暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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1、深淵の者と手を

アトミナとメクレットが、何事も無かったかのようにあたしのアトリエを訪れたのは、三日後のことだった。

 

ある程度自由に、ルアードとこの二人の姿を変更できるらしい。

 

流石はいにしえの大錬金術師。

 

だが、プラフタは。

 

まだあまりいい顔をしていなかった。

 

わだかまりは完全に解けたわけでは無い。昔の二人のようになることは、すぐには出来ないだろう。

 

意地っ張りではある。あたしからすれば、二人とも互いをこれ以上も無いほど信頼しているのが分かる。ルアードは、本当の意味で真面目で紳士的な人物だった。だからこそ、躊躇無く際限なく自分を汚すことができたのだろうし。

 

それでいながら最低限の一線を一度超えた後も。堕落し続ける事は無かった。

 

プラフタもルアードも。

 

事実上現在は詰んでいるこの世界をひっくり返すためには、絶対に必要な人材だ。

 

「ソフィー、軽く話をさせてもらおうと思って来たよ」

 

「茶を出して貰えるかしら」

 

「まあいいですけれど」

 

「ああ、プラフタには対等に話しているみたいだし、僕達にも対等で構わないよ」

 

護衛についている戦士がむっとしたが。

 

アトミナが笑顔のまま黙らせる。

 

ルアードは、深淵の者内部で、絶対的な信頼を得ている。アトミナとメクレットに別れた後もそうで無い時もだ。

 

この世界を、裏側から改革してきた生きた抑止力。

 

各国に出来なかったドラゴンや邪神の討伐もしてくれてきた。

 

この二人に救われた存在はどれだけいただろう。

 

そして作り上げた組織力は極めて強大だ。それこそ、二大国を裏側から動かせる程には。

 

今後世界の可能性を造りだすには、協力態勢の構築は必須である。

 

プラフタに、フリッツさんとジュリオさんを呼んで貰う。

 

モニカとホルストさんにも来て貰うべきか。

 

ホルストさんは顔役として。

 

モニカは未来のこの街の主力として。

 

ジュリオさんは、アダレットの代表として。

 

この会合に参加する権利がある。

 

本当は他にもみんな呼びたいのだけれども。

 

アトリエの広さには限度があるし。

 

これから行うのは、あくまで協調態勢の確認だ。

 

どう落とし前をつけるかとか、そういう話はとっくに終わっている。

 

此処からは、世界をどう良くしていくか。

 

可能性を作り出すか。

 

そのための、協力態勢を作るところから始めなければならないのだ。

 

四人が来た。

 

ちょっとアトリエが手狭になるが。

 

話し合いを始める。

 

アトミナとメクレットの護衛は、一人が中に。残りはアトリエの外に出て、護衛をかって出てくれた。

 

いずれもが、高度な錬金術の装備に身を固めている面子だ。

 

ネームドの奇襲くらいなら余裕ではじき返してくれるだろうし。ドラゴンのブレスでも短時間なら防いでくれるかも知れない。

 

まずは、口を開いたのは、ジュリオさんだった。

 

「貴方たちを深淵の者の長と見込んで話をしたい。 アダレットとの協調関係について、考えて貰えないだろうか」

 

「書状は読んだよ」

 

「悪いけれど、すこしばかり分が悪い話になるね」

 

「……」

 

まあそうだろうな。

 

イフリータというあの魔族の反応は、もっともだった、と言う訳だ。

 

そもそも深淵の者の特殊性は、圧倒的なバランスブレイカーである錬金術師の。その最高峰人材が、個人的に組織し、まとめているという事にある。世界のバランスを左右する錬金術と言う圧倒的技術を備えた存在が、超国家的、超法規的にまとめあげ。そして第三者機関として世界に関与している。

 

其処に意味がある。

 

そう、アトミナは言い切った。

 

気まずい沈黙を破るように、メクレットが咳払いする。

 

