暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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魔術師として高い力量を持つソフィーはそうして生きていく事も出来ました。

しかしプラフタと出会った事で、錬金術の。

眠っていた、真の才能に目覚めることになります。

それは最初から全ての力を発揮したわけではなかったのですが。

文字通り怪物を目覚めさせたのです。


2、錬金術師としてのお仕事

気は進まなかったけれど。

 

プラフタに言われるまま、お薬を調合して。

 

見事に駄目出しを貰った。

 

あたしの腕前を見て、プラフタは。

 

分かり易すぎるくらい直球で言った。

 

「完全にひよっこですね。 評価する点がありません。 この薬も、市販品としてギリギリ使うのが精一杯の品質しかありません」

 

「そうだよねえ。 分かってる」

 

プラフタは、だが素質はある、という。

 

ソフィーもそれは知っている。

 

錬金術は、そもそも素質が無ければ出来ない学問なのだ。

 

これがあたしの不満なところ。

 

元々誰でもルールに従って作れば同じものが出来るのが、学問のあるべき姿ではないのだろうかと思うのだ。

 

だが錬金術は違う。

 

素質が全てなのだ。

 

「錬金術について、詳しく誰かに習いましたか?」

 

「ううん。 あたしのおばあちゃんは、まだ小さい頃に死んじゃったから」

 

「そうですか。 それではこれも仕方が無いのかも知れません。 独学で錬金術を学んで、大成できる人間は限られています」

 

プラフタが言うには。

 

錬金術の基本を、ソフィーは理解していないという。

 

座学をするしかない。

 

コレはある意味、貴重な経験だ。

 

プラフタは順番に話してくれる。

 

「錬金術というのは、そも何か分かっていますか?」

 

「概要しか分からないよ」

 

「そうでしょうね。 まず錬金術というのは、ものの意思を汲み取り、それにそってものを作り替える技術のことです」

 

それについてはいつかおばあちゃんに聞いた事があるような気がする。

 

だが、プラフタの説明は。

 

更に踏み込んでいた。

 

恐らくそれは、おばあちゃんが詳しくなかったのでは無くて。

 

単にあたしがもう色々な事を理解出来る年齢だと、プラフタが判断しているからなのだろう。

 

「錬金術の思想では、この世の全てのものに意思があるとされています。 高度な才能を持つ錬金術師は、その意思を聞き取ることが出来るそうです。 この意思に沿ってものを作り替えていく技術を錬金術と言うのです」

 

「その声らしいもの、聞こえるんだよね」

 

「本当ですか」

 

「うん。 おかげで碌な目にあわなかったけど」

 

口をつぐむプラフタ。

 

反応からして分かった。

 

これはモニカに聞いたな。

 

まあそれはいい。

 

「まだそんなにはっきりとは聞こえないけれど」

 

「それならば、才能を伸ばしていくしかないでしょう。 なお私と……名前は思い出せませんが。 ともかく、非常に優秀な錬金術師だった人物も、結局声を聞く事は出来ませんでした」

 

「そう、なんだ」

 

「それでも、錬金術師として高みへと上り詰めることは出来ました。 貴方なら更なる高みへ行ける事でしょう」

 

なるほど。

 

褒める所は褒めるやり方なのか。

 

座学には色々苦労していたのだが。

 

こうやって詳しいヒトに話を聞くと言うのは分かり易い。

 

教えるには三倍知っていないと駄目、という話があるらしいが。

 

それも頷ける。

 

このヒトは。

 

本の姿になる前は、本当に優秀な錬金術師だったのだろう。

 

「それでは、助言をします。 順番に錬金術をこなしてみましょう」

 

「分かった。 やってみ……あれ?」

 

「どうしましたか?」

 

気付く。

 

プラフタはふわふわと側で浮いているのだが。

 

本の中には、空白のページが目立つのだ。

 

錬金術師として優れた存在だったことは疑う余地もないと思うのだが。

 

未完成の本にでも乗り移ったか、或いは変身したのだろうか。

 

まあ、今は良い。

 

とにかく、まずはやってみることだ。

 

まず錬金釜を綺麗に洗浄する。

 

この作業について。

 

プラフタは異常なほどに神経質だった。

 

「まず湯を沸かして、熱いうちに釜に入れます」

 

「火傷しそう」

 

「正確には、それによって目に見えないほど小さな生き物や、埃などを取り除くのです」

 

「へええ」

 

この沸かす湯についても。

 

最初に沸かした湯の上に、蒸留装置を置いて。

 

純粋な水を作る。

 

そしてその水を更に湧かして。

 

それで釜を洗うのだ。

 

こうすることによって。

 

