永久の少女の千年旅行〜蒼い星へ還る日まで短編集〜   作:スグリ@あれこれ書いたりする人

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お久しぶりです。今回は百合回。


夫婦ってなんだろう?

 とある日の夜。

 

 空母ラグナロックの中にたくさんある個室の一つのベッドの上で、裸で抱き合い声を上げる女の子が二人。

 

「ん……むっ……」

「あぅ……あんっ……!」

 

 フランの小さなお胸の先っぽを咥えて、ちゅぱちゅぱと音を立てながら吸おうとする光里。そんな彼女を、フランは色っぽい声を出しながら満更でもなさそうに受け入れていました。

 

「ごちそうさま、フランちゃん」

「出てない、ですよね……?」

「うん。でもフランちゃんの匂いはちゃんと感じたよ」

「私も……気持ちよかったです」

 

 満足して、ひとときのお楽しみを終えた二人はそう言って照れ笑いをします。

 

 出港の日に、結婚式を挙げてから何年も経った今。二人の関係は空港にいた頃よりも進み、今ではこんな風にちょっとしたえっちにも挑戦するようになっていました。

 

 とはいえ知識しかないフランと、知識すらないピュアな光里。この二人の考える「えっち」は、「二人で恥ずかしいことをしよう」というような初々しいものですが。

 

 一見すると幸せそうな夫婦生活。けれど光里には、何か思うところがあるようで……。

 

「私たちの夫婦関係って……これでいいのかな?」

「は、破局の危機ですか!?」

「ごめんフランちゃん、そういうのじゃなくてね!?」

 

 突然の言葉に、今にもガーンという音がしそうなフランに慌てて光里はその理由を説明します。

 

「結婚して、その後何か変わったのかなぁって思って、考えてみたら……」

「言われてみると特にないですね。強いて言うならえっちすることが増えたくらいですか」

「普通は結婚したら家族になるんだよね?」

「でも結婚する前から家族ですよね、私たち」

 

 二人の言うように、結婚してはっきり変わったことといえば、夜にえっちに挑戦してはお互い顔を真っ赤にするような日が時々できてきただけ。

 

 本来なら二人は結婚することで家族になるものですが、他にも智実に小夜子、悠樹に月美。この地球にやってきたその時から六人でずっと友達であり、同時に家族でした。結婚したからといって、元から家族だったその関係が変わることはありません。

 

「それに相談して苗字は変えないって決めたよね。月にいるお父さんやお母さんたちとの大事な繋がりだもん」

 

 そしてこれは、みんなで相談して決めたこと。光里とフラン以外にも、この先誰かが結婚するとしても、苗字は絶対に変えないという決まりです。

 

 月と地球。二つの星に別れて、きっと二度と会うことのない血の繋がった両親や兄弟姉妹。かつて家族だった証の苗字を失くしてしまったら、彼らとの最後の繋がりさえも失くしてしまうような気がする。そんな思いからみんなで決めた絶対のルールなのです。

 

「確かに……何も変わってないですね」

「それでいいのかもしれないけど、なんて言えばいいのかなぁ……」

「味気ないですよね」

「そう、それ!」

 

 そうした色々が積み重なって、結婚してからもちょっぴりえっちに挑戦するようになったくらいであまり変わっていない関係。それに光里は不満や、もどかしさを感じていたのです。

 

 そしてその気持ちは、フランも同じでした。

 

「せっかく結婚したのになぁ……」

「法的な意味なんて何もない自己満足、だなんて言うのは野暮ですし……」

 

 そもそも結婚とは言っても、その根っこはあくまで結婚「ごっこ」。愛を誓い合ったのに嘘や偽りはないにせよ結婚という法律のようなルールもなく、子供も作れないここでの結婚は結婚ごっこでしかない。

 

 フランはそれをよくわかっていましたが、それで済ませてしまうのはあまりにもロマンがありません。そこで、フランは考えました。

 

「明日、皆さんに聞いてみますか」

 

 

 

 

 

 翌朝、空母ラグナロック格納庫。

 

「むぅ……少し過敏にし過ぎたか。感度を5パーセント程落としてみるか」

「おはよう、小夜子!」

「何しているんですか?」

 

 自分専用のロボット、ゼクト・オメガのコクピットで眉をひそめながら、けれどなんだか楽しそうに何かをしている小夜子に、光里とフランの二人は声をかけました。

 

「機体の照準システムを調整していた。デフォルトでは機体の運動性とズレがあってな。微調整で命中精度を上げられないか試していたところだ」

「つまりどういうこと?」

「改造で起きたコンピューターのズレを直しているんです」

「なるほど……」

 

