暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ 作:dwwyakata@2024
開始。
作戦の実行許可が出た。
あたしと、いつものメンバーが出るのと同時に、旅人の靴を履いた自警団メンバーが四方に展開。
更にノーライフキングに備えて、東の街にも使者を出し。
其方にも備えて貰った。
実際、東の街から出た難民の群れが、ノーライフキング麾下の死人の群れに襲われた事がある。
現在、東の街は活力を取り戻しているし、ノーライフキングは手駒を殆ど失っているが。
大なり小なり襲撃を受ける可能性は否定出来ない。
故に、今回は総力戦だ。
現地到着。
荷車から降り、アトリエに戻る扉を展開。
旅人の道しるべ、と名付けたコレは。
今後も、いざという時の切り札として、絶対に必要になってくるだろう。
乾ききった地面に固定。
その間に、フリッツさんがハロルさんと一緒に偵察に。固定作業を終わらせ、ドアノブの設定を弄る。
半刻が少し長く感じる。
近くにドラゴンがいるのだ。
もし戦いになったら。
最悪の場合、いきなりこれを放棄して逃げなければならない。
冷や汗が流れるが。
ドアは開いた。
かちりと音がして、異世界アトリエにつながる。中では、タレントさんが待っていて、此方に向けて手を振った。
「待っていたぞ。 どうやら展開は完了したようだな」
「最悪の場合は逃げ込みます。 恐らく雑魚が入り込む事は無いとは思いますが、その場合は対応お願いします」
「分かっている。 扉を傷つけないように戦えば良いのだな」
力の強い獣人族のタレントさんだ。
勿論扉には強固な防御魔術が掛かっているが、それでも場合によっては壊れる事だってありうる。
その場合は、一度撤退する事になるだろう。
それも、陸路を走って、だ。
ドラゴン相手の撤退戦だ。
ぞっとしないが。
それ故に、タレントさんの責任は重い。
フリッツさんが戻ってきた。
周囲に敵影は無し。
北の谷は根絶の力に満ちている。
直接入り込むわけには行かない。
既に、全員が無言。
ここから先は、フリッツさんのような歴戦の傭兵でさえ、未知の戦闘だ。なお、ジュリオさんも、ドラゴン退治の経験はないそうである。
事前に、作戦については、いやというほど確認している。
ドラゴンの強みは、圧倒的な防御力にある。
基本的に、既存の魔術はほぼ通用しないと考えて良い。下位のものでも、大幅な軽減は当たり前。上位になると、魔王と呼ばれるクラスの魔族の全力の魔術でさえ、余裕を持って耐え抜くという。
かといって物理的に脆弱という事も無く。
その表皮は、銃弾など通用しない。
大型の銃や、大砲と呼ばれる巨大銃でさえ、その強靱な鱗を貫くことなど出来はしない。
攻撃面も強力だ。
ドラゴンは覇気と呼ばれる強力な魔力を放つことができ。
これはそのまま、周囲を薙ぎ払うほどの火力がある。
種類によっては高出力のブレスを放つが。
この火力も尋常では無く。
高位のものに襲撃されると、人口万を超える街が、短時間で焼け野原になる事があるそうだ。
ネームドにも強力なものがいるが。
ネームドの中でも最強ランクのものが、やっとドラゴンの一番弱いランクと同等、という時点で。
その桁外れの脅威がよく分かる。
つまるところ、攻防ともに完璧に近い怪物で。
此奴を撃破出来る人間が限られるのも当然だ。
だが。
決して倒せない相手では無い。
まず、弱点は口の中。
どれだけ体が頑強でも、口の中はどうしようもない。
これはあらゆる生物に共通しているが。
ドラゴンも同じだ。
また、強固な鱗に関しても。
一度ぶち抜きさえすれば、其処を集中攻撃することで、致命的打撃につなげられる。
更に言えば、知能がないというのも致命的な弱点の一つ。
大体の事は力尽くで突破出来てしまうため。
基本的に罠の類を警戒しない。
ただし、罠など殆ど通用しないのも事実なので。
それは生物として圧倒的に強いから、というが原因であるのだろう。
