転生一九三六~戦いたくない八人の若者たち~   作:紫 和春

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第109話 撃沈

 バイルシュタイン艦隊に、ソードフィッシュ二十機ほどが迫りくる。

「チッ、こんな時に空襲か。対空戦闘用意! 一機たりとも残らず撃ち落とせ!」

 ヴェルマー少将が指示を出す。高角砲や機銃が空を見上げ、射撃を開始する。もはやQシップなどどうでもよかった。

『各機、高度を落とせ。対空砲の餌食になるぞ』

 ソードフィッシュの編隊は、バイルシュタイン艦隊の側面を目指して回り込みつつ、高度を落としていく。

 そんなソードフィッシュを撃ち落とすべく、対空砲が射撃を続けるものの、これがなかなか当たらない。

「畜生! なんでこんなに当たらないんだ!」

「奴らのスピードが遅すぎるんだ! もっと手前に寄せろ!」

「駄目だ、照準器の下限以下になっちまう!」

 史実でもソードフィッシュの遅さは有名であったが、それはこの一九三六世界でも健在のようだ。

『目標、ビスマルク級戦艦。右翼側は前を、左翼側は後ろの戦艦を狙え』

 側面からゆっくりとソードフィッシュが接近してくる。

 敵機を前にしても、対空砲は上手く命中してくれない。

「クソ! 時限信管は駄目だ! 徹甲弾を持ってこい!」

「敵機接近! あと二〇〇〇です!」

「間に合わねぇ!」

 その時、ソードフィッシュから魚雷が投下される。

『全機、ブレイク。現空域から離脱せよ』

 ソードフィッシュが散開し、バラバラになって飛んでいく。

「魚雷接近! 命中します!」

 艦橋近くの見張り員が、ヴェルマー少将に報告する。

「総員何かに捕まれっ!」

 ヴェルマー少将が叫んだ瞬間、艦全体が大きく揺れる。

「うわぁぁぁ!」

 ビスマルク級二隻の右舷側で、大きな水柱が複数個立つ。その数、ビスマルクが四発、ティルピッツが三発だった。

 ソードフィッシュは、対空砲による鉛玉の雨を回避しつつ、北の方角へと去っていく。

 魚雷を食らったビスマルク級二隻は、舷側で浸水が発生していた。その影響で、右舷側に傾いていく。ダメコンと排水作業を同時に行っているが、それが間に合っていない。

 そんな状況を無視して、ソードフィッシュによる航空攻撃第二波が到着した。今度は機体下部に五〇〇ポンド爆弾二発を装備している。

 ソードフィッシュ爆撃隊は、ビスマルク級戦艦を無視して、後ろを航行していたプリンツ・オイゲンと駆逐艦二隻に目標を定めた。

『俺から爆撃に行く。後ろの六小隊は、駆逐艦の方を狙ってくれ』

 そういって爆撃隊隊長機は、プリンツ・オイゲンへ急降下爆撃を敢行する。

 後ろの小隊も駆逐艦のほうに向かい、三小隊ずつに分かれて爆撃を行う。

 全弾命中とはならなかったが、駆逐艦の魚雷に命中し爆発。弾頭の火薬が誘爆して、大爆発が発生した。それにより船体がほぼ半分に折れ、轟沈となった。

『爆弾投下完了。これより帰投する』

 ソードフィッシュ爆撃隊は母艦へと帰っていく。脅威は去ったと思われたが、まだ刺客はいた。

 戦艦打撃群である。まだ健在のプリンツ・オイゲンを目標に入れたウォースパイトは、主砲をそちらに向ける。

「先日の借りを返させてもらうぞ」

 ヘミルガン中将が双眼鏡を覗き、命令を下す。

「主砲発射!」

 轟音と共に、砲弾が音速を超えるスピードで発射される。

 その砲弾は、真っすぐプリンツ・オイゲンへと吸い込まれる。

 初弾は煙突に命中した。これにより、少なからず機関に損傷が発生し、速度が落ちるだろう。

 そこを狙うように、戦艦打撃群から砲弾が届けられる。砲弾はどんどんプリンツ・オイゲンの船体に命中し、被害は増えていく一方だ。

 あちこちで火災が発生し、そして完全に航行できなくなったプリンツ・オイゲンは、総員退艦を選択することになった。

 一方時間が経ったビスマルク級二隻であるが、何とか右舷に十度傾いた状態を維持していた。ダメコンが功を奏した形だろう。

 しかし、そんなビスマルク級にも空母打撃群は容赦しない。五キロメートルほどまで接近していた。

「確実に仕留める。ヴァリアントの敵を討ってやるぞ」

 そうして主砲を発射する。

 近距離からの砲撃は、とにかく強力だ。舷側や砲塔、艦橋に命中し、多大なダメージを与える。

 徹甲弾、榴弾、副砲からの攻撃で、ビスマルク級二隻とも艦全体で火災が発生している。その影響か、先ほどまで止まっていた浸水が再び始まった。

 ビスマルクは浸水による転覆、ティルピッツは火災による機能喪失で、ゆっくりと海の底へと誘われる。

 最後に、残った駆逐艦を副砲でボコボコにしたことで、バイルシュタイン艦隊は全ての艦が水底へと吸い込まれたのだった。そしてこれと同時に、バイルシュタイン作戦が失敗に終わったことを意味する。

 イギリス海軍の威厳は、ギリギリの所で保たれたのだった。

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