より精度の高い錬金術が行える、というのだ。

 

なるほどと思ったが。

 

同時に大変だなあと苦笑してしまう。今までは、なんと無しにレシピに沿って作業をしていたのだが。

 

そのレシピには、こういう下準備が必須だったわけだ。

 

「プラフタも釜をこんな風に扱っていたの?」

 

「私は……分かりません」

 

「ごめん。 記憶喪失だし、仕方が無いよね」

 

「そうですね。 記憶を取り戻す方法が分かれば良いのですが」

 

側に浮いているプラフタ。

 

悲しそうだが、こればかりはどうにも出来ない。

 

いずれにしても、薬草をまず用意。

 

これについては、アトリエの側に自生している。

 

というか、おばあちゃんが育てていたものが、勝手に繁殖しているらしい。あたしは正直その辺りはずぼらなので。勝手に増えてくれていて有り難い、くらいにしか考えていないのだが。

 

アトリエの側に生えている草を見に行き。

 

プラフタは絶句していた。

 

「これは少し元気すぎますね」

 

「おばあちゃんが土地を豊かにするって、お薬をたくさん撒いていたからね」

 

「……」

 

何か思うところがあるようで。

 

プラフタは周囲を見回す。

 

この街の周囲は、比較的森が多いけれど。

 

それは例外的なことだ。

 

殆どは荒野ばかりなのがこの世界である事は、それこそ子供でも、どんな世間知らずでも知っている。

 

街の周囲にある森や草原は。

 

大体錬金術師や。

 

珍しくやる気のある下級の神などが。

 

ちまちまと力を使って。

 

育てていったものなのだ。

 

キルヘン=ベル周辺の緑もそれについては同じで。

 

主におばあちゃんが育てた。

 

だからかなり若い森で。

 

木の実とかはあまり収穫できない。

 

いつか錬金術師達がもっと仕事をするようになれば、更に世界からは荒野を減らせるのだろうけれど。

 

そうもいかない。

 

錬金術師の絶対数が足りなさすぎるし。

 

何より危険すぎる。

 

猛獣や匪賊、それにドラゴンや邪神。

 

こういった荒野を支配する存在達にとっては。

 

傭兵よりも、錬金術師が天敵だ。

 

錬金術師は、外を出歩くと、狙われるという話もある。中には錬金術師をターゲットにしている専門の暗殺者までいるそうだ。

 

モニカに聞いた話だが。

 

その手の輩が、おばあちゃんと戦ったこともあるらしい。

 

又聞きになってしまうので何とも言えないが。

 

いずれにしても、荒野を我が物顔でのし歩く者達にとっては。

 

錬金術師は脅威と認識され。

 

邪魔だと思われている、という事である。

 

「いずれにしても、此処までの緑化を行うには、数十年と言う時が掛かったでしょう」

 

「だからキルヘン=ベルは平和なんだよ」

 

「そうなのでしょうね」

 

咳払いをすると。

 

プラフタが指示をしてくれる。

 

どの薬草の、どの辺りが採り頃だとか。

 

色々詳しくアドバイスをしてくれた。

 

今までは図鑑を見ておおざっぱに集めていたので。こういう本当に詳しいヒトのアドバイスは実に助かる。

 

収穫を終えて。

 

そして井戸水をまた沸かして綺麗にする。

 

なお、湯を沸かすのは。

 

あたしの魔術で行う。

 

魔力量は相応に高いらしく。湯は即座に沸かせる。これだけは、生活で便利な事の一つである。

 

「確か私は錬金術師だった頃、魔術は使えなかった覚えがあります。 貴方の強みの一つですね」

 

「えへへ、ありがとう」

 

「それはそうと、沸騰した湯を、洗浄した容器に移してください。 それから冷まして、調合を開始します」

 

まずは器具類も全て洗う。

 

プラフタが言うには、埃はいうに及ばず。不純物の類は、汗や息なども出来るだけ入らない方が良い、という事だった。

 

器具類については、おばあちゃんが使っていたものが、一通り揃っている。

 

マスクも出来ればした方が良い。

 

そう言われた。

 

「魔術で空気遮断できるけど」

 

「並行で錬金術も出来ますか?」

 

「うーん、ちょっと集中力は落ちるかも」

 

「それならば素直にマスクをしなさい。 少し古いですが、きちんとしまわれていただけあって、良い性能のマスクのようです」

 

そう言われると仕方が無い。

 

いずれにしても、とプラフタは言う。

 

もっと洗濯をこまめにしろと。

 

ちょっと散らかっていると。

 

実はモニカに掃除はして貰っているのだけれども。

 

