暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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3、燃える燎原

乾ききった大地を。

 

巨大な陸魚、イサナシウスが驀進する。

 

巨体からは考えられないほどの速度だが。

 

それでも遅い。

 

ただし、動く山のような巨体である事に代わりは無いし。

 

その戦闘力も、公認錬金術師がもてあました程のものだ。

 

イサナシウスは、一瞬だけ此方を見たが。

 

人数が多い方に襲いかかって、先に空腹を満たそうと考えたのだろう。前進する速度を上げただけだった。

 

そろそろだな。

 

ホルストさんが右手を挙げ。

 

そして、降り下ろした。

 

起爆。

 

イサナシウスの頭から胸の辺りに掛けての地面が、一斉に爆発した。

 

フラムを仕込んでおいたのである。

 

大量のフラムが、逃げ場のない爆圧を、上にいるイサナシウスに叩き付けたのである。流石の巨体も、うめき声を上げる。

 

だが、煙を上げながら、イサナシウスは進み続ける。

 

陣地の方からは、攻撃魔術が敵に炸裂し続けているが。まるで効いている様子がない。まあ当然か。

 

「火炎系用意!」

 

ホルストさんが声を張り上げ。

 

エリーゼさんを一とする、火炎系を得意とする術者が前に出る。

 

その中には。

 

以前難民と共に奮戦し。

 

その後キルヘン=ベルに居着いたシェムハザさんの姿もあった。

 

「ファイエル!」

 

合図と同時に、噴き上がるような炎が、イサナシウスの身を包む。文字通り、全身を燃え上がらせるような凄まじい炎だが。

 

喚声は上がらず。

 

むしろ恐怖の声がそれに取って代わる。

 

イサナシウスが五月蠅いとばかりに身をよじったら。

 

その凄まじい魔力が、炎をはじき飛ばしてしまったからである。

 

雄叫びを上げるイサナシウス。

 

巨大に成長した陸魚の雄叫びは、文字通り爆風となって辺りを蹴散らす。

 

その凄まじい火力については聞いていたが。

 

右に回り込んでいるあたしも、思わず吹っ飛ばされそうになったほどだ。

 

当然、陣地は一瞬で吹っ飛ぶ。

 

だが、今度は愕然としたのは、イサナシウスの方だ。

 

陣地には、誰もいなかったのだから。

 

最初から、あの火炎術は。

 

目くらましだ。

 

体の左側についている傷に。

 

あたしがオリフラムをねじ込んだのは、その瞬間だった。

 

火炎術を振り払ったイサナシウスは、次の攻撃に備えて、前に魔力を集中していた。というか、防御よりも攻撃の意図もあったのだろう。

 

それが命取りだ。

 

起爆。

 

体内に直接獄炎をぶち込まれたイサナシウスが。

 

絶叫。

 

半身を起こして、地面に叩き付ける。

 

強烈な揺れが来る。

 

その時には、体の左側に。

 

ホルストさん率いる本体が回り込み、矢を射掛け、魔術を叩き混んでいた。さっきの目くらましと違い、本気での攻撃である。

 

更に左側に回り込んでいたあたし達も。

 

総攻撃を開始する。

 

「傷を集中的に狙え!」

 

フリッツさんが先陣を切り。

 

敵の左側を走りながら、滅茶苦茶に斬り付ける。更にそれに続いてジュリオさんとモニカが剣を振るう。

 

後ろに回り込んだレオンさんが槍で何度も傷口を抉り。

 

オスカーが跳躍して、傷ついているひれに上空からスコップで一撃を叩き混んだ。

 

ハロルさんは距離を取って淡々と長身銃での狙撃を加え続け。

 

あたしはその間に。

 

拡張肉体に指示。

 

上空に躍り上がる。

 

イサナシウスは、流石に耐えかねたのか、体を緩慢に左右に振るっているが。その度に味方は機敏に動き、攻撃の直撃を防いでいる。

 

奴が本気になったら、周囲全てを薙ぎ払うような攻撃をして来かねない。

 

その前に、一気に動きを止める。

 

レヘルンを投下。

 

