暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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1、その芸術品は

フリッツさんの所に、プラフタと一緒に出向く。

 

プラフタはフリッツさんを少し苦手としている様子だが。

 

それは我慢して貰う。

 

大事な事だからだ。

 

フリッツさんは、最近仕事が無い日は、ずっとこの作業をしてくれていた。勿論剣技を磨くことは怠っていないが。それでも時間を掛けてやってくれているのだ。

 

それで大体出来た、と言う話なので。

 

見に来たのである。

 

フリッツさんの住んでいる家周辺は、最近人の気配がない。

 

高笑いしながら人形を作っているフリッツさんが怖いらしい。

 

とはいっても、雇われ顔役としてのフリッツさんの武勇と戦場で先陣を切る勇敢さは知れ渡っているので。

 

武人としてのフリッツさんは尊敬されている。

 

敬遠されているのは、普段のフリッツさんだ。

 

この辺り、有能な人材を「欠点があるから」等というアホな理由で切り捨てていたらやっていけないこの過酷な世界の実情が出ている。

 

或いは、昔はそういう風潮があったのかも知れないが。

 

少なくとも今は、ちょっとやそっとの欠点があるくらいで、フリッツさんほどの有能な人材が切り捨てられることは無い。

 

そわそわしている様子のプラフタ。

 

そして、フリッツさんの家に入ると。

 

ひっと、小さな声を漏らした。

 

本で、幽霊みたいなものなのに。

 

そこには、球体関節ではあるものの。

 

あまりにも美麗に完成された人形が横たわっていた。

 

以前レオンさんが作った設計図の通り。

 

服は着せられていないが。

 

あまりにも人体が完璧に再現されていた。

 

プラフタも、何となく分かったのだろう。

 

まずは魂を人形に移す。

 

そしてこの人形が魂の移動先。

 

だからか。

 

彼女は、混乱したようである。

 

「せめて下着くらいは着けてください!」

 

「まだただの人形だ。 私も魂を入れていないよ」

 

「そういう問題ではありません!」

 

というか。

 

すぐ側にレオンさんが作ったらしい綺麗なお洋服があるのに。

 

どうして人形とはいえ、全裸にしているのだろう。

 

細かい調整は見たところ済んでいるようなのだけれども。

 

「ソフィー! 手持ちにある中で最大の破壊力を持つ爆弾を! 今すぐ! この家を吹き飛ばさなければなりません!」

 

「ちょ、落ち着きたまえ!」

 

「プラフタ、大丈夫だって。 フリッツさん、手出したりはしてないでしょ?」

 

「もちろんだ。 私は人形に対して、常に敬意と愛情を持って接している!」

 

自慢げなフリッツさん。

 

なお声が大きすぎるので。

 

周囲の家で、窓とかドアとかが閉まる音がした。

 

「で、どうだねプラフタ。 生前の君に似ているかね」

 

「……。 髪が短いことを除けば……」

 

「ふむ。 では動かしてみようか」

 

フリッツさんが、人形を起こす。

 

あたしも触ってみるが。

 

これは完成度が高い。

 

球体関節で極めて滑らかに動く。

 

手足の関節も全て再現されている。言うまでも無く指も、である。

 

目は、前にプラフタが自己申告したとおり、星の瞳で。極めて自然に瞼が動くようにもなっていた。

 

口周りは、恐らく柔軟な素材を使っているのか。

 

きちんと動くようになっている。

 

メンテナンスのやり方も教えて貰う。

 

何カ所かにねじ止めがあって。

 

それを特定の手段で外すと、体をばらすことが出来る。

 

中身については、かなり複雑に糸が張り巡らされており。

 

中心点には、指定通り、深核を入れるスペースが作ってある。

 

「これが大変でね。 この深核周辺から糸を操作する事により、体を動かす事が出来るように、糸を内側から張り巡らせるのは。 多くの人形を作り上げてきた私でも、苦労させられたよ」

 

「はえー。 凄いですねえ」

 

