暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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よくある精神論や人間の未来の可能性だのを口にする存在。

その全てを。

データの暴力が容赦なく粉砕します……。

これが統計の力です。


3、9兆

助けて。

 

その声に応じて、パルミラは哀れな者達を集めた。

 

その者達は、救いの神となったパルミラを崇めたが。それはそれとして、まずはやる事があった。

 

助けを求められたのだ。

 

救わなければなるまい。

 

そうパルミラは考えた。

 

当たり前の事である。

 

行動には責任が伴う。

 

愛玩動物を飼うことにさえ、極めて独善的な理屈を振り回す文明でさえ責任を求めるのが普通なのだ。

 

ましてや知的生命体の命である。

 

軽々しく扱って良いものではない。

 

パルミラはそう判断した。

 

それに、自分があまり干渉しすぎるのも好ましい事では無いと判断した。

 

彼らは一度あまりにも酷い理不尽にあい。

 

助けを求めて来た。

 

それならば、彼らが自立してやっていけるように、手助けするのが役目だろう。

 

自分はそのための準備をするのが、立場的に考えて行うべき事。

 

そして、彼らをもし更に殲滅せんと追ってくるものがいるのであれば。

 

容赦なく叩き潰す必要もあるだろう。

 

事実悪魔達を殺し尽くすために天使の軍勢が来たのだが。それらは一瞬にしてパルミラの力によって宇宙の塵になった。その背後にいた自称「絶対なる神」は、あまりの力の差に恐怖して、二度と近づこうとはしなかった。

 

方針が決まったところで、パルミラはまず大地を作った。

 

他と同じように、惑星と呼ばれる形態で作成した。この惑星には、周囲に擬似的な光と熱を投射する仕組みを作り。生物が繁殖できる環境を擬似的に作成した。

 

そして、その周囲を次元の壁で封鎖。

 

壁そのものは、パルミラが管理する事で、一旦この大地を隔離した。

 

理由としては。

 

何よりも、最初の作業だから、という事が挙げられる。

 

そして、生殖能力が無いホムには、つがいとなる個体を造り。ものを増やす能力を応用して、子孫を作れるように調整した。

 

ここで一旦全部の状態を記録。

 

そうしないと危ないと判断したのは。

 

生まれたばかりとは言え。

 

超次元の存在だから、というのもあったのだろう。

 

ともあれパルミラは。

 

まず不幸な世界から救われた者達に。

 

楽園を用意した。

 

何も奪わなくても良い。

 

何も苦しまなくても良い。

 

其処では誰もが安楽に暮らす事が出来。

 

何一つ苦労はしなくても良い。

 

あらゆる物資が満たされていて。他の者から奪わなくても良いし。奪った所で意味もない。

 

気候は完璧で。

 

他の種族達との意思疎通も、言葉などと言う不完全なものを使わずとも行う事が出来る。

 

食物も美味しく。

 

誰もが平穏に暮らしていける世界。

 

これならば、みんな満足するだろう。

 

そうパルミラは思ったし。

 

実際みんな満足した。

 

だが、その楽園は。

 

瞬く間に崩壊した。

 

何もパルミラは余計な事をしていない。

 

楽園に招いた者達が、皆あっという間に生物として弱体化し。数世代もしない内に死に絶えてしまったのである。

 

愕然としたパルミラは。

 

記録を残しておいて正解だったと思った。

 

まず何が失敗だったのか。

 

記録を全て精査する。滅びる世界の様子を徹底的に精査した。実際に経過した時間の、何十倍何百倍と掛けながら、あらゆるデータを精査し尽くした。

 

その結果、完全な安楽なる状態に置かれた生物は、凄まじい勢いで堕落する、という事が判明した。

 

生物的に堕落すると。

 

それは生存能力を失うことを意味する。

 

勿論、病気や災害などから身を守ることは当然の権利で、大事な事ではあるが。

 

無菌室で暮らさせるような事は、却って害になってしまう。

 

それをパルミラは、他の宇宙などからもデータを集めた上で理解した。

 

試行一回目はこうして失敗。

 

続けて記録しておいたポイントまで時間を戻し。

 

条件を少しずつ変えながら、皆が幸せに暮らせる世界を模索していった。

 

完全なる楽園は駄目だ。

 

それについては。500回ほどの試行で結論出来た。

 

いずれの試行においても、どの生物も瞬く間に堕落してしまう。堕落しないように工夫をしても駄目だ。

 

知的生命体は、基本的にズルをすることと楽をすることを全力で追求する生物なのだと、パルミラは思い知らされる。

 

どれだけ工夫をしても。

 

それをすり抜けて、堕落をしようとする。

 

その結果、滅びてしまう。

 

勿論楽をするために努力をすることは大事だ。努力はそもそも楽をするためにするものだ。

 

だが、堕落を一度してしまうと。

 

そこから引き返すのは難しい。

 

精神的な堕落は別にどうでも良い。

 

問題は肉体的な堕落だ。

 

完全な楽園は。

 

肉体を滅ぼしてしまう。

 

そうパルミラは、更に工夫しながら、3000回ほど試行して判断した。

 

楽園は諦めるしか無い。

 

そう結論した。

 

心苦しかった。

 

酷い世界で、酷い扱いを受け。いるかも分からない存在に助けを求めた者達だ。助けた後は、せめて楽園で永遠に過ごさせてあげたかった。それなのに、楽園に案内すれば死んでしまうのだ。楽園を止めなければならないというのは、辛いことだった。しかし、データが証明していた。このやり方では駄目なのだと。

 

では、少しずつ条件を厳しくしていくしか無い。

 

ストレスを増やしていく。

 

資源を減らしていく。

 

