暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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3、後始末

地図が変わってしまった。

 

あたしは、血だらけの体で周囲を確認しながら、そう思った。

 

ノーライフキングが潜んでいた山と洞窟は、それそのものがまとめて消し飛んでしまったし。

 

川の流れも変わった。

 

今後はここに地底湖では無く。

 

「地上湖」が出来上がることだろう。

 

事実、川の水の一部が流れ込んでいる。

 

元々川というのは、地上に出ているのはごく一部だとか言う話を聞いたので。下流が極端に変わる事は無いだろうが。

 

それでも、この戦いの余波は小さくないはずだ。

 

いずれにしても、このおばあちゃんの結界は。

 

残ってはいるが。無用の長物になってしまった。

 

ノーライフキングは死んだのだ。

 

キャンプに戻ると、手当を始める。

 

モニカが徹底的に後始末をすると言って、現地に残った。聖歌によって、相手がもし残っていたとしても、痕跡も残さず消し去るつもりらしい。

 

まあ好きにすれば良い。

 

ジュリオさんも残るらしいので、隙を突かれることもないだろう。

 

キャンプに戻ると、手当を始める。

 

薬はたっぷり持ってきている。

 

手傷は回復させることが出来るし。

 

最近は体力を回復させる薬も、出来が良くなってきている。

 

ただし、無理矢理ドーピングしていれば、無理も出てくる。

 

ある程度回復させたら。

 

後は少し眠って、体の回復機能に任せる。

 

傷については、入念にチェック。

 

呪いやら毒やらが入り込んでいないか調べる。

 

幸いにも、誰も魔術による呪いの類は受けていなかった。

 

「後は我々で見張ります。 ゆっくり休んでください」

 

「すまないな。 何かあったらすぐに起こしてくれ」

 

「はい」

 

フリッツさんに敬礼している自警団の戦士。

 

今回の戦いでも、あたし一人で策を練ったのでは無い。

 

フリッツさんと、手持ちの札で作戦を練り。

 

順番に実行しただけだ。

 

キャンプに作ってある天幕に潜り込むと、しばし休む事にする。流石にあれだけの大火力砲撃を連続でやった上に。

 

プラフタの魔術砲撃までくらったのだ。

 

疲れた。

 

しばし休んでから、目を覚ます。

 

プラフタは、黙々と拡張肉体を直していた。

 

「休まなくて良いの?」

 

「私はそれほど消耗しませんでしたから」

 

「そっか」

 

拡張肉体は応急処置も済んでいて、既に使えるようだった。

 

錬金術は使えなくても。

 

その知識はある。

 

つまり、メンテナンスの類は出来る、という事だ。

 

「根絶の力の恐ろしさを再確認しましたか?」

 

「自分で使おうとは思わないかな」

 

「貴方らしい返答ですね」

 

「そうだね。 いずれにしても、何もかも奪い去る力だって事は良く分かったよ」

 

プラフタは黙り込んでいる。

 

恐らく、あたしの勘だが。

 

プラフタはもう記憶の全てを取り戻しているとみた。

 

アトリエに戻ってから、その辺りは聞けば良い。

 

傷も良くなったし、戦闘が行われた場所を見に行く。

 

モニカが徹底的に処置したからか。

 

もはや、ノーライフキングの気配すら残っていなかった。

 

「ソフィー、まだ休んでいなくて良いの?」

 

「モニカこそ」

 

「私は平気よ。 街に戻ってからゆっくり休むわ」

 

それよりも、と。

 

モニカは話を変える。

 

「どうしてノーライフキングには、ターンアンデットが効かなかったのかしら」

 

「ああそれはね。 彼奴が肉を纏っていたから」

 

「どういうこと」

 

「彼奴は手下にした死者に、生物をさらわせて、それを喰らっていたんだよ。 その生命そのものを自分で纏うことによって、不死者が苦手とするような攻撃を全て遮断していたんだと思う」

 

要するに、コートを被るようにして。

 

苦手を克服していた、と言う訳だ。

 