「君もこの前、現実を創造神に見せられただろう。 少なくとも僕達には野心なんてものは最初からなかったけれど、あれで確信した。 何かしらの理由があったとしても、今後国家に敵対する意味はない。 権力を追求する意味もない。 ただし二大国という態勢が崩れてしまっては困るとも考えている」

 

「つまり、今までの関係を維持すると」

 

「いや、此方も譲歩するわよ。 公認スパイを一人置くことにするわ」

 

公認スパイか。

 

確かに一人いると、色々と組織間のやりとりがスムーズになる。

 

スパイを抱えている方は、二心が無いと示すことが出来るし。

 

スパイを送っている方は、相手に危険な動きが無いか常に心を配ることも出来る。

 

ただし、譲歩はそれだけだという。

 

「現在、アダレットの内部にいる僕達のメンバーが誰かは公表できないし、今後もするつもりはないよ」

 

「厳しい条件だ」

 

「でも、これが出来る最大の譲歩よ」

 

「分かった。 此方としても、王女殿下に連絡を取り、許可を貰う予定だ」

 

それについて。

 

なんと深淵の者が持っている連絡網を使って、明日にもアダレット王都にジュリオさんを送り届けてくれると、アトミナとメクレットは言う。あたしが使っている旅人の道しるべのようなものだろう。

 

ジュリオさんは驚いたが。

 

まあそれもありか。

 

一秒でも早く、朗報を届けたいだろうし。

 

書状については、既に用意していたらしい。

 

禍々しい印を押された蜜蝋で固められた書状を、アトミナが差し出す。

 

見ていると、行動するのはアトミナ。

 

補助をするのはメクレットで。

 

綺麗に役割を分担しているようだった。

 

恐らく、ルアードの中の心が、そういう風に別れたのだろう。一人の人格を分割すると、面白い事が起きるものだ。

 

「次にソフィー。 君と話をしておきたい」

 

「奇遇だね。 此方もだよ」

 

「うむ。 まず深淵の者としては、この世界の詰んだ状態を打開するためにも、君とプラフタを最大限バックアップしようと考えている」

 

「ありがとう。 今此処でごねていても仕方が無いからね」

 

ホルストさんには軽く事情は話してあるが。

 

それでも、噂に聞く深淵の者の長。

 

更に国家上層が絡む話。

 

見ていて心配になるほど冷や汗を掻いているようだった。

 

フリッツさんは腕組みをして。

 

無言のまま話を聞いている。

 

まあ分からないでも無い。

 

この人にしてみれば、今後の未来は。あたし達の胸先三寸に掛かっていると言っても良い。

 

「まず様々な書籍を提供しよう。 君に僕達のアトリエにいつでもこられるように、空間転移装置を渡しておく。 君が使っているものとほぼ同じ仕組みだ」

 

「ルアード、書籍の管理は……」

 

「シャドウロードが張り切ってやってくれるよ。 何だかあの時に、妙に使命感を覚えたようでね。 今まで人間として生き人間として老いて自然に死ぬ、という考えだったようだけれども。 アンチエイジングを受けて、今後は未来の可能性について模索する事を最大限バックアップするってさ」

 

「不思議なものね。 人間として生きる事に、あれほどこだわっていたのにね」

 

揶揄する雰囲気は無い。

 

ただ、あれほどの魔術師。

 

支援してくれれば、本当に助かるだろう。

 

更に、である。

 

深淵の者は、拠点をキルヘン=ベルに正式に置きたいと言う。

 

ホルストさんに。メクレットは蕩々と説く。

 

「昔から我々は、異世界にアトリエと拠点を構えて、一箇所に組織的な拠点を作らず動いてきた。 我々が影働きをさせている対錬金術師の暗殺集団も、今は我々が魔界と呼ぶ異世界の拠点に住居を移している。 だが、此方の世界にも、決まった拠点が一つ欲しいと考えていた所だ。 アダレットではなく、ラスティン首都からも離れている此処は丁度良い立地なんだよね」

 

「勿論見返りは用意するわよ」

 

「具体的にお願い出来ますか」

 

「勿論」

 

