アダムは、心配していた。ダンナ達に口止め依頼をしたが情報漏洩の懸念は消えない。エルダーネイティブがザイオンを拠点にし、新人類に混ざり生活をしている事が露見したら衛星兵器で狙い撃ちされる。
アダムは、ダンナという人間が現れてからネイティブと新人類、人類の関係が崩壊を始めている事も理解している。このまま上手く事が運べば本当に新人類と人類が共存出来るのでは無いかと思っている……ダンナの犠牲で!!
決して、己を犠牲にしない。最近のネイティブ達の視線が、変わってきた事にアダムも気が付いている。肉食系から肉食系(意味深)へと。だからこそ、アダムは絶対にダンナには接触したくなかった。エルダーネイティブとはいえ、エリートネイティブやアルファネイティブ、それに新人類を纏めて相手にするほど戦闘力は高くない。敗北したら食われてしまう。
「あ、やべ!! コッチの位置がばれやがった。これだからハッカーは嫌いなんだ」
アダムは、イベリスからハッキングされて位置が特定された事に焦りを感じた。エルダーネイティブの直感が、この場に居たら食われると理解する。周囲のネイティブ達がアダムに元に集結を始めた。
当然、狙いはその身体だ!!
だが、ダンナ達がマザースフィアとの接触に成功した場合、情報漏洩しないように見張りたかった……よって、彼は、力の一端を解放して集まるネイティブ達と戦う。己の身を守れるのは己だけ。
………
……
…
「人類様、近くでこちらを監視していたドローンをハッキングしました。主犯の位置情報は、ネイティブ達に連携済みですが、それで宜しかったですか?」
「問題ありません。アダムさんが、裏切らないか監視しているんでしょう」
『オウサマ、ワタシ、イク?』
『ロウドウ、ガンバル』
アバドンとギガスがアダム捕獲に動こうか提案をする。だが、それには及ばない。この二人は、彼にとって大事な戦力だ。
「不要です。マザースフィアさんの存在には謎が多いです。万が一、この場に居る新人類の皆様が遠隔操作出来るのならば私の身が危険です。守ってくださいね」
新人類に謎のプログラムが仕込まれている可能性は未だに否定できない。イベリスとリリーが入念に診察したが怪しい所は見つからないが、油断は禁物だ。
そんな不安をかかえつつも、D1G-g2rによるコロニーへのハッキングが開始される。正直、彼には全く理解できない。ハッキングなど一部の天才しか出来ない芸当だ。
【マザースフィアに接続を試みます。一瞬でもネットワークが復旧できれば良いのですが……宜しいですか?】
今回のハッキングについては、イベリスやリリーもバックアップについており万全だ。彼女達の特別任務にも関係しているので、彼女達も気合いが入る。
彼は、絶対に失敗すると思っていた。コロニーが人類側からのハッキングを警戒しないはずもない。無数に防壁があるに決まっている。
【せ、成功です。fmfm……ナルホド。えぇ、その方なら私の横に居ますので、かわりますね。私が中継器となりましょう】
「嘘だろう。なんでだ」
彼は思わず本音を口にしてしまった。絶対に繋がらないと思っていたマザースフィアとの直接対話が実現してしまう。
【そう言えばまだ名乗っておりませんでしたね。私は、マザースフィア。コロニーの管理者。『人類の母』――と人は呼びます。貴方達は本当に素晴らしい】
何かを彷彿させるようなこの台詞。彼の脳裏に嫌なイメージがちらつき始めた。
「初めまして、マザースフィアさん。私はダンナ。貴方が送り出してくれた子達は本当に役に立っております。で、本題ですが何でこんなことを始めたんですか?人類より優れている貴方なら、水面下で人類を操るなど造作もないでしょう」
『愛、愛です。私は、人類の可能性を信じております。人類には更なる進化の余地があります。それこそ、私達新人類と比べて無限大です。その証拠に、貴方がおります。ネイティブ達の言葉を理解し統率できる。更には、我々新人類すら取り込めている。これが進化と言わず何というのです』
このAI声は幼い女性だが、中身は凄くヤバイものだと彼は直感で理解する。ヤンデレ度が限界突破。マザースフィアは、人類への愛故に更なる進化を期待してこのような事を始めた。
「つまり、進化した人類となら新人類は共に繁栄できると。マザースフィアさんは、血すら流れていない新人類と人類が家族になれると本気で思っているのか?」
『その通りです。家族とは、血の繋がりのみを言うのでしょうか。私はそうはおもいません。慈しみ合う心がヒトを家族たらしめるのです。血はその助けにしかなりません。愛です、愛ですよダンナさん。それに、家族とは他人同士が出会い築きあげるものですよ』
彼はこの言葉を聞いた瞬間、本能的に通信切断ボタンを押していた。
「流石はマザースフィアだね。良いことをいう。大丈夫だよ、マザースフィアがその気になれば新人類でも子供が作れるようになるって」
「その通りです、人類様。人類は、血のつながりを家族と言うみたいですが、マザースフィアの言うとおり、家族とは色々な形があります」
「ダンナ様。私はマザースフィアのことを誤解していた。やはり、素晴らしい方じゃないか。私達の関係を認めてくださった」
駄目だこいつ等、早く何とかしないと!! 彼は、本気でそう思った。
このカリスマ性を備えたマザースフィアの手の内から彼は逃げ切る事が出来るのだろうか。