「何だか、私の裸をずっと他の人に見られていたような気分です……」

 

プラフタの凄い落ち込みっぷりである。

 

いつもの行動を見ている限り。

 

プラフタは恋愛沙汰にまるで興味が無い様子だが。

 

それでも羞恥心は当然ある、ということだろう。

 

まあリアルすぎるほどに再現された自分の体が。

 

ずっといじくり回されていたと思えば。

 

過剰反応もまた、仕方が無いのかもしれないが。

 

「大体完成ですね。 それでは、料金は此方です」

 

「うむ」

 

結構どっさりとお金を渡す。

 

当然の話で。

 

プラフタを移しうる体である。

 

これだけの技術力には、それに見合ったお金を渡すのが当たり前だ。

 

なお構成素材の殆どはあたしが作った。魔術による防御が自動で掛かるようになっており、生半可な人体より遙かに強靱だ。

 

そのまま、毛布でプラフタの体を引き取って。

 

担いで帰る。一緒に作ってもらった服は後で適当に着せれば良い。

 

プラフタは、そわそわとあたしの周囲を飛び回りながら、言う。

 

「ああ、この羞恥心を、どう収めれば良いのか」

 

「プラフタ、意外とウブだね」

 

「そういう問題ではありません! 文字通り何をされているか分からないのですよ!」

 

「見た感じ汚れたりはしていないし、むしろ良い匂いするし、そもそもフリッツさんって人形には心底から愛情を注いでいるから、大丈夫だとは思うけれどなあ」

 

絶句するプラフタだが。

 

とにかくアトリエに戻り。

 

コンテナにプラフタの体を寝かせる。

 

さて。

 

問題は此処からだ。

 

プラフタが移動する先の体は作った。

 

深核に魂を移動させれば、恐らく稼働は可能になるはずだが、まだクリアするべき点が二つほどある。

 

勿論一つは魂の移動だ。

 

これはいっそのこと、プラフタがあの人形に入れば良いような気がしてきたが。

 

そういう簡単な問題ではないだろう。

 

何というか、神経質なプラフタは、コンテナから出ていって欲しいとあたしを追い出すと。

 

自分の(未来の)体をじっくり調べるつもりらしく。

 

閉じこもってしまった。

 

嘆息すると、あたしはもう一つの問題について、どう解決するか頭を悩ませる。

 

そう、もう一つの問題。

 

そもそも、魂とは何だ。

 

それを定着させるには。

 

何をすれば良いのか。

 

魔術によって出来る事であれば、恐らくは簡単なのだろう。

 

理屈さえ分かればどうにかなる。

 

だが、実際問題。

 

霊と呼ばれる連中が、そも言葉すら発する事がなく。

 

あくまで「人間の魂」らしいと言われているだけで。

 

そうだという確証もない現状。

 

魔術で理論を組もうにも。

 

難しいのが現状だ。

 

しばらくして。

 

ジュリオさんがアトリエに訪ねてくる。どうやら、深淵の者の手がかりが掴めたらしく、話を聞いて欲しいと言うのである。

 

彼はこの街では食客だ。

 

しかもフリッツさんのように街で雇っているわけではない。

 

街のために戦ってくれてはいるが。

 

それは彼が此処で深淵の者とのコンタクトを取りたいと考えているから。それにもう一つ理由があるらしいが、それについては聞いていない。

 

だから、深淵の者とコンタクトが取れるのであれば。

 

街の顔役の一人になっているあたしに、相談したいのだろう。

 

「実は、最近キルヘン=ベルに逃れてきた者の中に、深淵の者の手の者が紛れているという話があるんだ」

 

「誰から聞いたんですか、それ」

 

「すまない。 情報源は明かせない」

 

まあそれもそうか。

 

だが、どうにも胡散臭くはある。

 

そもそも、深淵の者は。あたしが想像する限り、多分アダレットとラスティンの深部にまで巣くっている巨大組織だ。

 

