暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ 作:dwwyakata@2024
彼は原作でもとても生真面目な騎士で好青年ですね。
ただ彼も、それなりに重いものを背負ってこの過酷な世界で生きているのです。
プラフタにいわれて、あたしは新しい種類の爆弾の作成に取りかかった。フラムという爆弾で。この間聞いたクラフトとは違う原理の爆弾だ。
材料も違う。
いずれにしても、街の側では取れない素材である。
カーエン石というのだが。
昔は火炎石と呼ばれていたものが、何かしらの理由で呼ばれ方が変わった、とも言われている。
理由はよく分からないそうで。
プラフタの時代には、少なくともカーエン石という呼び名が定着していたそうだ。
これがまた危険な鉱石で。
ちょっと火が入ると。
即座に爆発する。
火力そのものは加工しないとそこまで危険では無いのだけれど。子供の手指くらいは簡単に吹っ飛ぶそうである。
それはそうか。
そうでないと殺戮兵器としては機能しない。
扱いには細心の注意を要し。
更に錬金術によって性質を変化させ。
周囲を爆熱によって消し飛ばす爆弾へと作り替えるのである。
フラムという言葉についても。
具体的には、古い言葉で「火」という意味だそうで。
早い話が、火そのものという爆弾と言うことだ。
作るのがわくわくするが。
問題なのが、材料の場所。
街からかなり離れた遺跡までいかないと見つからない。
その上その遺跡は。
匪賊が縄張りにしていると言う噂もある。
こういった街から離れた場所は、危険が大きい反面、少なくとも匪賊狩りを専門にしている様な人間も来づらい。
何しろ大人数が行動すると。
それだけドラゴンや邪神が反応する可能性も大きいからだ。
街に匪賊が仕掛けるのは、匪賊にとってもリスクが大きい。
逆に。
こういった遺跡に潜んでいる匪賊に仕掛けるのは。
傭兵や巡回の戦士にとってもリスクが大きいのだ。
というわけで。
今回は、モニカとオスカー。それにハロルさんに来て貰う。遠出と聞いたハロルさんは露骨に嫌そうな顔をしたが。
しかしながら、街での立場が悪いのだ。
こういうときには、面倒でも出なければならないだろう。
ただでさえ時計屋は開店休業状態。
向かいの鍛冶屋が毎日しっかり仕事をしているのと対照的で。
そういう意味でも肩身が狭いのだろう。
一日目。
何カ所か街道にある休憩所で、休憩を取る。
外で野宿は久しぶりだ。
休憩所と言っても、そもそも誰かが常駐している訳では無い。食べ物などがあるわけでもない。
基本的に雨をしのげるだけ。
むしろこういう所を狙って、匪賊が仕掛けてくるケースもある。
旅の商人などと行き会うこともあるが。
街で会うときよりも、ふっかけられるのが基本だ。
向こうとしても、生きるのに必死だし。
そもそも、あまり人とかちあう事がない。
ざっと周囲を見てまわるけれど。
基本的に誰もおらず。
獣もいなかった。
この辺りまで、時々街からの巡回が出るらしいのだけれど。モニカも野宿は久しぶりだと言っていた。
「基本的に交代で見張りな」
「はーい」
焚き火は絶やさないようにする。
これは奇襲を受けるのを防ぐためである。
少なくとも周囲が明るければ、夜闇に目が慣れている獣に襲われても、まったく見えない状態よりは対応はしやすい。
一応休憩所には柵なども作られてはいるが。
強めの獣に襲われるとどうにもならない。
「モニカ、この辺りで注意するべき猛獣は?」
「この辺りだとキメラビーストが一番危ないわね。 後はアードラかしら」
「あのでっかい鳥だよな。 植物達によると、種を媒介してくれないから嫌い、だってさ」
「種を媒介する?」
オスカーが説明してくれる。
小鳥の中には、植物の種を食べて飲み込み。
そして飛んでいった先で排泄することで。
植物が彼方此方に繁殖する手助けをする者がいるそうだ。
何しろこの荒野だらけの世界。
ほぼ外に飛んでいった種に生還の見込みや育成の可能性は無いが。
それでも、何処かに根付ければ幸運。
植物たちはそう思っているのだそうだ。
ハロルさんは興味が無さそうで。
先にごろんと焚き火の横で眠りにつく。
不眠症らしく、目の下の隈は消えていないのだけれど。
流石に歩き疲れたのか。