彼女は掃除の度に教会に来て賛美歌を聴けとか教えを聞けとか言ってくるので、その辺もあって頼みづらい。

 

そしてあたしのずぼらな性格もあって。

 

どうしても部屋は散らかりやすいのだ。

 

まあいずれにしても、プラフタの言葉が正論だと言う事は分かるし。正論というのは正しいから正論なのだ。

 

正論を聞けないようになったら。

 

人間は終わりだ。

 

そんな事をおばあちゃんは言っていた気がする。

 

ともかく、これでやっと調合の下準備が終わった。

 

綺麗になった器具類。

 

釜。

 

丁寧にすりつぶした薬草。

 

それらを、順番に調合していくが。

 

やはり専門家が側で見てアドバイスをくれると、精度がまるで違った。

 

おおと、思わず声が漏れる。

 

まず薬草を混ぜ合わせ。

 

温度を測った湯に、フラスコに入れて漬ける。

 

それできっかり時間を計った後。

 

取り出して、また別の薬草を、はかりできっちり計測した分量混ぜ合わせ。

 

今度は粉のまま、先ほど温めておいたものへ投入。

 

これを「中間生成液」というそうだ。

 

この中間生成液を複数造り。

 

順番に混ぜていく。

 

この過程で、重要な指示を受ける。

 

「貴方なら分かるはずです。 ものの意思に沿ってものを作り替えるとき、「すんなりと」調合が進みます。 もしも上手く行かない場合は、ものの意思に反しているという事で、それは良い結果を生みません」

 

「なるほど……確かに何というか、ちょっと雑音が優しいかも」

 

「雑音などと言ってはいけませんよ、ソフィー。 ものに宿る意思は、とても大事で、其処だけはこの過酷な世界でも平等なものなのです」

 

「そうなんだね」

 

今まで自分がどれだけ手抜きをしていたのか。

 

本職に教わると、色々と分かってくるのが悲しいというか寂しいというか。

 

確かに言われて見れば、調合の際に理解出来ない声が聞こえていたし。

 

それが五月蠅かったり静かだったりしたような気もする。

 

あれは、そういう理由で聞こえていたのか。

 

ともかくだ。

 

そのまま作業を続行。

 

汗が落ちないように気を付けながら、順番に調合を進めていく。

 

途中、何回か駄目出しをされるが。

 

作り直しはせず。

 

そもままやるように言われた。

 

どうしてかというと。

 

失敗した方が覚える、というのである。

 

「私も最初は苦労しながら錬金術を覚えました。 貴方は私が最初持っていなかったものを多く持っています。 ならば努力次第で、どんどん伸びるはずです。 ものの意思を汲み取るだけでは錬金術は大成できません。 技術が備わらなければならないのです。 貴方ならそれができる筈ですよ」

 

「嬉しいな。 そんな事言われたの初めてだよ」

 

「私もこんな事を言うのは初めてです。 ヒトにものを教えたことは……無かったような気がします」

 

記憶が欠落するのは大変だな。

 

そう思いながら手を動かして。

 

ようやく夜半少し前に。

 

薬が完成した。

 

いわゆる山師の薬、である。

 

基本的に万能薬として使われる塗り薬で、それこそ品質レシピ千差万別。傷を治すことが主体になるのだが。

 

凄い錬金術師が作ると。

 

それこそ、傷が見る間に消えていくほどの効果があるという。

 

高位の神聖魔術でも其処までの効果は出せない。

 

錬金術師は神の御技を使うと言われるが。

 

その所以だ。

 

基礎的な薬でさえ。

 

作る人間次第では、驚天の奇蹟を起こすのである。

 

早速、出来を確認し。

 

プラフタに見てもらう。

 

自分としては今までに無いほど良く出来たが。

 

プラフタはやはり駄目出しした。

 

使わなくても、見るだけで質は分かるらしかった。

 

「最初に作ったのを100点満点で5点とすると、これは25点という所でしょう」

 

「そっかあ、まだ先は長いね」

 

「いえ、市販品としては充分な品です。 助言をした事、機材が揃っていること、良い素材がある事を考えても、これは売り物になります。 ただし、錬金術師の作る薬としては、まだまだ下の方だと言う事を忘れてはなりませんよ」

 

「はい」

 

素直に返事。

 

プラフタは教え方も分かり易いし。

 

何より、今までのものとは比べものにならない薬が出来た。

 

これを早速、明日売りに出かけるとしよう。

 

ついでにプラフタを皆に紹介しておきたい。

 

キルヘン=ベルには。

 

ソフィーの親友以外にも。

 

世話になっているヒトが、大勢いるのだから。

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