力が今後の課題だな…」
「ケロケロ…普通に走ってその記録は相当だと思うわ」
「然り…」
「シカリ…?」
シカリってなんだ…?声色的にたぶん褒めてるな。
「褒めてくれんのは嬉しいが…近接特化の個性持ちとしてはこの程度で満足しちゃあダメだ!最低でも今の飯田レベルの速さは手に入れたいな!」
「向上心…」
「ケロ…私も負けてられないわ」
第二種目は握力!『個性』アリって事はこれもいけるだろ!
普通の人より大きく開く口で握力計を咥え、全力で力を込める!
バキャッ!!
「……計測不能だ」
「…あれアリなのか?」
「万力よかマシだろ」
第三種目は立ち幅跳び、相澤先生の合図と同時に地面を踏み砕き全力で跳躍する。
ピピッ!
『8.02m!』
「ッしゃあ!」
自己最高記録をちょっと更新!
「あの細っそい足にどんだけ筋肉詰まってんだよ…」
第四種目は反復横跳び、これは普通にやるしかねーな!
ピピッ!
『72回!』
「竜間さんやべーな」
「ヤバいね!」
第五種目はボール投げ!出来るか分からないけどチャンスは二回、試す価値はある!
ソフトボールを真上に高く放り投げ、タイミングを見計らって全力で跳躍!
空中で全力で尻尾を振り抜く!
パァン!!
「「「…かっけええええええ!!!」」」
皆が発砲音のような音にビクッとした後、歓声が上がった。
ピピッ!
「…420.8m」
「よしっ!」
アドリブだったが意外と上手くいったな!
「なんだ今のアクロバティックなやつ!!」
「イナイレみてぇ!!」
しばらくして緑谷の番がやってきた。
アイツ今の所碌な記録出せてないぞ、どんな個性で0Pを粉砕したんだ…?
「ったりめーだ無個性のザコだぞ!」
なんか爆豪が戯言言ってんな、無個性がどうやって巨大ロボを粉砕するんだよ。
ピピッ!
「…46m」
「な…今確かに使おうって…!」
なんか相澤先生に叱られてんな…こんな所で脱落してくれるなよ…!
何かをブツブツ呟いている緑谷を見ていたところ、目が死んでない事に気付いた、次の瞬間。
ゾアッ!!
「!?」
「SMAAASH!!」
バァン!!
私の時とは比べ物にならない爆音と共にボールが吹き飛んでいき、爆豪を僅かに超える記録を叩き出す。
なん…ッだ今の!!鳥肌立った!!
どうやってあの威力を実現してるんだ?あの威力に耐えられる肉体はどうなってるんだ?指がボロボロになってる…未だに扱い切れていないほどの莫大なエネルギーなのか!?
居ても立っても居られなくなった私は爆豪とほぼ同時に飛び出していた。
「どーいうことだワケを「凄え個性だな緑谷ァ!!指見せろ応急処置してやらァ!!」…コラ待てチビ女ァ!!」
「ヒィィィ!!!」
瞳孔を細めて満面の笑みを浮かべた私と目が凄いことになってる爆豪に迫られて緑谷が悲鳴を上げる。
互いに押し合いながら緑谷に向かって走る私と爆豪が相澤先生の前を通り過ぎようとした瞬間、気付けば二人まとめて地面とキスをしていた。
ゆっくり顔を上げると、相澤先生が髪を逆立てて額に青筋を浮かべながら睨んできた。
「ッたく…何度も個性使わすな…俺はドライアイなんだ」
「すいませんでしたァ!!」
やっべぇ!興奮して不味いことしちまった!!
自分の失態を理解した私は即座に謝罪する。
「クソデクがッ!?」ゴッ!!
「ヒェッ…!」
「すいませんでしたァ!!」
となりの
「もがもが…!!」
「竜間…少しやり過ぎだ、手を離せ」
「……あ、すまん爆豪!やりすぎた!!」
「クソがぁ!!ケッ!!」
相澤先生に言われて爆豪を見ると、顔が少し地面にめり込んで中からくぐもった声が聞こえてくる。
慌てて手を離して謝ると、さっきより少し大人しくなった爆豪が苛立ちを隠さずに立ち上がり、皆の方へ戻って行った。
「竜間、反省文3枚」
「げっ!!」
「文句あるか?」
「ありませんッ!!」
初日から反省文を書くことになって落ち込みながら皆の元へ戻ると、麗日さんがうららかに話しかけてきてくれた。
「さっきから思ってたけど…竜間さん強いね!!かっこいい!!」
「…ありがとう」
すごくうららかでした。
さっきは怒られちまったな…気を取り直して第六種目は上体起こし!尻尾を上手く使えばいけるか…?
「オラオラオラオラオラオラオラァァ!!」
「ぐおぉぉぉぉぉ!!!」
「は…82回!」
めっちゃ速く出来た……けど足を抑えてた常闇が…!
「ゼェ…ハァ…」
「フミカゲェーー!!」
「常闇…お前の遺志は忘れない…!」
「勝手に殺すな…!」
第七種目は長座体前屈、これはマジでどうしようもないな!
「うりゃぁぁーー!!」
「…48.2cm!」
「やっと可愛い記録が出たな!」
「この種目はどうしようもないだろ…」
最終種目は持久走!どういう形式のやつなんだろう!
「最後に500mのグラウンドを4周、合計2kmを走ってタイムを測ってもらう」
(((最後にこれを持ってくる悪意!!)))
この種目は持ち前の体力でひたすら全力疾走を続け、3分20秒でゴール!
さぁて結果はどうなった!
「んじゃパパっと結果発表」
そういえば緑谷のボール投げ以外の記録ってどんな感じだったっけ……あれ?ヤバくない?
「ちなみに除籍はウソな」
「…………!?」
ヴン!という音と共に順位表が出てくるがちょっといまそれどころじゃない!!
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽!」
相澤先生のしてやったりという顔でようやく皆の理解が追いつき、悲鳴のような声が響き渡る。
「「「はーーーーー!!!!??」」」
「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」
アレ嘘だったの!?いや誰も除籍にならなくて良かったけども!!
「そゆこと、これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ。
緑谷、ばあさんのとこ行って治してもらえ、明日からもっと過酷な試練の目白押しだ。
竜間、反省文忘れるなよ」
「はーい!!」
こうして、私の高校生活は反省文の提出から始まることが決定した。
それにしても…緑谷に爆豪、八百万さんに麗日さん、更に轟って名前の氷の奴まで…こんなにたくさん最高のライバルがいるとは…!やはり雄英に来てよかった!!
「あ…八百万さん、見てなかったんだけど私何位だった?」
「竜間さんは一位、私が二位でした…次は負けませんわ!」
「応!お互い手加減は無しだ!」
「…なんだかライバルみたいで良いですわね!!」
…八百万さんプリプリしててカァイイ!!
〈A組席順表〉
[教卓]
葉隠 耳郎 上鳴 青山
爆豪 瀬呂 切島 芦戸
緑谷 竜間 口田 蛙吹
峰田 常闇 砂藤 飯田
八百万 轟 障子 麗日