暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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原作では中盤の難敵であるだけのノーライフキング。

本作では、その名前に相応しい邪悪の所業に手を染めています……


2、避難民を救え

わっと逃げてくる避難民。

 

それをみたジュリオさんが抜剣。疾風のように躍り出る。

 

フリッツさんが、指示を飛ばした。

 

「前方で戦闘が行われている! 避難民を救助しつつ、敵を排除する! ソフィー、広域制圧! モニカ、オスカー、ハロル、それを支援! 敵の正体は分からないが、一刻を争う! 獣人族は目耳を生かして周囲に散った避難民を探せ! コルネリアはサポートに徹しろ」

 

「ヤー!」

 

すぐに全員が動く。

 

というか。雨の中でも分かる。

 

これは死体の臭いだ。

 

どっと逃れてきた避難民達を、獣人族の戦士達が庇い、状態を確認していく中。

 

あたしは魔術で光を空中に飛ばし、炸裂させた。

 

辺りが明るく照らされる。

 

見えてきたのは、ばらばら逃げてくる避難民と。

 

明らかに命が無いのに動いている連中。

 

フラムを取り出すと、片っ端から敵の密度が高い地点に放り込む。

 

味方に当てないように、コントロールがいる。

 

だから下手投げで、だ。

 

この場合、広域制圧用のうに袋ことクラスターフラムは使わない方が良いだろう。

 

数発のフラムを放り投げ、敵の数を削った頃には。

 

既に味方が敵前線と接触している。

 

かなり急いで来たから、皆疲弊はあるが。

 

それでもそも敵の動きが鈍い。

 

片っ端から斬り伏せ、吹っ飛ばし、叩き潰す。

 

獣人族の戦士の一人が、はぐれたらしい人を見つけて、飛んでいって助ける。

 

あたしは乱戦になって来たのを見て、友愛のペルソナの存在を確認。

 

突撃を開始。

 

最前衛はジュリオさんが、それこそ草でもなぎ倒すように死体の群れを斬り払っているが。

 

かなり前方。

 

敵の包囲が厚い地点がある。

 

何だアレは。

 

避難民の最後衛。

 

負傷した老魔族が、必死になけなしの魔力を振り絞って、敵に魔術の雷を落としているが、効いているようには見えない。

 

敵の進軍を送らせるのが精一杯だ。

 

モニカが躍り出て、老魔族の前に出る。

 

「避難民の護衛の方ですか! キルヘン=ベルから来ました!」

 

「ありがたい! もう一人、敵の包囲に取り残されている! 助けてやってくれ!」

 

「承知っ!」

 

モニカが突っ込んでいく。

 

防御力がそもそも強固だし。

 

この間渡したマイスターミトンと友愛のペルソナで、更に防御が固まっているから、自信がついているのだろう。

 

猪突して。

 

敵を斬り伏せていく。

 

流石モニカだが。

 

ちょっと猪突が過ぎるか。

 

オスカーが、フルスイングしたスコップで、腐った獣人族をくの字にへし折って粉砕しているのを横目に。

 

あたしも突貫。

 

モニカに追いつくべく、突撃する。

 

敵の数は多いが、質はどうって事も無い。

 

匪賊だったらともかく。

 

多少消耗した程度では、こちら側の戦力には及ばない。奇襲した、という事もあるのだろうが。

 

いずれにしても、鈍そうな死体どもだ。

 

迫ってくる奴を、杖で上から唐竹に叩き潰し。

 

腐汁が飛び散る中。

 

後ろから飛びかかってきた獣の死体が、友愛のペルソナの展開した防御魔術にはじき返されて、吹っ飛ばされる。

 

包囲にモニカが突貫する中。

 

あたしは、どうやら護衛らしい人をつり上げている魔族の死体を確認。

 

もう護衛らしい女性の傭兵は、意識も無く、生きているか分からないが。魔族の死体はまだ執拗に締め上げている。

 

「ちょっと……」

 

敵の膝辺りを蹴って跳躍。

 

そして、杖をフルスイング。

 

魔術で強化しているのだ。

 

本来の魔族だったら、防御魔術で弾いたかも知れないが。

 

今の此奴はただのデカイ死体だ。

 