フリッツさんが咳払いした。
「それでは、プラフタ。 見解を聞かせて欲しい」
「谷にいるドラゴンは、分析の結果、一番弱いドラゴネアである事がはっきりしました」
「おお……」
安堵の声が漏れる。
プラフタによると、ドラゴンの7割を占める最弱種であり。
戦闘力は、この面子でも何とか手に負える範疇だという。
基本的に何種類かいるドラゴンだが。
不思議な事に、海中に住まうものと、高空に住まうものが特に強烈で。
これらは大きさこそドラゴネアと変わらないものの。
姿は環境に沿って大きく異なっており。
また、戦闘力も比較にならないとか。
世界トップクラスの錬金術師と。その錬金術師が作った装備を纏った最強クラスの戦士や魔術師が揃い。
死者を出す覚悟で挑んで、倒せるかどうか、という相手であるらしい。
幸いなことに、今から戦うドラゴネアは、あたし達でもどうにかなるレベルだ。
そして、先にプラフタが挙げた、災厄の権化が如きドラゴンは。
世界にも十数体、というレベルでしか存在せず。
基本的に人間がその姿を見ることもほぼない、ということだった。
いずれにしても、作戦通りに行ける。
フリッツさんが、指示を出す。
全員が所定の位置に展開。
敵は防御力も強大だが。
火力も危険だ。
一気に叩き潰す。
それ以外には無い。
あたしが取り出したのは、うに袋を束ねたもの。クラスタークラフトとも呼ぶこれで、谷全域を徹底的に面制圧する。
根絶の力で、虚しい輝きだけになった谷だ。
ドラゴン以外を巻き込むことは無いだろう。
そして、ドラゴンに此方を無視出来ないと認識させる。
ずっしりと重いそれを。
あたしは紐を付け。
振り回し始める。
本来だったら、遠くに投げるのはかなり厳しいのだが。
今は幾つかの錬金術装備で、身体能力が非常に強化されている。
特に、重いとは感じないし。
投げるのも、苦にはならない。
踏み込む。
そして、弓なりに投げる。
計算は完璧。
谷の奥で、丸まって蹲っているドラゴンが見える。奴の少しだけ上空。谷で爆発が乱反射するように。起爆。
谷が、閃光に包まれた。
凄まじい爆発。
うに袋の火力そのものが上がっている事もあるが。
多分谷が根絶の力に満たされていること。
ドラゴンという強烈な魔力の塊の至近で爆発したこと。
更には、根絶の力で無理矢理作り出された宝石類が、爆破に反応したこともあるのだろう。
文字通りキノコ雲が上がり。
熱い爆風が吹き付けてくる。
だが、それは事前に浴びないように、全員が配置されている。
風が通り抜けるのと同時に。
あたしは、一つ増やして、五つになった拡張肉体に体を持ち上げさせ。
そして上空で砲撃の体勢を取る。
だが、キノコ雲を突き破り。
凄まじい勢いでドラゴンが突撃してくる。
当然飛ぶ事も出来るし。
更に言えば。
全身多少傷ついてはいるが、鱗の一枚も禿げていない。
流石にドラゴンか。
あたしが砲撃の詠唱を終えるよりも、明らかに相手の動きが速い。そして奴の口には、既に殲滅の光が宿り始めていた。
ブレス放出の態勢に入るドラゴン。
だが、その時。
巨大なこぶしが。
ドラゴンの頭上から、叩き込まれていた。
体勢を崩したドラゴンの顔面近くが、爆裂する。
これはオリフラムによるものである。
流石に、落下し始めるドラゴン。
着地したプラフタの左右に、巨大な腕が降りてくる。
彼女のために作った拡張肉体だ。
非力なプラフタを補うように、逞しく、巨大で。空を舞う一対の腕。パワーだけを考えたその破壊力は見ての通り。
そしてオリフラムはコルちゃんによる投擲だ。
落ちたドラゴンが、口を開けて、ブレスを再発射しようとした瞬間、その口に槍が突き刺さる。
完璧なタイミングで、オリフラムを投擲した結果。
レオンさんが待ち伏せていた位置に、ドラゴンが落下したのである。
悲鳴さえ上げられず、それでも飛び退こうとするドラゴンに、フリッツさんとジュリオさんが躍りかかる。
翼を集中的に切り刻まれ。
だが、鬱陶しいとばかりに、覇気を放つドラゴン。
