暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ 作:dwwyakata@2024
賢者の石を作る下準備は既に整いつつあります。
同時にソフィーの知識は研磨され。
地力で世界の深奥に近付きつつありました。
以前、プラフタに言われた事がある。
錬金術を高精度で行うには。
非常に限定された環境を作る必要があると。
今、拡張している異世界アトリエの方に。
あたしはプラフタと相談しながら。
その環境を作り始めていた。
一角を拡大し。
魔術で空気の流れを制御。
そもそも、空気が無い状態で錬金術をするため。拡張肉体に魔術を展開させ、自分の周囲だけを空気で覆う。
釜に関しても、最高のものを使う。
今使っているものもこれはこれで最高だ。自分で作成に携わったし、癖もコツも知り尽くしている。
だが、今度のものは、理論的に最高のものを作る。
本当に最高の錬金術の道具を作る時だけに使う。
最強の釜を、今必要としているのだ。
苦闘の末に、手元には賢者の石を作るために必要な道具類が揃ってきている。
だから、それらを混ぜ合わせるのに相応しい、最高の錬金釜を、今。作らなければならないのである。
素材としてはハルモニウムを贅沢に用いる。
これは錆びないからだ。
ハルモニウムは事実上酸にも溶けないし、錆びる事も無い超金属だ。
金や白金もそうらしいのだが、此奴らは高価なだけで頑強さには大いに問題がある。それに対してハルモニウムはそれらの良い特性を持ちつつ、究極の頑強さと軟性を備えているのである。
ロジーさんの所に設計図を持ち込み。
それで以前作ったように。
最高の錬金釜を作ってもらう。
ロジーさんはその錬金釜の造りを見て目を剥いたが。
だが、職人冥利に尽きると、嬉々として製造に取りかかってくれた。
普段は、アトリエに置いてある錬金釜を使う。
これで充分だから、である。
しかしながら、賢者の石となると。
今持っている素材を、どれだけ気を付けて調合したとしても。
史上最高の品を作るのは無理だろう。
ならば、作れる環境を用意しなければならない。
それが最低限の準備というものだ。
当たって砕けろとは言うが。
それは経験が無いものに対して行う行為。
あたしは錬金術に慣れてきているし。
高位次元に干渉できる装備まで作った。
それならば、今後は。
決戦用の道具を作るため。
最高の環境と。
最高の錬金釜を用意する必要がある。
来るべき時が来た。
それだけだ。
あたしは今までホルストさんから貰った小遣いを惜しみなくつぎ込んで、異世界アトリエの拡張と、釜の準備を進める。
プラフタにアドバイスしながら、一般人立ち入り禁止の看板を掛け。
異世界アトリエの内部に、大きめの空間を作成。大きめと言っても十五歩四方ほどだが、文字通り何も無い空間のため、非常に大きく感じられる。
この空間そのものには、埃さえ存在が許されない。
空気さえ存在を許さないのだ。ある意味当たり前と言える。
道具類も全て専門のものを用意していき。
素材についても念入りに洗浄、コンディションを整え。異世界アトリエに移していく。
さて、後は。賢者の石の作成本番だが。まあこれら準備にまだ時間が掛かる。慌てることは無い。
部屋の調整を開始。
四隅に拡張肉体を作って配置し。
まず空気を全て抜いた。
更にプラフタと相談しながらレシピを造り。
壁面に完全固定の魔術を仕込んだゼッテルを貼り。その上から金属をコーティングする。これによって、この空間は真空かつ、空間そのものが固定される。
入るときには、自分を空気で包む魔術を展開し。
冷気などにも対策しなければならない。
つまり入っただけで、何も対策していなければ即死する。
其処まで気を遣った錬金術を行う部屋なのだ。
既に異世界アトリエは、ちょっとした屋敷ほどの広さになって来ているが。
