世界を救う人類の性   作:新グロモント

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09:百合

M月Y日

 

 本日、この人類唯一の拠点に新しい仲間が加わった。危ない所だった。あの危険地帯から脱出する為、アバドンさんとギガスさんが新人類の二人を丸呑みして何とか窮地を脱する。ネイティブの腹の中以上の安全地帯は無いだろう。

 

 おかげで五体満足で助け出すファインプレー。気絶した彼女達を連れて帰る。そして、彼女達に相応しい寝所が無かったのでとりあえず、汚れた服を脱がせてテーブルの上に安置した。

 

 目覚めた時に落ちないようにしっかりと拘束も忘れていない。彼女達の真横で新メンバー加入のお祝いの料理をアバドンさんが準備している。過去の時代でも滅多に食べられない生本マグロの解体ショーが開催されていた。こっそり、味見するアバドンさんやギガスさん達を見た彼女達の顔は絶望に染まっていた。

 

 生魚は、受け入れられないのかと思い……鶏を潰してみんな大好きなチキンまで用意した。用意された食事を残す事は、この時代許されない。それは、過去の時代でも同じだ。出された物はアレルギーとか特殊な事情が無い限り食べるのがマナー。

 

 幸い新人類はアレルギーといった事は克服されている。つまり、何でも食べられると言う事だ。

 

 

B月W日

 

 第五空挺部隊の二人を保護してから数日が経過する。だが、何故かドンドン憔悴していく気がする。美味しいご飯を三食あげている。少しでも彼女達に良い心証を与えようと……本日は大きな伊勢エビを捕まえてきた。

 

 今もビクンビクンとはねる伊勢エビをアバドンさんが手際よく活け作りにする。見ましたか、この包丁捌き!! コレに関しては、レイヴンさんより上ですよ。このぷりぷりの生伊勢エビのお刺身を私自ら食べさせてあげるよ。

 

 普段、ヤンデレMAXなレイヴンさんもこの時だけは何も言わないんだよね。それどころか、哀れみの視線を彼女達に送っている気がする。

 

 リリーと名乗る少女が、イベリスの分を私が食べるから彼女は許してやってくれ。服従を誓うとまで言ってきた。対するイベリスも私が…という事になり、それではまるで私が拷問をしていたみたいじゃないか。

 

 結果的に丸く収まったからよいか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 新人類には、料理という習慣が全く無い。そんな中、生魚や肉料理などはハイレベル過ぎだとレイヴンから彼は初めて聞いた。

 

「もっと、早く教えて欲しかったな」

 

「私だって人類が生魚や肉を好んで食べるなんて知らなかった。だが、結果的に二人は忠誠を誓ったわけだが……抱くつもりか?」

 

 光ブレードを取り出して、素振りを始めるレイヴン。

 

 彼は、抱けるなら抱きたいと思った。人間は雑食なんだ。レイヴンが美人で飽きない女性だったとしても、偶には他の女性もと思うのが人間だ。

 

 だが、人類は雑食だが守るべきルールは存在している。

 

「レイヴンさん、人類には共通のルールが幾つかあります。その一つは、百合の間に男が入ってはいけない。私の見立てでは、あの二人は間違いなくデキてます。ここに来てから彼女達は、頻繁に恋人繋ぎをしていましたからね」

 

「そうなのか?コロニーでは同性同士で普通のことだから気が付かなかった。私も嘗て肉体関係を持った部下の一人や二人はいたからな」

 

 知りたくもないレイヴンの肉体関係を聞かされた彼は、少し心に来た。女性同士だからセーフという理論武装で何とか立ち直る。コロニーとは、実に恐ろしい場所だと改めて理解する。

 

 これが、マザースフィアさんの加護の力の一端。

 

「人類謹製のマザースフィアさんに脱帽です。じゃあ、そろそろ我々も動きます。どうせ彼女達の忠誠など見せかけです。脅迫素材の一つや二つ程度用意しておくべきでしょ」

 

「何をする気だ?」

 

「彼女達には、あえて二人一緒の部屋を与えました。防音性バッチリで、シャワールームも万全。好きな者同士が二人居ればやる事は一つでしょ!!それを覗いて録画します。裏切ったら、コロニーにそれをばらまくぞとね」

 

「……悪魔的な発想だな」

 

 改竄不可能なレガシーの使い道が最近はAV録画専用機となっている。人類の叡智な結晶は、人類の叡智に利用される。軍事の次にエロに使われるとは真実だった。

 

………

……

 

 彼の前に座る二人の新人類――リリーとイベリス。やっと、落ち着いて対話が出来る状態になる。彼は、どうしても言いたい事がある。人生で一度は言ってみたい言葉ランキング上位に入るアレだ。

 

「昨晩は、お楽しみでしたね」

 

「し、仕方ないでしょ!! 女だって性欲くらいあるんだから」

 

「リリー落ち着いて……ふぅ~、私はイベリス。彼女はリリー。一応、助けてくれたから今更だけどお礼を言わせて、ありがとう」

 

 助け出して数日たってからのお礼の言葉。こんなネイティブに囲まれた場所で拷問紛いな事をされなければ、もっと早く和解できていただろう。

 

「ご丁寧にありがとう、私はダンナと言います。ここに住む一般人です。既に紹介は要らないかも知れないけど、そちらの双剣使いがアバドンさん、頭に粉砕器がついているのがギガスさん、巨大なハルバートもどきを持っているのがジャガノートさん」

 

「私は、レイヴンだ。第二空挺部隊の生き残りだ。そして、ダンナ様の()だ」

 

 さらりと既成事実を埋め込んでくるレイヴン。

 

 なにこの卑しい存在は!! 彼は、誤解を解こうかと思ったが、周囲のネイティブ達が誰も反応しない事から既に彼の知らない所で話し合いが終わっているようだった。愛人枠にネイティブ達がいる。

 

 彼は、もう逃げられない。地雷をアダムとかいう男に渡す事は出来なくなった。

 

「ははは、そうなんだね。お幸せにね……で、私達は二人の邪魔にならないように隅っこで静かに暮らすから安心して。こうみえて、私はサポートエンジニアだからみんなの生活水準があげるように頑張るよ」

 

「私は、本職はハッカーですがシステム構築も得意です。リリーと協力して、安全を提供します。レイヴンさんのシステムアップデートも私達が居れば可能です」

 

 彼は閃いた。この二人が居れば、万が一の場合レイヴンの信仰対象をアダムにすり替える事が出来るのではないかと。発想が最悪かもしれないが、人類とは我が身が一番可愛い。いざという時の逃げ道確保は大事だ。

 

「当然、君達には期待している。それと、君達二人は多分マザースフィアから何か言われてないか?恐らく、君達が探している人物は今目の前にいる。その根拠なら、私をスキャンしてみれば分かると思う」

 

 マザースフィアからの特別任務。それだけは言えないと思って黙っていたが、見透かされたことに彼女達も驚いた。二人のもくろみは、ここで資財をちょろまかして、マザースフィアからの依頼を達成するつもりだった。

 

 リリーとイベリスは、ダンナという人物が肉の塊で構成されている事を知った。

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