ワニ娘のヒーローアカデミア   作:入魂ロフス

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三話

 初日からの波乱の展開に、皆が不安と期待を抱えながら臨んだ1限目、英語の授業は…

 

「んじゃ次の英文のうち間違っているのは?

おらエヴァバディヘンズアップ盛り上がれーー!!

(((普通だ)))

 

 極めて普通だった。

 こんな普通の授業にプロヒーロー使うの贅沢すぎない?

 

 午前の授業が終わった後の昼休み…

 

「耳郎さん!竜間さん!一緒にお昼を食べませんこと!」

「もちろん良いよ!」

「ウチは良いけど…八百万さんソレ何?」

「…?お弁当ですわ!」

「デカくない…?」

 

 八百万さんの誘いで耳郎さんと三人でお昼ご飯を食べることになった。

 机にお弁当を広げる八百万さんを置いて自分のご飯を取りに行く私と耳郎さん。

 

「ランチラッシュさーん!予約してたアレお願ーい!!」

「あいよ!」

「何頼んだの?」

「内緒!少し時間かかるから先に八百万さんのとこ戻ってて!」

「おっけー!楽しみにしてる!」

 

 耳郎さんが親子丼を持って行ってからしばらくして、ランチラッシュさんからお昼ご飯を受け取った私は二人の待つテーブルへと向かう。

 テーブルの八百万さん側は重箱で埋まっていたので耳郎さんの隣に座ろうとすると、耳郎さんがこちらを見つけて駆け寄ってきた。

 

「竜間も聞いてよ!ヤオモモのお弁当がやば……!?!?アンタもそっち側かよ!!」

「???」

「何言ってんだコイツ…みたいな顔するな!!その肉なんなの!?」

「まあ!竜間さんも栄養系の個性ですの?」

「まあまあ一旦座ろうよ!」

「ぐぬぬ…!!」

 

 白目を剥きながら私の手元を指差して叫んだ耳郎さんを落ち着かせて席に座り、二人のご飯を見渡す。

 

「耳郎さんは親子丼定食、八百万さんは…4段の重箱弁当か!美味そう!」

「うちの料理人が腕によりをかけて作ってくれた特製弁当ですわ!」

「いやヤオモモもすごいけどさあ…竜間もそれ何!?」

 

 再びギャグみたいな表情で指摘してきた耳郎さんの視線の先を見ると、私の持ってきた3kgのブロックステーキを凝視していた。

 

「何って…肉だ」

「肉しかないじゃん!?あとデカい!!」

「栄養バランス等は大丈夫ですの?」

「『個性』の関係でダイジョブだから安心してね」

「なるほど!実は(わたくし)も…」

 

 八百万さん…ヤオモモが始めた個性の話は意外と盛り上がり、あっという間に昼休みの終了時間が迫っていた。

 

「脂質ねぇ…道理で…その…」

「竜間…堪えろ!」

「??」

 

 『脂質を消費する個性』その言葉についヤオモモの体の一部に目を向けてしまった私の肩を耳郎さん…響香が苦悶の表情で掴んできた。

 どうしたんだ響香、お腹痛いのか?

 

「あ、あとちょっとで昼休み終わるよ」

「マジ!?早く食べなきゃ…って二人とも食べるの早くない!?!?」

「頑張れ響香ー!」

「が…がんばってー!」

 

 私とヤオモモの声援を力に定食を完食した響香と三人で廊下を早歩きで教室へ向かい、昼休みの終了時間に少し余裕を持って教室に着いた。

 

「次何だっけ?」

「ヒーロー基礎学ですわ!」

「げ…食べたばっかりなのに…」

「ドンマイ響香」

 

 しばらく二人と雑談した後、別れて各々の席に座り、教師がやってくるのを待っていると……

 

わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!

 

 教室にオールマイトが普通に入ってきた!生のオールマイトだ!すげえ筋肉!!

 

「オールマイトだ…!!すげえや本当に先生やってるんだな…!!!」

「シルバーエイジのコスチュームだ………!画風違いすぎて鳥肌が……!」

 

 普通にドアから入ってきたNo. 1ヒーローに皆のテンションが最高潮になる。

 オールマイトは興奮する皆が静かになるのを待ってから、授業の説明を始めた。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目だ!!単位数も最も多いぞ!早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!」

 

 そう言って「BATTLE」の文字が刻まれたカードを掲げるオールマイトに一部のクラスメイトが困惑の声を漏らす。

 初日から戦闘訓練って大丈夫なのか…?