イサナシウスは陸魚だ。

 

この陸魚という種族。

 

息をするための呼吸穴が、体の上部についている。

 

その位置を特定するために上に上がったのだが。

 

此奴も例外では無かった様子で。

 

もろに呼吸穴に、レヘルンを放り込むことに成功。

 

起爆した。

 

今までに無い、苦痛の悲鳴を上げるイサナシウス。

 

悲鳴を上げて、転がり周り始める。

 

離れろ。

 

ホルストさんが叫び。

 

皆が慌てて距離を取る。

 

コルちゃんが手を振っているのが見えた。此方だ、というのである。

 

奴は左側に転がってきているが。

 

それはオリフラムを叩きこんでやったのが、相当痛かったからだろう。

 

全員が走り。

 

コルちゃんが準備していた線を超える。

 

同時にあたしが。

 

多数埋めていたオリフラムを。

 

上をイサナシウスが通過したタイミングを見計らって。

 

起爆した。

 

文字通り、灼熱の槍に全身を貫かれたイサナシウスは、その場で跳び上がった。

 

巨体が跳び上がる様は凄まじかったが。

 

それ以上に、周囲に拡散した悲鳴がとんでも無かった。

 

流石に耳を押さえ、蹲る者達。

 

無差別に暴れまくりながら悲鳴を上げる。

 

それだけで、此処まで破壊的なダメージを周囲に与える事が出来るのか。

 

左側に回り込んでいたホルストさん達の方も駄目だ。

 

とても動ける状態じゃあない。

 

イサナシウスが此方を見る。

 

奴はなんと呼吸穴を無理矢理吹き飛ばした。

 

大量の鮮血を噴き上げながら、奴は身をよじる。凄まじい憎悪の目が、上空にいるあたしを貫く。ふんと、あたしは鼻を鳴らしていた。

 

幕引きと行くか。

 

イサナシウスが、大きく息を吸い込み始める。

 

なるほど、一点にあの音を収束し。

 

文字通り音の砲として、あたしを貫くつもりか。

 

直撃したら、魔術防御なんて文字通り紙も同然に貫かれるだろう。

 

あたしは、そのまま拡張肉体に指示。

 

急降下に移る。

 

それを挑戦と受け取ったのか。

 

イサナシウスが、更に更に息を吸い込んでいく。

 

だが、その時動く者がいる。

 

ジュリオさんだ。

 

奴の目に向けて、斬撃を放つ。

 

衝撃波を放つ技のようだが。

 

それでも、あたしに集中し。

 

全力投球の体勢に入っていたイサナシウスの注意を、一瞬でもそらすことには成功。

 

更にフリッツさんが出る。

 

体を持ち上げている奴の顎の下を通りながら、数発の斬撃を叩き混む。

 

鮮血がしぶいた。

 

それだけ凄まじい大きさの傷が出来ていて。

 

裂帛の一撃が。その傷を拡げたという事だ。

 

そして、その時には。

 

あたしは、奴の至近に。

 

砲撃の準備完了。

 

三つある拡張肉体も全て、である。

 

如何に強力な魔力で武装していても。

 

これだけ傷を受けた状態で。

 

しかも至近距離。

 

それも守りようがない目だったらどうだ。

 

目に魔術砲撃をゼロ距離射撃。

 

文字通り、目をぶち抜いて奴の体内に叩き混まれた灼熱の槍が。乱反射しながら、イサナシウスの全身を滅茶苦茶に内側から砕く。

 

更に止めとばかりに。

 

立ち上がったコルちゃんが、あたしの真似をして。

 

奴の呼吸穴に、レヘルンを放りこみ、起爆。

 

それでももがき、暴れるイサナシウスを。

 

見苦しいとばかりに。

 

立ち上がったモニカが、オスカーと息を合わせて、上空から稲妻のような一撃。まだ残っていたもう一つの目を、破裂させていた。

 

更にハロルさんが、大きな傷口に一発を入れ。

 

それに合わせて、完璧なタイミングでレオンさんが槍を叩きこむ。

 

あたしが着地した時。

 