 彼女がしていたのは、敵に狙いを定める機能のちょっとした微調整。旅に出る前にスピードを上げるパワーアップをしてしまったせいで、最初の設定ではほんの少し、誤差という程度ですが狙いを定めるのが遅れてしまうようになっていました。

 

 とはいえそれは性能が足りないということではなく、元の素早さに合わせた設定になっていたからというだけ。スピードを上げた自分専用のマシンの為に、ゲーマー心に火がついた小夜子は細かくその設定を合わせているのです。。

 

 まずは彼女に、光里とフランは自分たちの関係について聞いてみることにしました。

 

「で、どうしたんだ。暇潰しか?」

「私たち、結婚したのに前とあんまり変わってないなぁって。小夜子はどう思う?」

「そんなもの、一線越えてしまえばいいだろう」

 

 そして小夜子の返答に、フランは顔を真っ赤に。一方光里はあまり意味がわかっていない様子。

 

 こんなやり取りの中、何やら別のロボットの方から声が聞こえてきました。

 

「小夜子〜、こっち調整できたから終わったら模擬戦やろ〜」

 

 そう言って向かいに置いてある機体のコクピットから手を振るのは智実。同じくゲーマーである彼女もまた小夜子と同じように微調整をして、二人とも出来上がった時には勝負するという約束をしていたのです。

 

「負けた方は今夜全裸で勝った方のエロメイド、でどうだ」

「上等! メスになる覚悟、できてるってことだよね〜?」

 

 何やらいかがわしい罰ゲーム付きで。

 

「い、行きましょう光里さん!」

「一線って……」

「あの二人は爛れ過ぎなんです!」

 

 あまりにも好き放題な二人の話をこれ以上聞かせられないと、プンプン怒りながらフランは光里を次の場所へと連れて行くのでした。

 

 

 

 

 そうして格納庫を離れ、動く床に乗って船の中を周っていた時。何やら食堂の方から、とってもいい香りがしてきました。

 

「なんだかいい匂い……」

「お、みつりんふららんよっすー。デート?」

「まあ、そんなところです」

 

 そこにいたのは悠樹。月美のお手伝いをしていることが多い彼女ですが、今日は一人で何かを作っているみたい。

 

 悠樹は早速作っていたそれをお椀に盛り付けると、二人の前に差し出しました。

 

「じゃあせっかくだし試作食べてく?」

「これは……」

「全粒粉の麺。味見してみてー」

 

 そこに入っていたのは、中に茶色い粒が入った黄色っぽい麺。一口サイズのそれを、光里とフランはお箸ですすってみました。

 

「ツルツルで美味しい!」

「ちゃんとした中華麺ですね。何年ぶりでしょうか……」

 

 麺には味はついていませんでしたが、それは何十年も食べていなかった中華麺。ツルツルでコシのある食感と、噛むと感じられる小麦の風味は二人を満足させるのに十分でした。

 

 けれど悠樹のお料理は、これで終わりではありません。

 

「でしょー。次はこれ、食べてみ」

「ら、ラーメンだ……」

「すごく久しぶりです……」

 

 次に差し出されたのは、なんとラーメン。さっきの中華麺に透き通るような茶色いスープが注がれ、トッピングはネギと鶏肉のチャーシューだけというシンプルな一杯。

 

 まさかここでまた出会えるとは思っていなかったラーメンを前に二人は、抑えきれない食欲のままにそれをずるずると啜りました。

 

「鶏をバラす時に出てくる骨で鶏がらスープ取ってみたんよ。イケるでしょ」

「この醤油スープ、あっさりで食べやすいね」

「それでいてこのコク……鶏の油ですか」

「そそ。出てくる油全部冷凍してるからチロッと風味付けにね」

 

 自分たちの手で命を奪い、食べる毎日。そんな日々でみんなは食べ物に感謝すると同時に、できる限り無駄にしないようにと骨や油も冷凍庫にしまったり、鳥の羽や動物の革は服や家具の材料にしたり、使い道のない部分は家庭菜園の肥料にしたりと余すことなく使う事を心掛けるようになっていました。

 

 このスープもそうして残していた骨や油から作ったもの。

 

 命を大切にして、奪った命に感謝し欠片も無駄にしたくない。そんな思いは巡り巡って暮らしを豊かにしてくれる。このラーメンはまさにその象徴と言えるかもしれません。

 