わざわざ難民に紛れて、エージェントなんか送り込まなくても。

 

各地に手の者を既に配備し。

 

状況次第では、暗殺なりなんなり平然とやるはずである。

 

アダレットが対応に苦慮しているのは。

 

その闇があまりにも深すぎるからで。

 

深淵の者に接しようとしても。

 

内通者が多すぎて、とてもではないが対抗できないから、なのだろう。

 

テスさんの話はしない。

 

まだ時期尚早だと思うからだ。

 

「あたしの見解を述べさせて貰いますけれど。 深淵の者は、恐らく時期が来れば向こうからアクセスしてくると思います。 あたしに対して、ですけれど」

 

「む、聞かせてくれないか」

 

「深淵の者が邪悪な組織かと言われると、恐らく否であることはジュリオさんも察していると思います。 ここ数百年で、腐敗錬金術師が根こそぎ世界から駆除され、汚職管理や生臭坊主、悪辣な商人や大規模な匪賊。 何より腐敗官吏や王侯貴族。 これらがいなくなったのは、彼らの行動があるから、ではないでしょうかね」

 

「それは恐らくそうだろうとアダレットでも推察している。 だが、彼らはあまりにも力が強すぎる。 彼らが腐敗したときに、このままでは対応が出来なくなる」

 

それについても同感だ。

 

だからこそに、あたしだ。

 

プラフタがいうように、あたしはどうやら錬金術師としての才覚があるらしい。非常に不愉快な話ではあるが。

 

更にあたしは。

 

ここ最近、公認錬金術師でも手に負えなかったネームドを始め、数多くの危険な存在を塵芥に帰してきた。

 

であれば。

 

深淵の者がアクセスをしてきて。

 

そして、スカウトをしてくる可能性は高い。

 

あたしはその話を聞くつもりだ。

 

深淵の者になるつもりは無いが。

 

彼らの性質次第では。

 

協力くらいはしてもいい、と考えている。

 

そう話すと。

 

ジュリオさんは、ぐっと腕組みした。

 

「常に理論的な君らしい。 しかし、それほど強大な組織となると、協力しない相手には死を、となるのでは」

 

「それは心配ありませんよ。 もしも彼らがアクセスしてくるならば、「私は深淵の者の手の者デース」とか挨拶してくるような頭の悪いやり方では無くて、もっと冴えた方法で接してくるはずです」

 

「……」

 

「心配せずに、待っていてください。 その内嫌でも接触する事になりますよ」

 

ジュリオさんは嘆息する。

 

そして、ふと思い出したように言う。

 

「そうだ。 君にはもう一つ話しておこうと思ったことがある」

 

「何でしょうか」

 

「魂について調べていると聞いている。 それならば、専門家に直接尋ねるのが良いのではないのかな」

 

「専門家?」

 

いるのか。

 

腰を上げるあたしに、ジュリオさんは言う。

 

「リッチという存在を知っているかい」

 

「ふむ、聞き覚えがありませんね」

 

「それもそうだろう。 霊に属する存在なのだが、簡単に言うと邪悪な魔術師が、己を死者と化す代わりに、生前の数倍の魔力を得た者だ。 錬金術がどうしても圧倒的な力を得ているこの世界で、どうにかそれに対抗しようと外法に手を染めた魔術師の一派だ」

 

なるほど。要するにノーライフキングの廉価版のようなものか。

 

ノーライフキングは根絶の力で、そのリッチの最上級存在とも呼べる者になった、という事なのだろう。

 

「霊ではあるが、物理攻撃が通じない、というわけでもない。 この辺りでも、いる、と聞いている」

 

「あたしは初耳です」

 

「そもそも人間が立ち寄る場所には姿を見せないからね。 歴戦の傭兵でも知らない事があるくらいだ。 僕も討伐で何度か戦ったが、決して侮れる相手ではなかった一方、ネームドほどの脅威でもない」

 

まあ、魔術オンリーならそうだろう。

 

魔力が数倍になっても知れている。

 

