暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ 作:dwwyakata@2024
本作でもその辺りを再現描写しております。
……此奴がエンドコンテンツボスで本当に良かった。
爆風が晴れると同時に、第二派攻撃を開始。
魔術が得意な面々による、飽和攻撃である。
エリーゼさんが、最大火力の火炎術式を展開。
魔族の自警団員も、ヴァルガードさんを先頭に、各々の最大術式を叩き込む。
しかもこれらの術式は、あたしが配った錬金術の装備によって火力を最大強化しているのである。
普通の魔術とは段違いに火力が上がっている。
まずは灼熱が敵を舐め尽くし。
続けて降り注ぐ炎の固まりが辺りを容赦なく吹き飛ばす。
氷の槍が敵のいる場所を抉り。
稲妻が大地を蹂躙した。
すぐに全員が下がり、敵の射線上から退避。
この程度で倒せるとは。
前回、風のエレメンタルと戦った時点で、誰も思っていない。彼奴に至っては、あたしの全力砲撃を、そよ風のようにそらしたのだ。それより強いだろう奴が、こんな程度の攻撃でどうにかなる筈も無い。
続けて次だ。
煙が晴れてくると。
案の定、人型が見えてくる。
其処へ、ハロルさんが狙撃。
特大の弾丸が、人型を直撃。
発射音が凄まじく。
あたしも思わず首をすくめていた。
直撃も確認。
すぐにハロルさんには位置を移動して貰う。
爆弾の第二射、と思ったが。
光のエレメンタルが、此処で反撃に出た。
奴が穴だらけの左手を上空に向けると。
放たれた無数の光弾が、中空で曲がり。
此方に降り注いできたのである。
全員が、即座に散る。
そして、爆裂が連鎖した。
一発一発が、ある程度の誘導性能と、爆破をするのか。
しかも、右手を此方に向けてくる。
アレは恐らく、上位次元に干渉するタイプの攻撃だ。
あたしをピンポイントで狙って来るか。
やはり、奴は。
攻撃の最中に、此方をある程度見ていた、という事なのだろう。
コルちゃんがその瞬間。
相手の右手を蹴り挙げ。
更にフリッツさんが、首に剣を振るう。
コルちゃんの一撃は入ったが。
フリッツさんのは、光の壁にはじき返された。
なるほど。
爆裂が四方八方で連鎖する。これは完全に常時飽和攻撃が続くと見て良い。誰も足を止めてはいられない。
フリッツさんが、異常な動きで右手を向けてきた相手を見て、青ざめるが。
その右手を、今度はプラフタの放った魔術が弾いた。
敵は体を無茶苦茶にくねらせて、人体の構造を完全に無視しているが。
どうでもいいのだろう。
目を見開く。
モニカがとっさに全力で展開した防御壁が、瞬時にぶち抜かれる。
数人が吹っ飛ぶ中。
あたしは、光のエレメンタルの視界の外に出ていた。
だが、奴は、ジュリオさんとレオンさんが加わり、四人がかりで至近からの猛攻を浴びているにもかかわらず。此方を向いてくる。首が半回転して凄まじい有様だ。
目が光る。
拡張肉体を使って加速するが。
それでも間に合わない。
目から放たれた光線が、大地を抉りながら遙か向こうまで届き。そして爆裂。キノコ雲が上がる。
無茶苦茶だ。
本当に今、神と戦っているのだと。
再確認させられる。
どうにか余波だけを浴びるに止めたが。
それでも吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられ。
奴の左手から常時放たれている広域制圧攻撃の余波も浴びて、また吹っ飛ばされた。
立ち上がる。
厄介な奴だ。
あたしは血の混じった唾を吐き捨てると。
拡張肉体と共に軽めの砲撃を数発横殴りに入れながら、走る。
前衛で戦っているメンバーは、生命の蜜完成版を浸したハンカチを口に含みながら戦ってくれているが。
もう長くは保つまい。
また、奴が目から光を放とうとした時。
隠れていたオスカーが仕掛け。