この部屋に関しては、絶対に入らないようにと、顔役達にも周知しているし。
何より警備装置もしっかり付けた。
これらだけでかなり手間が掛かった。
何しろ今や、旅人の道しるべをいつ自警団が使うか分からない状態で。
この異世界アトリエも、「便利な通路」「便利な倉庫」以外の役割だけでなく。戦略拠点として意味を持ってきている。
きちんと事前に周知をしておかないと。
事故が起きかねないのだ。
部屋を準備した後。
空気を纏う魔術を展開して。
部屋に入ってみる。
確かに何というか、異様な雰囲気だ。音もない。プラフタによると、音は空気が無いと伝わらないらしい。
つまりそういう事だ。
部屋の中に設備を用意していく。
釜に熱を与える仕組み。
調合時に出たガスに指向性を持たせて吸い出し、外で固定する仕組み。
釜を洗浄する仕組み。
今まで色々な道具を作ってきたのだ。
これくらいは難しくも無い。
炉に関しても、今なら仕組みを完全に理解出来る。
よそで再現する事も可能だ。
プラフタが師匠になってからもう一年以上が経過したが。
その間にあたしは。
それだけの知識を身につけ。
技術も身につけた、という事である。
プラフタと相談しながら、部屋の調整を更に細かくやっていく内に、ハルモニウム製の釜が出来上がった。
そのまま納入して貰うが。
部屋に入れる前に、徹底的に蒸留を繰り返した、ほぼ完全に水だけになっている蒸留水で洗浄。
ロジーさんが、神経質過ぎないかと視線を送っていたが。
これからやる調合は、文字通り神の領域に踏み込むものなのだ。
釜を設置した後。
更に神経質に操作を実施。
簡単な調合から始めるが。
確かに凄い。
恐ろしく手間が掛かる反面。
とんでもない品質の道具類が出来る。
空気さえ存在が許されない空間で。
埃さえ入らない場所では。
此処まで凄いものが作れてしまうのか。それ以外には言葉もない。
プラフタは出来上がった山師の薬を試すあたしに教えてくれる。
「基本的に、何かに特化したものは、非常に神経質になります。 しかしその分性能は上がるのです」
「ただ、用途が限られるものしか作れないね」
生命の蜜ほどでは無いが。
プラフタが80点代をくれる山師の薬は。それこそ、指くらいなら切りおとしても即座にくっつく程の性能を見せた。
ただし、空気を排除する魔術を掛けた瓶に入れないと。
あっという間に痛んでしまう事も分かった。
これは使いどころが難しい。
本当に必要な時だけに。
使い切るつもりで使わないと駄目だ。
武装類も作って見るが。
ハルモニウムでコーティングしない限り、駄目になってしまうだろう事は明白すぎる。
プラフタの言う事も分かるが。
此処で作れるのは、本当に決戦兵器としての品だけだ。
嘆息すると。
一度部屋を出る。
釜は綺麗にしてある。
これは、賢者の石を作る時に。
使う事だけを想定するべきだろう。
或いは、どうしても、その一回だけ。
絶対の精度が必要になる道具を造る時だけ。
そうでもしないと、とてもではないが神経が持たない。あたしも幾つか簡単な調合をしただけで疲弊しきったのだ。
賢者の石は、作るのに一月は掛かると聞いている。
とてもではないが、此処に入り浸るのは、ぞっとしない。
しばらくは簡単な調合を流しながら。
慣れていくのが先だろう。
一度アトリエを出る。
時間の感覚が狂っていたので、ちょっと外を歩いて調整する。
キルヘン=ベルは今のところ静かだ。
プラティーンでコーティングしたグナーデリングを一つ作ったが、どうするか。一応性能は実験して試したが。誰に渡すか。
丁度通りかかったモニカ。
キルヘン=ベルから離れる可能性が無いモニカが適任か。渡しておく。
錆びる恐れは無い上に。
今までに無いほどの性能を引き出すことが出来た代物だ。
多分前に量産していた品の三倍くらいの倍率が掛かる。
モニカもグナーデリングを付け替えてみた瞬間、すっころびそうになったほどである。
