暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、始動

アトミナとメクレットが魔王の膝元に座る。

 

深淵の者の幹部達が集まり。頭を垂れると。

 

会議が始まった。

 

まずは現状の報告から。

 

様々な地方で、深淵の者は活動を実施している。

 

ラスティン方面で。

 

少し前に小さな村を狙っていた匪賊の集団がいたのだが。

 

それを先制攻撃で滅ぼした。

 

匪賊の集団はかなり大きくなってきており。

 

そろそろ処理のタイミングだったこともある。

 

彼らはいきなり現れたおぞましいまでの手練れの前に、逃げ惑うことしか出来ず。戦闘にさえならず。ただの殺戮と化した。

 

勿論こちら側の被害は無し。

 

死体は徹底的に焼き払い。

 

地面に埋めて肥料とした。

 

その過程で、面白い事が分かってきた。

 

人生を掛けての研究を終えた後も、精力的に活動を続けているシャドウロードが報告をしてくれる。

 

「どうやらラスティンの役人の一人が、この匪賊に通じていた様子です。 商人を襲っているという報告がありましたが、裏側から情報を流し、分け前を貰っていた模様です」

 

「そうか。 速やかに消せ」

 

「御意」

 

シャドウロードはあらゆる地方を歩き回り、貪欲に書物を集め、歴史を解析してきた人物だ。

 

勿論優秀な護衛達がついていたからできた事だが。

 

研究の合間に魔術も学び。

 

その実力は相当に高い。

 

研究を終えて、結論を出した今は。

 

新しい研究をするよりは。

 

深淵の者にとって必要な事をしたいと。

 

魔術師としての腕を振るって、各地で汚れ仕事を含む色々な事をしてくれていた。

 

彼女は決して天才では無い。

 

歴史に疑問を抱き。

 

深淵の者と接触してからは。

 

この理不尽な世界と、自分なりに戦いたいと考えたものの一人だ。

 

故に尊敬できる人物である。

 

古参の幹部でさえ敬意を払っているのは、彼女が天才だからでは無い。優れた魔術師だからでもない。

 

己の人生を捧げて。

 

信念を貫き通したからである。

 

そういった人物に敬意を払える人間は多く無い。

 

社会の中では、むしろ信念は馬鹿にされるし。

 

真面目に生きる人間を馬鹿にして、怠け者の自分がえらいと考える愚か者が珍しくもない。

 

だが彼女は人生の大半である六十年を掛けて、誰もが解き明かせなかった歴史の深淵を暴き出した。

 

その真面目な人生は。

 

明らかに歴史に大きな影響を。

 

少なくとも不真面目に生きている浅はかな連中よりも大きな影響を。

 

確実に与えたのである。

 

少なくとも深淵の者幹部には。

 

彼女を馬鹿にする者はいない。

 

護衛としてイフリータがついていく。

 

アルファが、小首をかしげた。

 

「彼女は立派なのです。 しかしながら、どうしてアンチエイジングを受けないのでしょうか。 あれほどの偉人を失ってしまうのは惜しいのです」

 

「アルファ。 それは彼女が、人としての生を全うしたいから、だそうだよ」

 

「そうなのですか」

 

「人それぞれの信念よ」

 

アルファは復讐に生きる事を選んだからか。

 

その辺りはどうも噛み合わないらしい。

 

だが実際に立派と口にしているとおり、シャドウロードの生き方を尊敬している事に間違いは無い。

 

人はそれぞれ。

 

そういう事だ。

 

ただ、シャドウロードは今までに何度か大病をしていて。それらを錬金術で治癒させている。

 

人間としては限界近い長寿まで生き。

 

頭も衰えずに研究を続けられているのも、それが理由の一つだ。

 

アンチエイジングまで受ける気は無いとしても。

 

病気までもを、摂理による死として受け入れるつもりはないらしい。

 

この辺りも、人それぞれの考え方。

 

少なくとも、アトミナにとってもメクレットにとっても、面白い事ではある。

 

さて、会議は終わった。

 

魔界を出て、幾つかの空間転移を経て、寺院を出る。

 

更に其処から幾つもの空間転移を経て、目的地に。

 

今回の目的は。

 

姿を見せた邪神の確認だ。

 

どうやら、懸念が当たったらしい。

 

キルヘン=ベル近郊。

 

エレメンタルと呼ばれる下級の邪神が、実体化を始めている。

 

だが、実力的に見て。

 

ソフィーのエサにするには丁度良い。

 