壁をぶち抜かれて吹っ飛ばされながらも、復帰したモニカと一緒に。敵の左手に左右から一撃を入れる。
ぐしゃぐしゃにへし折れた左手だが。
即時復活。
だが、その復活の瞬間に。
あらゆる攻撃をいなしまくっていた光のエレメンタルに、一瞬だけ隙が出来。レオンさんの槍が、モロに腹に突き刺さった。
レオンさんが槍を引き抜くと同時に、光のエレメンタルの首がぐるんと回り。レオンさんを見る。
目から光を放とうとするが。
此処からは連携を何処まで維持できるか、だ。
テスさんがいつの間にか気配無く奴の側に歩み寄り。首をへし折りつつ、また気配無く離れる。
CQCの秘技だ。
それでも再生されるが。
瞬時に、真後ろからジュリオさんが光のエレメンタルの頭を唐竹に割る。
再生しつつ、右手を振るってジュリオさんを吹っ飛ばす光のエレメンタルだが、回るようにして剣を振るったフリッツさんが、光のエレメンタルの両手をはじき飛ばす。
吹っ飛んだ手。
更に、エリーゼさんが、総力での火炎術式を展開。
魔族達がそれに呼応し。
魔術を数十倍に相互効果で増幅。
其処に文字通り炎の神が剣の如き火柱が立ち上る。
耳に高音が届く。
悲鳴か。
怒りの声か。
あたしは、聞いた。
おのれ、というつぶやきを。
多分他には聞こえていない。
つまり光のエレメンタルは、人間に声を聞かせる気が無い、ということだ。
火柱が収まると、其処に人影は無く。
上空に奴がいた。
体は全再生。
そして手に、巨大な槍を手にしている。その槍は、瞬く間に数十に分裂すると、地面に向け投擲されようとした。
だが、その時。
プラフタが仕掛ける。
真後ろから、拡張肉体の巨腕を振るって、奴の頭を叩き潰したのだ。
勿論即時再構築されるが、光の槍の術式が暴発したのか、その場で空間が歪む。プラフタを抱えて飛び退くフリッツさんの後ろで、大爆発。二人とも無事で済むとはとても思えない。
爆弾が連続して投擲されるが。
光のエレメンタルが、上位次元に干渉して盾を作り出す。
よし。
守勢に回ったな。
あたしは走る。
今までの時間、充分に活用させて貰う。
時間差をおいて投擲する爆弾。
光のエレメンタルが相手だ。
光を発しない爆弾の方が良いだろう。
此方を向いた光のエレメンタルの頭上で、時間差をつけてシュタルレヘルンが炸裂。瞬時に対応した光のエレメンタルだが。
その眼前にコルちゃんが出現。
残像を作って消える。
そして、炸裂したのは。
あたしがブレンドした猛毒。
この間水源で集めて来た毒草類をブレンドした、通称暗黒水だ。
これは毒を集めたものを、硝子瓶に入れており。敵にぶつけると、石の欠片やガラス片と共に爆発するようにした小型爆弾で。
爆弾の威力よりも、指向性を持たせた毒物が、殺傷力を充分に保った欠片と一緒に敵に突き刺さる。
光のエレメンタルの全身に猛毒がブッ掛かる。
人間だったら、そのまま骨が露出するほどの猛毒だが。
奴は流石に、瞬時に再生し、それでも怒りの目を逃げるコルちゃんに向ける。
その瞬間、光のエレメンタルの背中に突き刺さるレオンさんの槍。
レオンさんはそのまま槍を引き抜くと、宙返りをして離れ。
それと入れ替えに、ジュリオさんの裂帛の一撃が、光のエレメンタルを襲う。
更に上空には、跳躍したオスカー。
既に傷だらけだが。
回転しながら、脳天をたたき割りに掛かる。
ジュリオさんの一撃を防ぎつつ、オスカーを広域制圧攻撃で吹き飛ばす光のエレメンタル。
だが、その腹に大穴が。
ハロルさんの、二度目の狙撃だ。
完全に頭に血が上ったらしい光のエレメンタルが、無数の魔術が立て続けに着弾しているにもかかわらず、光の槍をまた放つ態勢に入る。
ダメージは毎度回復されているが。
しかしあたしはしっかり見ている。
ハルモニウムでつけられた傷は治りが遅い。
ならば。
光のエレメンタルが気付くと。
