青が翳る曇天   作:Park M

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 新人先生が書いた作品なので、色々杜撰なところがあると思います。
 
 なのでミスがあったとしても許して欲しいじゃんね☆


存在しない記憶は存在する

 

 

 

 

 

 透き通る様な青空に、穏やかに流れていく雲。通り過ぎる雲に時折遮られながらも、地上を眩く照らす朝日。進んだ文明とは裏腹に、不純物の混じらない澄んだ空気。街の喧騒に紛れて聞こえてくる銃声に悲鳴。些細な言い争いから突如として始まる銃撃戦。そして、爆発音と共に吹き飛ぶ少女達。

 

 ーーー今日もキヴォトスの日常が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふん、ふん、ふふーん♪」

 

 ボクは上機嫌に鼻歌を歌いながら、軽い足取りで道を進んでいく。周りを見渡すと、スーツを着たロボットや二足歩行する犬や猫などの動物達、制服を着た生徒にカツアゲをするスケバン達が見える。雑多な人々……人?が行き交うこの街には転生した当初こそ驚いたものだけど、十数年も過ごしていると慣れてくるものだ。

 

 ……そう、転生。普通なら与太話とか虚言とか言われて流されて終わりだと思うけど、これは本当の話だ。ボクは何の因果か、気付いたら前世でやっていたゲーム、ブルーアーカイブの世界に生徒として転生していた。前世では健全な男子高校生をやっていたから、女の子の体になっていたのはびっくりしたし大変だったけど、やっぱり慣れってものは凄くて今では違和感なく過ごせている。ちなみに前世での死因は……実はちょっとボクもよく覚えていない。

 

 ふと、ボクは少し視線を横にずらす。そこには前世で見慣れた現代風の建物とその間からは近未来的な塔ーーサンクトゥムタワーが見える。今のボクの目的地であり、行政制御権の執行をとり行うキヴォトスの中枢的な場所だ。だけど、今はその機能を停止していて、しかも復興の目処は立っていないらしい。

 それもその筈。サンクトゥムタワーの制御権を持つ連邦生徒会長が失踪している為、誰にもその機能を制御する事が出来ないのである…そう、先生を除いて。

 

 「ついに、ついにブルアカ本編が始まった!」

 

 この世界に転生したボクは、本来ならブルアカ本編には存在することのない、有り体に言えば異分子という訳だ。もし、そんなボクが先生が就任する前に原作キャラ達と関係を持ってしまったらどうなってしまうのか、ボクには皆目検討も付かなかった。もしかしたらストーリーそのものが変わってしまって、エデン条約編どころかアビドス編で躓く事になってしまうかもしれない。可能性の話だろうとそんなことになってしまえば、このキヴォトスが他ならぬボクのせいで火の海に沈むことになる。

 

 そこでボクは、原作に出てくる学校には入らず誰も知らない様な辺境の学校に入学することにした。辺境の学校ていうのもあって自治区も小さく、生活する上で少し不便な所もあるけど、周りを豊かな自然に囲まれた学校は思いの外神秘的で、人もいい人ばっかで悪くはなかった。だけど、その学校には登校義務というものが無く、来たい人は来いの精神で、肝心の授業も時折リモートで課題が配信されるだけの授業とは言えない何かだったのには少し思う所はあったけど。まあ、コミュ強なボクはそんな学校でも友達を作ってそれなりの学校生活を送って来たわけだが。コミュ強ボクですまない。

 

 そして、ある意味ここからが本題だ。本編が始まった今、物語の大筋はもう決まっている。ボクが徹底して本編前の生徒達と出来事には関わらないようにしたから、原作通りの物語が紡がれていくはず。つまり、ボクの唯一にして無二の特権、原作知識が通用するわけだ。そして、ボクはさっきも言ったようにブルーアーカイブというゲームをプレイしていて、熱烈なファンとまではいかなくてもそれなりに熱をあげていた。……会いたいに決まっているだろう、生徒達に。見たいに決まっているだろう、名シーン達を!

 

 ボクは如何にして原作の数々の迷シーン、もとい名シーン達を、ストーリーをめちゃくちゃにしない程度に近くで見ていられるのかを考えた。関わり過ぎず、かといって全くの部外者にもならない方法。悩みに悩んだ結果、先生の相棒的ポジションに収まればいいのではと考えた。あくまでボクは先生のサポートをする体で、ストーリーとキャラ達を眺めていればいい。先生は負担が軽くなって、ボクは先生と生徒達の絡みを見れて幸せな気持ちになれてwinwinの関係になれる。まさに、一石二鳥の考えなわけだ。正に完璧、パーフェクトな名案じゃないか!

 

 そんな訳で、ボクは今先生に会いにサンクトゥムタワーに向かっている。ボクの記憶が正しければ、先生はそこにいるはずだからね。

 

 

 

 

 

 ……我々は望む。7つの嘆きを。

 

 ……我々は覚えている。ジェリコの古則を。

 

 

 

 「ーー先生。ボクを、ボク達のことを、どうか忘れないでくれ……」

 

 

 

 「………さい」

 

 声が、聞こえる。

 それはまるで、なかなか起きない子供を起こそうとするお母さんのような……

 

 「…先生、起きて下さい」

 

 どうやら私は眠ってしまっていたらしい。この声は子供にではなく私に向けられたものだった。だとしたら、早く起きないといけない。

 ……でも、まだ眠いし後5分だけ…

 

 「起きて下さい!先生!!」

 

 「は、はいぃ!」

 

