転生一九三六~戦いたくない八人の若者たち~   作:紫 和春

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第114話 空挺団

 一九三九年二月二十三日。新生ロシア帝国、ウラジオストク。

 シベリア鉄道の起点の駅であるウラジオストク駅のホームには、旧関東軍の兵士たちが所狭しと集結していた。

 欧号作戦の第一段階、欧一号作戦が発令されたのである。欧一号作戦は、派遣される十個師団ほどを、ポーランド領付近まで輸送する作戦だ。

 この作戦のために、シベリア鉄道沿線から機関車と客車をかき集めた。これにより、輸送力の低下は幾分か解消された。

 この日は、旧関東軍を再編成することにより出来た第一〇〇一師団が出発する。

「今頃、ウラジオストクにいる第一〇〇一師団がシベリア鉄道に乗る頃ですかね」

 立川戦略研究所にいる宍戸は、時計を見ながらそんなことを言う。

「現在、第一〇〇二師団から第一〇一一師団が順次出港準備にあります。その他、砲兵師団は四個ほどしか輸送できない状態です」

 林が手帳に記した情報を宍戸に話す。

「砲兵の調達に関しては、アメリカに任せましょう。いずれはフランス解放のために動くしかありませんからね。とは言っても、ポーランド方面での戦力不足が少々否めませんが」

 戦力を捻出しても、それを運ぶための輸送力がなければ、宝の持ち腐れというものだろう。

「その辺りは、ソ連かロシア帝国の爆撃機に代替してもらいましょう」

「そうですね、そのほうがいいかも」

 そんなことを言っていると、軍事部部長が所長室に入ってくる。

「宍戸所長、そろそろ出発の時間です」

「おっと、そうでした」

 そういって宍戸は、身支度を整えて、立川戦略研究所を出る。

 向かった先は、研究所の目の前にある立川陸軍飛行場だ。陸軍の様々な航空機部隊が集結している、重要拠点の一つである。

 そしてこの飛行場に、ある陸軍部隊が出撃しようとしていた。

 陸軍大臣直属特別空挺団「スサノオ」である。特空ともスサノオ連隊とも称される。

 スサノオ連隊は、名前の通り帝国陸軍の空挺団であり、前身は挺進連隊であった。宍戸と陸軍省のやり取りにより、挺進連隊を空挺団に改組した経緯がある。

 そんなスサノオ連隊も、ポーランド奪還に向けた欧号作戦に参加するのだ。この日はスサノオ連隊の出征する日であり、簡単な式典が催される。

 史実では九七式重爆撃機という名前だった爆撃機を改修・製造された九八式輸送機が、飛行場司令本館前に並んでいる。

 その輸送機の前に並んでいる約五百人の空挺隊員。規模としては大隊程度だが、書類上は慣例として連隊を使っている。

『諸兄らは、これよりドイツという強大な敵と戦うことになる。その前段作戦として、諸兄らは最前線に送り込まれるのだ。無謀な作戦と思うかもしれない。しかし、それだけ帝国臣民が、世界市民が注目していることでもある。これからの世界を、諸兄らが作る手助けをするのだ。そのために血を流してほしい。以上』

 立川陸軍飛行場の陸軍少将が、激励の言葉を送る。

(血を流せって、激励の言葉で言っていいのか……?)

 宍戸は疑問に思うものの、それは心の奥にしまっておくのだった。

『続いては、大本営立川戦略研究所所長の宍戸和一海軍少将に話をいただく』

 呼ばれた宍戸は朝礼台に上り、隊員を見る。そしてマイクに向かって話す。

『初めまして。自分が転生者の宍戸です。未来から来た人間であり、この世界のことを知っている人間でもあります。その世界では、日本はアメリカから新型爆弾を二発投下され、無条件降伏しました。しかし、陸海軍や政府関係者の協力があり、そのような未来は回避されました。この先は自分も知らない歴史になります。後世の歴史家たちが、この時代の日本を賞賛したり、尊敬してくれるような歴史を作るためにも、皆さんの力添えが必要です。どうか、よろしくお願いします』

 そういって宍戸は一礼する。

「一同、敬礼!」

 宍戸に対して、スサノオ連隊は敬礼で答えてくれた。

『それでは、スサノオ連隊……、出撃せよ!』

 陸軍少将が命令を下す。

「応ッ!」

スサノオ連隊はそれに対して、怒号のような返事をした。その後は、駐機してあった九八式輸送機に乗り込み、滑走路へと進んでいく。

「オーイ! オーイ!」

 滑走路から飛んでいく九八式輸送機に対して、陸軍士官らは各々手を振ったり、万歳を延々と繰り返していた。

(陸軍は帽振れはしないんだっけ……?)

 そんな疑問を思いながら、宍戸はしっかり帽振れをしていたのだった。

 こうして帝国陸軍は、着々と対独戦争の準備を進めるのだった。

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