以前、キルヘン=ベルの衛星都市として、細々とやっていたナーセリーを滅ぼしたのは此奴らの一柱。

 

しばらく復活する兆しはなかったが。

 

どうしてか復活したらしい。

 

これについても研究をしてはいるのだが。

 

邪神は復活する事以外、あまりよく分かっていないのだ。

 

恐らく世界の仕組みには関係しているとは思われるのだが。

 

それ以上の事は分からない。

 

それが現実である。

 

「今ならば簡単に仕留められますが」

 

護衛をしている戦士に聞かれるが。

 

首を横に振る。

 

これはソフィーにそれとなく情報を流してやれば良いだけだ。

 

現状の此奴の実力は、丁度ノーライフキングの少し上くらい。勿論放置しておけばパワーアップしていくだろうが。

 

それでもソフィーの成長速度からすれば、エサに最適である。

 

しかも、だ。

 

今ソフィーは、キルヘン=ベル北東の水源を目指しているらしい。

 

その過程で確実にこれとソフィーはぶつかる。

 

まあ、後はソフィーが死なないように監視だけすれば良い。

 

プラフタもついているし、まずそんなミスは起きないだろう。

 

ソフィーと一緒に行動している連中に死者が出るかも知れないレベルの相手だが。それでも、あのソフィーがその程度でこたえるとも思えない。

 

「監視だけはしておくように。 勿論刺激は不要」

 

「分かりました」

 

「頼むわよ」

 

一旦距離を取る。

 

後は、キルヘン=ベルを見に行く。

 

監視役であるテスは既にソフィーに正体を看破されてしまっているが。どうもソフィーは分かった上で泳がすつもり満々のようで。

 

テスは苦悩しているようだが。

 

此方も知った上で監視を続けさせている。

 

街の外で落ち合う。

 

テスは少し疲れているようだった。

 

元々多数の弟妹を養いながら、無茶な働き方をしているのである。

 

それでも金が足りなくて、深淵の者に入ったほどなのだ。

 

今も金を渡し。

 

手練れの錬金術師が造った栄養剤を渡して飲ませ。

 

体力を回復してから、話を聞く。

 

それによると。

 

ソフィーは寺院に住み着いていた例の怪物。ナザルスという元人間を、満足行く形であの世に送り届けたという。

 

まあ怪物と化していたが。

 

人間として死ねたのなら。

 

あれも本望だっただろう。

 

暴れ狂うので、部下達が何回か始末しようかと申し出てきたのだが。

 

放置していて正解だった。

 

「でも、ソフィーちゃん、お葬式の時にはずっと無表情で、少し怖かったです」

 

「あの子はこの世界を憎んでいるからね。 この世界を作った神を信仰する教会に対しては、良い印象を持っていないだろうさ」

 

「?」

 

「ああ、みていれば分かるわよ。 同類だって事はね」

 

テスを帰らせると。

 

魔界に戻る。

 

さて、此処からだ。

 

様子を見ながら、最後の計画を発動する。

 

ソフィーも勿論巻き込む。

 

その過程で戦いになるか、和解するかは別にどうでも良い。

 

興味があるのは、その後に、この世界には現在さえないのか、それとも未来はまだあるのか、結論がどう出るか、だ。

 

ソフィーはこの世界に奇跡的に現れた宿命の存在だ。

 

未来が欲しいと願えば未来を造り出せるかも知れない。

 

現在さえないと判断すれば現在を造り出せるかも知れない。

 

プラフタは既に気付いているだろう。

 

ソフィーの素質が、自分達以上だと言うことは。

 

育ちきれば、文字通り歴史上最強の錬金術師になる逸材である。それならば、育ちきって貰わなければならないのだ。

 

視線の先には。

 

大きな釜。

 

これが、今後の歴史を動かす鍵となる。

 

さて、ソフィーの動きを見ながら、計画を進めよう。

 

いずれにしても。

 

この世界の現状は。

 

変えなければならないのだ。

 

 

 

(続)




ソフィー同様、深淵のものも動いています。
その目的はより大きいものではありますが。

両者がぶつかる時は、近付きつつあります。

それが血なまぐさい因縁のものになるのか。

それを回避できるのか。

分かっているのは、深淵の者がやっている事は決して間違っていませんし。

この世界は五百年掛けて、やっと此処まで来たと言う事です。

多くの人や可能性が、深淵の者の行動で作り出されました。

ただ、未来を指向するには、それでも足りないのです。
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