転生一九三六~戦いたくない八人の若者たち~   作:紫 和春

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第111話 提言

 一九三九年二月八日。大本営立川戦略研究所。

 キーロフから帰ってきた宍戸は、立川にてある作戦を考えていた。

「やっぱりポーランドを奪還しないと、今後の戦況に支障をきたすような気がしますねぇ……」

 そういってヨーロッパの地図を眺める宍戸。

「スペインからポーランドにかけて、ドイツ領もしくはドイツに接近している領土っていうのは色々とやりづらいですよね」

「近くにイギリスがいるので、ここが最前線になりますからね」

 林が同意する。

「ドイツ本国を叩くには、その周辺から削り取るのが定石です」

 軍事部部長が同意する。

「さすがにベルリンへ直行することはしないと思いますが……。とにかく、今ある戦力をヨーロッパに押し付けないと、いつまでも陸軍を野放しにはできないですからね」

「となると、旧関東軍の連中をヨーロッパに行かせますか?」

「それもアリですね」

 宍戸は手元のメモ帳にメモする。

「とりあえず、今ドイツがポーランド領に駐留させているであろう数を考えると……、対独戦線側は歩兵を二十個師団、戦車を十個師団、可能であれば砲兵を五個から十個師団用意したい所ですね」

 宍戸は大雑把に推測する。

「かなりの数ですが……、色々と大丈夫ですか?」

「確かにドイツはそれだけの戦力を置いているかもしれませんが、我々の補給線が持ちませんぞ」

 宍戸の推測に林が反応し、軍事部部長は消極的な態度を取る。

「確かに現実的に考えれば、こんな師団数を日本から送り込むのは困難かもしれませんね。なので、周辺国家を巻き込みたいと思います」

「巻き込むというと?」

「まずは帝国陸軍をシベリア鉄道で輸送します。ソ連と中立協定を結んだ理由の一つでもあります」

「一個師団程度なら問題ないだろうが、輸送には時間と労力がかかるでしょう。それこそ、周辺国家にある機関車と改装した客車を総動員するくらいには大変です。大人しく海上輸送に切り替えるか、春を待ったほうが早いです」

「そうなりますよねぇ……。精鋭部隊を送るにしても、たった百人にも満たない兵士を送ったところで、戦況は大きく変わらないかもしれませんし……」

「それなら、最初からソ連軍とロシア軍に任せたほうがよろしいかと」

「そうですね……」

 宍戸は少し落胆する。

「それに、海上輸送するとなりますと、護衛や航路防衛も必要になってくるでしょう。そのあたりを海軍に任せるのですか?」

「そう……、ですね。今のうちに海軍を派遣して、イギリス本土周辺の防衛にあたらせるのがいいですね。それのほうが、国際的な協力を行っていることをアピールできますし」

 そういってメモを取る。

「そうなると、新型戦艦の出番になりますかね?」

「えぇ。そろそろ竣工するはずです」

「それじゃあ、訓練がてら遠征してもらって、現地で本番といきましょう」

「弾薬などの補給はいかがいたしましょう?」

「それはイギリスに頼みましょう。アメリカも巻き添えにすれば、物量作戦で潤沢な物資が貰えるかもしれませんよ?」

「確かに……」

 それらのことをメモにまとめて、宍戸はメモ帳を閉じる。

「では、これらをまとめて大本営に提言しますか」

 こうして、「欧州における大日本帝国の行動計画」として大本営に提出される。

 大本営はこれを受領し、最終的に欧号作戦、通称YE作戦として採用されるのであった。

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