喰種を幸せにする人間 作:干支
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「──爺さん、ここってバイト募集してないんすか?」
いつものように喫茶店あんていくに来ていた俺はカウンターでコーヒーを入れる芳村さんにそんなことを聞いた。
「……藪から棒にいきなりだね。どうかしたのかい?」
「いやー、俺って親からの仕送りで生活してるんすけど、そろそろ大学2年になるしバイトして自分で稼がないとクズ大学生になりそうで」
「なるほど……」
唸るマスター。
人手不足ってわけじゃなさそうだし、バイトが増えるメリットあんまりなさそうだもんな。
でも俺も働くなら知ってる人とやりたいし。
「あまり募集はしてないんだけどね。君からの頼みだからねぇ……」
「あー、まあ無理にとは言わないっすけど……」
「……ひとまず時間をくれないかな?少し考えさせて欲しい」
「りょーかいです……あ、今日コーヒーはブラックでお願いできます?」
「おや、甘めじゃなくていいのかな?」
「"研究"でこの後大学行って、その後家でまたパソコンとにらめっこで深夜までやる予定なんで目を覚ましときたいんですよねー」
「ははは、分かったよ。だが、無理は禁物だからね」
「わーっとりますって」
笑い会う時間。
いいなあこういうの。のどかな日常。素晴らしいね。"こんな世界"でも平和な日常はあるんだなあ。
まあ、この20区だからこそだろうけど。
と、その時だった。
店内の扉が開き、一人の女性が中へと入ってきた。
「お疲れ様でーす……げっ、トシ…!?」
「お、トーカちゃん……"げっ"ってなに?」
愛しの癒しトーカちゃん。
片目が隠れるほどに伸びた藍色の髪。メカクレ属性っていいよね。
「アンタ、ウチに来すぎじゃない?」
「ははは、トーカちゃん。彼はありがたいウチの常連さんだよ」
「そうだぞ。爺さんもこう言ってるんだ。"お越しくださってありがとうございます"でしょ?そのままメイド服を着てご主人様って言ってもらってもいい?」
「……キモ、誰が言うかそんなこと」
「うっはー、こいつぁ手厳しい」
変態を見るような目をしてくるトーカちゃん。
なんかこう……興奮するなあ。
……変態じゃないよ?ホントダヨ。
「日暮君、今日は何か食べていかないのかい?」
「え?そーだなぁ、そんな腹減ってないんすけど……あ、軽くサンドイッチ貰いますか。トーカちゃんの愛のこもったお手製のやつ食べたいな」
「……アンタ1回頭打って死んでよ」
相変わらずの毒舌。いいね。これこそどーかちゃんだ。
しかもイヤイヤ言いながらもちゃんとやってくれるの俺は知ってるんだ。優しいんだもん。ツンデレさんだよツンデレさん。
「……チッ、ハムとレタスのでいい?」
「そのツンデレなとこ嫌いじゃないよ。むしろ好き」
「あ゛?」
……睨む目はちょっと怖いけどね。うん。
「錦くん錦くん」
「……なんだよ」
「のどかだねぇ」
「……そうだな」
「あ、錦くん錦くん」
「……なんだよ」
「……のどかだねぇ」
「頼む、今すぐ俺の前から消えてくれ」
大学に来るといつものように錦くんにダル絡みをする時間。
いやいやいいながら付き合ってくれる錦くんは嫌いじゃないよ。
「で?なんだよ、いきなり呼び出して」
「うむ、今日"俺の研究"手伝って欲しくて」
「……なんで俺なんだよ」
「だって俺の"裏の研究"知ってるの錦くんとあんていくのマスターさんくらいしかいないもん」
「……………」
黙る錦。
通常4年前期、早くても3年後期に入る研究室。それを俺は1年の初期から使わせてもらってる。一室を一人で。贅沢させてもらってます。
内容はとある生物、"喰種"の生態調査。
弱点やら何やらを見つけ討伐に貢献しようとしているわけだ……表向きは。裏向きは……。
中学の頃に調べあげた情報を教授に教えてみたら"君は天才だ"なんて持ち上げられて研究室を貰えた。嬉しいけど過度な期待はやめてほしい。
「……コーヒー」
「ん?」
「後でコーヒー奢れ」
「おっけ任せろ!トラック一台分くらいまでなら缶コーヒー買えるから!」
「そんなにはいらねえわぼけ」
本日も暴言が染み渡る。これこれ、これよこれ。この他愛もない会話が癒しなんだよなあ。ドMじゃないよ?
「で?俺は何をすればいいわけ?」
「えーと、先ずは……ひとまず移動しつつ話そっか」
錦と立ち上がり研究室を目指す。
今日はアレとソレとコレをやって……アッチは後でいいか。
はあー、忙し忙し。
あー、設定が定まらない。
話をどうやって作ってこうか悩む。