世界を救う人類の性   作:新グロモント

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04:カワイイは正義

 彼が人類である事がレイヴンにとっては、信じられない事だった。人類と言えば、頭脳明晰、容姿端麗、頑強な肉体、メモリーから何度も蘇生が出来るのが人類。彼女は少なくともそう教わっていた。

 

「ダンナが人類だとは、未だに信じられない。マザースフィアからも人類がそのような脆弱性を持っているという情報は、受け取っていない」

 

「肉体を乗り換えるとか、平成のトラウマ製造器のボンドルドみたいです。止めてください。人間は、脆弱で弱い生き物です。後、マザースフィアって何者ですか?聞いた感じから貴方達の母親ですか?」

 

 彼も予想はしていた。マザーという響きは胡散臭い。こう言う場合、このマザーとか言うのが真の敵とかもあり得る展開だ。しかし、マザーという存在が彼女達のような至高の存在を生み出すならば、仲よくしたいとも思っていた。

 

 人類の共通認識では、カワイイは正義。

 

 例え本質的に悪だったとしても、可愛ければ全てが許される。これが人類が長い年月で辿り着いた真理だ。

 

「我々の創造主にして神だ。ダンナは、知らないのかマザースフィアを。この時代で知らない者など存在しないと思っていたが」

 

「話の流れからAI的な存在なのでしょう。20世紀には少なくとも存在していません。AIと言えば、ChatGPTが流行し始めた頃でしたので。……で、そのマザースフィアはどなたが作られたのですか?」

 

 形ある物は全て誰かが作っている。それは、疑いようがない事実だ。AIがAIを作ると言った事も出来るだろう。だが、彼女達が崇拝するマザースフィアという存在は彼にとってはどうにも胡散臭かった。

 

 彼女達……新人類が宇宙に追いやられた時には存在していたという事ならば、ネイティブ達の存在について無知であるはずがない。レイヴンが持っている知識ではネイティブは地球外生命体で宇宙より飛来してきた化け物だ。

 

 だが、現実には違う。ネイティブ達は、間違いなく原住人だ。元人間であった事は確実。

 

「マザースフィアが作られた存在など、ありえない。だって、マザースフィアは……スフィアは……」

 

「私はレイヴンさんの信仰対象に対して何かを言うつもりはありません。日本人は宗教には寛容なので、誰が誰を信仰しても自由だと思っています」

 

 今まで信じて疑わなかったマザースフィアに対する疑問は、高度な知識をもつレイヴンいとって苦しい物だ。なぜなら、一度疑ってしまえば、次から次に疑わしい事が目立ってしまう。

 

 レイヴンは、彼女なりに推測を立てる。現状知り得た情報とネイティブ達から得た情報を統合すれば……。

 

「ダンナは、ネイティブを作ったのがマザースフィアだと疑っているのか?」

 

「勝手な予想ですが、きっとこんな流れだと思っています。人類は、高度な技術を有するようになりAI開発においても目覚ましい発展を遂げた。一部の変態的な技術者達が、マザースフィアや貴方達を産みだした。当初は、それで良かった……人類に従順な強者。しかし、高度すぎるAIが人類を不要と判断する。人類と新人類との戦争が始まり、膠着状態となる。人類は無駄に数だけはいますからね。そして、人類抹殺ウイルスでも開発したマザースフィアがコレを散布。人類の一部がウイルスに適合して今のネイティブとなった。ネイティブとなった人類は、新人類を追いやる程の力を得てしまったと」

 

 使い古された小説のネタのような展開だ。

 

 だが、一番しっくりくる。レイヴンは彼の話が正しい事を前提に様々な脳内シミュレーションを行う。結果的にいえば、その仮説は肯定も否定もできない。ありえるかもしれない現状一番高い真実として彼女の中に保存される。

 

「ダンナは、実は頭が良いのか。」

 

「実はとか酷い事を言いますね。そんなの……馬鹿に決まっているでしょう。生体コンピューターを有する新人類の方達と一緒にしないでください。人類なんて、一部の天才とその他大勢の無能で構築されています。私は、間違いなく無能側です」

 

 妄想や想像と言った分野において、AIが人類に勝ることは難しい。この分野だけは、人類はAIの何世代も先に行っている。特に日本人は、アイツラ未来に生きているとか言われる奇特な人材だ。この分野での追随は、許さなかった。

 

『オウサマ、キンジョ、メモリー、ホカンコ、アル』

 

『アンナイ、アンナイ』

 