眠ることは一応出来るようだった。
モニカは不審そうに目を細めていたが。
あたしは興味深いと思う。
実際問題。
オスカーが言った木の実や薬草は。
いずれも当たりだったのだから。
荷車の中に、今日はプラフタはいない。
あたしが戻るまでに、おばあちゃんの本に目を通しておきたいという事で。家に残しておいたのだ。
自分が浮けるくらいである。
家事までこなす程なのだ。
本を本棚から引き抜き。
読むことくらいは朝飯前、と言うわけだ。
あたしが読むよりも。
プラフタが読む方が、効率的に情報を引き出せるかも知れない。
おばあちゃんも凄い錬金術師だっただろうけれど。
多分プラフタは、其処から更に次元違いの錬金術師だったのだろうから。
さて、火の番を始めて、じきに日が暮れる。
順番は決めてあるので、先に休む事にする。
完全に横になるのでは無く。
手元に杖を置き。
更に周囲を警戒するために、魔術による防壁も展開する。
それほど分厚い防壁では無いけれど。
それでも、一瞬でも敵を防げれば。
それだけで生存率はガツンと上がるものなのだ。
奇襲を受けたとき。
一瞬の差で、生死が左右されることはよくある。
その一瞬を作り出すための防壁である。
勿論相手が悪い場合はどうにもならないが。
その時には、持ち込んだクラフト全部を使ってでも、退路を作るだけ。生き延びれば、次はあるのだから。
匪賊と言っても実力はピンキリ。
高い実力を持つ魔族が所属しているケースもある。
いずれにしても、その一瞬を作るために。
全員が見張りを、油断無くこなして行かなければならない。
その内、ツーマンセルでやっていく事も視野に入れたいが。
今は採集に行く際の人数が少なすぎる。
対応はこうしていくしか無いだろう。
そして、採集に貴重な人材であるモニカをキルヘン=ベルが割いてくれるのも。
錬金術師が如何に強力な基幹産業になるか。
知っているから、だ。
あたしも周囲に魔術トラップを展開し終えたので、休む事にする。
この後更にモニカがトラップを展開するのだろうが、其処までは別に見ていなくても大丈夫だ。
焚き火によって来る猛獣はあまり多く無いし。
この辺りには其処まで危険な奴も出ない。
出ても対応出来る。
だから休む事にする。
ぼんやりとしていると。
ふと、気付く。
足音がする。
小さな足音。
それに混じって、少し大きめのがある。
あたしが飛び起きて杖を手にした時には、モニカがオスカーを起こしていた。
ハロルさんはというと。
既に起きて、拳銃の状態を確認していた。
松明を掲げて近づいて来ている。
あの様子だと。
どうやら匪賊では無くて傭兵団だろう。
夜間強行軍と言う事は。
恐らくは、商人の護衛とみた。
こうやって存在をアピールしながら進んでいることで。
むしろ奇襲では無くて、敵の攻撃を誘発させて、安定した戦いをする。
そういうやり方を好む傭兵団はいる。
そんな話だ。
松明の数からしても、そもそも自信の無い匪賊は仕掛けてこないだろうし。
仕掛けてきても返り討ちに出来る自信があるという事である。
休憩所に、彼らの先発隊が来た。
剣に手を掛けているモニカを見て、傭兵らしい獣人族の粗野な戦士がからからと笑う。犬の顔を持つ獣人族だった。
「すまんな、休憩中だったか」
「何用かしら」
「この先にあるキルヘン=ベルという街を経由して、幾つかの都市に商人を護衛して回るんだよ。 此処は通過するだけだから安心してくれ」
見ると、かなり立派な板金鎧を着込んでいる。
その上、プレートの上から鱗。
それも恐らくドラゴンのものを貼り付けていた。
かなりの高級品だと一目で分かる。
装備からして、匪賊では無いだろう。
警戒をしたまま、側を通って貰う。
ホムが何人かいた。
たまに商人としてホムは見かけるのだが。
小さくて可愛い種族だ(※ヒト族からの主観)。彼らは手先が器用で、真面目で数字にも強いので、商人をしている事が多い。
強欲で手段を選ばないヒト族の商人よりも、真面目で数字にも正確なホムの商人を信頼する人間は多く。
昔はヒト族の商人が暴利で商売をすることが多かったが。
今はホムの商人が、ヒト族と同等か、それ以上の数いるようだ。
ヒト族は平均的な能力でつぶしが利くことと元の数が多いことを生かしており。
ホムの商人の配下になる事も珍しくないらしい。