すらっと、ゼッテルを拡げるアトミナ。

 

其処には、支援事項が幾つか書かれていた。

 

対ドラゴンの防御支援。

 

ドラゴンが現れた場合には、深淵の者の精鋭が駆けつけ、攻撃をはねのける。

 

対邪神の防御支援。

 

邪神に対する生物兵器、魔王を投入することを約束する。複数の邪神を屠ってきた魔王は、考えうる限り最強の対邪神兵器だ。

 

発展支援。

 

今後、キルヘン=ベルが発展するに当たり。あたしがいない時に、補佐をする錬金術師を派遣する。

 

以上。

 

これだけでも充分すぎるくらいだが。

 

更にアトミナは言う。

 

「此方としては、拠点を代々の長が認め、口外しないだけで結構よ」

 

「ふむ……」

 

ホルストさんが考え込む。

 

実際問題、この世界において、街をどう守るかは最重要事項だ。

 

特にドラゴンと邪神に対する備えが必須。匪賊はこのくらいの街になればどうにでも対応出来るが、この二種だけは脅威度の桁が違う。

 

どう撃退するかが、街の生命線になってくる。

 

ネームドに対する防衛について記述が無い事をホルストさんは指摘したが。アトミナは首を横に振る。

 

それくらいは自分でやれ、というのである。

 

まあもっともではある。其処までの面倒は見きれない、と言う訳だ。

 

ホルストさんは、少し考え込んでから、顔役達と話し合いをしたいと言ったが。

 

其処で、アトミナが更に追い打ちを掛ける。

 

「其方の顔役の内、パメラはうちの幹部だから」

 

「!」

 

「更に何人かうちの手の者が入り込んでいるからね。 テスもそうだよ」

 

「そう、だったのですか」

 

ホルストさんは、冷や汗を掻く。

 

或いは気付いていたのかも知れないが。

 

それでも、深淵の者の長から直接こんな話をされたのだ。

 

冷や汗を掻くのも無理はない、といえる。

 

しばし考え込んだ後。

 

ホルストさんは決断した。

 

「分かりました、良いでしょう。 深淵の者との契約を締結します。 しかし、拠点の提供だけで良いのですか?」

 

「此方としても、深淵の者がずっと根無し草なのも問題だと考えていたんだよ」

 

「だから、地に足がついた拠点が前から欲しかったの。 とはいっても、腐りきった大都市に根を下ろしてもね。 この街はかなり体制がしっかりしているし、少なくとも貴方が生きている間は大丈夫そうだから。 組織を引退したメンバーの隠居先も欲しかったしね」

 

「それはありがとうございます」

 

ホルストさんは相手が子供に見えても物腰が丁寧だったけれども。

 

ただ、それは。

 

ホルストさんが亡くなった後。

 

次の世代の指導者に、真相を教えるかはまた別の話になる、という事も意味している。

 

まあそれもそうか。

 

深淵の者は散々恨みを買っている組織だ。

 

逆恨みからいつどんな攻撃を受けるか分からないし。

 

何よりオーバーパワー過ぎる。

 

あまりにも強力な使い手が揃いすぎていると。

 

それだけでドラゴンを呼び寄せるだろう。

 

拠点に関しても、たまに人員の一部が使うだけ、という契約で話は進められ。やがて双方で完全な合意が為された。

 

なお拠点としては。

 

新しく作られる、東の街との中間地点にある教会となる事で決定。

 

神父については、深淵の者から人員を派遣してくれるそうだ。

 

極めて真面目な神父で、強力な神聖魔術の使い手であり。

 

なおかつこの世界の理不尽を憎み。

 

子供達に愛情を注いでいる人物だそうである。実際、彼の教会(孤児院を兼ねている)から立派に成人していった人間は多いそうだ。なお孤児院の子供全員を深淵の者に勧誘している訳ではなく。自分達が深淵の者麾下の教会にいたことを知らずに社会に出た者も多いそうである。

 

こういった人員も抱え込んでいる辺り、深淵の者の組織における人材獲得と育成が、如何に進んでいたのかよく分かる。

 