 

「そしてそいつに伴って…こちら!!」

 ガション!

「「「!?」」」

 

 オールマイトが端末を操作すると同時に壁からせり出してきた大量のトランクケースに皆がビクッとなる。

 あんなところに収納されてたのか!!

 

「入学前に送ってもらった「個性届」と「要望」に沿ってあつらえた…コスチューム!!」

「「「おおお!!」」」

 

 入学早々コスチューム着れるのか!凄いな雄英!

 

「着替えたら順次グラウンド-βに集まるんだ!!」

「「「はーい!!!」」」

「格好から入るってのも大切なことだぜ少年少女!!自覚するのだ!!!!今日から自分は…ヒーローなんだと!!」

 

 オールマイトの決め台詞が終わると同時に皆が立ち上がり、各々のコスチュームを手に更衣室へと向かっていった。

 

 女子更衣室にて…皆に比べてシンプルなコスチュームだった私は早めに着替えた後、皆のコスチュームを見て回っていると…

 

「お、梅雨ちゃん着替え終わった?」

「ええ、私のはカエルモチーフよ。鰐子ちゃんは…それで戦うの?」

「ああ!私は個性の都合上薄着の方が面倒が少ないからな!」

「皆が凄すぎてウチが場違いな気がしてきたよ…」

 

 不安そうに話す響香、確かに私含めてほとんどの女子が体のラインがわかりやすいコスチュームだな。

 透に関しては…もしかして着てないの…?

 突っ込んだら負けな気がしたので、気にせずグラウンド-βに向かう事にした。

 

「あ!鰐子ちゃん待ってー!」

「麗日さん!お茶子って呼んでいい?」

「もちろんいいさ!」

 

 お茶子と話しながらグラウンド-βに向かう。

 到着後、少し遅れてやってきたヤオモモと響香、あと梅雨ちゃんも交えて雑談してしばらく…緑谷が最後にやってきた。

 

「お!緑谷遅かったな!」

「あ…竜間さうおっ!?」

「わあ!デクくんもイカすね!」

「ううう麗日さん!?」

 

 到着した直後に女子達のコスチュームが目に入ってきて咄嗟に目を逸らす緑谷に容赦なく話しかけるお茶子。

 お茶子…緑谷には少しばかり刺激が強いと思うぞ。

 

「ヒーロー科最高!」

「ええ…」

 

 私達の方を見てそう叫んだブドウ頭のやつは…近寄らんとこ。

 緑谷が到着したことで全員が出揃い、オールマイトがカンペをペラペラめくって内容を確認していると、全身を白いアーマーで包んだ生徒…消去法で飯田がオールマイトに質問した。

 

「先生!ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!」

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!」

 

 飯田の質問に待ってましたとばかりに即答するオールマイト。始めるタイミングを見計らってたからちょうど良かったんだろう。

 

「敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ!監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会…ゲフン、真に賢しい敵は屋内に潜む!!

 君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

「「「!!?」」」

 

 最初から対人戦闘するのか!?凄いなオールマイト!!

 

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知る為の実践さ!ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ!」

 

 思ってもみなかった訓練内容に梅雨ちゃんが疑問を呈す。

 質問へのオールマイトの返答に皆が少し考えた後、数人が一斉に質問攻めを始めた。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」「ブッ飛ばしてもいいんスか」「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか………?」「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか!」「このマントヤバくない?」

 

「んんん〜〜!聖徳太子ィィ!!!」

 

 例えが独特だなオールマイト!!

 

「いいかい!?状況設定は「敵」がアジトに「核兵器」を隠していて「ヒーロー」はそれを処理しようとしている!」

 

 大きな手で摘んだ小さなカンペをガン見しながら説明を続けるオールマイト。たぶん皆もこう思っていることだろう…

 

(((設定アメリカンだな!!!)))

 

 …とな!

