暗黒錬金術師伝説6 暗黒!ソフィーのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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2、伸びよ芽

少し多めの流入民が来た。

 

何でも匪賊に脅かされていた村の住民達が、元々過酷な生活に嫌気が差してしまい難民化。

 

揃って豊かだと噂のキルヘン=ベルを目指して移動し。

 

そして途中である程度の脱落者を出しながらも。

 

到着した、という事だ。

 

人数は五十人ほど。

 

東の街から伝令が来て。

 

ホルストさんがすぐに対応を開始。

 

あたしの所にも、テスさん経由で話が回ってきた。

 

別に構わない。

 

そもそも年内に千人を超えるだろうと推察されていた人口だ。

 

ほぼ予定通りの人口増加が続いていて。

 

それを想定して都市計画を継続している。

 

自警団でも、人員を増やす計画を立てているが。

 

流石に人員の一割を超えないように、考えながら増やしているため。

 

すぐに増員を掛けるつもりは無い様子だ。

 

ともかく、顔役であるあたしは、プラフタと一緒に適当な所で調合を切りあげ、カフェに行く。

 

嫌な予感がする。

 

数が多いとは言え。

 

あたしの所に声が掛かったと言う事は。

 

ほぼ間違いなく何かあると言う事だ。

 

深淵の者も活発に動いているし。

 

あたしにも接触を図ってくるくらいだ。

 

何かおかしな事が起きていてもおかしくは無いと言える。

 

カフェに出向くと。

 

顔役は皆渋い顔をしていた。

 

予想は的中した、という事だ。

 

ホルストさんは咳払い。

 

笑顔を保っているが。

 

周囲の顔役はそうではない。

 

特にヴァルガードさんは露骨に不機嫌そうだった。

 

「ソフィー、プラフタ、来ましたね。 すぐに席に着いてください」

 

「分かりました」

 

「それでは、全員揃ったので、会議を始めます」

 

ホルストさんは宣言すると。

 

伝令から受けた話と。旅人の靴で様子を見に行ってきた自警団員のベンさんとタレントさんの報告が発表される。

 

もう一度確認、という意味合いも強いのだろう。

 

話を聞いて、あたしはそうかとだけ思ったが。

 

露骨にプラフタは眉をひそめていた。

 

何でも此奴ら。

 

村を作って寄越せ、とか言っているらしいのである。

 

「何でも出来る錬金術師がいるから来た、村を作ってすぐに寄越せ、生活水準も以前と同等以上じゃないと納得しないし、村長は顔役に入れろ、だそうです」

 

「はあ?」

 

思わず声を上げる顔役さえいる。

 

ホルストさんも、苦笑い。

 

あたしも、ああこういうのも来るよなあ、とかしか思わない。

 

悲惨な境遇でこの過酷な世界を渡り歩いている者達は多い。

 

だが、普通キルヘン=ベルまで来なくても。

 

途中の街で収容されたり。

 

危険を冒して街道を通ろうとまで思わない。

 

それがわざわざここまで来ると言うことは。

 

此処がそれだけ今、めざましい発展をしていると、噂になっているから、という側面もあるのだろう。

 

それはそれで好ましい事だが。

 

ここ最近、明らかに良からぬ輩が増えている。

 

牢に入れなければならないような奴もいるし。

 

場合によっては東の街のミゲルさんに連絡して、国の役人に引き取りに来て貰っている程だ。

 

最悪の場合は処刑しなければならないが。

 

今の時点では、其処までの凶悪犯は出ていない。

 

ただ、今回は特別にタチが悪い連中の様子で。

 

対応を間違うと。

 

そう、プラフタのような目に会うかもしれない。

 

重苦しい声。

 

つまり、相当に頭に来ているらしい声を上げたのは、ヴァルガードさんである。

 

「受け入れを拒否しても良いのではないのか」

 

「そうも行きませんよ」

 

「ソフィー、理由を聞かせろ」

 

「恐らく受け入れを拒否したら、そのまま匪賊化すると思います」

 

あたしがずばり指摘すると。

 

皆が押し黙る。

 

正直此処まで面倒な連中を受け入れる事になるとは。

 

考えていなかったのだろう。

 

数人という単位でなら。

 

ゴロツキが入り込んでくる事は今までもあった。

 

それらについては、受け入れる度に目をつけて。

 

問題行動を起こしたら即時に拘束していた。

 

故に今までは問題は起きていなかった。

 

そもそも生活水準については、都会よりも良いものを用意しているという自負もある。

 

お金は生活している人間に行き渡っているし。

 

食べ物も美味しい。

 