モニカがみるみる顔を険しくしていくが。

 

怒ったところでもう仕方が無い。

 

ノーライフキングは死んだ。

 

それに奴は、封じ込まれてからは大した力も出せないようになっていた。

 

恐らく喰われたのは、奴が封じ込まれるまでに襲われた生物だろう。

 

それも全て消し飛んだ。

 

魂ならば全部解放されただろうし。

 

ノーライフキングの魂は、どうせ何処にも行く場所なんてありはしないだろう。あって噂に聞く地獄くらいか。

 

そういう意味では。

 

あたしも死んだ後、あいつに再会するかも知れない。

 

もっとも、本当に地獄があれば、だが。

 

プラフタが提案してくる。

 

理にかなうと思ったので、やっておく。

 

持ってきてある爆弾を溶岩に差し込んで、起爆。

 

徹底的に、結界の範囲内は破壊し尽くしておく。

 

これでもしも、ノーライフキングが地面に潜っていても、即死である。

 

やがて、爆発も終わり。

 

其処には湖が残った。

 

根絶の力も感じない。

 

根こそぎ消し飛ばしてしまったのだから、まあそれも当然か。

 

これでいいだろう。

 

後は時々、斥候を此処に寄越せばそれで良いはず。

 

もしもまたノーライフキングが姿を見せるようならば。

 

今度は更に充実した戦力で粉みじんにするだけである。

 

 

 

キャンプを畳んで、荷車を引いて東の街に。

 

ミゲルさんに討伐が終わったことを告げる。

 

喜ぶミゲルさんだが、釘を刺しておく。

 

「現時点では、この周辺地域は安全になりましたが。 それもあくまで現時点では、です」

 

「何か危険の心当たりがあるのかね」

 

「はい。 発展する街を、ドラゴンが狙うケースがあります。 今後は連携して、ドラゴンに警戒する必要があるでしょう」

 

「なるほど、留意しておこう。 それはそれとして、今回の件は助かったぞ、ソフィー殿」

 

いや、此方も。ノーライフキングの戦闘力は、あたしの予想以上だった。

 

恐るるに足らずと思っていたし。

 

実際にぎりぎりの戦いにまではならなかったが。

 

少なくとも、想定の範囲の最強だったことは事実だ。

 

想定の範囲を超えていたら。

 

死者を出していたかも知れない。

 

いずれにしても、今後も油断だけはしないようにしていかなければならない。

 

「それに、イサナシウスの例もあります。 今後も、警戒は欠かさずお願いします」

 

「分かっている。 相互に協力していこう」

 

握手。

 

後は宴になったので、軽く参加していく。

 

モニカはずっと聖歌によるターンアンデットを続けて疲れ果てたのか、早々に宿に。旅人の道しるべを使えばすぐにキルヘン=ベルに帰れるのだが。一応最後まで、任務につきあうつもりらしい。

 

フリッツさんは頼まれて、自警団の戦士達に稽古を付けていた。

 

大した体力である。まあキャンプで休んで、少し余裕も出来たのだろう。

 

特にあのちんまい子。ティアナという子は熱心に剣を習っていた。

 

宴だから、酒も入るし、盛り上がる。

 

フリッツさんの剣技は、兎に角舞うようで、非常に美しいが。その反面、凄まじい切れ味と破壊力を持つ。

 

ジュリオさんの一撃必殺型と違って手数で攻めるのだが。一撃一撃が鋭い上に、手数が尋常では無いのだ。

 

わいわいと稽古が続いているのを横目に肉を頬張っていると。

 

ジュリオさんが来た。

 

「君に話しておきたいことがある」

 

「話ですか?」

 

「少し前になるが。 あのノーライフキングほどでは無いが、強力な外法を使って怪物になった魔術師がいた。 根絶の力を使ったのかは分からないが、兎に角非常に強力な存在で、生半可なリッチを遙か凌駕する魔力を持っていた。 そいつは力に溺れ、多くの人を殺したため、騎士団で討伐した」

 

続きを促す。

 

