暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

15 / 126
4、初めてのレシピ

鼻歌交じりに作り上げたレシピを見てもらう。

 

プラフタはしばらくじっと見ていたが。

 

なるほどと言ってくれた。

 

「結局の所、爆弾は殺傷兵器です。 広域にばらまいて敵を殺戮し、制圧するという発想は悪くありませんね」

 

「そっか! じゃあ、早速作って見るね」

 

「良いでしょう。 ただしクラフトに毛が生えた程度とは言え、オリジナルのレシピである事に代わりはありません。 作成には私が立ち会います」

 

「勿論お願いするつもりだよ」

 

要領はクラフトと同じだ。

 

規模が違うだけである。

 

まずうにの実を多数用意して、クラフト同様に加工する。

 

その中で、まずは大量の小型クラフトを作成。

 

そしてそれを、大型の球体の中に入れる。

 

一抱えもあるので、そのまま投擲するのは少しばかり骨が折れる。

 

縄をつけて。

 

敵の上空に、回転しながら遠心力で投げるのだ。

 

そして起爆ワードを唱えると。

 

わざと、弱めの爆発を起こして。

 

周囲に小型クラフトをばらまく。

 

そして起爆ワードから遅れて二秒後に。

 

大量の子クラフトが、一斉に爆発する仕組みだ。

 

最初はクラスタークラフトとでも名付けようかと思ったのだけれども。

 

どうせなので、うに袋にした。

 

素材は基本的にはクラフトと同じだし。

 

変に格好良い名前にすると。

 

今度は警戒されるかも知れないからである。

 

作業は少し手間取る。

 

クラフトと違い、うにの実の外殻を、そのままガワとして使えないからである。

 

其処で、少し前に作る事に成功したゼッテルを用いて。

 

大型のガワを作る。

 

内部には補強のためのヒモを入れ。

 

起爆と同時に切れるようにする。

 

またヒモは、外側に向けて緊張する造りにし。

 

切れてガワが壊れると同時に、クラフトが撒かれるように工夫した。

 

まずは、この大型のガワの実験から。

 

プラフタ立ち会いのもと。

 

街の外れで。

 

回転しながら、遠心力を利用して、放り投げる。

 

狙いの位置に大体飛ぶので。

 

その時点で起爆。

 

破裂。

 

そして、ばらまかれた子弾が、周囲に散らばった。

 

立ち会いにはモニカとオスカーも来たが。

 

二人には、段階を踏んで実験をすると告げてある。

 

今回は、良い感触だ。

 

四つ準備したうに袋を一つずつやっていくが。

 

糸の緊張が上手く行かなかったのか。爆発した後、子弾が上手に散らばらないケースが一回あった。

 

残骸を拾って回収。

 

皆で状況を見ると。

 

どうやら爆発の時、糸が綺麗にほぐれなかったのが原因らしい。

 

かといって、爆発の威力をこれ以上上げると、子弾が傷つく可能性がある。

 

少し悩んだ後。

 

糸の集約点を、更に小型のガワで包むことにする。

 

そして最初の爆発の火力を上げる。

 

二度目の実験は二日後。

 

クラフトを作るのに二日かかるので。

 

これは仕方が無い時間の消費だ。

 

見に来る人間は、その時には増えていた。

 

ソフィーが何かやっている。

 

そう話が伝わると。

 

期待もあるのだろう。

 

見に来る者も必然的に増える、という事だ。

 

今度は四つ同じように実験し。

 

そして、全てが上手く行った。

 

子弾を拾って、確認。

 

いずれも、衝撃は最小限に抑えられている。プラフタの助言で。糸の集約点を包んでいるガワを、爆発で自分から壊れるようにわざと柔らかめに作ったのが上手く行ったらしかった。

 

わざと壊れることにより。

 

ダメージを吸収するのだ。

 

そして二階層構造にする事によって。

 

糸への反射ダメージも増やし。

 

うに袋の自壊へもつなげる。

 

上手く行った。

 

頷くと、次の段階に。

 

最初の失敗を生かして、子弾を詰め込むのも工夫する。二回の失敗で、どういう風に子弾にダメージが行くかも、確認はしておいたのだ。

 

三回目の実験には。

 

ホルストさんも見に来ていた。

 

縄をつけて、遠心力を利用して、投擲。

 

起爆ワードを唱える。

 

空中で炸裂したうに袋から、まき散らされる子弾クラフト。

 

そして、それらが一斉に。

 

爆発した。

 

広域が瞬時に焼け野原になる。

 

おおと、声が上がった。

 

「火力が上がったわけでは無いが、これだけの広域を一瞬にして制圧できるのはとても面白いな」

 

「匪賊の一団なら一撃で壊滅できる」

 

ホルストさんに、自警団のメンバーが好意的な感想を述べている。

 

あたしは。

 

ちょっとまだ不満だ。

 

これだったら、完全に制圧は出来ないかも知れない。

 

ただし、魔族だろうがヒト族だろうが、人間の死角は頭上だ。

 

頭上から降り注ぎ。

 

そして爆裂する無数の爆弾。

 

改良次第では、もっと大型のものだって作れるだろう。考えどころである。

 

「ソフィー。 これはいつ実用化できるんだい」

 

「もう少し修正をしてから、ですね」

 

「そうか。 頼むよ。 これが実用化されれば、キルヘン=ベルの防衛力は大いに上がる事になる」

 

「保管には気をつける必要があります」

 

分かっていると言うと。

 

ホルストさんは、吃驚するような買い取り額を提示してきた。

 

確かに対匪賊用としては充分な火力を展開できる。

 

価格分の価値はあるだろう。

 

だが、これで満足していては駄目だ。

 

錬金術師は。

 

それこそ驚天の技。

 

こんなものは。

 

その気になれば、魔術でも再現できる。

 

家に戻った後、プラフタにレシピを書き込む。プラフタは無言で書かれるままになっていたが。

 

終わった後、言う。

 

「ソフィー」

 

「どうしたの?」

 

「少しだけ思いだしたことがあります」

 

「お」

 

早速効果があったか。

 

何を思いだしたか。

 

「どうやら私は、誰か大事な……恐らく結婚はしていなかったと思うのですが、大事な人と一緒に錬金術をしていたようです」

 

「異性だったの?」

 

「恐らくは」

 

そうか。

 

一緒に研究をしていたと言う事は。相当な凄腕だったのだろう。

 

だが、何だか言葉に含みがあった。

 

それ以上は思い出せないようだが。

 

「いずれにしても、この程度のレシピでは、まだまだという事のようです。 もっと色々なレシピの書き込みをお願いしますよ、ソフィー」

 

「うん。 まずは、早速実戦投入できる分を作ろうか」

 

「それが良さそうですね」

 

頷く。

 

そして、キルヘン=ベルを守るには充分な火力を持つ。

 

広域制圧用の爆弾を、あたしは作り始めるのだった。

 

 

 

(続)




アトリエシリーズには主に二種類の錬金術があります。

レシピさえあれば、理論通りにやれば誰にでもできる科学に近いもの。

レシピがあろうと才能がなければ全くどうにもできないもの。

ソフィーのアトリエが属するいわゆる「不思議シリーズ」は後者です。

そしてソフィーは、あまりにもその才能に恵まれていすぎたのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。