インフラも整備されていて。

 

水も安全。

 

下水だって地下に通している。

 

猛獣の危険だって少ない。

 

ネームドも現時点では周囲にいない。

 

邪神さえ、つい最近退けたばかりだ。

 

これだけ安全な街はそうそうない。

 

だがそれがゆえに。

 

火に集まる蛾のように。

 

ろくでもない連中が集まってくる、という事だろう。

 

プラフタが挙手。

 

「私が行って見極めましょうか。 私も過去に、同じような者達によって、痛い目にあった経験があります」

 

「プラフタはキルヘン=ベルと同規模の街の顔役だった過去があるのでしたね。 いずれにしても、ミゲルにこれ以上そのような者達を押しつけておくわけにもいかないでしょうし、様子を見に行かなければ」

 

ホルストさんに、あたしも指名される。

 

フリッツさんも。

 

とりあえず武闘派と立場のある人間を揃え。

 

そして様子を見に行く。

 

それで会議は終わり。

 

すぐに準備をして、動く事になった。

 

ジュリオさんは流石に関係無いので、キルヘン=ベルに残って貰うが。

 

コルちゃんには来て貰う。

 

物資などの確認をして欲しいと、ミゲルさんから要請があったらしい。まあ五十人がいきなり居座ったのだ。

 

それは倉庫の中身が少し心配にもなるだろう。

 

本職に見てもらって。

 

状況を確認して欲しい、という心理はよく分かる。

 

コルちゃんは何人かホムを雇っているが。

 

皆ホムらしい生真面目な者ばかりで。

 

数字にも強い。

 

ホムちゃんがちょっとばかり席を外したくらいで。

 

問題が起きることは無いだろう。

 

今までも、そうだったように、である。

 

準備は一刻で終わったので。

 

すぐに東の街に。

 

そういえば、街道もかなり緑化が進み、防護壁も東に随分進んだ事もある。拡がっている安全圏。畑も森もかなり大きくなっていて、安心して様子を見ていられる。工事をしている人達も、負担が掛かっている様子は無い。

 

丁度今、元々ある街の方では、何種類かの野菜と木の実が収穫の時期に入っていて。

 

加工して保存食にしたり。

 

或いは日持ちしないものはその場ですぐに食べたりと。

 

豊かな生活が実施できている。

 

東の街も、畑が拡がったことで食糧にはまったく困っていない様子だし。

 

さて、迷惑者達がどう出るか、次第か。

 

旅人の靴も改良を進めているため。

 

移動速度は更に上がっている。

 

一日もかからず、東の街に到着。

 

襲撃を受けることもなかった。

 

東の街は、以前とは見違えるようだ。

 

家々はどれも綺麗になっているし。

 

ボロボロだった防護壁もしっかり作り直されている。

 

迎えに出てきたミゲルさんも、少しつやつやしているかも知れない。

 

いずれにしても、以前の悲壮感は感じない。

 

とても綺麗な街になった。

 

だからこそ目立つ。

 

その一角を勝手に占領している集団は、である。

 

あれが例の問題者達だろう。

 

「よく来てくれた。 ホルスト殿、ソフィー殿」

 

「様子はどうですか」

 

「毎日勝手な事ばかりを口にしている。 街の自警団との小競り合いもむしろ積極的に起こしている様子だ」

 

「どうしようもないですね」

 

あたしはかなり頭に来ていた。

 

東の街の復興には、あたしも力を貸している。

 

キルヘン=ベルと東の街は、持ちつ持たれつの関係である。西の街はもうアダレットに所属しているから、国が違うので、あまり関係は持てないが。此方は同じ国で、しかも非常に距離的にも近い。

 

色々な苦難を一緒に乗り越えてきた街だという事もあって。

 

ならず者が好き勝手にしているのを見れば、当然頭にも来る。

 

「ひょっとして、難民に偽装した匪賊という可能性は」

 

「いや、それはない。 此方でも確認したが、出所ははっきりしている」

 

そうか。

 

匪賊だったら躊躇無く皆殺しにしてしまうのだが。

 

そうもいくまい。

 

ミゲルさんの話によると、元々貧しく、荒れていた村だったらしいのだが。これが最悪な事に、匪賊に目をつけられた。

 

それもかなり大規模で、周辺の街が対応に苦慮する連中に、だ。

 

それで、いっそ潔いという程に、村を捨てて逃げ出し。

 

発展著しいと噂のキルヘン=ベルを目指して動き出した、というのが事のあらましらしい。

 

まあ大体ホルストさんに聞いた話と同じだ。

 

食い扶持を用意することは出来るが。

 