それほど強烈に倍率が掛かるのだ。
しばらくまともに歩くことも出来ず。
何だか責めるような目で見られた。
「ソフィー、何これ……」
「あたしがしばらく籠もってたの知ってたでしょ? その籠もっている場所で作って見た、最高の決戦兵器グナーデリング」
「倍率が上がり過ぎよ!」
立ち上がろうとして、ばんと地面に手をついてしまい(勿論怒っての事では無い)、地面が激しく陥没する。
モニカ自身が一番驚いて。
更には周囲の子供が泣き始めた。
教会の近くである。
モニカは大慌てだが。
力の制御が上手に出来ない様子で、困り果てながら、ゆっくり、ゆっくり動こうとして、四苦八苦である。
パメラさんが、いつの間にか。あたしたちの側にいて。
何をしていると、笑顔のまま視線で威圧していた。
この人には逆らえない。
「すみません。 ちょっと作った道具の性能が良すぎて」
「だめよお、子供達が怖がっているでしょう?」
「ごめんなさい」
二人で平謝りする。
その後、モニカがもの凄く怒っているのは承知の上で、実験場に出向き。其処でしばらく訓練する。
モニカも死線を散々くぐってきた猛者だ。
三刻も訓練する頃には、あふれかえり過ぎる力をどうにか制御する事に成功。
だが、複雑な表情でグナーデリングを見ていた。
「今までの貰った装備品を全て身につけた状態だと、正直な所、人と呼ぶには無理がありすぎるわよ」
「あたし思うんだけれど」
「何?」
「錬金術って、何なんだろうね」
プラフタには、教会の側の地面の後始末を頼んでいるので。彼女は此処にいない。
ついでなので、この間の夢。
光のエレメンタルを滅した後、見た夢についても話しておく。
モニカは考え込む。
こんな時、あたしが嘘だの冗談だのを言うわけが無いと、知っているからだ。
悪ガキ三人組だった頃からのつきあいである。
その辺は理解してくれている。
血がつながっていようが。
必ずしも、理解者になる訳では無い。
そんな事はあたしが一番分かっている。
むしろ側にいて、一番よく見ていた人間が理解者になる。
モニカはそれだ。
しばしモニカは考え込んだ後。
眼鏡を慎重に直した。
「教会に仕える私がいうのも何だけれど、錬金術は奇蹟の力よ。 教会の思想とは相容れないかも知れないとずっと思っていたのだけれど。 ひょっとしたら、むしろ同じものなのかも知れない」
「というと?」
「錬金術と魔術は親和性が強すぎる。 神聖魔術も立派な魔術の一つで、錬金術で増幅することは可能でしょう?」
頷く。
その通りだ。
モニカは何度か言葉を選ぶように考え直しながら。
丁寧に、言葉を続ける。
敬虔な神の信者である彼女だ。
言葉一つも、丁寧に選んでいきたいのだろう。何しろ、世界のあり方についての話なのだ。
それについて、あたしと殺し合い寸前の喧嘩を何度もやったのだから。
「神としての力が、そのまま錬金術だとしたら……」
「可能性は低くないね。 実際問題、ドラゴンも邪神も、何らかの形で錬金術師が力を貸さないと、倒せる相手じゃ無い」
「そう。 でも、それならばどうして、錬金術は誰もが使える技術じゃ無いのかしらね」
「それが分からない。 光のエレメンタルが見せたあの夢を見る限り、明らかに創造神とやらは意図的に不平等を作り出しているからね。 あの夢は間違いなく記憶を整理するために見る夢では無くて、見せられたものだった。 それに……」
このままだと。
お前は世界に対する災厄になる。
最強最悪の存在になる。
そう光のエレメンタルは言った。
それは詰まるところ、あたしが邪神や、それ以上の力を持ち。
世界に影響力を持つ、究極のもの。
すなわち神と変わらぬ存在になる事を示唆しているのではあるまいか。
それについては構わない。この世界の理不尽さにはいい加減ハラワタが煮えくりかえっているし。
仕組みを根底からぶっ壊すのは吝かでは無い。