「しつこいよっ!」

 

一撃が、魔族の死体の首を吹っ飛ばす。

 

それでもまだ動こうとするが、背中の辺りにクラフトを放り、防御魔術を展開。

 

爆圧が死体を張り倒し。

 

着地したあたしの前で、魔族の死体が前のめりに倒れ始める。

 

加速し、そのまま地面に落ちた傭兵らしい女性を抱え、飛ぶ。

 

あたしが飛び退くと同時に。

 

死体が地面に激突。

 

雨の中。

 

泥水を盛大にはじき飛ばした。

 

意識が無い女性は、首の辺りに痛々しい締め跡が痣になって残っているけれど。まだ心臓は動いている。

 

呻きながら掴みかかってきた死体を、見もせずに魔術砲で消し飛ばすと。

 

あたしはモニカに呼びかけた。

 

いつの間にか周囲は掃討戦に切り替わっており。

 

片っ端から皆で死体を駆逐。

 

包囲網を粉砕するのには、ジュリオさんも加わっていた。

 

これは、もう大丈夫かな。

 

雨に濡れて泥だらけで酷い有様だが。

 

とにかく、次は手当を考えなければならない。

 

後、避難民の様子がおかしい。

 

どう見ても栄養が足りていない。

 

包囲網を構築していた死体を、片っ端からなぎ倒していたジュリオさんが、手を上げて呼びかけてくる。

 

どうやら生存者を確認したらしい。

 

殺された避難民はいない様子だ。

 

どうにか間に合ったのと。

 

この人と、あの老魔族が、体を張って頑張った成果だろう。

 

というか、護衛が二人だけというのはどういうことか。

 

早馬が来る訳である。

 

いくら何でも、これは酷すぎると、誰かが考えたのだろう。

 

隣街は錬金術師がいない。

 

余裕が無いし、こんな人数は受け入れられない。

 

それは分かっているとしても。

 

それでも我慢できなかった。

 

そういうことなのだろうと、あたしは判断した。

 

雨が激しくなってくる。

 

あたしが傭兵の女性をお姫様抱っこして、後方のフリッツさんの所に運んでいくと。既に其処では、周囲を警戒しながら、負傷者の手当を開始していた。

 

老魔族が、避難民を数えて、脱落者がいない事を確認している。

 

モニカとジュリオさんが、死者の群れに包囲されて、食い殺される寸前だった子供達の手を引いたり背負ったりして連れてきたが。

 

いずれもガリガリに痩せていて。

 

悲鳴さえ上げる事が出来ないほど憔悴しきっていた。

 

これが荒野の世界の現実だと分かっていても。

 

流石に私もやりきれない。

 

モニカが傭兵の女性を診察。

 

神聖魔術で回復を始める。

 

こういうときは、誰にも分かり易いように、状況だけを口にし。

 

更に指示も簡潔にする。

 

神聖魔術の使い手であるモニカは、怪我を治すための訓練を受けている。

 

魔族には苦手な分野の魔術を使えるので、ある意味彼女はエリートであり。重宝される人材でもある。

 

キルヘン=ベルで大事にされるのも当然だ。

 

「首の骨よし。 意識なし。 肩の傷深い。 コルネリアさん、山師の薬セットで」

 

「此方です」

 

「ソフィー」

 

「はい」

 

すぐに彼女の軽鎧を脱がすと、服もびりびりと引き裂く。

 

血だらけで色気どころじゃあない。

 

矢を受け。

 

無理矢理引き抜いたのだろう。

 

肩の傷が凄まじい。

 

出血に加えてこの雨だ。

 

今はあたしが魔術で傘を展開しているが。

 

そのままだと、傷が腐った可能性も高い。

 

それだけじゃあない。

 

全身治りきっていない傷だらけ。

 

つまり、前の街に来るまでの間も。

 

かなり劣悪な環境で、護衛を続けた、という事だろう。

 

傷薬を塗り混む。

 

あたしの薬も、45点をプラフタに貰えるようになっていた。傷が溶けるように消えていく。

 

全身に薬を塗り込みつつ。

 

モニカの魔術で回復を促す。

 

周囲の確認と、掃討作戦を終えたフリッツさんと、獣人族達が戻ってきて。タレントさんが、食糧をちょっとだけ積んだ荷車を引いていた。

 