動く山としか言いようが無い巨体は。

 

完全に停止していた。

 

あたしも呼吸を整える。

 

全力での砲撃だったのだ。

 

これで形態変化でもされたら、流石に手に負えない。

 

だが、それは幸いにも、杞憂に終わった。

 

「離れなさい!」

 

ホルストさんが叫ぶ。

 

皆が、慌てて距離を取る中。

 

モニカがあたしを抱えると、その場を急いで逃れる。

 

何となく理由は分かったけれど。

 

流石に全力での砲撃の直後。

 

更に、魔力を使い果たして、意識が混濁している状態だったので、身動きができなかった。

 

イサナシウスの体を覆っていた魔力が。

 

収束していくのが見えた。

 

なるほど、最期まではた迷惑な動物だ。

 

そう思うあたしの前で。

 

閃光が炸裂していた。

 

 

 

目が覚めると。

 

傷の手当てをしている所だった。

 

念のために持ち込んだ傷薬は完全に枯渇。

 

爆弾類も今回の戦いで使い切った。

 

しばらく補充のために引きこもりで錬金術をしなければならないだろう。

 

幸いにもと言うべきか。

 

少し遅れて到着した、東の街の自警団が。

 

周囲を警備してくれている。

 

これくらいはさせてくれ、というわけだ。

 

あたしは身を起こそうとして失敗。

 

モニカも頭に包帯を巻いているが。

 

それでも、あたしを無理矢理寝かせた。

 

「今は寝ていなさい」

 

「素材回収したいな……」

 

「回収はしたわ」

 

モニカが視線で指したのは。

 

前にデビルホーンから取れたもの。それに酷似した球体。いわゆる深核だ。

 

ただ色合いがずっと濃く。

 

更に大きい。

 

なるほど、自爆しても、これだけは残ったのか。まああの爆発では、肉も骨も残らなかっただろう。

 

ひょっとすると、だが。

 

既にイサナシウスは動物と言うには無理のある存在になってしまったが故に。全身に強烈な魔力が染み渡っており。

 

爆発したのは、それが故かも知れない。

 

生物としての生命が終わり。

 

行き場のなくなった魔力が、宿っていた肉を巻き添えにしながら、爆発した。

 

そういう事なのだろう。

 

ミゲルさんと。

 

手を吊っているホルストさんが話している。

 

「帰り道の護衛は任せていただきたい。 今まで散々世話になったのだ。 それくらいはさせて欲しい」

 

「分かりました。 物資も使い果たしてしまいましたし、お願いします」

 

敬礼をかわす二人。

 

ミゲルさんは此方に来ると。

 

あたしにも敬礼した。

 

「公認錬金術師でもどうにもできなかった化け物を倒すとは、流石です。 これからも貴方には可能な限り協力させていただきたく」

 

「いえ。 ……今回は、相手の疲弊にも助けられました」

 

「聞いています。 何でも、戦う前から傷ついていたとか」

 

「理由に心当たりはありませんか?」

 

移動開始の声が上がった。

 

重傷者は持ち込まれていた荷車などに乗せられる。

 

あたしも荷車に運び込まれ。

 

まだ意識が戻っていないコルちゃんが、隣に乗せられるのを見ながら、ミゲルさんと話す。

 

ミゲルさんによると、ついさっき、情報が届いたという。

 

東の街を訪れた商人によるもので。

 

少し前に、北東の方で戦いの音がしたそうである。

 

ただしそれはあまり大きな音ではなく。

 

殆ど一瞬だった、ということだ。

 

それも、イサナシウスの悲鳴も聞いていないという。

 

つまり、だ。

 

イサナシウスをあたしが戦う前に傷つけた奴は。

 

文字通り手加減状態で。

 

あの巨怪に、あれだけの傷を与えた、という事なのだろう。

 

文字通り今のあたしとは次元が違うというわけだ。

 

勿論イサナシウスは充分な継戦能力を持っていた訳だが、それはそれ。

 

奴に傷を付けた連中と戦ったら、キルヘン=ベルの総力など、それこそ赤子の手を捻るように蹴散らされてしまっただろう。

 