勿論人材をスカウトするだけでは無く。

 

様々な教育をして。

 

育てても来たのだろう。

 

更に話し合いを幾つか進め。

 

ゼッテルを出してきたアトミナと、膝をつき合わせて話を進める。

 

印を押し。

 

内容に譲歩を求め。

 

或いは妥協案を出し。

 

丸一日掛けて。

 

深淵の者とあたしは。

 

同盟関係を締結した。

 

外が真っ暗になった頃。先に帰ったホルストさんに続いて、ジュリオさんが腰を上げるが。

 

アトミナとメクレットも、一緒に立ち上がった。

 

「では、帰るついでにアダレット王都に送るよ。 真面目で勇敢な騎士さん」

 

「でも、そこまで真面目だと、肩が凝らないかしら」

 

「性分だ。 それに、ようやくこれで本当の意味で役割が果たせた。 僕は此処に先輩を弔うためと、それに貴方たち深淵の者との友好関係を結ぶために来た。 僕の主君は残念ながら暗愚という声もあるが、王女殿下は希代の英傑だ。 僕も彼女の指示で動いているし、おそらくきっと満足する答えを返してくれると思う」

 

「ふふ、王女様と騎士か。 古典的な組み合わせね」

 

ジュリオさんは小首をかしげている。

 

この様子では、多分好きとかそういうのは無いのだろう。

 

生真面目なこの人だ。

 

多分、相手に抱いているのは完全な忠誠心。

 

それに本当に真面目な王族なら、恋愛ごっこにうつつを抜かしている暇もあるまい。

 

こんな過酷な世界だ。

 

やる事は、それこそ倒れるほど働いても終わらないのだろうから。

 

そういえば。

 

ジュリオさんは、この世界の真相についてその王女に話すのだろうか。

 

聞いていたが。

 

首を横に振られた。

 

「一応軽く話はするが、王女殿下にだけに話す事にする。 残念ながら、現在の国王陛下の周囲には、信用できないような輩もそれなりの数がいるんだよ。 酷い汚職に手を染めている人間はいつの間にか消えてしまうけれど、そうでなければ今頃アダレットはどうなっていたか」

 

「改革、大変そうですね」

 

「いや、正直な話、君がこれからしなければならない、考えなければならないことに比べれば児戯に等しいだろう。 大丈夫。 王女殿下の辣腕と、それを支える僕達騎士団の力があれば、アダレットは当面安泰だ。 しかも深淵の者と王女殿下が、こういう形で同盟に近いものを組む事が出来たのなら、なおさらだ」

 

ジュリオさんと、最後に握手をする。

 

まあ、いつでも会えるだろう。

 

手を振る。

 

ジュリオさんは、あたしに対して騎士としての最敬礼をしてくれた。あたしもそれに返す。

 

そして、ジュリオさんは、この街から去った。

 

 

 

会合の最中、ずっとモニカは黙っていた。

 

彼女にも話をする権利はあったし。

 

あたしも意見は聞きたかったが。

 

この間のことが、余程ショックだったのだろうか。

 

プラフタは、時々あたしと、アトミナとメクレットが話をする時に、アドバイスをくれたのだけれど。

 

モニカは話を振られない限り、ずっと黙りだった。

 

立ち会ってくれていたフリッツさんも帰宅。

 

まだ少しの間はこの街にいてくれるらしいが。

 

フリッツさんも、もう街を離れる日は遠くないだろう。

 

オスカーもいずれいなくなる。

 

他にも、ロジーさんが近々街を離れる、という話が出ているし。

 

この街も寂しくなる。

 

防衛戦力に関しては、何よりも心強い組織が味方についてはくれたが。

 

「ねえモニカ」

 

「なあに」

 

「どうして黙っていたの? 時々アドバイス欲しかったんだけどなあ」

 

「……ソフィー。 貴方、本当に、世界そのものと戦うつもり?」

 

真剣な表情で見返される。

 

あたしは、その通りだと答えるけれど。

 