ただ見ていると。

 

あまりにも目に余る。

 

仕方が無い。

 

一旦此処で、ある程度話を付ける必要があるだろう。

 

フリッツさんとあたしとコルちゃんを伴って、ホルストさんが彼らの所に行く。

 

剣呑な目つきが此方に向けられ。

 

そして不快感がフリッツさんの目に浮き上がるのを、あたしは確かに見たが。今は黙って置く。

 

「なんだあてめえら」

 

「キルヘン=ベルの顔役ですよ」

 

「てめえら舐めてんのか!? こっちはなんでずっと足止めなんだよ! さっさと街に入れろやゴラア!」

 

巻き舌でまくし立てる。

 

そうだそうだと声が上がる。

 

なるほど、これは東の街で足止めする訳だ。

 

フリッツさんが剣を抜く。

 

文字通り、稲妻が閃くような速度だ。

 

瞬時に鼻先に剣を突きつけられた、大柄な男が黙り込む。

 

流石に荒事をやっているだけあり。

 

相手が本物の傭兵だと気付いたのだろう。

 

「ホルスト、断るべきだと思うが」

 

「そうですね。 この有様では、街に入れても害にしかなりそうにありませんね」

 

「斬るか?」

 

「……」

 

ホルストさんは何も言わない。

 

流石に青ざめ始めるゴロツキども。

 

フリッツさんに隙が無い事くらいは分かる実力がある、という事なのだろう。

 

というかこんな連中。

 

その気になれば、フリッツさんが出るまでも無い。

 

あたしがその場でミンチにしてやる所だが。

 

まあ、とりあえず出方を見るとしよう。

 

「まず貴方たちの顔役を出しなさい。 あまりにも身勝手な要求をしている事を理解出来ていないようですので、話をしっかりします」

 

「ちょ、長老……」

 

「どけ」

 

さっきまで騒いでいた連中を押しのけて。

 

粗野と野蛮を足して二で割らない大男が前に出てきた。ヒト族だが、それ故に暴力性と狡猾性を兼ね備えているのが見て取れる。獣人族が集団の長にならない事が多いのは、どうしてもヒト族に狡猾さで劣るからだ。

 

なるほど、大体読めてきた。

 

此奴ら、匪賊に片足を突っ込みかけていた連中なのだろう。

 

匪賊に追われたと言うよりも。

 

匪賊と抗争を続けていて。

 

それで敗れて村を離れた。

 

それが真相に違いなかった。

 

「なあ、あんたのところ、凄い錬金術師がいるらしいじゃねえか。 俺たちだって人間だし、良い生活はしたいんだよ。 受け入れてくれてもいいんじゃねえか?」

 

「それは態度次第です」

 

「ああん?」

 

「まずきちんと働いて貰います。 他の人達と同じように。 危険も担保して貰いますよ、当然の話ですが。 見ると腕自慢の人間も多いようですね。 自警団に入って、獣とも戦って貰います」

 

巫山戯るなと、喚こうとした相手側の顔役だが。

 

当然、フリッツさんの剣が、瞬時にのど元に向けられていた。

 

フリッツさんの表情は本気だ。

 

今までの言動からしても。

 

これは斬っても罪にならないだろう。

 

「それと、発展していて安全だというのは間違いですよ」

 

「何……」

 

「知らないようですね。 つい最近キルヘン=ベルは、ドラゴンと邪神の襲撃を立て続けに受けています」

 

まあ、これは半分は嘘だが。

 

別に完全に嘘というわけでは無い。

 

あたしがドラゴンと邪神を葬ったのは事実だ。

 

そして、今後も、

 

恐らく間違いなく、ドラゴンも邪神も新手が来る。

 

「見たところ荒事に自信があるようですね。 当然、今後キルヘン=ベルに来るのなら、最前線でドラゴンとも邪神とも、それにネームドとも戦って貰います」

 

「お、おい、長……!」

 

逃げ腰になる手下。

 

半分匪賊に足を突っ込んでいる連中だ。

 

こんな話を聞かされれば。

 

自分がどんな事をしていたか。

 

すぐに分かる事だろう。

 

そして、そもそもだ。

 

ドラゴンや邪神を退けられる街何てそう多くは無い。

 

それだけの軍事力があると言う事で。

 

乗っ取ることなど不可能。

 

それが理解出来たはずだ。

 

「さて、どうします。 街に来るならば、当然最前線で、ドラゴンとも邪神とも戦って貰う事になりますが」

 

「そ、それは……」

 