またホムは皆同じような顔をしていることもあって、個体識別が非常に難しいため。ホムの方から、色々な服を着て、分かり易いように「個性」を作ってくれている。
不思議でカラフルで、オシャレな衣装を着たホムが、通りがかりに声を掛けてきた。
受け答えはモニカがする。
「みなさんは、キルヘン=ベルの方ですか?」
「ええ。 貴方は」
「私はコルネリアというのです。 キルヘン=ベルにホムはいますでしょうか」
「いいえ。 残念ながら、今は定住しているホムはいないわ」
昔はいたこともあったのだが。
何しろ十年近く錬金術師がいなかった街だ。
「商機」を逃すと判断したのだろう。
皆、街を離れていった。
その一方で、テスさんのように、キルヘン=ベルに逃げ込んできた、行き場の無い難民もいたが。
「そうですか。 私は父を探しているのです。 しばらくはキルヘン=ベルに定住しますので、情報があったら声を掛けて欲しいのです」
「分かったわ」
「それでは、失礼しますのです」
モニカが素早く会話を切り上げた。
私が目を細めたのに気付いたからだろう。
私も流石にその単語だけでブチ切れる程沸点は低くない。コルネリアさんに不快感を感じるほど狭量でも無い。
ただし、その単語を聞いて、心穏やかでいられるほど、優しくも無い。
それだけだ。
隊列はそのまま行く。
あの様子だと、キルヘン=ベルまで休まずに行くのだろう。あの規模の戦力ならば、恐らくは何の被害も出さないでいけるはずだ。キルヘンベルから離れた地点は危険箇所もあるが。
それでも、あれだけの戦力がいれば、多少の匪賊くらいなら一蹴できるはずだ。
「寝直す」
あたしが横になると。
ほっとした様子で、モニカが隊列が遠ざかっていくのを見た。
キルヘン=ベルでも当然気付いている筈で。
警戒をまず最初に。
そしてその後は商機だと喜ぶ筈だ。
単独で、或いは少数の護衛を連れて訪れる商人より。
あれだけの大部隊を護衛にしている商人の群れの方が、大きな利益を呼んでくれるのは、わざわざ考えなくても分かる事だ。
トラップの方は破られていないし、今のうちに休んでおかない理由も無い。
虫除けの魔術が掛かっているか、再確認しただけで。
私はまた、すぐに眠りに落ちていた。
翌朝。
早い内から出る。
焚き火の始末をし。
休憩所のメンテナンスを終えてから、出発だ。
誰が利用するか分からないし。
此処にいても猛獣や匪賊に襲われるかも知れないけれど。
雨風をしのげるだけで、だいぶマシ。
それが事実なのである。
オスカーが、歩きながら、周囲を見回しているが。
この辺りに植物はない。
話す相手もいなくて、何度かため息をついていた。
「こう土地が荒れているとなあ。 ソフィー、頼むぜ」
「任せておいて。 まだ無理だけど」
「ハハ、分かってる。 おいらもすぐに其処までソフィーが成長するとは思っていないよ」
「でも、いずれは何とかするから」
とはいっても、だ。
土地に栄養だけ与えても、植物が根付くとはとても思えない。
これだけ痩せた土地だ。
まず栄養を与え。
それから土地に水を引き。
植物を植えて。
色々やる事はあるだろう。
水を引くのも問題だ。
川から水を引けば。
それだけ川の水量が落ちる事を意味している。
下流に街があれば。
当然困るだろう。
水を作り出すことは、或いは出来るのかも知れない。プラフタには、その辺り確認しておきたいところだ。
むしろ、最初は難易度が低い場所。
川の近くなどの平原にて。
森を作っていく。
そういう所から始めて。
徐々に土地の保水力を上げていく。
いずれにしても、実際にそれをやったおばあちゃんが本を残してくれている。プラフタが本を読んでいるという事は。
帰ってから、ノウハウを教えてくれるかも知れない。
間もなく見えてくる。
遺跡だ。
簡単に遺跡とは言うが。
要するに焼き討ちにあった村の跡である。
村の名はナーセリー。
典型的な、荒野に苦しむ村で。
やせこけた村人達と。
最小限の畑だけに寄って。糊口を凌ぐ生活をしていた。
此処からキルヘン=ベルに移り住んできた人も少なくない。
そして、ある程度の人数が減った時点で。
襲撃が起きた。
襲撃に気付いた後、モニカも含む十名ほどが駆けつけたのだが。そもそも抵抗する戦力もろくに残っていなかったナーセリー村は、何に襲われたのかも分からないまま、皆殺しにされた。