「また夜食に作ってもらっていいですか。頭が回って研究や設計も捗りそうです!」

「おっけ、いつでも作るねふららん! まあまだ試行錯誤の途中なんだけどね」

 

 暮らしをより豊かに、そしてより簡単に天使に勝つ力をつけるために度々引きこもって研究に励むフランにとって、このラーメンは最高の夜食。悠樹も彼女に頼まれて嬉しいのか照れ笑いしながらそう約束をしました。

 

「案外うちの天職ってラーメン屋だったかもだわ。なんかこう、すっごいしっくり来るんよね」

「そうだね。ラーメンを作ってる悠樹ってば、すごく楽しそうだもん」

「どんどん美味しくしてくから覚悟しな?」

 

 どうやら悠樹にも、熱中できることが見つかったみたい。とってもやる気満々です。

 

 ですが光里とフランがここに来たのは、ラーメンを食べる為ではありません。それには悠樹も気付いていました。

 

「で、なんか悩みあるんっしょ。話してみ?」

「それなんだけど……」

 

 耳を傾けてくれる悠樹に、光里は自分たち二人の悩みを打ち明けます。

 

「なるほどねぇ。倦怠期……とも違うか。夫婦だって実感が欲しいわけね」

 

 事情を聞いた悠樹は考えます。好きやドキドキが冷めてしまったわけではなく、とはいえ何かが物足りない。夫婦としての実感が欲しい。言うだけなら簡単ですが具体的にどうしようと頭を悩ませ、悠樹は考えた答えを口にします。

 

「言っちゃなんだけどぶっちゃけうちらで結婚なんてごっこ遊びみたいなんだし、どうやってもイメージしてる夫婦にはなれなくない? ま、憧れるのもわかるけど」

「なら、どうすればいいのかな」

「どうもしなくていいっしょ。告ってOKして夫婦になったんならお互い好きってことでいいじゃん」 

 

 悠樹の言うように二人の夫婦という関係には、本当のところは意味はありません。国やルールもなく、結婚を認める社会もない。友達六人で結婚式ごっこをしただけで、世界にいるのもこの六人だけ。

 

 女の子同士で子供を作ることもできない以上、ただ好きでい続ければそれだけでいいと悠樹は考えたのです。

 

「それに今がアレでも時間が経てば変わってくもんだと思うけど。それが理想の関係かは別にして、うちらみたいな世間も何もないハイテク原始人みたいな生活してたら尚更ね」

「ありがとう、悠樹!」

「上手くやりなよー」

 

 そして励ましの言葉と共に、微笑ましく見守りながら二人を見送ると悠樹は再びラーメン研究に没頭するのでした。

 

 

 

 

 

「美味しかったね、悠樹のラーメン」

「はい。そのうち味噌ラーメンも作って欲しいですね。辛味噌ラーメン……もやしいっぱい……」

 

 悠樹の美味しいラーメンを食べて、悩みも聞いてもらって。二人はご機嫌な様子で艦の通路を再び歩きます。

 

 フランはまだ作られていない味噌ラーメンをも想像してよだれを垂らす始末。

 

「それにしても、変わっていく……かぁ」

 

 一方光里は、悠樹が最後に言っていた言葉を思い出していました。

 

「改めて私たちって、もう普通にはなれないんだね。どこにでも行けて、何にでもなれる。旅に出るときにフランちゃんが感じてた怖さ、ちょっとわかるなぁ」

「進学や就職、出世なんてレールも、常識なんて見本もない無限の自由……。私だってまだ怖いです」

 

 今がこうでも百年後、二百年後には変わっているかもしれない。そこにはルールやお手本もなく、ただ思うがままに進んでいくだけ。

 

 もしかしたら百年後の自分は、今の自分には全く理解できない人間になっているかもしれない。そうした怖さは自分たちの境遇を知った彼女たちみんなが今でもうっすらと抱えているものです。

 

 これからどうなっていくのだろう。そう考える二人の前に、人影が現れました。

 

「あれ、二人でお風呂……?」

「あ、月美!」

「この時間にお風呂は珍しいですね」

「鶏を解体してたら、血まみれになっちゃって……」

「なるほど」

 

 お風呂場から出てきたのは月美でした。狩りで仕留めた鶏をお肉にする時についてしまった血を洗い流していたみたいです。

 

「そういえば月美も変わったね」

「え……?」

「昔の月美ってなんだか一歩引いた感じで、恥ずかしがり屋さんでシャワーも一緒に浴びられなかったのに今はそんな格好でも平気なんだもん」

「言われてみれば、そう……かも」

 