あたしは肉を食べながら、話を聞く。

 

「その怪物はどうにか倒す事が出来たが、しかし奴を倒した時、僕の先輩が一人、呪いを受けてしまった」

 

「……」

 

「その先輩は、呪いで怪物化していく事に悲観して、姿をくらませてしまった。 立派な騎士だったのだが、それ故に耐えられなかったのだろう」

 

「見つかったんですか?」

 

首を横に振るジュリオさん。

 

そうか。

 

しかし、話をしたと言うことは。

 

恐らくは何かしらのヒントが手に入った、という事なのだろう。

 

「これからまた数日、キルヘン=ベルを離れる。 旅人の靴は借りるが、構わないだろうか」

 

「良いですよ。 キルヘン=ベルのために命を賭けて戦ってくれているジュリオさんに、貸さない道具はありませんよ」

 

「有難う。 君は危険な所もあるが、その義理堅さは間違いなく美点だ」

 

「褒めても何も出ませんよ」

 

ジュリオさんはそれだけいうと。

 

宴に戻っていった。

 

酒も飲んでいないようだが。

 

色々思うところがあるのだろう。

 

今度はティアナに、ジュリオさんが稽古を付けるつもりになったらしい。

 

フリッツさんとはまるで違うタイプの剣技を見て、大喜びしたティアナは、嬉々として稽古を受けていた。

 

あたしも適当な所で切り上げる。

 

ほぼ安全が確保されているとは言え。

 

キルヘン=ベルへの帰路で猛獣に襲われて死ぬとか、そんな情けない末路はたどりたくないから、である。

 

宿も前とは段違いに整備されているが。

 

これは商人が来るようになったから、だろう。

 

一晩休むと。

 

綺麗に疲れも取れていた。

 

そのまま、朝一で東の街を出る。

 

キルヘン=ベルまで一日。

 

アトリエに戻ると。

 

ようやく一段落した。

 

話通り、ジュリオさんはすぐにキルヘン=ベルを出る。情報収集と言う事だし、彼ほどの騎士なら、無茶をする事も無いだろう。

 

あたしは顔役達と一緒に、重役会議に出て。

 

フリッツさんが、今回の戦果と戦闘の経緯を説明するのを、ぼんやり眺めていたが。

 

妙に嫌な予感がする。

 

ドラゴンが攻めてくる、とかいうのとは違う。

 

何か起きるような気がするのだ。

 

「ソフィー。 ノーライフキングの撃破、ありがとうございました。 これで安全圏が増え、活動範囲が更に広くなります」

 

「はい。 それで、次ですが……」

 

「どうしましたか」

 

「ノーライフキングを撃破したことで、今まで足を踏み入れる事が出来なかった地域に行ってみたいです」

 

ふむと、腕組みしたヴァルガードさん。

 

あたしが言っているのが水源だと、すぐに理解したのだろう。

 

ノーライフキングの阿呆のせいで、立ち入り禁止にされていた場所が幾つかある。

 

その一つが水源だ。

 

この世界には、森が殆ど無い。

 

森がある場合は、だいたい錬金術師が緑化したケースで。

 

そうで無い、天然の森は余程の条件が揃わないと存在しないのだ。

 

例えば、人間に害を為さない神がいるとか。

 

或いは何かしらの強力無比な魔力源があるとか。

 

もしくは、余程に水や光の条件が良いとか。

 

そういった幾つかの例外を除くと。

 

良くて草原止まりなのである。

 

そんな例外的な森がある。

 

しかもそういった場所には、プラフタの話では、非常に貴重な素材が眠っている、というのである。

 

今後より強力な錬金術をモノにするには。

 

足を運ぶのは必須だ。

 

「分かりました。 良いでしょう。 ただし、水源には何が出るか分かりません。 充分に準備を整えて行きなさい。 更に、森を傷つけるのも厳禁です」

 

「分かっています」

 

当然の話で、そんな貴重な森では猛獣だって暴れない。

 

ただし、当然のことだが。

 