襲撃の後からして、匪賊らしいという事は分かったが。
或いはそう見せかけた邪神や、ドラゴンかも知れない。
モニカに当時の様子を聞いたが。
兎に角破壊と殺戮の限りを尽くされたという事で。
人間は皆殺し。
子供の一人も生き残ってはいなかったそうである。
食い散らかされた人間の死骸もあったが。
殺されれば骨は兎も角肉を獣に食い散らかされるものだし。
襲撃者が食い散らかしたのか。
それともスカベンジャーにやられたのか。
それは分からないと、モニカは言うのだった。
何処にでもある悲劇。
キルヘン=ベルでさえ、いつ同じ事になるか分からない状況。
キルヘン=ベルに最も近かった場所。
それがこのナーセリー村であり。
ナーセリーが無くなったことにより。
隣の街に行くことが、余計に困難になった。
実のところ。
ナーセリー出身者の中には、キルヘン=ベルが豊かになったら、此処を復興しようという声を上げている者もいる。
ソフィーが錬金術師としての力を付け。
そして此処まで安全圏を拡大してくれれば。
それも出来るだろう、というのである。
ソフィーとしても皮算用をされると困るのだけれども。
ただ、言いたいことも気持ちも分かる。
だからその言葉を否定はせず。
今後、出来るようならと、濁して答えるようにはしていた。
周囲には、既に崩れた塀と、堀の後。
畑の跡には、枯れ果てた雑草。
潰された家の跡。
墓が点々としている。これはモニカ達が作ったものだ。
「この村跡は、霊の住処よ。 怨念が強いから、昼間にも出る事があるわ」
モニカが警告をする。
まあそうだろう。
この世界に殺されたようなものだ。
この村の人々は。
噂に過ぎないけれど。
この世界で、人間は増えても減ってもいないという。
魔族やホムは繁殖力が低めだけれども。
ヒト族や獣人族はかなり繁殖力が高いのに、である。
それは要するに。
それだけこの世界が過酷で。
増える分だけ人が死んでいる、という事を意味している。
この村を見ると。
それもそうだなと、思えてしまう。
墓を荒らされている様子は無い。
基本的に埋葬する際には、獣に掘り返されないように、骨まで焼いてから埋める事にしている。
死体が誰か分かったものは、個別の墓に。
分からなかったものは、村の住民全ての名前を刻んだ墓に。
埋葬してあるという。
モニカが言う通り。
墓石は寂しく建ち並んでいる。
無念を晴らしてくれ。
耳元で囁かれた気がした。
モニカが詠唱して、周囲の怨念を鎮める魔術を展開しているが。
それも効果がどれだけあるか。
ふと、気付く。
ハロルさんが、真っ先に銃を向けた。
「誰かいるな。 出てこい」
「すまない。 隠れていたつもりはないんだ」
現れたのは。
アダレットで騎士が着るという、プレートメイルを着込んだ青年だ。非常に大きな剣を、腰に差している。
ひょっとすると。
武王の時代から、アダレットにて精鋭で知られる、騎士団の人だろうか。
あたしでも知っているアダレットの紋章が鎧に刻まれているし。
少なくとも、軍人階級でも、高位にいる人だろう。
びりびりと強さを感じる。
多分この場の誰よりも強いはずだ。
血の臭いがした。
見ると、かなり大柄な魔族が、一刀両断されて倒れていた。
格好からして匪賊か。
「近くで匪賊の住み着いている洞窟を見つけてね。 この村を襲撃した連中かも知れないと思って問いただしたら、襲いかかってきたから斬り伏せた。 一人此処に逃げてきた者がいたから、追撃していた。 追いついて倒した。 理由はそれだけだよ」
「そう。 感謝するわ」
「いいや。 騎士としての本分を果たしただけだ。 弱者を守るのは、我等アダレット騎士の役割だからね」
堅苦しい人だ。
ソフィーは苦笑したが。
確かアダレット騎士は、こんな風に自分の仕事に誇りを持ち、非常に生真面目な人も珍しくないという。
そもそも武王が親衛隊として組織した猛者達は。
その後のアダレット王国で、最精鋭として受け継がれ。
アダレット騎士行く所匪賊は逃げ。
ドラゴンでさえ道譲ると。
歌が残っているほどだそうである。
ホルストさんからの又聞きの知識だが。
いずれにしても、どこの国でも匪賊は駆除が基本である。匪賊と結託して商売するような輩も昔は絶えなかったらしいが、今ではそれも極刑が殆どだ。それでもなお匪賊になる者が出るほどに、この世界は貧しい。荒れている。