 

「「ヒーロー」は制限時間内に「敵」を捕まえるか「核兵器」を回収する事。

 「敵」は制限時間まで「核兵器」を守るか「ヒーロー」を捕まえる事。コンビ及び対戦相手は…くじだ!」

「適当なのですか!?」

 

 これまでのルール説明に合わない「くじ」の言葉に反応する飯田。確かに「くじ」って言うと適当感あるよね。

 

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることが多いしそういう事じゃないかな…」

「そうか…!先を見据えた計らい…失礼致しました!」

「いいよ!!早くやろ!!」

 

 緑谷の説明に納得したのか一瞬で引き下がってオールマイトに尊敬の眼差しを向ける飯田。

 飯田はちょっと素直すぎる気がするけど…オールマイトも急かしてるしサッサと始めようか!

 

「わー!鰐子ちゃんだ!これで勝つる!」「期待が重い…!」

 

 くじの結果、私は透とペア!そして対戦相手は……

 

「よろしく頼む」「……」

 

 障子と轟だった。

 轟の個性って氷結だよね……あれ?マズくない?

 

 なにせ私の個性は『ワニ』!沖縄出身だから未だに経験したことないけど恐らく寒さに激弱だ!!

 変温動物の爬虫類ってだけでヤバめなのに氷漬けにでもされようもんなら自動的に冬眠が始まっちゃう可能性すらあるのだ。

 

 体力テストの時からうっすら思っていた相性不利問題が思っていたよりずっと早く立ちはだかって来た。

 私と透のチームが戦うのは二番目…それまでに何か対抗策を考えなきゃ…!

 

 

 

 

「ヒーロー…ヒーローチーム…W IーーーN!!」

 

 全く思いつかねえ!!!

 ダメだ不味い!唯一思い付いた建物巻き込む案は今回ので非推奨にされた!!

 

「鰐子ちゃん!次私達だよ!」

「ゴォォー…」

「なんか凄い声出てるよ!?」

 

 う〜〜ん……もう減点覚悟でブッ潰すしかない!!

 

「ヨシ!透行くぞ!」

「治った!おー!」

 

 当たって砕けろだ!行くぞー!!

 

 

 

 

 

 

『ヒーローチームWIーーーN!!』

 

 ダメだった!!!

 

 壁に耳くっつけて障子と探り合いしてる暇なんてなかった!!

 初手で建物ごと氷漬けにしてくるなんて容易に想像できたハズ…!マジで姉ちゃんに顔向けできない!!

 あーやっべ…眠気来た…

 

「少し我慢してろ…溶かすから」

「ちべた…」

「透…ごめん…ちょっと不味いかも…zzz」

「……おい」

「え?鰐子ちゃん!?ちょっ!大丈夫?オールマイト聞こえますか!?鰐子ちゃんが!鰐子ちゃーん!!

 

 私は人生で初めての冬眠を経験した。

 

 

 

 

 

 

 轟side

 

 爆豪と緑谷によってボロボロにされたビルから移動し、新しいビルで始まった戦闘訓練。

 

 先行した障子がビルの壁に先端が耳になった複製腕を当て、索敵していると…。

 

「ッ!!」

「どうした」

「…相手もこっちの会話が聞こえている。俺と同等の聴覚持ちがいるな」

「…そうか。危ねえから外出てろ」

「…?何を…」

 

 尻尾の女子がいるから少し出力を高めにするくらいだ。

 

「向こうがどんな作戦立てていようが…俺には関係ない」

 

 パキィィィン!!!

 

 確実に氷漬けにした、勝ちだな。

 

「…凄まじいな」

「行くぞ」

 

 障子の案内でハリボテの核があるであろう相手のいる部屋へ向かい、そのまま氷漬けになった核に触ると、オールマイトの声で結果が宣言された。

 

『ヒーローチームWIーーーN!!』

「少し我慢してろ…溶かすから」

「ちべた…」

 

 靴を脱いでいてより寒そうだった透明な女子の氷を溶かしていると、尻尾の女子の様子がおかしくなってきた。

 

「透…ごめん…ちょっと不味いかも…zzz」

 

 そう言い残した尻尾の女子…竜間は目を閉じて意識を失った。

 

「……おい」

「え?鰐子ちゃん!?ちょっ!大丈夫?オールマイト聞こえますか!?鰐子ちゃんが!鰐子ちゃーん!!」

『何ッ!どうした葉隠少女!』

 

 氷から解放された葉隠と急いで竜間を氷から解放し氷を溶かした床に横にすると、葉隠が息を飲む音が聞こえた。

 

「嘘ッ…!?」

「……どうし」

「オールマイト!!脈が止まってる!!」

『何ッ!!』

「…は?」

 

 何を言って…そう思った所で竜間の尻尾に生えている鱗の意味に思い至った。

 爬虫類……そういう……ッ!!