 ネイティブ達が会話を聞いており、新人類達の悪行が記録されている保管庫があると教える。そこに行けば、彼の言葉の裏付けとなるだろう。

 

「ありがとう、みんな。レイヴンさん、彼女達から近所にメモリー保管庫があるそうです。私では恐らく理解出来ないでしょうが、貴方が行きたいならご案内します」

 

「行こう。私は、真実が知りたい」

 

 彼は、レイヴンとネイティブの愉快な仲間達を連れてメモリータワーがある地へと向かった。

 

 

R月T日

 

 最近、アバドンさんの剣技に磨きが掛かってきた。物は試しに虎眼流の技を教えてみた所、再現してしまう。特に流れ星を再現してしまうとは恐れ入った。間合いを伸ばす事が出来るその技術は、訓練相手にされたレイヴンさんも涙目だ。

 

 だが、対するレイヴンさんも流石は人類の叡智の結晶。エネルギー消費をする事でバーストスキルなる特殊スキルが使えるらしい。まるでゲームの世界かよと言いたくなるが、フロム製ならあり得ると納得してしまった。

 

 

#月’日

 

 人類史が刻まれているというメモリタワーに向かおうとしたが、道中に様々なトラップや妨害に阻まれる。パスワードを入力しないと入れない扉など、何故こんな場所にとおもってしまう。

 

 だが、こんなのを馬鹿正直に進む何てことはしない。コチラにはギガスさんという穴掘り名人のアルファネイティブがいる。彼女に掛かれば、メモリータワーに直通ルートを作る事は簡単だ。

 

 私が混浴して、背中を洗い流すことを報酬に引き受けてくれた。人間は、何かを得るには何かを失わないといけない。等価交換の原理だ。この失った物は、レイヴンさんに背中を流してもらう事で埋め合わせとした。

 

 人類の付き合いは、裸の付き合いから始まると熱弁した。ナノテクノロジーの塊で、私と比較にならない程の知性を備えているが、叡智勝負で言えば人類は十分戦える。

 

 

 

○月○日

 

 コロニーでの生活を聞いてみた。コロニーと言えば、思いつくのはガンダムの風景だ。コロニー内部では地球環境を再現した場所があるのかなど気になって聞いてみた。だが、帰ってきた答えは、つまらない物だ。

 

 コロニーというより大型宇宙船みたいな感じらしい。せめて、マクロス風の宇宙船なら良かったが、スターウォーズ風らしい。憧れを返して欲しい。

 

 せめて、巨大ロボットがいるとか変形機体が存在するとか、色々根掘り葉掘り聞いてみた。だが、返ってくる答えは軍事機密というばかり。ただ、強化外骨格風の強化パーツがある。それならば、私でも装着出来そうだ。

 

 その名もプロビデンスと言うらしい。名前からして、悪役機体である事は間違いない。それにファンネルみたいな武装もあるだろうと今から期待してしまう。

 

 マザースフィアとの交流がなされたときには、是非一台欲しいとお願いしてみよう。

 

 

G月F日

 

 メモリタワー前に到着した。地下通路のお陰で、非常に楽に移動が出来てしまう。ネイティブの採掘能力は桁外れだった。当然、正面門は閉ざされていたので、ギガスさんの力を借りて地下から侵入しました。

 

 正面門が開いてないなら裏口を作れば良い。レイヴンさんは、馬鹿正直に正面から解除を試みようとしていたらしい。もう少し頭を使って欲しい。無駄に優秀な頭脳が大事なときにポンコツになるのはアニメや漫画だけで十分だ。

 

 EIDOSという企業ロゴが各所に書かれている。実に胡散臭い。どのレベルかというとアンブレラと同じレベルで胡散臭い。間違いなく元凶くさい匂いがプンプンする。

 

 最深部の放送で人類はボディーセルとかいうナノテクノロジーの肉体に乗り換えたとか言っている。確かに、一部の人類はそれに乗っかるだろう。生身が良い場合もある。機械のボディとかどんな細工がされているか分からないから恐い。

 

 レイヴンさんが端末を操作して色々情報を集めている。何をしているか理解出来ない。身体からケーブルを伸ばして端末と直結している。人間に不可能な芸当を平然とやってのけるのは止めて欲しい。

 

 大事な事を言っておきますが、老います。病にもかかります。深海の水圧に適用、宇宙空間に適用、水と酸素なしでも活動とか不可能だからな。試そうとするんじゃないぞ、ふりじゃないからな。

 

 新人類と一緒にしないでよね。

 

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