二人が、見事に吹っ飛ぶが。
ジュリオさんをオスカーが。
フリッツさんをモニカの防御魔術が受け止め。
更に、ブレスを吐こうとしても出来ないドラゴンに。
既に着地し。
砲撃準備を整えていたあたしが。
五つの拡張肉体と共に。
全力での砲撃。
六倍の砲撃をぶっ放していた。
それはもはや、砲撃の域を超え。
火力の筒であった。
あたしも、フルパワーでぶっ放したらどうなるかは、正直まだ試していなかったのだが。思わず興奮で身が震えた程だ。
閃光が、擦った谷の一部を瞬時に蒸発させ。
浮き上がろうとしたドラゴンを直撃。
熱でその巨体を押し返し。
更には爆発した。
見えた。
鱗が数枚、吹き飛ぶ。
フリッツさんが手を上げる。
ハロルさんが狙撃。
鱗さえ弾いてしまえば、長身銃でも通る。
傷にモロに入った。
ドラゴンが、横倒しに地面に倒れる。その体からは、鮮血が噴き出しているのが見えた。そして、全員が殺到する。
跳ね起きるドラゴンだが。
プラフタが放った拡張肉体の左腕が、頭に直撃。右腕が尻尾に直撃し。動きをわずかに鈍らせる。
更に二度の撃墜でふらついているドラゴンに。
全員が突貫。
鱗が剥がれている地点を狙って、猛攻を仕掛ける。
特に、最初の一撃で投擲用に準備してきた槍をうち込んだレオンさんは。
二度目の接近戦である今度は、的確に足にある傷を、愛用の槍が半ば潜り込むほどに抉り。
ドラゴンも苦痛の悲鳴を上げる。
フリッツさんが、舞うように連撃。
剥がれ掛けていた鱗を吹き飛ばし。
オスカーの打撃が、鱗が禿げていた肉に、モロに直撃。
更に翼の一枚を、ジュリオさんが叩き落とし。
尻尾の先端を、モニカが斬り伏せた。
だが、ドラゴンは流石だ。
真っ赤な口を開けると。
ひゅうと、何か妙な音がした。
それが超圧縮した呪文詠唱だと気付く間もなく。
周囲を熱風が蹂躙する。
圧縮し、威力を抑えた呪文でこれか。
近接戦を挑んでいた全員が吹き飛ばされる中。
飛び出したのはコルちゃんだ。
敵の死角から飛び込むと。
振るわれた尻尾を、残像を作って回避。
尻尾が半ばから斬り伏せられていた事もあるのだろう。
ともかく至近に行くと。
オリフラムを傷口にねじ込む。
そして、跳び離れると同時に。
あたしも、強化したドナーストーン。
通称ドナークリスタルを起爆していた。
単純にライデン鉱から作り出した雷撃を、更に更に倍増させたものなのだが。
その火力は絶大。
コルちゃんが必死に逃れる背後で。
極大の雷撃が炸裂し。
竿立ちになったドラゴンの体を、オリフラムから放たれた熱の槍が貫く。
それでもまだドラゴンは息がある。
立ち上がったフリッツさんがぼやくのが聞こえた。
「ソフィー! 急げ!」
「分かっています!」
詠唱は最終段階。
立ち上がった接近戦メンバー。
更に、鱗の禿げた場所を直接何度も狙撃してくるハロルさん。
ドラゴンは、目に凄まじい輝きを宿すと。
再び覇気を。
消耗も意に介していない様子で、連続してぶっ放してくる。
なるほど、これは生物の行動じゃあない。
ネームドと同じで。
生きているものなら。こんな行動は余程のことがないとしない。
自分の子孫を守るためとか。
或いは知恵が発達した生物が、プライドを傷つけられたときとか。
そういう場合しかあり得ない。
知能がないドラゴンが、こんな動きを見せるというのは。
やはり、こいつは。
あたしは仮説を確信に変えたが。
それはともあれ。
一気にとどめだ。
これ以上は皆がもたない。
プラフタが放った拳二つを、ドラゴンが咆哮で吹っ飛ばす。
喉奥に槍を叩き込まれているというのに、まだこんな芸当が出来るのか。ブレスを封じていなかったら、どれだけ暴れられたか見当もつかない。まったく、どれだけ迷惑な生物なのか。
だが、覇気を乱射し。
咆哮を無理に放った今の状態こそ。
狙い通りの状況だ。
飛び退こうとするドラゴンを、ハロルさんが連続して狙撃。
目を狙うが。
なんと眼球に弾丸が弾かれる。
更に、ドラゴンは、覇気を連発しつつ。