ノーライフキングのせいで、ほぼ人跡未踏の地状態だ。

 

おかげで今まで斥候を出す事も出来なかった。

 

下手をすると。

 

未知のネームドと遭遇する事がある。

 

オスカーに聞いた事があるのだが、植物系のネームドはそれなりの数がいるらしい。

 

もしも森に対話不能なネームドが潜んでいた場合。

 

撃退するためには、骨が折れる事になるだろう。

 

貴重な森林資源を傷つけるわけにはいかないのだから。

 

いくらあたしでも。

 

森林資源をこの荒野だらけの世界で傷つける事が何を意味するか。

 

それがどれだけ重い罪かは。

 

よく分かっている。

 

故にホルストさんは、念を押したのだ。

 

咳払いすると。

 

ホルストさんは、話を変えた。

 

「それと、報告をしておきます。 東の街の安全がほぼ確保されたことで、ラスティン側からの流入民が増えています。 先月だけで二十七人増え、今二百人近くが此方に向かっているという報告もミゲル氏から受けています。 恐らく今年中にキルヘン=ベルの人口は千人を超えるでしょう」

 

「おお……」

 

「食糧は大丈夫なのだろうか」

 

「千人程度なら。 しかしこのままだと、更に増える事を想定しなければならないだろうな」

 

流入してくる民だけではない。

 

この土地で新たに生まれる子供だって出る。

 

今の時点では、充分すぎるほどの住民満足度を実現しているが。

 

人間が増えれば増えるほど。

 

それも難しくなっていく。

 

人間が管理できる数には限界がある。

 

統治を行う人間の能力によって、街はどうにでもなる。

 

今はホルストさんも頭がしっかりしているけれど。

 

それもいつまでもつか。

 

かといって、次の世代に有能な統治者が出るかというとかなり難しい。

 

自警団の中堅所が、今はホルストさんに仕事の一部を割り振られているようだけれども。どうにも上手く行っていないようだし。

 

或いは、ラスティンに話を通して、実績のある役人を回して貰うのも手かも知れない。

 

あたしは、街をよくするための道具を幾らでも作る。

 

だが、街の指導者層が腐った場合。

 

最悪その道具が匪賊に流れる可能性さえある。

 

そうなったら、起きる災禍は想像を絶するだろう。

 

あたしだって駆除に一苦労するはずだ。

 

更に言えば、街の住民達の幸福度が下がれば。

 

当然治安も悪くなる。

 

下手をすると内乱さえ起きるかも知れない。

 

そうなると、あたしの手には正直余るだろう。

 

街の拡大計画は、引き続き行う事をホルストさんが明言し。

 

具体的に何処に畑を拡げるか。

 

森を作るかを指定される。

 

東にどちらも伸ばすのは。

 

言う間でも無く、東の街との合体工作である。

 

周辺には現在大きな安全圏が出来ており。

 

出るのも精々猛獣程度。

 

この隙に、安全圏を拡げて、人口万単位の街を作ってしまう。

 

後は、その街さえ安定させれば。

 

ドラゴンさえ迂闊に手出しは出来ない。

 

同時に、北西にも森を伸ばし。

 

ナーセリーの復興を開始するとも、ホルストさんは明言。

 

確かにナーセリーまで都市部をつなげれば、鉱物資源の確保が更に容易になり、街にとっても大きな+になる。

 

問題は出現が噂される邪神で。

 

それを考慮した場合、まずは東に街を拡げて、東の街と合体工作を優先した方が良い、というのが戦略としては分かり易い。

 

あたしに土地活性剤の注文が来たので、頷く。

 

それについてはまったく問題は無い。

 

会議が終わったので、アトリエに戻り。

 

さっそく作業に取りかかる。

 

そうして数日が過ぎた。

 

ジュリオさんは何事もないように戻ってきたが。すぐに、情報交換の成果については、話してはくれなかった。

 

 

 

ふと、聞こえてきたのは。

 

あのオルゴールの音だった。

 

感情が薄いコルちゃんだが。

 