どうやら、隣街が。

 

申し訳程度に持たせた食糧らしかった。

 

肩の傷に消毒した包帯を巻き。

 

更に首の辺りに念入りに回復魔術を掛け。

 

心臓も確認。

 

呼吸も。

 

「バイタル微弱。 戦闘は避けるのが無難」

 

「傘の魔術を展開続行。 空いた荷車に乗せて」

 

「ヤー」

 

会話は最小限に。

 

出来るだけ傭兵の態勢を崩さないように、魔術で浮揚げ。更に下に担架を入れて。

 

荷車に乗せる。

 

熱が奪われるのを避ける為に。

 

積んで来た布をかぶせて、とりあえずは大丈夫。

 

本当は他の避難民もかなり酷い状態で。死体に傷つけられている人もいるのだが。可哀想だが歩いてもらうしかない。

 

荷車に積んできた食糧を供給。

 

雨が酷くなる中。

 

あたしは魔力をつぎ込んで、傘の魔術を更に広くする。額の汗を拭う。流石に少しばかり疲れた。

 

フリッツさんが戻ってくる。

 

老魔族も一緒だ。

 

「彼女は助かりそうか」

 

「どうにか」

 

「そうか。 流石は錬金術の薬だ。 普通の薬だったらどうにもならなかっただろう」

 

「……当面は安静ですけれどね」

 

フリッツさんが、状況見聞を終えたという。

 

それによると、どうやら最初に匪賊が襲撃を仕掛けて来た所に、ノーライフキングの配下らしい死体の軍勢が襲来。

 

匪賊と交戦していた傭兵の女性と老魔族もろとも、避難民を襲ったそうである。

 

なるほど。

 

この傷、死体どもにつけられたにしては、おかしいと思った。

 

「傭兵にしては珍しい。 こんな危険な上に実入りも少ない仕事を良く引き受けたものだな」

 

「彼女、レオンは責任感が強くてな。 軍や他の傭兵が仕事を優先に、何より命が危ないのを察して今回の任務を放棄する中、最後まで残った。 今回も、殿軍になって、包囲されていた子供達を助けようとまでした」

 

シェムハザと名乗る老魔族がそう言う。

 

見たところ160歳は超えているだろう魔族だ。

 

もう衰えも酷いだろうに。

 

それでもこんな無茶な仕事に残ったという事は、それだけ彼も責任感が強かったのか、それとも死に場所を探していたのか。

 

それにしてもレオン。

 

名前からして男性名だ。

 

となると偽名の可能性が高いが。何か事情でもあるのかも知れない。

 

モニカが来る。

 

深手を負った者は、大体処置を終えたという。

 

食事もこの場の全員が終えた。

 

ならばもうこの場に用は無い。

 

一つ分かったことがある。

 

ノーライフキングは駆除しなければならない。

 

今回の件も、恐らく人間がたくさん来て、配下を増やせると判断したから襲撃に踏み切ったのだろう。

 

おばあちゃんに封印されたけれど。

 

反省なんてする筈も無く、まだ外に出て暴れる気満々と言う事だ。

 

良いだろう。

 

これだけの事をしでかしたのだ。

 

必ずブッ潰す。

 

元人間だろうが関係無い。

 

もう死んでいるのだから、絶対に魂まで残さず消滅させてくれる。

 

敵の掃討を確認していたタレントさんが戻ってきた。

 

彼女はマイスターミトンと友愛のペルソナの性能をもの凄く喜んでくれていて、個人的にも嬉しかったが。それはそれとして、折れた槍を差し出してくる。

 

「獣の死体に突き刺さっていた。 多分彼女のものだろう」

 

「分かりました。 後で渡しておきます」

 

「頼むぞ。 尊敬すべき相手には敬意を払うべきだからな。 ロジーに言って直せるか聞いておくか。 かなりの上物の様子だし、直れば嬉しいだろう」

 

あたしも同感だ。

 

無数の腐った死体が散らばる荒野から、フリッツさんの号令で離れる。

 

さて、ここからが大変だ。

 

まだ三日ほど。

 

キルヘン=ベルまでは掛かるのだから。

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