其処にはモニカがいた。
そして、剣を突き刺しつつ、飛び退く。いや違う。モニカを魔術で、ヴァルガードさんが吹き飛ばしたのだ。
空中での高速機動など出来ないモニカだ。
そうやって逃れるしか無かった。
突き刺さった剣を、引き抜こうとする光のエレメンタル。
気付いただろうか。
あたしが、死角である足の下に潜り込んでいることに。
そして、既に詠唱が完了し。
十倍の砲撃を、ゼロ距離からたたき込める状態だと言う事に。
絶叫する光のエレメンタル。
勿論立て直す暇など与えない。
同時に、光のエレメンタルに、オスカーが投げたスコップと。フリッツさんが放った斬撃。レオンさんの投げた槍。ハロルさんの狙撃。コルちゃんが投げつけた暗黒水。ジュリオさんの斬撃が、炸裂する。
全部同時に、である。
流石に刺さったままでは再生出来ないだろう。
そして、あたしは。
体勢を完全に崩して、上位次元の防壁を展開する余裕が無い光のエレメンタルに対して。
総力での砲撃を、躊躇無くぶっ放していた。
絶叫が、光の中に消えていく。
だが、それでも奴は再生を続けている。
再生に総力を回した、という事か。
まずい。
砲撃でも消しきれない。
だが。
それを見越していた者がいた。
砲撃が終わった瞬間。
プラフタが、奴のコアを、拡張肉体の豪腕で左右から叩き潰す。
そして再生する暇を与えずに。
全力で空中に打ち上げた。
「残りの爆弾を全て叩き込みなさい!」
もちろんだ。
光のエレメンタルが、悲鳴を上げているのが分かる。
やめろ。
おのれ人間共。
許さぬぞ。
そう喚いているのが分かる。
何を勝手な。
許さないのは此方の方だ。
まだ動ける自警団のメンバー達が、持ち込んだ爆弾を全部一斉に叩き付ける。爆裂。まだ少し足りない。
魔術師達と魔族達が、残った魔力を振り絞り、ありったけの魔術を叩き込む。
これでもか。
あたしはその時。
無理矢理栄養剤を飲み干し。
最後の砲撃の準備を終えていた。
額の血管が破れて血が出始める。体中が無茶苦茶になるが、関係無い。無理矢理全力をひねり出す。
これが。あたしの錬金術の集大成だ。
上空に向ける杖。
フルパワーの砲撃を二連続でやるのは初めてだが、奴はまだ消滅しきっていない。それならば、やるしかない。
額からの出血だけでは無い。全身が熱い。焼けるようだ。完全にオーバーヒートしている。
それだけ無茶苦茶な魔力の増幅をしているという事だ。
手足からも、血が噴き出しているのが分かった。
体が耐えられなくなってきているのである。
だがそれでも。
此処は踏ん張らなければならない。
拡張肉体が詠唱を加速させ。
そして、再生を開始しようとしたコアに向け。
二度目の砲撃を叩き込みに掛かる。
光のエレメンタルのコアは逃れようとしたが。
勿論照準補正つきだ。
更にプラフタが、手にした魔術書から相手を拘束する魔術を放ち、一瞬だけ再生を止める。
断末魔の絶叫が上がる中。
あたしは、情け容赦なく。
二度目のフルパワー砲撃で。
光のエレメンタルのコアを、消し飛ばしていた。
「敵、沈黙を確認!」
「勝利だ!」
わっと声が上がるが。
周囲は悲惨極まりない惨状だ。
最前線で戦っていた面子は、生命の蜜を口に含んでいたにもかかわらず。傷口が炭化していたり、ごっそり肉を抉られたりしている。普通の傷なら瞬時に直る程の回復薬だというのに、である。
薬を使っての治療を開始。
あたしも、意識が吹っ飛びそうだが。
それでも踏みとどまり。
駆け寄ってきた医療班に身を任せる。
凄い熱だと、誰かが叫んでいるのが聞こえた。まああんな無茶をやったのだ。当然と言えば当然だろう。
それからのことは記憶が曖昧だが。
とにかく、ハイベルクさんとヴァルガードさんが指揮を執って、街へ帰還。フリッツさんは前線での戦闘によるダメージが酷く、とてもそれどころではなかったようだ。