 急いで竜間の手首で脈を測る。

 体温を感じない…脈拍が無い…俺の氷が…同級生を殺した…?

 息が乱れ、視界が明滅する感覚。

 

「私が来たァ!!」

「オールマイト!鰐子ちゃんが…!」

「安心しなさい!竜間少女は必ず助ける!!」

 

 窓を割って飛び込んできたオールマイトが竜間を保健室に運んで行くのを、俺にはただ眺めて自分の犯した過ちを反芻することしかできなかった。

 

 

 

 

 

 あの後竜間の脈拍はすぐに戻り、授業を続行するよう言われたオールマイトによって少し時間をオーバーして終わった戦闘訓練。

 着替えを一番に終わらせた俺は、保健室の扉の前で立ち竦んでいた。

 

 母さんの氷が人を傷付ける力になる…そんなことはこれまで考えたこともなかった。

 幼い頃の記憶…親父が母さんに手を上げる光景がフラッシュバックする。

 母さんの個性で人を殺しかけた。その事実に心が折れそうになる。

 せめてクソ親父と同じにならないよう…せめて…謝らなきゃ…

 

「ただの冬眠だよ」

「………は?」

「この子の個性は『ワニ』

 ワニは冬眠する時に脈拍が極めて遅くなるからねえ…別に心臓が止まってた訳じゃないさね。

 謝りに来たんなら湯たんぽの増産を手伝いな!」

「……わかりました」

 

 母さんの個性が人を傷付けることも、親父の個性が人を癒すこともある。

 その事実に少し…自分が分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 竜間side

 

 ………ふかふか…あったかい…ん…ここは…保健室?

 

 薄らとした意識の中でぼうっと天井を眺める。

 

 あれ…私何してたんだっけ…確か…戦闘訓練で…透とペアになって…

 

 ここまで考えた所でふと、視界の端に紅白頭があることに気付いた。

 

「轟…?」

「お」

 

 私が意識を取り戻したことに気付いた轟はベッドのそばにあった丸椅子から立ち上がると、先生を呼びにカーテンの向こう側へ消えた。

 ……………!?なんで轟がいるの!?!?

 

 混乱している私の隣に白衣を着た小さなお婆さんがやってきた…この人は…リカバリーガールだっけ?

 

「意識が戻ったみたいだね。それじゃあダメ押しの…チユー!!

「えっちょっえぇぇーー!!?」

「お」

 

 なんかほっぺにキスされたんだけど!?個性『治癒』ってこういう感じだったの!?

 

「てかなんで轟が!?」

「……竜間、ごめん」

「なんで謝るの!?」

 

 まってマジで分からない!!なんで轟そんな悲痛な顔してるの!?私冬眠しただけだよ!?

 

「個性上特に問題はないとはいえあんたほぼほぼ心臓止まってたからね。

 自分の個性で他人を傷つけてしまったのがよっぽど堪えたんだろうさ、謝罪を受け入れておやり。

 てかそろそろ下校時間だからハリボー食べてサッサと荷物まとめて帰りんさい」

 

 もうそんな時間!?大分寝てたな私!!

 ヒーローコスチュームのまま寝かされてた事に気付いた私は飛び起きてハリボーを貰い、保健室から飛び出そう…とする前に振り返り。

 

「轟!私は気にしてないからサッサと帰るぞ!!」

「………おう」

 

 そう言い残して更衣室にダッシュで向かった。

 

「…!竜間、廊下は走るな」

「あ!!サーセン!!」

 

 案の定途中で相澤先生に怒られた。




鰐子ちゃんのコスチュームはわぬ太さんのV衣装から戦闘の邪魔になる小物を取り除いた感じです。
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