だが全てを壊し尽くしてしまったら。
キルヘン=ベルも無くなる。
モニカもオスカーも死ぬ。
それは嫌だ。
邪神どもを皆殺しにし。
創造神の場所にあたしが入れ替わって座ったとしても。
「何故この世界はこうなのか」を知らない限りは、同じ事を繰り返す可能性が決してゼロでは無い。
それでは意味がない。
あたしも、憎み抜いているものに、そのまま成り代わりたいと思うほど、頭が花畑ではないのだ。
「ねえモニカ。 そのグナーデリングは一品モノにしておくよ。 ここぞと言うときだけに使って」
「量産はしないのね」
「うん。 キルヘン=ベルの守護神はモニカだから。 それに、いざという時に、あたしを殺せる可能性がある人間が必要になる」
口をつぐんだモニカ。
あたしは。
血統上の父親。あのクズと同じ存在にだけはなりたくない。
「今の段階だと、別にあたしは世界最強でもなんでもない。 でも、もしも光のエレメンタルが言う事が本当だと、10年もしない内にあたしは多分手が付けられない存在になるかも知れない。 その時には、モニカ、よろしくね」
「あり得ない、と言っておくわ」
「あたしもね、錬金術を本格的に習う前にはあり得ないと思っていたものを、幾らでも見てきたからね」
「……」
オスカーにも、同じ話をしておこうと思う。
後、オスカーには、アンブロシアの花冠の究極版を渡しておくか。
もしあたしが、世界をそのまま滅ぼす破壊神になった場合は。
二人であたしを殺して欲しい。
如何に理性をなくし。
破壊の権化になったとしても。
あたしは二人だけは手に掛けないだろう。
それについては、自信がある。
つまり、その時にあたしを殺して世界を止められるのは、モニカとオスカーだけになるわけだ。
じっと黙っていたモニカだが。
やがて、頷いた。
彼女も分かっているのだろう。
今、あたしがどれだけ危険な力に手を掛けようとしていて。
その結果、何かを踏み外し掛けている、という事は。
あたしにとっては、この世界はどうしても気に入らないものだ。
深淵の者の誘いには乗る。
賢者の石を造り。
彼らと協力すれば、恐らく創造神へのアクセスは可能になる。
その時の、創造神の返答次第では、あたしは多分ブチ切れる。
そうなったら、あたしは恐らく、世界の災厄そのものと化すだろう。
ふと、思い出す。
プラフタの話を。
ルアードと決別した時の事を。
何だか今、モニカとした話は。何処かで其処と似通っているなと、苦笑してしまう。
だがあたしは、その話を聞いた以上、同じ失敗はしない。
人間という種族は、どれだけ失敗しても反省などしないが。
個としては反省することが出来る者もいる。
あたしは反省出来る存在でありたい。
ただ、それだけだ。
オスカーも呼んで、同様の話をした後。アンブロシアの花冠の究極版を渡す。悩んだ後、オスカーは言う。
「ソフィーは、この世界と言うよりも、この世界の仕組みそのものを憎んでいるだろ」
「そうだよ」
「ならきっと大丈夫だ。 もしも駄目だった場合は……おいらが望むようにしてやるよ」
「頼むよ」
話が早くて助かる。
少し疲れているので、そのままアトリエに戻る。
プラフタはアトリエに戻ってきていたが、石畳を直した後、軽くパメラさんと話してきたという。
その結果。
とんでも無い事を話されたそうだ。
「深淵の者だそうですよ、彼女。 それも幹部だそうです」
「やはりね」
「……そうですね」
深淵の者は、基本的に現在利害関係での対立が無い。
むしろプラフタには友好的なくらいだ。
幹部として重要な位置にいるパメラさんが、抑えに回っているのであれば。
血の気が多い下っ端が、仕掛けてくる事も無いだろう。
逆に、どうして「今」プラフタにわざわざそんな話をしたのかが気になるが。
まあそれは恐らく。
決着の時が近いから、なのだろう。
ルアードは深淵の者では、かなり慕われているようだ。