「ラスティンの首都ライゼンベルグを目指してはどうでしょう。 丁度此処にはラスティンの役人もいます。 貴方たちがやっていたことを、正確に紹介状に書いてくれることでしょう。 貴方たちが良民だというのなら、きっと何の問題も無く受け入れてくれると思いますが?」

 

真っ青になった大柄な男。

 

というか、まだ此奴気付いていないのか。

 

丁寧に喋っているホルストさんでさえ。

 

此奴らをまとめて畳むには充分な実力を持っていることを。

 

一人が妙な動きをしている。

 

鼻を鳴らすが、気付かないフリをしておいてやる。

 

後ろでやりとりを記録しているコルちゃんの背後から近づいているのだが。

 

程なく、そいつは。

 

コルちゃんに襲いかかり。

 

残像を掴んで、愕然とした。

 

直後、コルちゃんがそいつの横っ面に強烈な回し蹴りを叩き込む。

 

首が嫌な角度に曲がったそいつは。

 

吹っ飛んで、地面に叩き付けられ。

 

バウンドして、防護壁にぶつかり。

 

ずり落ちた。

 

コルちゃんも、ドラゴンや邪神と戦って来たのだ。

 

如何に戦闘力が低い傾向のあるホムでも。

 

この程度の相手に遅れは取らない。

 

多分コルちゃんを人質にして、言うことを聞かせるつもりだったのだろう。

 

「随分と非紳士的な行動なのです」

 

「……っ!」

 

「こういうことをするからには、覚悟は出来ているのでしょうね? ソフィー、私が合図をしたら、好きなようにして構いませんよ」

 

「はい」

 

あたしが前に出る。

 

ソフィーという名前を聞いて、明らかに此奴らは逃げ腰になる。

 

匪賊の間では有名だと聞いている。

 

キルヘン=ベルに近づいた匪賊は、一人も生きて帰れない。

 

鏖殺のソフィーと呼ばれる凄まじい残虐性を誇る錬金術師がいるからだ、と。

 

あたしがそれだと気付いたのだろう。ようやく。

 

そして既にあたしは戦闘モードだ。

 

体から放たれている魔力と殺気は。

 

匪賊なんぞ束になってもどうにもならないことを分からせるには充分なはずである。

 

悟っただろう。

 

キルヘン=ベルに来ても、好き勝手な事など出来ないと。

 

理解しただろう。

 

自分達は、ネームド以上に危険な相手の足下で、好き勝手な事をほざきまくり。相手を舐め腐っていたのだと。

 

「わ、分かった! ……ライゼンベルグに向かう事にする。 紹介状を書いてくれ」

 

「そうですか。 決断を間違わなかったようで良かったですね」

 

やりとりを見ていたミゲルさんが来て。

 

厳しい視線を向けられる中。

 

ゴロツキどもの長は。

 

土下座をした。

 

そしてミゲルさんは険しい顔のまま紹介状を書き。

 

手渡したのだった。

 

 

 

一人、コルちゃんを襲おうとした奴だけはその場で引き取る。投獄した後、反省が見られないようなら追放する。

 

五十人ほどがとぼとぼと東の街から出て行く。自警団が、監視のためについていった。彼らも以前ネームドとの戦いで共闘したりもしたのだ。ゴロツキ崩れに遅れを取ったりする事は無いだろう。

 

そういえば、あのゴロツキどもの中には、女性や子供、老人がほぼ見当たらなかった。

 

恐らくは、村を捨てるときに、殆どを一緒に捨ててきたのだろう。

 

匪賊と殆ど変わらない思考回路だ。

 

いっそのこと、村に戻ったらどうだろうと思ってしまったが。

 

それは敢えて口にしない。

 

連中が占拠していた辺りは、ゴミや汚物が散らばり、凄まじい有様だったが。

 

ミゲルさんは、今までに味わった災厄に比べれば何でもないと、むしろ穏やかな表情だった。

 

「ありがとう。 ホルスト殿、ソフィー殿、助かった」

 

「何、相手が分かり易い阿呆だったからですよ」

 

「それでも、この街だけでは対応出来なかっただろう」

 

コルちゃんが倉庫を見て、戻ってきた。

 

食糧の備蓄は充分だそうだ。

 

彼奴らがかなり食い荒らしたようだが。

 

それでもまだまだ余裕があるという。

 

確かに、東の街の畑は、黄金の稲穂が頭を垂れているだけではなく。他にも多くの野菜が実っている。

 

森にも美しい緑と、木の実が多数。

 

これならば、住民を養ってあまりある筈だ。

 

ミゲルさんの家に移って、軽く話をする。

 