坂道にさしかかる。

 

だから見えた。

 

イサナシウスの爆発痕。

 

クレーターになっている。確かにアレに巻き込まれたら、ひとたまりもなかっただろう。負傷者だけで済んで良かった、としか言いようが無い。

 

今後も、奴と同レベルのネームドと戦う場合。

 

凄まじい爆発が発生することを、想定しなければならないのか。

 

厄介だなとぼやく。

 

ミゲルさんは、それには気付かなかった。

 

「イサナシウスが倒れたことで、この近辺での要注意ネームドはノーライフキングだけになりましたな」

 

「……いえ。 気を付けた方が良いかも知れません」

 

「ふむ、お聞かせください」

 

「イサナシウスは、ひょっとすると行きがけの駄賃に、東の街を蹂躙するつもりだったのかも知れない、という事です」

 

流石に絶句するミゲルさん。

 

恐らくは深淵の者だろうが、狙いが分からない。

 

奴の移動経路。

 

そして戦闘音が聞こえた場所。

 

何より奴の体の左にばかり傷がついていたこと。

 

それらを考えると。

 

西進していた奴は。

 

恐らく東の街も蹂躙し。そのまままっすぐ西に進んで、キルヘン=ベルを狙うつもりだった筈だ。

 

ロックがそうであったように。

 

ネームドはどうも、急激に発展した近隣の街を襲撃する性質があるようだから、である。

 

だがイサナシウスは、東の街を避けた。

 

あらゆる状況証拠が。

 

何者かの介入を告げているのだ。

 

「今後も備えは可能な限り強固に願います」

 

「分かりました。 ソフィー殿、今後もご武運を」

 

モニカが険しい目で見ていたこともあるのだろう。

 

ミゲルさんは会話を打ち切り。後は護衛任務に集中した。

 

キルヘン=ベルに戻ると。

 

本格的な治療を開始する。

 

残っていた薬も全放出。

 

そしてあたしも、傷を治すと。すぐに薬と爆弾の補充に取りかかった。

 

文字通りの総力戦だったが。

 

思った以上に、キルヘン=ベル自警団と、あたしの連携は上手く行った。

 

だが、それ以上に不安なのは。

 

深淵の者か何か分からないが。

 

今回の件に介入して、何の得があったのか、良く分からないと言うことだ。

 

薬がある程度出来たので、すぐにモニカに持っていって貰う。

 

小刻みに眠って休憩を取りながら。

 

薬を造り。

 

また眠る。

 

その過程で、嫌でも反復して同じ作業をする事になり。

 

熟練もする。

 

一週間ほどで状況は落ち着き。

 

ようやく、アトリエから出られるようになった。

 

その頃には遠征に出たメンバーも、錬金術の薬で皆動けるようになっており。キルヘン=ベルはようやく日常を取り戻してもいた。

 

だが、あたしは本当にそうなのか、疑問が残って仕方が無い。

 

今回の件も、イサナシウスを撃退出来たのは、最初にダメージがあったからだ。東の街が蹂躙されていたら、こうも撃退を喜ぶ事も出来なかっただろう。

 

何が起きている。

 

この世界の仕組みは、やはりおかしくはないのか。

 

ぼんやりと空を見つめていると。

 

プラフタが来る。

 

「ソフィー。 まだ無理は禁物ですよ」

 

「分かってる」

 

「ならば少し休みなさい」

 

「……そうだね」

 

言われるまま、アトリエに入る。

 

プラフタは、今回の件についてどう思っているのか、聞いてみる。彼女は、ネームドを撃退し、死者が出ず、街も無事に済んだ。それだけで良いではないかと、ありきたりな感想を述べる。

 

確かにそうかも知れないが。

 

あたしはもっと広い視野で周囲を見たい。

 

錬金術師としては超有能なプラフタだが。

 

どうもその辺りの。

 

戦略級の視野については、欠けているように思えてならないのだ。

 

ともあれ、短期的な視野については、プラフタが言う事が正しい。寝床に横になると、あたしは黙々とレシピを書き始めた。

 

「何ですか、それは」

 