プラフタの話を聞くだけで陰鬱になる過去を持つルアードだが。しかしその実績も。今まで世界のためにしてきた事も、本物と言って良い。
部下達が絶対忠誠を誓うのも当然で。
都市国家が乱立していたこの世界に二大国という秩序をぶち上げ。
腐敗の原因を逐一取り除き。
二大国でもどうにもならないドラゴンや邪神を仕留めてきたという実績がある。
深淵の者の組織規模がどれほどかは分からないが。
多分二大国の中枢にも多数の幹部が入り込んでいる筈で。
それこそ、国家元首を消す事も難しくは無いだろう。
不意にアトリエのドアがノックされる。
気配からして、ジュリオさんか。
入って貰うと。
ジュリオさんは厳しい表情をしていた。
「二つ、良くない情報がある」
「お願いします」
「一つはアダレットの事だ。 アダレットの都市の一つ、人口一万を超える大都市の領主とその取り巻きがまとめて失脚した。 表向きは失脚となっているが、騎士団からの連絡によると、間違いなく深淵の者に消されたようだ。 この領主と取り巻きは、揃って無能で強欲で、最近は税を絞り上げて民を苦しめ、匪賊と癒着までしていたらしい」
まあそれならば、死んでも当然か。
ただ、殺されたという取り巻き。
レオンマイヤー家というのを聞いて、ああそうかとあたしはちょっと遠い目をした。
レオンさんの実家だ。
どうしようもない連中だという話だったが。
とうとう消されたのか。
因果応報は、本来モニカが言う神のやるべき事だと思うのだが。
そんな事に神は興味が無かったらしい。
また、本来は法が裁くべきだったのだろうが。
それさえ出来なかった。
それで、深淵の者が動いた。
彼らは己の手を血で染めることを厭わない。
だが、その結果。
圧政から救われた貧民もいるのだ。
世界の不始末による流血。だが、あたしが匪賊を殺すのになんら罪悪感を感じないように。
この世界は狂っている。
誰かがその狂気と向き合わなければならないだろう。
「この件で、僕は深淵の者との接触を急ぐようにと早馬を受けた。 もしも幹部級の人物に心当たりがあるのなら、紹介して貰えないだろうか」
「……もう少し待っていただけますか?」
「何か宛てが?」
「ええ」
それを聞いて、ジュリオさんは少し考え込んだが。
まあ気持ちは良く分かる。
頷くと、次の話題に移る。
「ドラゴンが姿を見せた。 それも二体同時だ」
「!」
「片方は月を思わせる青い姿。 もう片方は太陽を思わせる赤い姿。 いずれもキルヘン=ベル西の山に姿を見せ、じっと此方を見ているらしい。 進撃をいつ開始してもおかしくないそうだ」
「恐らく下位のドラゴンではありませんね。 中位以上のドラゴンでしょう」
プラフタの言葉が正しいとなると。
ヴェルベティス製の防具と。
それにアンブロシアの花冠の実戦投入のタイミングとしては最適だ。
それに、モニカとオスカーには最強の一点ものを渡してある。
二人だけで、一匹は相手にして貰えるだろう。
倒せるかは分からないが。
少なくとも、簡単にはやられないはずだ。
その間に、他のメンバーで、もう一匹を倒してしまえば良い。
「邪神は言葉が通じたが、ドラゴンは言葉が通じないのだろうか」
「不思議な話ですが、ドラゴンには知能が存在しません。 魔術を使うものはいますし、獣程度の行動はとりますが、上位のものでも人語を解したり、頭脳戦を使いこなす事はないのです」
「……」
それも考えて見れば不可解な話だ。
荒野に多数住まう猛獣の王。
そんな存在が、どうして獣以上の存在では無いのか。
これも或いは。
「意図的に」設計されている事なのか。
この世界を設計した奴は、一体何を考えている。
いずれにしても、対応はしなければならないだろう。
ドラゴンが人間に対して、攻撃を躊躇う事など無いのだから。
すぐにカフェに出向く。
戦いというものは。
刃を交える前に、既に始まっているものなのだ。