「今のままキルヘン=ベルを拡大すれば、二年か三年の間には、この街と合併が出来るでしょう」

 

「そうなると人口二千を超える規模の街になるな」

 

「そういう事です。 人口万を超える事も、私が生きている間に達成出来るかも知れません」

 

「だが、あのような輩が来る頻度も増えるだろう。 私の責任も重くなるな」

 

ミゲルさんはあたしに向き直ると。

 

改めて礼を言う。

 

この街にも、まだまだあたしの物資は流れ込んでいる。

 

旅人の靴も。

 

マイスターミトンも。

 

グナーデリングも。

 

土地活性剤も。

 

それに各種の薬も。

 

ホルストさんは、この街との連携を何より大事に考えていて。

 

その結果、重要な戦略物資を多数譲渡しているのだ。

 

だから、この街はこの街で、西に街を拡大している。

 

森を拡げ、畑を増やし。

 

猛獣を駆除しながら。

 

なお、オスカーもそれで、時々此方に請われて足を運び。

 

緑化作業の指導をしている様子だった。

 

「ありがとう。 今後も世話になる」

 

「いえ。 此方も、今回はお世話になりました」

 

実際、ミゲルさんが足止めしていなければ。

 

彼奴らは無節操にキルヘン=ベルになだれ込んでいただろう。

 

まあ悪客害客はお断り。

 

それは当然の話だ。

 

誰も彼もを救える人はいるのかも知れないが。

 

少なくとも、邪悪な目的で侵入してくる輩を受け入れてやる理由は無い。

 

今日明日はこの街に止まる。

 

逆恨みをした連中が、襲撃を仕掛けてくるかも知れないから、である。

 

何、二日くらいなら。

 

キルヘン=ベルを留守にしても問題は無いだろう。

 

その間に、東の街の周囲を見て回る。

 

遠めがねを使って確認すると。

 

水源以外にも、面白そうな場所が幾つか見受けられた。

 

今後足を運ぶのも有りかも知れない。

 

貴重な素材は。

 

幾らあっても足りないのだ。

 

 

 

二日後。

 

東の街の自警団員達が戻ってきた。

 

何でも、隣の町であの連中はそのまま拘束されたらしい。かなりの悪行を繰り返していたらしく、手配書が回っていたそうだ。

 

それに、ミゲルさんの書いた「紹介状」が決定打になった。

 

匪賊だったら問答無用で処刑だが。

 

流石に其処まではされず。

 

檻車が用意され。

 

それに詰め込まれて、ライゼンベルグに移送されるそうである。

 

なお、裁判はライゼンベルグで行うそうだ。

 

更に、だが。

 

やはり彼奴らが放棄した村には、老人や子供が取り残されており。

 

だが不思議と、匪賊は全滅。

 

周囲の猛獣もどうしてか怯えて村には近づかず。

 

救助部隊が、既に近くの街に引き取った、と言う話も聞かされたらしい。

 

何となく状況は見当がつくが。

 

あたしは何も言わない。

 

いずれにしても、これで全て綺麗に解決、と見て良いだろう。

 

それに、キルヘン=ベルに悪さをしようとして入り込む奴も、これでぐっと減るはずだ。

 

鏖殺のソフィーという名前がかなり知れ渡っているようだし。

 

今後は舐めた真似をする事は出来なくなる。

 

更に、ミゲルさんに言って。

 

もっと恐ろしい噂話を流して貰う事にする。

 

「この間、邪神を討伐した際に、とどめはあたしが刺しました。 頭を握りつぶして」

 

「ほう、それは凄い。 倒したのはソフィー殿だとは聞いていたが」

 

「これを噂にして流して貰えますか。 そうですね、神殺しのソフィーというのが良いでしょう」

 

「承知した。 素手で邪神を殺したとなれば、その噂が与える恐怖は絶対的なものになるだろう」

 

これでいい。

 

恐怖は人間に大きな影響を与える。

 

特に後ろ暗い事をしている連中には、である。

 

さて、話もコレで終わりだ。

 

戻る事にする。

 

プラフタはあらゆる人間に平等に接しようとした。

 

それで失敗した。

 

プラフタは優しかった。

 

あたしよりも間違いなく平等で。

 

だから駄目だったのだ。

 

荒野にはああいうのがいる。

 

ああいうのには、優しくすれば、つけあがるだけ。

 

誰も彼もを平等に救えるわけでは無い。

 

勿論何かしらの手段で救う事は出来るのかも知れないが。

 

いずれにしても、今は無理だ。

 

キルヘン=ベルに戻る。

 

まだまだ。

 

やらなければならないことは、山のように残っている。

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