暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、暗影

細かくきざんだ古い食材を、中和剤と一緒に釜で煮込む。

 

中和剤は蒸留水から造り。

 

釜で煮込みながら、中和剤を途中で何度か足す。

 

栄養としては充分だが。

 

人間が口にするには厳しい。

 

異臭がするほど酷くはないが。

 

直接触るのもあまり好ましくない。

 

雑音が聞こえる。

 

抵抗は感じない。

 

しばらくした所で、釜から降ろし。

 

おばあちゃんが残したレシピを見ながら、薬草を加える。薬草と言っても、傷を治すものではなくて。肥料の栄養分を高めるものだ。

 

そして混ぜる。

 

温める際も、温度は人肌程度に保ったが。

 

混ぜる時も、冷ましすぎないように、あたしが書いた魔法陣の上で行う。混ぜている間、変質していくが。

 

抵抗は殆ど無く。

 

流れるように、変質は進んでいった。

 

やがてガスが出始めるので。

 

窓を開けて、外に出す。

 

あまり良い匂いがするガスではない。

 

「此処から発酵させます」

 

「うん」

 

プラフタが言う通り、今度はまた熱を上げて。

 

先に作っておいた、ゼラチンを加える。

 

このゼラチンには、事前に土を入れていて。

 

土の中に本来ある、栄養となる要素が加えてある。

 

コレを混ぜ。

 

一気に発酵を進めるのだ。

 

なお途中でプラフタに説明を受けたが。

 

有益な場合は発酵。

 

有害な場合は腐敗で。

 

本来二つは同じものだそうだ。

 

チーズなどは発酵。動物などが死んで腐るのは腐敗、というわけである。

 

臭いがかなり出るが。

 

並行作業で、どんどん順番に作業を進めていく。

 

徹夜の類はしない。

 

ここしばらく、ネームドとの戦闘もあったし。街道を散々歩き回った。体にダメージが結構来ている。

 

無理をせず、眠れるタイミングで休む。

 

発酵を進めた液体を。

 

今度は固形化する。

 

こうすることによって、肥料として使いやすくするそうである。

 

一連の作業では、殆ど抵抗は感じず。

 

最終的に出来上がったキューブ状の肥料に対して。プラフタは51点をくれた。最初に作ったので51点なら、まずまずだろう。

 

第二陣をモニカが運んできた頃には。キューブ状の肥料が充分に出来ていた。

 

「見た事がない肥料ね」

 

「細かくきざんで、地面に撒くだけで大丈夫だよ。 出来れば埋めた方が良いかな。 ただ、運ぶ際は風雨にさらさないで」

 

「分かったわ。 すぐに運ぶわね」

 

「よろしく」

 

東の街の自警団と一緒に、モニカが完成品を運び出していく。

 

窓は開きっぱなし。

 

家の中に、臭いが籠もるからだ。

 

アトリエの中を見た自警団の面々は、不思議そうに色々な道具を見ていたが。手を止めるなと指揮官をしているらしい中年の獣人族に言われて、すぐに動く。彼は咳払いすると、頭を下げた。

 

「部下が無礼をした」

 

「いいえ。 本当はみんな錬金術を使えれば、こんな面倒はないんですけれどね」

 

「そう、だな……」

 

「肥料、きちんと活用してください」

 

頷くと、指揮官らしい獣人族の戦士は、モニカに従って荷物を運んでいく。

 

さて、釜の様子は問題ない。

 

少し休むか。

 

ぼんやりと休憩を取っていると。

 

いつの間にか夜に。

 

良い感じに仕上がっているので、すぐに釜の中身を火から下ろす。しばらくこの作業が続くだろう。

 

出来れば薬や爆弾も作りたいが。

 

東の街が、血を出すような思いで放出した物資だ。

 

まずはこれを仕上げるのが先である。

 

しばし作業をしていると。

 

プラフタが言う。

 

「何か言いたいことがあるのですか、ソフィー」

 

「少し前から思ってたんだけれどさ、プラフタ」

 

「何ですか」

 

「ネームドが明らかにキルヘン=ベルに集まって来てるよね。 あれ、偶然じゃないでしょ」

 

黙り込むプラフタ。

 

最初あたしは、何かしらの人的要因では無いかと思っていた。

 

だが、どうにもそうとは思いがたい。

 

例えば深淵の者などが暗躍しているケースも想定したが。

 

本当にそれだけだろうか。勿論深淵の者が悪さをしている可能性も高いが。それだけではないように思えてきたのである。

 

気になるのは。

 

プラフタの時代に比べて、今の時代の方が、人間は遙かにまとまっている。

 

錬金術師の質も上がっている。

 

邪神も討伐され、余程タチが悪い奴以外は数も減っている。

 

ドラゴンも、討伐は相応にされていると聞く。

 

それなのに、人口は増えていると聞かない。

 

それが一番不可解だ。

 

「ひょっとしてだけれど。 ネームドが強くなったのって、邪神が討伐されたのが原因だったりして」

 

「どういう意味です」

 

「あくまで仮説なんだけれど。 誰かが、それも人間より上位の存在か何かが、人間の数を保とうとしているんじゃないかってね」

 

「……」

 

プラフタは無言だ。

 

あたしは更に続ける。

 

「ずっと昔は、更に過酷だったらしいけれど、それでも人の数は減っていなかったし、繁栄している都市もあったんでしょう? それはやはりおかしいよ。 この間も、高位のドラゴンに街が幾つか滅ぼされる事件があったし、人間を間引こうとする意思が何処かで働いているんじゃないのかな」

 

「それは、私も想像したことがありませんでした」

 

「想像したことも無い」

 

「?」

 

意外だ。

 

あたしが思いつく程度の事だ。

 

どうしてプラフタが思いついていない。

 

安易に深淵の者のせいだとは思えないし、考えにくい。

 

だとすると。

 

凄く嫌な予感がする。

 

ひょっとしてこの世界は、もっともっと巨大な何かタチが悪いものの掌の上にあるのではないのか。

 

作業に戻る。

 

あたしも錬金術には慣れてきたが、慣れれば慣れるほど、この神秘の御技が、繊細で神経質だと悟ることになる。

 

そして、技量がつけばつくほど。

 

雑音も酷くなる。

 

外に出て、空気を吸う。

 

そして、唐突に、側にあった岩を魔術砲撃で吹き飛ばしていた。

 

「黙れ……」

 

聞こえる雑音は止まない。

 

あたしは、力を増すに比例して。

 

どんどん病んできている。

 

自覚はあるが。

 

どうにもならなかった。

 

 

 

(続)




加速度的に強くなると同時に、加速度的に病んでいくソフィー。

世界のあり方は、特異点を放置してくれるほど優しくは無いのです。

ソフィーもそれを自覚していますが。

既に手遅れです。
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