働かなければ生きていけないようにしていく。

 

そうすると、今度は。

 

種族同士で争い始めた。

 

足りないなら奪え。

 

生産するという考えを持たない獣人族は、そうやって真っ先に攻撃を開始。特に穏やかで好戦性とは無縁のホムが最初にエジキになった。

 

ヒト族と魔族は勿論黙っていない。

 

一度戦いが始まると、仲介を入れようとも結局すぐに戦いが再開してしまう。

 

殺し合い。

 

奪い合い。

 

その過程で技術が発展していき。

 

バランスが崩れ。

 

後は殺し合いから殲滅戦に移行。

 

勝ち残る種族は大体ヒト族だった。

 

繁殖力がえげつない上に、獣人族よりも知能が高い。魔族に比べると力は相当に劣るが、局地戦では魔族が勝っても、最終的にはヒト族が繁殖力で押し切ってしまう。

 

その後はヒト族同士で殺し合いをはじめ。

 

故郷でやったように。

 

核兵器をぶっ放し合い。

 

そして滅びてしまうのだった。

 

滅びるのを見届けると、ため息をつきながら、また最初に戻す。

 

少しずつ条件を変える。

 

しかし、環境をどれだけいじくっても。

 

結果は同じだった。

 

100000回ほどの様々な試行錯誤を繰り返したが。

 

その結論はどうしても覆らなかった。

 

仕方が無い。

 

最初に干渉を少しするしかない。

 

本当に、実際に力が違いすぎる相手に対しての干渉は、毒にしかならない。別にパルミラは無知なわけではない。これらの作業をする過程で、膨大な数の宇宙文明を研究し、そしてその成果や興亡を記録し、自分なりに分析しながら。これらの作業を行っていったのだ。

 

多くの文明では、文化の違いが。

 

それも意思伝達ツールの違いや不完全さが、無用な争いを産んでいるのは、早い段階で分かっていた。

 

パルミラもだから合理的で分かり易い言語などを用意していたのだが。

 

助けた者達は、結局「自分が素晴らしいと思う」言語を使い始めて。それが溝になって行くし。

 

何よりも、価値観の違いが。互いの殲滅へとつながっていくことは明らかだった。

 

物資が幾ら豊富でも、楽園では無い限り殺し合う。

 

そして楽園にすればあっという間に滅ぶ。

 

ジレンマだ。

 

故に、仕方が無いので、最初に少し精神構造と知識をいじる事にした。

 

まず言語については、完全なものを用意する。

 

これは仕方が無い。

 

それぞれの種族が、勝手に新しいものを「開発」して、それが摩擦と互いの殲滅につながってしまうのだ。

 

本来食い合うような関係では無いのに、それが起きてしまう。

 

ならば無理にでも統一ツールを作るしか無い。

 

価値観も弄る。

 

ヒト族は、「自分達が万物の霊長である」という最大の思い上がりを無くさせ。見かけだけで相手を判断するという最大の問題点を矯正。

 

獣人族は、武力だけで全てを判断する獰猛性を矯正。

 

魔族は極端すぎる信仰心を矯正。

 

彼らは実際問題、悪魔と呼ばれていた時代にも、神の命じるままに動いていただけであって。神が偏愛していたその世界の人間などよりも、余程熱心に神を信仰していたのだ。

 

そしてホムは、身を守るために、多少のしたたかさを身につけさせた。

 

こうして少しずつそれぞれの種族の欠点を修正し。

 

仲良くやっていける準備はした。

 

だが、それでも上手く行かない。

 

同じ言葉を皆が使い。

 

同じ神を信仰していても。

 

度量衡などを準備していても。

 

人間は殺し合う。

 

更に少しずつストレスを増やしたり減らしたり、環境を変えてみたり、敵になる種族を作って見たりもしたけれども。

 

結果は変わらない。

 

バランスはどうしても保てない。

 

絶対に何処かで崩れる。

 

後は徹底的にジェノサイドが起きる。

 

特に戦闘能力に恵まれないホムは悲惨で。

 

真っ先にいつも皆殺しにされるか、奴隷種族にされるのだった。

 

人間も獣人族も、更に調整を加えた。魔術が使える魔族に対して、彼らは過剰な憎しみを抱くケースが多く。獣人族にも人間にも魔術を与え。そして人間は魔術に対する適正が低いため、パルミラの力の欠片である錬金術をたまに使える者が現れる程度に調整した。

 

パルミラは、少しずつ試行を重ね。

 

それが500000回を超えた辺りで、頭を抱えた。

 

どうして。

 

破滅の運命がどれだけ悲しいかは分かっている筈なのに。

 

どうして一切自重できない。

 

知的生命体など存在しないと言った知的生命体がいたが。確かにそれはある意味正しい。そうパルミラは感じ始めていた。

 

だが、助けを求められたのだ。

 

自分はそれを出来る能力があるのだ。

 

助けを求めてみた種族に問題を押しつけるのはあってはならないことだ。

 

その責任感が、パルミラを動かした。

 

あらゆるデータを収集し。与える能力などにも修正を加え。

 

試行回数が9兆を超えた頃。

 

ようやく、道筋が見えた。

 

それまでの平均絶滅年数はおよそ3000年ほど。

 

ただし、その度に徹底的な調査や精査をするため、結果として現在まで2700京年という膨大な月日が消耗されることになった。

 

だが、何とか一応のバランスが取れた世界が出来た。

 

これならば、もう少しはもつだろう。

 

そう判断したパルミラは。

 

少し疲れを感じていたこともあり。

 

自分が作り出した、永久に時の輪廻を繰り返す世界を守る余力を残す必要もあり。

 

眠ることにした。

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