 大きく響いた声にびっくりした私は、二度寝を中断してすぐさま寝ていたソファから飛び起きる。凝り固まった体から骨の鳴る音が聞こえるけど、今は気にしてる場合じゃない。声の主の方を見てみると、白と青を基調とした制服を着てメガネを掛けた美少女が立っていた……心なしか、その額には青筋が立っている様に見える。

 

 「えっと……」

 

 「私の名前は七神リンです、先生。それと、お疲れなのは分かりますが、私が起こしているのに二度寝をしようとするのはやめて下さい。分かりましたか?」

 

 咎めるような声と冷めた視線に気圧された私は、赤ベコの様に首を縦に振る。というより、リンを無視して二度寝しようとしたのは事実なので、リンと私どちらに非があるのかは火を見るより明らかだ。……そう"ひ"だけに。

 

 「先生、今何かくだらない事を考えていませんでしたか?」

 

 まるで心の中を読まれているかのような質問に、背筋が凍る。何とか誤魔化さないと、彼女の堪忍袋は限界を迎えることにだろう。

 私もちょっと反省しないとね。

 

 「い、いや?何も考えてなんか無いよ?それより、私がここに呼び出された理由を聞きたいんだけど、いいかな?」

 

 「…まあ、いいでしょう」

 

 リンは呆れたように呟くと、一呼吸置いて私の質問に答え始めた。

 

「先生には、どうしてもやっていただかなくてはいけない事があります。連邦生徒会長が先生をここに呼び出したのもそれが理由でしょう」

 

 「なるほど…それで、その私がやらなくちゃいけない事っていうのは何かな?」

 

「今は時間が無く、詳しいことはまた後ほど説明しますが、そうですね…この学園都市の命運をかけた大事なこと……ということにしておきましょう。先生、他に聞きたいことはありますか?」

 

 「ありがとう。今のところは大丈夫だよ」

 

 私は小さく手を振って理解の意を示す。するとリンは私の反応に満足したのか、強張らせていた頬を少し緩めて、部屋の一角にあるエレベーターを指差した。

 

 「それでは先生には今から私について来てもらいます。まずはこちらのエレベーターに乗ってもらってそれから……あら?」

 

 リンの指差したエレベーターは、こちらがボタンを押す前に動き出した。私は誰かが乗ったのかな、と思いながらリンの方を見てみると、リンは怪訝そうな顔をして固まっていた。

 

 「どうかしたの?」

 

 「いえ、今日は先生と、ついさっき押しかけて来た人達以外に来訪者は居ないはずなのですが……」

 

 そうこうしている間にエレベーターはこの階を通り過ぎず、ピンポーンと軽快な音が鳴り、動きが止まる。どうやら件の人物は、私達の居る階に用があるみたいだ。

 そして、エレベーターの扉が開いていき、中の人物の全貌が徐々に明らかになっていく。

 

 「ふっふっふ、遂にやって来たぞこの場所に!」

 

 エレベーターの中には、一人の生徒が立っていた。

 

 すらりとしながらも出るところは出る体躯。薄灰色を基調にしたシンプルな制服。背中まで伸びる濡羽色の髪は、光の加減で所々青にも見える。そして、蒼い宝石を瞼の奥に宿したその容姿は、今まで見たこともない程端麗だった。

 

 目を奪われるというのは、こういうことを言うのだろう。彼女の溌剌としながらも神秘的な雰囲気に、私は目を離すことが出来なかった。

 

 「ふむ、もしかして君が先生かい?」

 

 「…あっ、えっ、私?まあ、うん、そうだけど……」

 

 彼女に長い間見惚れていた私は、覚束無い返事をしてしまう。もしかしたら、彼女に私が見惚れていたのがバレてしまったのでは、と思った私は恥ずかしくなり、頬が熱を持っていくのを感じる。リンは彼女が来てから何故か一言も話さずにいるけど、私のこの醜態も見られているだろう。

 ちょっと情けない所を見せちゃったかな……

 

 「ふむふむなるほど……この世界の先生は女性なのか

 

 彼女は私の姿をまじまじと見て、少し思案気な顔をした後、どこか安堵したような笑顔を浮かべる。

 

 「自己紹介が遅れたね。ボクの名前は贄成(にえなり)クオン。単刀直入に言うと、ボクの事を雇ってくれないかい?」

 「ボクの名前は贄成(にえなり)クオン。先生の力になりたいんだ」

 

 「っ……!」

 

 目の前の彼女に、また別の彼女の姿が重なる。彼女とは初対面で、それは存在しないはずの記憶。だけど、何故か私はその幻影(思い出)を振り切れなかった。

 

 「そっちの君は……って、どうして泣いているんだい?!」

 

 言葉につられてリンの方を見てみると……何故か大号泣していた。それはもう、乙女がしちゃいけない程顔をぐちゃぐちゃにしながら泣いていた。

 

 「えっ、あっ、いえ…わ、私にも分かり、ません……ヒッグ。ただ、貴女を、見た時から…グスッ、涙が止まらなくてっ……!」

 

 「えぇ……」

 

 

 

 これは、ただの予感に過ぎないけど、きっと彼女、クオンの存在は生徒達の…いや、生徒だけでなく私にとっての劇薬にもなるような気がする。ただ一つ言えるのは……クオンとは長い付き合いになりそうだということだ。

 

 

 

 

 





 Tips:クオンちゃんは記憶を思い出すことはないです。だって"存在しない記憶"だもんね^^
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