やっぱり寂しいのだろう。

 

外に出てみると。

 

アトリエから少し離れた坂の所。曲がりくねった、街を守るための仕組みになっている坂道で。

 

コルちゃんが壁に腰掛けて。

 

オルゴールを鳴らしていた。

 

綺麗な音だ。

 

実は、ハロルさんに相談して。

 

部品を全部一度分解し。

 

全て型を取ってある。

 

金属部品も、木製部品も、全て再現は可能な状態だ。

 

これらの型は、コンテナに入れてあるが。

 

このコンテナの技術も、そろそろあたしが制御できるようになりたい。

 

かなりの量をコンテナに入れられるとは言っても。

 

まだまだ広さは足りない。

 

異世界アトリエの方には、それこそ容量制限がないのだから。

 

いずれ其方に、城の倉庫もびっくりなサイズのコンテナを造り、保全の魔術を掛けて物資を安全に確保しておきたいのだ。

 

コルちゃんはあたしに気付いて。

 

此方を向く。

 

相変わらず表情は殆ど無いが。

 

それでも、とても大事そうにオルゴールを抱えていた。

 

「ごめんなさい。 五月蠅かったですか?」

 

「ううん、綺麗な音だし気にならないよ」

 

「ソフィーさんも気晴らしに音楽をやってみてはどうです?」

 

「音楽ねえ」

 

あまり良いイメージは無い。

 

ピアノだったらホルストさんの所にある。

 

たまに触ったりはしているが、それほど上達はしていないし。

 

何より上達したらしたで。

 

モニカに、教会でひけと言われかねない。

 

色々とモニカとは、親友ではあるがそれと同時に面倒くさい関係でもある。

 

あたしとしても関係をこれ以上こじらせたくないし。

 

あまり火種は作りたくないのだ。

 

「それで、そのオルゴール、どうするの?」

 

「今考えていたのです。 オルゴールだけでは、いくら何でも探す手がかりとしては無理があるのです」

 

「それはそうだろうね」

 

「そこでコルネリア商会を、キルヘン=ベルを中心に立ち上げるのです」

 

コルちゃんは流れの商人だ。

 

キルヘン=ベルは初めての拠点。

 

更にこの街は、伸びしろがいくらでもある。

 

途中でドラゴンに蹂躙でもされない限りは。

 

今後、人類が保有する貴重な大都市の一つとして、発展する可能性を秘めている。

 

コルちゃんはその中枢に最初から食い込んでいて。

 

今は肉屋になる予定のガンマ22ちゃんをはじめとして、幾つか下部組織を作り始めている。経済に大きく食い込んでいるのだ。

 

このまま上手にキルヘン=ベルと折り合いを付けていけば。

 

そのコルネリア商会というのも。

 

名前が拡がるかも知れない。

 

そうなれば、離ればなれになってしまった家族とも、また会えるかも知れない。

 

それは、あたしも名案だと思った。

 

「良いんじゃないのかな」

 

「……上手く行くと良いのです」

 

コルちゃんが眼の辺りを乱暴に拭う。

 

きっと、ずっと寂しい思いをしてきたからだろう。

 

あたしの場合は、なんだかんだで喧嘩友達も含めて友人がいたからまだマシだったけれど。

 

そもそも個体数があまり多く無い上に。

 

危険にさらされる確率が高いホムであるコルちゃんが。どれだけの危険を味わいながら、この荒野世界で生きてきたかは。

 

誰だって容易に想像が出来る。

 

いずれにしても、コルちゃんに目標が出来たのは良かった、という事だ。

 

あたしも協力は惜しまない。

 

此方としても、利害が一致するし。

 

何より、強力な経済力が背後にあれば、色々と動きやすくなるからである。

 

ふと、気付く。

 

アトリエの前で。

 

プラフタと。

 

以前何度か顔を合わせた、子供二人が向かい合っている。

 

嫌な予感がした。

 

コルちゃんは気付いていない。

 

あたしは適当に流すと。

 

アトリエに走った。

 