アトリエに運び込まれたらしい。
プラフタが治療をしてくれる。
薬は在庫を使い切った。
痛みがどっと襲ってきたが。
それは、まだあたしが戦闘モードを解いていなくて。
今頃になって、平常状態に戻ったからだろう。
全身が引きちぎられるような。
或いは無理矢理絞られるような痛みだが。
それでも苦痛の声は上げない。
あの光のエレメンタルと同じにはなりたくないという事だ。あたしは意地を張っていた。ばかばかしい意地だが。
痛み止めも使っているらしいのに。
酷く全身が痛い。
体を治す薬も使っているはずだが。
それでも痛みは消えない。
まあ無茶苦茶を続けたのだし、当然か。
いずれにしても。
プラフタの言葉は正しかった。
今まで戦った中でも、間違いなく最強の相手だった。
不完全状態でこれだと。
完全状態だと、どれほどの実力なのか。
想像するのも恐ろしい。
しかもそれを全盛期のプラフタは倒したのか。
まだまだ先は長いなと、自嘲してしまう。
しばしして。
いつの間にか痛みは引いていたが。
代わりに、ほぼ眠ることも出来ないでいたので。
プラフタが包帯を取り替えながら言う。
「眠りなさい、ソフィー」
「プラフタは?」
「私はもう何回か寝ています。 意識が朦朧としていて、私以外にも手当をしていた事に気付いていなかったのですね」
「……そっか」
じゃあ眠ろう。
そう思うと。
すとんと眠りに落ちていた。体は正直なものだ。
煙の中。
見える。
光のエレメンタルだ。
憎悪の表情を此方に向けている。
そしてこれは夢であって夢では無い。それもすぐに理解出来た。恐らくこれは、光のエレメンタルの残留思念が、あたしに何かを訴えようとしているのだ。
「人間よ」
「ソフィー=ノイエンミュラー」
「何だそれは」
「あたしの名前。 貴方は」
しばしして。
名前というものはない、と返答された。
光のエレメンタルは。怒りを此方に向けてはいるが、同時に興味も持っているようだった。
「何、負けたのがそんなに悔しい?」
「私は今までに四度、人間に滅ぼされている。 だが、お前の戦い方は他とはかなり違っていた」
「へえ?」
「お前は世界そのものへの怒りを抱いている。 私にそれをぶつけてきているのを感じたが、何故だ」
そんな事は。
分かりきっている。
「この世界が不平等でいい加減だからだよ。 創造神の頭を叩き割ってやりたいくらいにね」
「不平等な世界か。 では、世界が平等だったら、今より世界は良くなると思うか」
「少なくとも今よりは平等にして欲しいものだけれどね。 限られた一部の人間にしか使えない技術がどれだけこの世界を歪ませているか、分からない? 仮にも神様だっていうのに」
「本当にそれは事実か」
何を言うかこの唐変木が。
だが、光のエレメンタルはなおも語りかけてくる。
「私の力の一部をお前にやろう」
「はあ」
「既にお前の仲間達が回収しているはずだ。 目を覚ませば手に入れる事が出来るだろう」
「どういうつもり」
あたしとしては。
こんな奴と話すのも不愉快なのだが。
それでもどうしてだろう。
仮にも神だからか。
その言葉は、あたしの興味を惹く。
どうしても、言葉を聞こうという気にさせる。
「現在、「真実」を知る人間はこの世界にはいない。 我等が主たる創造の乙女パルミラは、理無くしてお前が言う「不平等」を作り出したのでは無い。 世界に配置されている意思無き端末では無く、創造の乙女の中核にお前は接触し。 直接対話によって世界の真実を知るべきだと私は判断した」
「どういう風の吹き回し?」
「お前の力が、明らかに他の錬金術師を凌駕しているからだ。 現時点でお前を凌ぐ錬金術師はまだまだいる。 だが、お前は潜在能力でそれらを遙かに凌いでいる。 恐らく二十代の半ばには、この世界の錬金術師の頂点に立つだろう。 それも、歴史上最強の錬金術師になる筈だ。 今のままでは、お前はその時、世界にとって最悪の災厄になる。 だが、お前が真実を知る事で、この世界に変革を起こせるかも知れない。 ……そうだな、この世界を後世の人間が「不思議の時代」と呼ぶ程にはな」