モニカは、その時初めて激情を浮かべた。

 

あたしと子供の頃は、本気で何度も殺し合い寸前の喧嘩をしたが。

 

その時の表情だった。

 

襟首を掴まれる。

 

「どうして貴方が!」

 

「誰かがやらなければならないんだよ」

 

「貴方はもう、人間の枠組みを外れ始めているの! 気付いている? あの二人、アトミナとメクレットはもう人間じゃ無くて別の存在よ。 プラフタだって、人間とはとても言い難い! 貴方も、人間じゃあなくなりつつある! ましてや、こんな神々が全力でも処理出来ないような案件にこれから首を突っ込んだら、本当に貴方はバケモノ以上の怪物になってしまうわ!」

 

「構わないよ。 最初からあたしはバケモノだもの」

 

かあと、口をあけてあたしは笑う。

 

モニカは一歩も引かない。

 

あたしは昔っから狂っていたし。

 

モニカはそんなあたしに、全力で立ち向かってきた。

 

だから対等だった。

 

怯まなかったのだ。

 

あたしの狂気に。

 

勿論恐れはあっただろうけれども。

 

それでもあたしに真正面から向き合ってくれるモニカは。オスカーと一緒で、あたしの大事な比翼の友だ。

 

「あなたの目、昔からドブのように濁っていたけれど、今ではもう深淵そのものよ! あの神を名乗るパルミラって子の目と同じ!」

 

「錬金術は深淵の学問なんだよ。 そして深淵を覗き込めば、深淵に覗き込まれる。 あのパルミラって創造神は、深淵の深淵。 それに覗き込まれて、あたしは見込まれたんだし、当然でしょう」

 

「どうして平然としていられるの! 狂っているからなんて、そんなの、理由に、理由に……っ!」

 

泣き崩れるモニカ。

 

あれ。

 

何となくすっと理解出来た。

 

パルミラとの話が終わった後、モニカは泣いていたが。

 

ひょっとして、神があまりにも過酷な現実を話したからではなくて。

 

これからあたしが、人間止めるの確定だと気付いたからか。

 

そうか。

 

モニカは、本当に。

 

あたしのことを心配してくれていたんだなあ。

 

どこか遠くでそんな事を思う。

 

創造神パルミラは。

 

自分が助けた命に対して責任を持った。

 

創造神ほどのスペックでも。

 

それで詰んだ。

 

あたしは詰んだ世界を切開し、打開しなければならない。

 

その過程で人間止めようが、知った事か。

 

そもそも自分が人間である事なんぞにあまり興味が残っていない、という事もある。リッチのような、外道にて人間を止める事に興味は無い。ノーライフキングのようになるつもりもない。

 

だが、あたしは。

 

今後どのみち。

 

人間を越えなければならないのだ。

 

「ねえモニカ。 この世界は詰んでいるんだよ。 人間を遙かに超える創造神でもどうにもできないくらいにね。 だったら、あたしが、どうにかするしかない」

 

「どうして……どうして家族に恵まれなかった貴方が!」

 

「あたしにはおばあちゃんがいたっ! ……他の血縁者はどうでもいい。 でも、おばあちゃんと、モニカとオスカーと、兄貴分のハロルさんと。 それにプラフタがいる。 だからどーでもいいね」

 

「……」

 

モニカはどうして黙っていたか。

 

ずっと、ハラワタが煮えくりかえっていたのだろう。

 

だが、それでも別に良い。

 

あたしにとって、ずっとモニカは。

 

喧嘩友達だ。

 

「モニカもいっそ人間止める?」

 

「いや」

 

「そう。 でも、覚えておいて。 あたしにとっては、モニカは何がどうなろうとずっと比翼だよ」

 

「そうね。 私に取っても、貴方は比翼だわ」

 

沈黙が続く。

 

それぞれの思惑が流れる中。

 

この世界の命運は。

 

あたしの手の中に、集まりつつあるのが分かった。




例えわかり合えなくても。

比翼と言える存在は、そこにいます。
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