おそらく世界最強の術者でも、中堅所の錬金術師と張り合えない。

 

魔術師と錬金術師では。

 

それほどの力の差があるのだ。

 

あたしも錬金術を本格的に始めてから実感した。

 

ならば、リッチになる事を選んだ連中については、何となくその苦悩が分かる気もする。同情も容赦もしないが。

 

「何処にいます、そいつら」

 

「この近辺だと、ナーセリーと呼ぶ土地の廃墟。 更にその深奥にて姿を見たと言う話がある」

 

「廃墟の深奥ですか?」

 

「ああ。 リッチだと認識は出来ていないようだったが、偵察に出ていた自警団の戦士が、それらしいものを目撃したようだ。 いずれ君に話が回ると思ったから、先回りして話をしに来た」

 

なるほど。

 

確かに知らずに倒してしまうと台無しか。

 

頷くと、礼を言う。

 

ジュリオさんも敬礼を返して、アトリエを出ていった。

 

不安そうにしているプラフタが、コンテナから出てきたが。

 

いつになくそわそわしていた。

 

「まったく、本当に、何をされているか分かりません。 これほど落ち着かないのは、初めてです」

 

「プラフタ、いつになく気が立ってるね」

 

「当然です! 貴方も……」

 

「何?」

 

プラフタが黙り込む。

 

そして、何でもないと、背中を向けた。

 

あたしがブチ切れる寸前にまで行ったことに気付いたからだろう。

 

慰み者にされかけたのは、あたしも同じだ。

 

しかも実の父親および、その仲間の匪賊どもにだ。

 

死ぬ寸前まで暴力を振るわれ。

 

あたしの事を、舌なめずりして見ている匪賊もいた。

 

殺される前に、慰み者にされていてもおかしくなかったし。

 

あのクズは、それを平然と見守っただろう。

 

気まずい空気が流れるが。

 

あたしは咳払いした。

 

闇は、押さえ込め。

 

叩き付ける相手は。

 

敵にするべきだ。

 

はらわたの中で煮えくりかえっている怒りは。

 

どうにか鎮めた。

 

「時にプラフタ。 これからナーセリーの跡地に行くよ」

 

「鉱石なら足りていませんか?」

 

「いや、リッチって霊が目撃されているらしくて。 とっ捕まえに行く」

 

「リッチ、ですか?」

 

プラフタも知らないのか。

 

そうなると、或いはここ数百年で確立された技術なのかも知れない。

 

この世界では、新しい技術が開発されて、それが世界にわっと拡がることはあまりない。神話において、この世界に招かれた人間達が、それぞれ様々な技術を持ち寄ったことが原因だろう、とも言われている。

 

つまり魔術を持ち込んだ魔族が思いつかないようなもので。

 

なおかつ、新しい技術だと推察できるわけだ。

 

「殺すのより捕獲する方が難しいからね。 霊を捕獲する方法、何か思いつかない?」

 

「霊と言っても、魔術はある程度通じますし、強力なものになると物理攻撃も通用しますから。 貴方なら、手加減さえ間違わなければどうにかなるのでは?」

 

「そうかなあ」

 

「既に貴方の錬金術で強化された魔術は、元魔術師がどれだけ背伸びしても届きません」

 

そうか。

 

そう断言されるのなら、やってみるのもありか。

 

念のために、幾つか備えはしておく。

 

そして、カフェに出向くと。

 

丁度ジュリオさんが言っていた、妙な霊の話をされる。

 

勿論討伐は受けるつもりだ。

 

というか、あたしが準備を既に終えている様子を見て、ホルストさんは小首をかしげたようだった。

 

「ネームドほどの力は感じなかったそうですが、たかが霊にどうしたのですか」

 

「いいえ。 少しばかり「インタビュー」をしようと思っていまして」

 

「はあ。 危険な霊を駆除するのであれば何をしても構いませんが、いずれにしても気を付けなさい。 既に相手が格下だとしても、油断だけはしてはいけませんよ」

 