無理矢理口をもごもごと動かして。
槍を吐き捨てた。
ブレスが来る。
フリッツさんが、全員に下がれと指示。モニカが防御壁を展開しながら、覇気を凌いでいた皆が下がろうとする中。
殲滅の光が、ドラゴンの口に、再び宿り始める。
だが、その時。
あたしが、超長時間を掛けて詠唱した砲撃魔術が。
完成していた。
ドラゴンが気付く。
そして、此方を向く。
ブレスをぶっ放すのと。
あたしの六倍に増幅した、全力の、それも詠唱でガチガチに強化した魔術砲撃が放たれるのは同時。
それは正に、光の竜と。光の殺意の激突。
中間地点で押し合いが始まった瞬間。
他の皆が動く。
フリッツさんが奥義らしい、旋回しながら切りおとす超大がかりな多段剣技を見せ。
モニカが、突貫してから、その剣撃そのものが詠唱になっているらしい連続斬りを叩き込む。
上空で回転したオスカーが、ドラゴンの背中に、渾身の一撃を叩き込むのと並んで。
コルちゃんが、ありったけの爆弾を放り込んで連続爆破したあと、多分何かしらの爆弾で増幅した勢いで。ドラゴンの背中に、渾身の蹴りを連続して叩き込む。
ハロルさんが、特別製らしい弾丸を、最も巨大な傷が出来ている場所に撃ち込み。
レオンさんは、踏み込むと同時に。
心技体が完璧に揃った一突きを。
そしてプラフタは。
拡張肉体を舞わせ。
それそのものを詠唱として。
ドラゴンの全身を拘束。更に爆破。
更にジュリオさんが、剣に宿った魔力を完全解放。連続しての剣撃から上空に躍り上がり、縦一文字に、必殺の一撃を叩き込んだ。
流石にこの怒濤の猛攻を前に、ドラゴンの動きが止まり。
あたしの砲撃が一気に押し返す。
着地したフリッツさんが叫んだ。
「逃げろ! 出来るだけ遠くに!」
わっと皆が散る。
ドラゴンは、必死に踏ん張ろうとするが。
これまでの攻撃が、容赦なくその体力を奪っていた。
そしてあたしは。
静かに呟いた。
「死ね」
砲撃が。
押し切る。
ドラゴンの頭が、白熱に押しきられ。そして、消し飛ぶ。
爆裂。
谷が。
欲によって幾多の命を奪った、根絶の術を使われ。虚しい輝きだけが残る悪夢の土地と化した谷が。
光によって溶け消えていく。
ドラゴンの断末魔が聞こえた気がした。
そんなもの。
聞こえる筈もないのに。
だって、あたしの目の前では。
ブレスの火力も恐らく上乗せしただろう極大火力砲撃によって。
死の谷そのものが。
消し飛ぶ様子が。
今だ続いていたのだから。
手当は皆に任せ。
傷も浅かったあたしは。プラフタと一緒に、ドラゴンの死骸の側に行く。
ドラゴンは常に一定数が世界にいる。
此処で死んだと言うことは。
何処かにまたすぐ沸いているのだろう。
その説が正しければ、の話だが。
ぼんやり見ていると。
プラフタに促された。
「解体を始めましょう。 ドラゴンの体には、何カ所も強力な素材になるものがあります」
「ヤー」
答えにも、あまり元気がない。
あたしもちょっとばかり、今のフルパワー砲撃は疲れた。
魔術師はどれだけ背伸びしても錬金術師には及ばない。
今の砲撃で、それがよく分かった。
魔王クラスと呼ばれる魔族でも、こんな砲撃は無理だ。なにしろ、谷がそのまま消えてしまったのだ。
だが、その方が良かったかも知れない。
虚しい輝きだけがある谷。
根絶の力に汚染され。
もはや未来もない場所。
だったら、根こそぎ切除して。
新しく、誰かが住めるようにする。
それが、良かったのだろう。
まずはドラゴンの尻尾。
これはモニカが切りおとした、先端部分が落ちていた。この先端部分に、魔力が集中しているという。
ドラゴンは戦闘力の反面、体はそこまで極端に巨大では無い。
担いで運んでいくことが出来る。
続いて頭の残骸をプラフタは探していたが。
彼女によると、何でもドラゴンの目は、非常に強力な素材になるらしい。だが、あたしが消し飛ばしてしまったし。何よりあの蒸発した谷だ。
まだ赤熱していて、足を踏み入れるのは躊躇する。
それにあの有様では、もはや何も残ってはいないだろう。