故に、錬金術師は更に努力しなければならない、という事だ。
名を名乗り合う。
青年は、ジュリオと名乗った。
此方も名乗る。
錬金術師と聞くと、ジュリオは頷いた。
「そうか。 僕はこの辺りで調べ物があるから、近々君達の村に向かうと思う。 錬金術師はいないと聞いていたから、嬉しい誤算だ。 今後、頼りにさせて貰う事があると思うから、よろしく」
「分かりました」
礼をすると。
教会の祈りを捧げられる。
そういやアダレット騎士は。
確か熱心な創造神教の信者だったか。
モニカはそれについて好感を抱いたようだが。
あたしは逆にちょっと不審を抱く。
モニカとは散々議論して、喧嘩にもなったことだし。この人と神について話し合うつもりはない。
そもそもアダレットも、討伐部隊を組織して、邪神を討伐したことは何度もあるはずで。
無邪気に「神の愛」だの、「創造神の慈悲」だのを、信じているとは思えない。
多分組織をまとめるための、一種の儀式なのだろう。
組織というものを作るために、特定の思想を軸にするケースは珍しくない、という話は良く聞くし。
優しくあたしは解釈した。
軽く話した後。
どうせキルヘン=ベルに行くのだから、それまでは護衛をして貰う事にする。
いずれにしてもナーセリー跡は。
このメンバーで探索するには、少しばかり危険だと、思っていた所だった。
そのまま、ジュリオには見張りをしてもらい。
あたしは図鑑を開いて、鉱石を探す。
この村は、カーエン石を売る事で、どうにか外貨を獲得していたらしい。近くの岩山などから掘り返していたらしいが。
今でも残っているかも知れない。
崩れた家などを探す。
そうすると、あるある。結構残っているものだ。
崩落した家などを片しながら、素材を集める。
石材なども、使えそうなものは回収。
放置されたままになっている壊れた家については、一度完全に崩して、そして石材も積み上げておく。
キルヘン=ベルは人口が増え続けているし。
いずれナーセリーを復興するときに。
少しでもやりやすくするためだ。
「なあ、ソフィー」
オスカーが声を掛けてくる。
案内された先には。
枯れ果てた木が、何本かあった。
「どうしたの?」
「もう殆ど死んでいるけれど、彼らがいうんだ。 此処をもう少し豊かにすれば、森が作れるって」
「そうなの? そっか……」
「おいらとしても、本当は木の実が採れる彼らが、此処で朽ちてしまったのは悲しいし、何とかして欲しいな」
頷く。
いずれにしても、まだあたしには荷が重い。
何もかも順番にこなして行くにしても。
此処に手を出すのは、ずっと先になるだろう。
倉庫らしい場所を崩す。
中に匪賊が来た時に逃げ込んだのか。
子供の白骨死体があった。
埋葬して。
そして、残っていたカーエン石を回収しておく。
いずれもっと本格的に石が取れる場所から直接回収したいが、今の時点ではこれで充分だ。
モニカと協力して。
石材を積み上げ直し。
そして墓に骨を埋葬し直す。
モニカは祈りを捧げていたが。
あたしはその様子を、じっと見るだけに留まった。
周囲を見張っていたハロルさんが、戻ってくる。
「水場があったが、枯れているな。 動物の姿も見当たらない」
「まずは土地の保水力からか……」
「保水力?」
「ん? ああ、おばあちゃんの本に書いてあったの。 土地には植物さえあれば水を蓄える性質も生まれるって。 でもこれじゃあね……。 まずはどうやって水を此処に持ってくるか、考えないと」
キルヘン=ベル近くには川もあるし。
水脈もあるが。
其処から水を運ぶのなどは論外だ。
そうなってくると。
錬金術を使うしかあるまい。
いずれにしても、後始末は終えた。
ジュリオさんに告げて、ナーセリーを出ることにする。
もう何回か来て、しっかり処置をした後。
実力がついてきたら、復興を本格的にやりたい。
錬金術師は、この世界で。
やる事が、とても多い。
この滅ぼされた村を見ると。
それを強く実感させられる。
帰り道。皆があまり声を発しなかった。ジュリオも、あまり良い気分はしなかったのだろう。
如何に、あれが今の世界では、ありふれた光景だとしても。
否。
あれをありふれた光景にしないのが。
今後の課題だ。