「移動が楽になる靴だよ」

 

「移動の負担を軽減する道具であれば、幾つかありますが。 靴をどう工夫するつもりです」

 

「ただ靴を軽くするだけだと意味がないんだよねえ」

 

その通りですと、プラフタが言う。

 

実は、少し前から色々と試していたのだ。

 

この場合、ゆっくり歩くのではなく。

 

走るのだが。

 

走る場合の負担を減らすには、どうすれば良いか。

 

実際に走るときに、足のどの部分にダメージが行くのか、確認をしていた。

 

ただし、直接グラビ石のかけらなんか埋め込んだら、足の裏の皮にダイレクトなダメージが入ってしまう。

 

靴そのものにグラビ石を仕込もうものなら。

 

走っている間にすっころぶだろう。

 

つまり、走る速度を上げ。

 

なおかつ負担を減らすためには。

 

工夫がいるのである。

 

「それにしても、どうしてそんなものを」

 

「今回の戦いで、皆の展開に問題があると感じてね」

 

まずそもそもだ。

 

東の街からの伝令だって、馬を使っても一日以上掛かる距離だ。東の街をイサナシウスが直撃していたらひとたまりもなかっただろう。せっかく回復に向かっていたところが、完全に粉々にされていたはずだ。

 

味方の対応も同じ。

 

敵の進路を二つに絞ったものの。

 

それも途中から位置を変えたりで、かなりぐだついた。

 

フリッツさんとホルストさんが陣頭指揮を執っていなければ、間に合わなかったかも知れない。

 

今後は、少なくともあたしと一緒に動いてくれるメンバーは。

 

今の倍以上の速度で、移動も展開もこなしたい。

 

そういう話である。

 

それに、展開を早くするのには、もう一つ理由もある。

 

「イサナシウスは、途中で進路を変えられたとは言え、途中から結局キルヘン=ベルを明らかに目指していたよね」

 

「情報を聞く限り、そうでしょうね」

 

「だったら、来るんじゃないのかな」

 

「……!」

 

そう。

 

街が繁栄を極めていくと。

 

どうしても人間の前には姿を見せる奴らがいる。

 

ドラゴンである。

 

北の谷にいるドラゴンは、今のところは大人しい様子だが。それもいつまで静かにしていてくれるかはまったく分からない。

 

恐らくは、その内。

 

そう遠くない時期に、動き出すのでは無いかとみている。

 

イサナシウスは、あの巨体からして、小型のドラゴン並みの戦闘力があったとみて良いだろうが。

 

しかしながら巨体過ぎて鈍重で。

 

イサナシウスがドラゴンとやり合った場合、勝てたとはとても思えない。

 

ドラゴンはあれよりタフネスが劣るとしても。

 

火力と機動力は、それこそ比較にもならないはず。

 

このままでは、ほぼ間違いなく打つ手がない。

 

戦闘時の機動力を更に上げる事が出来れば。

 

それに、戦闘前にも。

 

有利な場所を先に抑えることが出来れば。

 

偵察も、より迅速に行えれば。

 

勝機はより大きくなる。

 

イサナシウス戦ではっきり分かったが。

 

ドラゴンがあれと同等かそれ以上だとすると。

 

今交戦すれば、大きな被害が出る。

 

公認錬金術師でも、手に負える人間はあまり多く無いというのも納得がいく。

 

昔のプラフタだったらともかく。

 

今のあたしには。

 

こうやって、下準備を丁寧にやる以外には。

 

対応策がないのだ。

 

「貴方は、随分と広い視野を持って動いているのですね」

 

「先の先を読んで動くのが基本だよ。 そうしないと死ぬ。 あたしはそれを子供の頃には思い知らされていたからね」

 

「……ソフィー。 私は」

 

「で、どうこのアイデア」

 

言葉を敢えて遮って、レシピを見せる。

 

プラフタは。

 

もう、これ以上は。

 

何も言えないと、判断したようだった。




激戦ではありましたが、既に陸上戦艦でもソフィーの敵ではありませんでした。

力は、歯止めが利かずに伸びつつあります。
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