「残念ですが、竜眼は諦めるほか無さそうですね」
「仕方が無いよ。 次行こう」
「そうですね。 私も衰えているとは言え、手加減できる相手ではありませんでしたから、仕方が無いです」
それにしても。
こんなのを、数十体も生前のプラフタは倒したのか。
それも恐らく単身で。
生前のプラフタがどれだけ凄まじい錬金術師だったのか、よく分かる。更に言えば、錬金術は極めれば、其処までの高みに上り詰めることも出来る、という事なのだろう。
皆が手当を終えて。
此方に来る。
協力して解体を開始。
竜の心臓部分を取り出す。
竜核と呼ばれるものらしく。
深核が青黒いのに対し。
黄金に輝いていた。
「これは極めて貴重な素材です。 後でコルネリアに増やして貰いなさい」
「えっ!?」
コルちゃんが、竜核を見て、完全に硬直する。
見る間に顔の血の気が引いていく様子からして。
相当にとんでも無い素材なのだろう。
「が、がが、頑張るのです」
「頼むよ」
コルちゃんが固まっていたが、これは仕方が無い。
コレを使えば、さぞ強力な道具を作り出せるだろう。
それこそ、世界を変えうる道具を。
ただ、今のあたしでは、まだ扱いきれないかも知れない。
そう考えると、増やして貰うのは少し先で。
当面はコンテナで保管か。
使うときにでも増やして貰えば良いだろう。
続けて、ドラゴンの中心部分を切り裂いていたプラフタに呼ばれる。赤い塊。竜の血晶というそうだ。
コレも非常に貴重な素材。
ドラゴンの血は、高密度の魔力を含んでいるらしいのだが。
それが死後、こうやって固まる事があるらしい。
錬金術の深奥に迫る道具は。
これを起点にするらしく。
なるほど。これも確かに極めて貴重な道具だ。
更に、無事だった鱗を回収。
これは文字通り、最高レベルの防具の素材になる。かけらは出回っているが、これほど完璧な状態のものは滅多に見ないはずだ。幾つかをレオンさんに譲る。彼女も、へとへとになっていたが。
傷一つない竜の鱗を幾つも見て、にへらと力がない笑みを浮かべると、その場に腰を抜かしてしまった。
大事そうに鱗を抱えて、もの凄く嬉しそうにほおずりするレオンさん。
「ごめん、ちょっと休ませて……これ凄すぎて、正気保てそうにない……」
「大丈夫なのですか?」
「コルちゃん、ついていてあげて」
そも、ドラゴンのブレスを最初に封じたのはレオンさんだ。そういう意味では、今回の戦闘における本当の意味での一番槍とも言える。
これくらいの報酬は当然だろう。
肉も骨も切り分け。
事前に開けてある異世界アトリエへの扉に、次々と運び込む。
キルヘン=ベルの方でも、戦闘を見ていたタレントさんが既に報告したため、戦勝会を準備してくれているようだ。
ドラゴンはその全身が残らず貴重な素材になる。
血の一滴も無駄にせず回収。
やがて其処には。
骨も残らなかった。
ただ、今回は緊急避難になるわけではないので、帰りそのものは歩くことになる。しばらく休憩をしてから、扉を畳んで帰路につく。
これで、ついに。
キルヘン=ベルから届く範囲にいるドラゴンがいなくなった。
続けてノーライフキングを倒せば。
ついにこの辺りの安全は完全確保したことになる。
猛獣などは勿論まだ出る。
それに、邪神の脅威はある。いつ現れるか分からないし、ナーセリー近辺で見かけたという噂もあるからだ。
しっかり休む。
ドラゴンの肉は幾らか皆で分け合って食べるが。
今まで食べたどんな肉よりも食べ応えがあり。
食べるだけで力が湧いてくるかのようだった。
ふうと溜息が出る。
終わったのだ。
しかし、ドラゴンは発展している街を狙うという話だ。今後も油断は出来ないだろう。
故に、今回の戦いを。
記録し。
記録を生かして撃退出来るようにしなければならないのである。
帰ったらまた少し忙しくなる。
ただ、今は。
帰るまでの少しの間くらいは。
この達成感を、味わいたい。
そう思った。
例え、これから、色々とまだまだ解決しなければならぬ事があるとしても。