暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、かくして対決の時は来たれり。

賢者の石はかくして完成した。

 

プラフタも高品質のものを見るのは初めてだと言う事で、点数については口にしなかったが。

 

高品質とプラフタが口にするくらいである。

 

相当な品である事は確かだ。

 

あたしは満足すると。

 

丸一日、完全に眠ることにする。

 

それだけ疲れた。

 

なお、泣いたことはプラフタには言わない。

 

というか、墓の下まで持っていくつもりだ。

 

今後も、あたしは賢者の石を作るだろう。

 

錬金術師の歴史を変え。

 

この世界を変えるためには必要なものだからだ。

 

一回目だったから、ああいうことになった。

 

二回目以降は、同じ事は起こさない。

 

あたしの心の中にだけ、あの出来事はしまっておく。それだけで構わないのだ。

 

丸一日眠った後。

 

カフェに顔を出して。

 

報告を済ませる。

 

賢者の石が出来たと。

 

既にホルストさんには、深淵の者中枢と接触したこと。

 

そして恐らくは、深淵の者は見せびらかすような形で本拠を出してきたこと、も告げてある。

 

ならば、後は。

 

ただ深淵の者と接触し。

 

話し合いをするだけだ。

 

戦いになるかも知れないが。

 

プラフタから聞くルアードの性格を考える限り、殺し合いにまでなるかはかなり疑わしいだろう。

 

幹部達も、相応に話が通じる相手に思えた。

 

何より利害が対立していない。

 

話をする事は、できる筈だ。

 

ホルストさんに話をした後。

 

フリッツさんも呼んで。

 

これからについて話す。

 

「これよりあたしは、深淵のものと話を付けてきます」

 

「深淵の者と!」

 

「何やら問題が起きているとは聞いているが、深淵の者と直接対決するつもりなのか」

 

「いえ、恐らく致命的な戦闘にはならないと判断します」

 

プラフタが言う。

 

そして恥を忍んで、と付け加えた上で事情を話す。

 

プラフタはそもそも、深淵の者の長であるルアードとの竹馬の友で、比翼の存在であった事。

 

世界に対してどう接するかで喧嘩別れになった事。

 

そしてその時の事をルアードはまだ考え続けて。自分なりに500年間掛けて、世界を改革してきたこと。

 

二大国の成立。

 

精鋭を率いての邪神とドラゴンの撃破。

 

各国の汚職官吏、腐敗僧侶、悪徳商人、匪賊の処理。

 

それらを担ってきたことも。

 

「この世界には現在さえない。 ルアードの言葉は、その悲しい半生に裏打ちされた重いものです。 そして、私もそれは間違っているとは思いません。 実際現在でも、恐らく上位の邪神が複数同時に動き出したら、二大国が総力を挙げてもどうにもすることが出来ないでしょう。 人類は、そもそもこの世界で身を寄せ合って、必死に現状維持をするだけしか出来ていないのが現実です。 しかしルアードは、未来を奪ってまで現在を作ろうとしました。 それが致命的な対立につながりました」

 

「未来を奪うというのは、つまり」

 

「根絶の力に手を出したのです」

 

誰もが息を呑む。

 

此処にいる幹部にも、深淵の者に通じている人員はいるはずだ。

 

或いは知っていたかも知れないが。

 

だが、少なくとも、困惑は隠せないようだった。

 

根絶の力については、プラフタが何度か説明をしている。あのノーライフキングを誕生させた力だと言う事も、である。

 

無言になる幹部達。

 

未来を奪うと言う事が何を意味するか。

 

分かったのだろう。

 

「ただし、ルアードはそれ以降に根絶の力を使ったとは思えません。 竹馬の友であった私が、命を賭けて思想の間違いを指摘したから、だと思います。 それに、ルアードは、私なら自分の思想に賛同してくれる、と思ったのでしょう。 それくらい根絶の力を使ったときのルアードは精神的に追い詰められてしまっていたのです。 私と離れた後も、故に同志を集い、地道な活動を続けたのでしょう。 また、ルアードの配下達も、私の事は知っていてもおかしくないのに、恨んでいる様子はありませんでした」

 

「戦いに行くと言うのなら止めません。 しかし、報復の類でこの街が襲撃を受ける可能性は」

 

「少し前にルアード本人に会いました。 そして深淵の者がその思想に忠実である事も分かりました。 危惧すべきは、ルアードが、ソフィーが作った高純度の賢者の石を見て、未来の可能性を信じてくれない場合です。 根絶の力を大規模に使い始める可能性があります。 もしそうなった場合、この世界はキルヘン=ベルどころか、下手をすると全てが滅びるでしょう」

 

「想像以上に厄介だな」

 

ヴァルガードさんが呻く。

 

ハイベルクさんは、自分はあくまで部外者だがと前置きし。更に専門知識も無いがと付け加えた上で言う。

 

「それで、プラフタ。 どう決着を付けるつもりなのか。 確かに現在がないのは俺でさえ同意できる。 この世界に未来を示せるのか」

 

「ソフィーの作った高純度賢者の石があります。 これを用いれば、恐らく未来への可能性を見つけられると思います」

 

「それほど凄いものなのか」

 

「恐らく、この世界の歴史上初めて誕生した存在です。 この世界を造りし神と対話する事さえ可能になるでしょう」

 

黙り込む皆。

 

話が大きすぎてついていけないという顔だが。

 

あたしがプラフタをフォローする。

 

「いずれにしても、今のあたし達の戦力であれば、生半可な相手に遅れは取りませんし、むざむざやられもしませんよ」

 

「そう信じたいところだが……」

 

「吉報をお待ちください」

 

悩んだ後だが。

 

ホルストさんは許可をくれる。

 

ただし自警団から助けは出さないとも明言した。

 

妥当な判断だ。

 

もしキルヘン=ベルが街を挙げて協力した時。最悪の場合、深淵の者と事を構えることになる。

 

それだけは避けたいのだろう。

 

許可は得た。

 

後はアトリエで必要な物資を荷車に積める。

 

帰ってこられないかも知れない。

 

だが、皆表情は、驚くほど静かだった。

 

「500年……」

 

プラフタが呟く。

 

ずっとその間、悩み苦しみ続け。世界を変えようと尽力した友の事を考えていたのだろう。

 

あたしは無言で頷くと。

 

深淵の者の本拠に向かうべく。

 

皆を促した。

 

 

 

(続)




文字通り人間を止めたソフィー。それは必然の結末であり。必然の始まりでもありました。

まず最初に特異点の中の特異点となった存在がやるのは。

深淵の者との、決着を付けることでした。
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