 

 

あの二人は、見かけ通りの子供では無い。

 

そんな事は分かりきっていた。

 

だからあたしは前から警戒していたのだが。

 

随分大胆な行動に出たものだ。

 

二人はあたしに気付くと。

 

「やあ」等と、旧知のように声を掛けてきた。あいにくだが、数回話した事しかないのだが。

 

「プラフタ、どうしたの?」

 

「ソフィー!」

 

反応だけで分かった。

 

何かしらの強烈な関係にあるとみて良い。

 

しかしながら、500年前から来たも同然のプラフタだ。

 

そうなると。

 

考えられる人間関係は限られてくる。

 

「まさか本から人形に体を写すとはね。 そして人形から人間に概念操作して戻るつもりかしら?」

 

「その体も生半可な人形じゃないね。 手に入れうる材料を上手に使っているじゃないか」

 

二人は口々に言っている。

 

プラフタは黙り。

 

だが、その星の瞳は。

 

燃え上がっているように見えた。

 

「貴方こそどういうつもりです。 増えたのは何故ですか」

 

「?」

 

今、プラフタは二人を単数で呼んだか。

 

ああ、なるほど。

 

そういう事か。

 

理解は出来たが、口は出さずにおく。

 

即時に拡張肉体は展開できるようにするが。

 

しかしながら、結構ヤバイ気配が周囲に幾つかある。

 

なるほど、線と線がつながった。

 

「視点を増やそうと思ったのよ」

 

「君とはわかり合えなかったからね。 本当はもっと増やしても良かったのだけれど」

 

「深淵の者を今でも維持しているのですね」

 

「この世界の裏側はほぼ支配しているよ」

 

プラフタは、感情を押し殺すのに必死なようだった。

 

だが、相手は余裕綽々。

 

それはそうだろう。

 

「中に入って貰ったら? 知り合いだったらお茶でも出してもてなすけれど?」

 

「ソフィー、分かっているのでしょう。 この二人は……」

 

「おっと、そこまでだよプラフタ」

 

「今日はここまで。 それと、始原の釜だけれど。 既に回収済みだから」

 

青ざめているプラフタ。

 

そして、二人は、そのまま余裕綽々の様子で、その場を去っていった。

 

また何かあったら、姿を見せるつもりだろう。

 

二人がいなくなると。

 

周囲に満ちていた剣呑な殺気も消えた。

 

嘆息すると。

 

あたしはずばり言った。

 

「あれが、例のパートナー?」

 

「理解が早いですね。 その通りです。 今は二人に別れているようですが、恐らくは人体を生成したのでしょう」

 

「直接人体を!?」

 

「技術としてはさほど難しいものではありません。 ただし魂を入れるのが非常に難しいのです。 その事は、貴方自身が分かっている筈です」

 

まあ確かにそれもそうか。

 

アトリエに入る。

 

今の殺気、フリッツさんやジュリオさんは察知したはずだ。

 

それに幾つか気になる言葉も口にしていた。

 

ゆっくり話を聞きたい。

 

相手が直接接触してきたのだ。

 

これ以上。

 

記憶が戻っていないと、誤魔化されるのは色々と問題がある。

 

全て話して貰わないと行けないだろう。

 

茶を出す。

 

ソティーと名付けたオリジナルブランドだ。茶葉の精製の過程で、錬金術を用いてもいる。

 

プラフタは茶が飲めないので、あたしが飲むのだけれども。

 

「では、最初からどうぞ」

 

「……記憶が戻ったのは、ついこの間。 異世界への扉を開くレシピを書き込んだときです」

 

「なるほど。 それで、あの二人は」

 

「アトミナとメクレットと名乗っていましたが、間違いありません。 あの二人は、元々私のパートナーであり、竹馬の友で比翼でもあった存在です。 名前はルアード。 私と同格の、当時世界最高の錬金術師の一人でした」

 

話が始まる。

 

ドアがノックされたのは、その直後。

 

やはり気付いたらしいフリッツさんとジュリオさんだった。

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