 そんな彼女の格好は、なんと丸裸。身体を拭いたタオルはすぐに洗濯機に入れて、下着一枚も身に着けずにこの姿で自分の部屋まで帰ろうとしていたのです。

 

 一緒にシャワーを浴びることさえ恥ずかしくて輪の中に入れなかった最初の頃の月美とは大違い。この暮らしの中で確かに変わったといえる月美に、フランはひとつ尋ねてみることにしました。

 

「変わるって……どんな気持ちなんですか」

「どんな気持ち……」

 

 少し悩んだ後、月美はその質問に答えます。

 

「軽くなった、と思う。こうならなきゃ……こうじゃないと、じゃなくて、これでいいんだって思えるようになったから。考え過ぎないで、肩の力を抜けば、自然に二人にとっていい結果になってる、かも……」

「自然体ということですか」

「うん、そう……」

「確かにこれから何百年あるんだし、気を張ってたら疲れちゃうもんね」

「ありがとうございます、月美さん」

「頑張って、二人とも……」

 

 月美の話を聞いて、どうやら二人の思いはまとまった様子。月美に見送られながら、二人は手を振って自分たちのお部屋へと帰っていきました。

 

 光里とフラン。その二人が夫婦である事の意味の、答え合わせの為に。

 

 

 

 

 

 そして部屋へと戻った二人は、辿り着いた答えを言い合います。勿論その答えは同じでした。

 

「今のままで……いいんですね」

「思えば私も、今のフランちゃんが好きなんだもん。変わる必要なんてないよ」

「私も……今の光里さんが好きです」

 

 光里はフランが好き。フランは光里が好き。それ以上を求め、焦る必要なんてないと。

 

「ほんとに恋人同士みたいだね」

「当たり前じゃないですか。私たち、結婚したんですから」

「うん、そう。そうだね」

 

 改めてお互いの「好き」を確かめ合って、照れ臭さで頬を赤らめる二人。言葉にすることでより胸の内に秘めた大好きという気持ちを実感し、興奮が高まってきます。

 

 そして先に動いたのはフランでした。

 

「でもひとつだけ、いつもと違うことをしてみたくなりました」

「違うこと?」

 

 そう言うとフランは身体をくねらせ誘惑するような仕草で服を脱いで下着姿に。

 

「フランちゃん!?」

 

 驚く光里の声には耳を貸さず、そして見せつけるようにブラを外して慎ましやかな胸の膨らみとその先端の淡い色の突起を。ショーツを脱いで未成熟な薄毛のまま時間が止まった秘部を晒し、四肢を大きく広げてベッドに転がりました。

 

「いつも光里さんが私の欲求を受け止めてくれるじゃないですか。だから……今日は光里さんが私を好きにしてください」

「で、でも私そんなやり方なんて全然知らないよ!?」

「嫌なら嫌と言いますから……触りたいと思ったところを触って、したいと思ったことをしてください」

 

 普段のえっちは、ひたすら光里がされるがまま。光里もフランの気持ちを受け止めるのが大好きで、お尻を叩かれるだけで気持ちよくなっちゃうくらい。

 

 ですが今日はその逆。光里が好きという気持ちをフランの身体に刻み込む番です。

 

「フランちゃん照れてる」

「当たり前じゃないですか……」

 

 生まれたままの姿のフランのおへその下をトントンと叩き、気持ちよくなりながら恥じらう彼女の顔を眺めてふふっと笑う光里。

 

「ふぁ……あっ……!」

 

 続けて小さく膨らんだ胸に手を当て、ふにふにと。その感触を楽しみながら時々ボタンのように胸の先っぽを押して、その度にフランの喉奥から漏れ出る可愛らしい音色に耳を傾けて。

 

 あまりにも淫らで可愛らしくなったフランに、光里は大好きを抑えきれません。

 

「ちゅー、していい?」

「したい……したい、です……」

 

 息絶え絶えになりながらも愛情をおねだりするフランを前に、光里はもっと体温を感じようと自分も服を脱ぎ捨てて生まれたままの姿になり、覆い被さって胸と胸を重ね合わせます。

 

「大好きだよ、フランちゃん」

 

 そして口づけ。

 

 それはとても甘く、とても深いキス。舌を絡ませ、くちゅくちゅと音を立てて愛情と快感に溺れた二人の愛し合いは止まることなく。お互いが汗でびしょじしょになって起き上がることもできなくなる頃には、もう既に夜が明ける頃になっていました。

 

「光里さん……」

「ん?」

「わたし……幸せです」

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