「分かっています」

 

出られそうな面子を見繕う。

 

ジュリオさんとモニカ、オスカーとハロルさんは来てくれる。

 

フリッツさんは東の街との交渉があるとかで、自警団の面子数名、更にハイベルクさんとコルちゃんと一緒にお出かけ。

 

レオンさんは、丁度用事ができたとかで。

 

今回は手伝ってくれないらしい。

 

まあ、これだけの面子がいれば充分だ。

 

先に、手を貸してくれる面子に、キルヘン=ベルの入り口で話をする。

 

「今回は、自分から霊になった上、ある程度知能があると考えられる存在に、やり方を聞くのが目的だよ」

 

「ちょっと待ちなさいソフィー!」

 

モニカが血相を変える。

 

まあ当然だろう。

 

邪悪な霊なんて。それこそ神聖魔術の使い手であり、なおかつ教会に帰依しているモニカにとっては。根絶するべき相手以外の何者でも無い。

 

見張りに立っていたベンさんが、何だ何だと此方を見ているが。

 

気にせずあたしは続ける。

 

「大丈夫、あたしがそうなるつもりはないから。 今回の目的は、どうにもよく分からない「魂」という存在を、自分から霊になったアホに聞きに行くことだから」

 

「どういうことか説明して」

 

「プラフタを人間に段階を分けて戻そうと思ってる」

 

流石に。

 

皆が黙り込む。

 

今回は、その第一段階。

 

まずは本から人形の体に移って貰う。

 

そして、実力がついてきたら。

 

人形を人間に操作して変換する。

 

錬金術の奥義には、いわゆる概念操作と呼ばれるものがあるらしく。

 

人形であるプラフタの体を、そのまま人間へと変えることが可能であるそうだ。

 

これについてはプラフタに聞いたが。

 

ただ、賢者の石を作る以上のハイレベルな錬金術になるらしく。

 

成功例については、見た事がないという。

 

ものの意思に沿ってものを変質させる錬金術の中でも。

 

空間操作や時間操作を超える規模の術になるそうだが。

 

少なくとも、本から人間にするよりも。

 

人形から人間にする方が、数十倍は簡単だという話なので。

 

そうしてもらう。

 

そして、何よりだ。

 

プラフタも、本でいるよりも。

 

人型でいる方が嬉しいだろう。

 

それらの話を終えると。

 

ジュリオさんが、考え込む。

 

「確かにプラフタ殿は元が人間であるのに、本の姿という不便を強いられていた。 それを人間「型」にすれば、ストレスは多少は改善出来るかも知れない」

 

「何だか冒涜的な手段を採りそうで怖いわ」

 

「大丈夫。 どんな手段も使い方次第だから」

 

「……」

 

モニカがげんなりした様子であたしを見るが。

 

最初から話しについて行けていないオスカーは、じっと黙り。

 

ハロルさんは、頭を掻くと、モニカをたしなめた。

 

「いずれにしても、俺たちはソフィーの作ってくれる道具に随分助けられているし、キルヘン=ベル周辺から匪賊もネームドもいなくなったのも、東の街の人間が助かったのも、みんなソフィーのおかげだ。 ソフィーは錬金術の腕も上がってきているし、信用してやるべきだろうな」

 

「……分かったわ。 ただし、理論についてはしっかり聞かせて」

 

「大丈夫だよ。 いずれにしても、リッチの体に聞くつもりだから、モニカも嫌でも耳にする事になる訳だし」

 

「もう……」

 

モニカは心底困ったらしく、眼鏡を直したが。

 

リッチの体に聞く事は止めないのか。

 

まあ邪悪な霊を討伐するのだから、それ自体はモニカとしても歓迎するべき事なのだろう。

 

ともあれ、出陣である。

 

旅人の靴で移動速度が格段に向上した今、行き帰り込みで今日中に終わらせられるだろう。

 

後は一つだけ。

 

油断をしないことだ。

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