不愉快な奴だ。
そのまま顔面に風穴を開けてやりたいくらいだが。
しかしこれは好機でもある。
分かったことがある。
不平等は、意図的に作り出されている。
それも創造神の手によって、だ。
それはつまり、創造神の真意を問いただす必要があることを意味もしている。
あたしは。この世界の理不尽を見てきた錬金術師ソフィー=ノイエンミュラーは。
創造神を今のままでは許せない。
此奴が言っている事にも一理ある。
もしもあたしが世界最強の存在になった時。
恐らくあたしは。
世界にとって最強最悪の存在になるだろう。
勿論、世界を滅ぼす可能性さえ出てくる。
その時、あたしは。
人間ではなく。
邪神をも超える、世界にとっての究極の災禍になっている筈だ。
それでは確かに本末転倒だ。
あたしは今でも、周囲に大事だと思う者がいる。
このまま突き進めば、あたしは世界を破壊する者になるのだというのであれば。
少なくとも、破壊の者になるだけの理由をきちんと得ておかなければならない。そうでなければ「納得がいかない」のだ。
「分かった。 良いだろう。 話に乗るよ」
「物わかりが早くて助かる。 そうそう、まだまだこの街には災禍が降りかかる。 覚悟は決めておけ」
「世界を裏側から支配している集団に目をつけられている時点で、いつ滅びても不思議じゃあない。 覚悟なんてとっくに出来ているよ」
「……そうか」
目が覚める。
嫌と言うほど、完璧に内容を覚えていた。
最初に便所に行って排泄を済ませる。
数日は寝ていたのだから、こればかりは仕方が無い。
傷の具合を確認。
内部から滅茶苦茶に傷ついていたようだが。
それでもどうにかある程度は回復したか。
寝台に潜り込むと、プラフタが丁度アトリエに来た。包帯だらけのモニカと一緒だ。そういえば、あたしも。
体はまだ包帯だらけか。
「ソフィー! 起きたの?」
「なんとか無事」
二人にはどう話そう。
今のは嘘とは思えない。いや、ほぼ間違いなく、嘘では無いと判断して良いだろう。
ならば、今は。
まだ話さなくても良いか。
「寝ていないと駄目よ」
「分かってる。 それよりも、彼奴何か落とさなかった? 風のエレメンタルの時のように」
「落としたわ」
モニカが視線をそらす。
さては、相当に厄いものを落としたのか。
咳払いをすると、プラフタが教えてくれる。
粘金の鋼糸と呼ばれる最高品質の糸だと。
ある種の蜘蛛が吐き出す糸で。その蜘蛛そのものが、実は生物では無いかも知れないと言われているという。
それくらい、圧倒的防御力を誇る糸なのだ。
加工はさほど難しくないが。
その代わり、堅い。
「蜘蛛の糸は、同じ太さであれば鋼鉄さえ凌ぐ強度を誇ります。 しかしこの粘金の鋼糸は、普通の蜘蛛糸とは次元が違う強度と、凄まじい魔力を秘めています」
「それって、やりようによっては」
「高位次元からの攻撃に対応出来るかも知れません。 私でも殆ど入手できなかった品です。 コルネリアに渡して増やして貰うと良いでしょう」
コルちゃんが真っ青になるのが容易に想像できるが。
まあいい。
ともあれ、今は休むときだ。
モニカが心配そうに此方を見ている。
理由を聞いてみると。
彼女はずばりというのだった。
「ソフィー、貴方何か隠し事をしているわね」
「なんでそう思う?」
「昔からそうだけれど、貴方は頭が良い反面、悪さを企むと思い切り雰囲気というか身に纏う魔力に出るのよ。 普段よりどす黒い魔力を感じるわ」
「そうか。 流石にモニカには隠せないね」
くつくつとあたしは笑う。
そして、別に害のある事じゃあないと断って。
もう今日は休む事にした。